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「この世界の片隅に」のんが“すずさん”になって会話、片渕須直も感慨「今も生きている」

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「この世界の片隅に」リバイバル上映の舞台挨拶に参加したのん(左)、片渕須直(右)

長編アニメーション映画「この世界の片隅に」リバイバル上映の舞台挨拶が本日8月2日に東京・テアトル新宿で行われ、主人公すずに声を当てたのん、監督・脚本を担当した片渕須直が登壇した。

こうの史代の同名マンガをもとにした本作の舞台は、第2次世界大戦下の広島。18歳で呉へ嫁ぎ、大切なものを失いながらも前を向いて生きる女性すずの姿が描かれる。2016年の公開当初は63館という小規模のスタートながら、話題を集めて累計484館へと拡大。累計動員数210万人、興行収入27億円を記録した。

全国規模での再上映は9年ぶりで、のんは「この作品は私の中でも特別な映画ですし、役者をやっていく中で欠かせないものです。たくさんの方にずっと観続けていただけることが心からうれしいです」とコメント。片渕は「すずさんは戦争が終わる年に20歳なんです。なので今年ですずさんは100歳ということですが、同じように戦争中を生きた方の話を聞ける機会はだいぶ少なくなってしまいました。(戦争の記憶が)遠くに去ってしまいそうですが、そうならないようになんとかつなぎ止めたいと思って作った作品です。だから現実を描きたいと考えました。すずさんは実在の人ではありませんが、のんちゃんが演じてくれたことで、いつまでもみんなが覚えていてくれる人として存在できています」としみじみ思いを口にした。

今回のリバイバル上映には、小学生など若い世代も劇場に足を運んでいるそう。その感想を聞かれたのんは「戦争を直接体験した方からお話を聞く機会が少なくなる中で、すずさんたちのような生活があったのかもしれないと思いをめぐらせていくと、自分が生きているこの土地にもああいった生活があったんだと想像することができる。そうすると、自分の生活の中にある幸せを改めて感じることができると思うんです」と述べる。また片渕は「戦争はずいぶん昔のような、ちょっとした時代劇のような距離感になってしまった。(映像作品の中で)モンペを履いて、窓ガラスに紙テープがばってんに貼ってあれば戦争中のように見えますよね。でも物資がなかったはずなのに、紙を張るための糊はどうしていたんだろう?と。作品作りの中ではそういった疑問を投げ続けて、本当はどうだったのか、見つけていこうとしました。型にはまった“昔の話”ではなく、すぐ自分たちの隣にあることのように作ったものなんです」と振り返る。

イベント中にはMCが“すず”に質問するコーナーも。MCから「あれから9年経ちましたがいかがですか?」と聞かれると、のんはすずとして「子供が言うことを聞かなくて大変です」「9年も経つとものを言うようになります」と答える。片渕から「テレビができたと思いますが見てますか? 今は標準語ですね」と振られると、のんは「標準語はテレビで覚えました。ほいじゃあね」と笑顔で答えて、会場に和やかな笑いを起こした。

最後にのんは「ご友人やご家族と感想を言い合って、思いを馳せていただけたらうれしいです。そして改めて周りの方にお薦めしたり、いろんな方と共有いただけたら。末長くよろしくお願いします」と観客へ語りかける。片渕は「先ほどのんちゃんがすずさんの声をちょっと出してくれたことで、すずさんはずっとあの日々から今も生きているんだと、改めて納得できました。すずさんは今も生きていて、どこかで元気にしていると思います」と話してから少し言葉に詰まり、「ちょっとジンときてしまいました」と作品への深い思いを垣間見せた。

「この世界の片隅に」は東京・テアトル新宿、広島・八丁座ほか全国で期間限定上映。

©2019こうの史代・コアミックス / 「この世界の片隅に」製作委員会