「長崎―閃光の影で―」菊池日菜子ら、福山雅治との主題歌レコーディングを振り返る
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「長崎―閃光の影で―」公開記念舞台挨拶の様子。左から松本准平、川床明日香、菊池日菜子、小野花梨
映画「長崎―閃光の影で―」の公開記念舞台挨拶が本日8月2日に東京・TOHOシネマズ 日本橋で行われ、キャストの菊池日菜子、小野花梨、川床明日香、監督の松本准平が登壇。本作で語りを担当した美輪明宏、主題歌のプロデュース・ディレクションを手がけた福山雅治のメッセージも届けられた。
1945年夏、原爆投下直後の長崎を舞台に、看護学生たちが負傷者救護のため奔走する姿を描いた本作。菊池が17歳の田中スミ役、小野が学友の大野アツ子役、川床が岩永ミサヲ役で出演した。長崎出身で被爆3世でもある松本は「改めてこの作品が僕の手から完全に離れて、皆さんのもとへ、そしてまだ見ぬ方々のもとへ届けという願いを込めて、僕は今日この場に立たせてもらっています」と挨拶する。
美輪の自宅で行われたという語りの収録。松本は「映画の最初と最後を被爆者である美輪明宏さんの声で飾ってもらえて改めて感謝です」と述べつつ、「収録に真摯に向き合っていただき、長崎の民謡も口ずさまれていました」と振り返る。美輪は自身の生々しい被曝体験を伝えるとともに、「若い世代の方には、もう二度と戦争を起こさないように、美しい文化にふれて心を豊かにしていただきたいと思います」とメッセージを贈った。
主題歌「クスノキ ―閃光の影で―」は、長崎復興のシンボルとも言える山王神社の被爆クスノキをモチーフに福山が制作した楽曲「クスノキ」を菊池、小野、川床が歌唱したもの。福山から直接指導を受けながらレコーディングに臨んだ菊池は「緊張で固まる私をほぐすために、福山さんは親身になって近い距離感でお話をしてくれました」と述懐する。小野は「福山さんは私のいる小さなブースに来てくれて、目の前でギターを弾いてくれました。狭い箱の中で1対1。(非現実的すぎて)笑っちゃう!」と話し、川床も「音程が難しい場所になると『ここがこうだよ』と優しく教えてくださって……」と感激していた。
イベントでは、登壇者への完全サプライズで福山からのビデオメッセージも上映。福山は楽曲への思い入れを語ったほか、映画について「とても美しいものを観たなという感想です。目の前で何が起こったかわからないけれども、困っている人を、苦しんでいる人を、助けたい人を、その対象に対して無償の手伝いをする。その人間としての当たり前の行動を、実は命がけでやっているということに、美しさを感じました」と感想を伝えた。なお美輪と福山のメッセージ全文は下部に掲載している。
最後に菊池は「平和を願うという一言にもさまざまなグラデーションがあります。どこまでも平和であればいいと思いますが、まったく同じ認識で全人類に強制することは不可能です。そんな中でも、無差別に奪われる命があっていいわけがないということは強く断言できます」と力強く口にする。松本は「長崎が最後の被爆地となるよう、長く日本でも世界中でも本作が愛されて、被爆地のことを、長崎の人たちのことを忘れずに伝え続けてくれたらうれしく思います」と語った。
「長崎―閃光の影で―」は全国で公開中。
美輪明宏 メッセージ全文
あの悪魔の閃光から80年
被爆したのは10歳の時、爆心地から3.6キロでした。
静かな夏休みの朝、宿題の絵を描いていました。
出来上がりを確かめるため後ろへ二、三歩下がった途端
ぴかっ! 百万個のマグネシュウムを焚いたような白い光が、
世の中がシーンとして(あれ? こんな好い天気に稲光…)
思う間もなく、幾千万の雷が同時におちたようなすさまじい爆音。
外…そこは地獄でした。
数日後、浦上の親類が心配になり、爆心地に入りました。
その惨状を目の当たりにして、
僕は初めて冷たい水に漬かったような寒さで身体が震えだし、
底の知れない恐怖に、哭(な)き出しました。
夢の中で怪物に追われるように走り続けました。
やがて戦争は、終わりを告げ。原爆の中裸足で逃げまどい地獄絵さながらの、あの光景は、一生私の胸から消えることはないでしょう。
しかしあの長崎のコバルト色の空や港、乳白色の夕もやに包まれた丘の上にある学校の講堂で、遅くまでピアノを弾いてうたっていたあの頃が、いちばん美しい思い出ともなっています。
若い世代の方には、もう二度と戦争を起こさないように、美しい文化にふれて心を豊かにしていただきたいと思います。
福山雅治 ビデオメッセージ全文
福山雅治です。
菊池日菜子さん、小野花梨さん、川床明日香さん、そして監督の松本准平さん。さらには、本日お越しくださった皆様、ありがとうございます。
今回この映画「長崎―閃光の影で―」、僕は音楽の方で参加させていただきました。このお話を伺ったときに、まず大変嬉しく、何としても参加したいと思ったのですが、僕の歌唱というよりも、やはりお三方の、菊池さんと小野さんと川床さんの演じられたそれぞれの役の歌声、役として楽曲に歌声で命を吹き込むというのが、この映画のエンディングにふさわしいのではないかと思って、アレンジと歌唱のディレクションを担当させていただきました。
この「クスノキ」という楽曲はもともと2014年に発売された楽曲です。僕自身長崎出身で、デビューしたのは1990年ですけれども、1990年から「クスノキ」という楽曲が発表されたのが2014年、24年かかりました。24年経って、やっとこの「クスノキ」という楽曲ができて発表しました。2025年にこういったかたちで、この「長崎―閃光の影で―」という作品とに「クスノキ」という楽曲で参加できるということは自分にとって本当にありがたいことで、そしてこの三人の俳優さんに歌っていただけることで、また新たな命を宿して長く聴いてもらえる、伝わっていく歌になったんじゃないかなと、この映画とともにそういう作品になったんじゃないかなと思っています。
映画は、とても美しいものを観たなという感想です。目の前で何が起こったかわからないけれども、困っている人を、苦しんでいる人を、助けたい人を、その対象に対して無償の手伝いをする。その人間としての当たり前の行動を、実は命がけでやっているということに、美しさを感じました。そういったごくごく当たり前のことだけど、とても尊いもの、尊い行動・行為というものを自分の手の届く範囲で、目の前で起こっていることで、対応していく。親切にしたい、助けたい、優しくしたい。その連鎖が、1人ひとりそれぞれの連鎖が、今日映画をご覧になってくださっている皆さんの生活の中で、そういう思いで暮らしていくと、それが広がっていって、世界がもう少し、さらに平和というものに向かって前進するのかなと。この映画はそういうことを改めて伝えてくれている作品になっていると思います。
「長崎―閃光の影で―」、そして「クスノキ」。映画と音楽がより多くの人に届くことを願っています。
福山雅治でした。
©2025「長崎―閃光の影で―」製作委員会