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ぴあ 総合TOP > 台湾通でもスルーしがち?阿里山鉄道と“幻の駅弁”が控えめに言って最高【台湾食べ歩きの旅 #20】

台湾通でもスルーしがち?阿里山鉄道と“幻の駅弁”が控えめに言って最高【台湾食べ歩きの旅 #20】

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ウレぴあ総研

女ひとり、67日の台湾一周旅行もいよいよ終盤にさしかかった。今回は嘉義から森林鉄道で茶どころ、阿里山に向かう。

旅は道づれ

【台湾食べ歩きの旅 #19】朝、嘉義駅のホームに到着する列車とシャッターを切る観光客たち。ここから高山列車の旅が始まる

その存在は知っていたけれど、あまりにも有名なので今まであえて素通りしてきた場所やアクティビティがある。

普通の観光客が行く場所より現地の人の生活感にふれられる場所を優先するのが、私の旅のモットーだからだ。

鉄路で台湾を何周もしていると、支線にも興味が湧いてくる。環状線から逸れて脇道を行くと、そこには何があるのか?

そこで、今回は旅の途中で知り合った日本人旅行者とともに、阿里山(アリサン)森林鉄道に乗ってみることにした。

一人旅は道中での出会いがおもしろい。今回の台湾一周では、それを痛感した。出会った人からもらった情報をもとに知らない駅で降りたり、予定を変更してみたり。

阿里山までいっしょに行った日本人男性2人は、2週間の日程で台湾を訪れているのだが、この二人の出会いもまた東南アジアの宿だとか。

10年ほど前、フィリピンの地元労働者が雑魚寝をするような安宿で知り合ってから、時々2人で貧乏旅行をしているのだという。

定年退職したおじさんたちが少年のように嬉々としながら列車に乗り込む姿は、なんともほほえましかった。

嘉義駅から阿里山地区の奮起湖駅まで、2時間半の旅

阿里山森林鉄道は、1800年代末に阿里山林場で伐採した木材(主にヒノキ)を運ぶために日本人が作った鉄道だ。

でも、実は「阿里山」という山は存在しない。阿里山とは、複数の高山が連なる「阿里山地区」のことを指す。嘉義駅と阿里山の林場(木材の保管場所)をつなぐその鉄路は70キロ以上あり、高低差は2000メートを超える。

なかでも独立山という険しい山を乗り切るために、世界でも珍しい渦巻き状の線路で山を登っていく。列車はこの独立山の周りをらせん状に3周し、さらに山の中央を突っ切るトンネルをくぐり抜けながら山頂を目指すのだ。

山を登るにつれ窓の外には同じ風景を3回見ることになるのだが、1周するごとにさっき見た眼下に広がる風景が小さくなっていく。

山道をゆっくりと進むため、嘉義駅から阿里山地区の奮起湖駅までは2時間半かかる。曜日によって午前8時半、9時、9時半と3本が嘉義駅を出発する。

嘉義駅のホームに真っ赤な阿里山号の牽引車が滑り込んでくると、誰もがシャッターを切る。これから始まる高山鉄路の旅にワクワクしてしまう.

列車の車幅はとても狭くて、1車両に乗り込める人数は20人程度。土日は4両編成の列車が満席になる。

心あたたまる光景

最初は、民家の軒先すれすれにかすめながら住宅地やのどかな田園風景の中を走るが、すぐに山道に差しかかる。

両側を木々が覆いつくす狭い道を進んでいくのだが、この阿里山号、窓がとても汚れていて、せっかくの風景がかすんで見える。日本の観光列車だったら、毎日窓をピカピカに磨き上げるだろうに、そこはゆるゆるの台湾仕様。みんな曇った窓に頭を押し付けるようにして、眼下に広がる嘉義の街を眺めている。

嘉義駅から奮起湖駅まで10駅ほどあり、乗客はほとんど乗り降りしない。奮起湖がちょっとした観光地になっているので、日帰り客はここで折り返し、午後の列車で嘉義駅に戻ってくる。

だが阿里山で宿泊し、ご来光を拝みたい人は、支線に乗ってさらに高所を目指す。

翌日の早朝に桃園からの帰国便を控えていた私は、阿里山のご来光を拝むわけにもいかず、奮起湖で折り返すルートを選んだ。

【台湾食べ歩きの旅 #19】独立山をらせん状に登っていくと、車窓から見える街が徐々に小さくなり、眼下には山々が広がる

途中の駅はどれもバス停のように小さくて、うっかりすると見過ごしてしまいそうだが、そんななかで1人のおばあちゃんを降ろすために列車が停車した。

ゆっくりと手すりにつかまりながら列車からホームに降り立つおばあちゃん。聞けば、この山奥深くに住んでおり、週に一度は子どもたちが住む嘉義の街に出かけ買い物をするという。この高山鉄道がおばあちゃんの生活の足なのだ。

そんな高齢のおばあちゃんに、何人もの乗客が手を取って下車を手伝う。バスでも列車でも、台湾人は躊躇なく高齢者に席を譲り、手を取って乗り降りをサポートする。

【台湾食べ歩きの旅 #19】九份を思わせるような奮起湖駅周辺の観光スポット。平地よりも少し安く阿里山茶を購入できる

台湾人のそんな優しさに感動しつつ、我が身を振り返ると恥ずかしくなってしまった。

私は日本の電車で、こんなふうに迷いなく、スマートに席を譲れているだろうか。おばあちゃんはホームに降り立つと、買い物袋をぶらさげたままニコニコして手を振り、見えなくなるまで列車を見送ってくれた。

(つづく)

(うまいめし)

光瀬 憲子

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