韓国ドラマや映画で観られるようなお酒が飲みたい! ソウル飲み歩きQ&A【気になる韓国、ソウルの今vol.35】
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韓国ドラマや映画には酒を飲むシーンが多い。2020年に日本でも大ヒットした『梨泰院クラス』は登場人物がソジュ(韓国焼酎)を一気飲みするシーンが注目され、日本のコンビニやスーパーに眞露などを常備させるまでになった。
また、2024年前半の人気ドラマ『涙の女王』には都会人が農村でマッコリの洗礼を受けるシーンがあった。
今回は日本からの旅行者対象の酒場ツアーを主宰しているソウル在住の韓国人女性ライターに、韓国の飲酒文化についてQ&A方式で教えてもらった。
「この韓国料理にはこの酒」ベストなマリアージュを写真で見る(ウレぴあ総研)
Q1 韓国ではどんな飲食店でも酒が飲めるのですか?
日本や台湾と比べると、アルコールがより身近なことは確かです。焼肉など肉料理の店や刺身など魚料理、辛い鍋料理の店では酒がないと商売が成り立ちません。
ただし、粉食チプと呼ばれる粉もの(麺類やトッポッキなど)や海苔巻き、定食がメインの軽食店では置いていないこともあります。
Q2 飲食店の酒の値段はどれくらいですか?

一般的な酒(ビール、生マッコリ、ソジュ)は1瓶4,000~6,000ウォンと見ればよいでしょう。韓国はここ数年、物価が急上昇していますので、日本と比べて特別に値頃感があるわけではありません。
しかし、日本ではジョッキやグラス売りの酒が多いのに対し、韓国はボトル売りが基本なので、投資対効果、つまり払うお金に対する酔い加減という意味ではお得感があるはず。
特に日本のコリアンタウンでは生マッコリ1瓶が1,500円前後、ソジュ1瓶が1,000円前後しますので、韓国で飲む価値は大といえるでしょう。
Q3 「この料理にはこの酒」のようなベストな組み合わせはありますか?
焼肉→ソジュ

日本では焼肉にはビールという人が多そうですが、韓国ではソジュです。脂っ気のある料理にはよく冷えたソジュを合わせます。
日本でも人気のサムギョプサルは赤身と脂身が三層になっている豚バラ肉のこと。脂が旨味のひとつなのでソジュとは相性抜群。
また、甘辛いタレをからめて焼いたホルモンにもソジュは合います。
スンデ(腸詰)→ソジュ
スンデとは手入れした豚の腸や食用ビニールに野菜のみじん切りや春雨、豚の血などを詰めて茹でたり蒸したりしたもの。
レバーのような独特の香りがあり、好き嫌いが分かれますが、ハマる日本人も少なくありません。クセのある食べものにもソジュが合います。
ジョン(チジミ)→マッコリ
日本ではネギ(パ)に衣をつけて揚げ焼きしたパジョンがよく知られていますが、唐辛子のコチュジョン、白身魚のセンソンジョン、ズッキーニのホパクジョン、牡蠣のクルジョンなど多彩です。
香ばしい揚げ物にはほのかな甘味と酸味、炭酸の清涼感のあるマッコリがよく合います。
フライドチキン→ビール(メクジュ)

これは日本でも同じですね。韓国ではホテルはもちろん、ソウルの漢江沿いの公園からでもチキンの出前ができますので、チメク(チキン+メクジュ)が楽しめます。
筆者は個人的にはチキンにはマッコリも似合うと思います。ぜお試しください。
干し鱈→ビール(メクジュ)
ソウルの乙支路3街のビアホール(HOF=ホプ)街やビビンパで有名な地方都市・全州では、干し鱈(ノガリクイ、ファンテクイ)にはビールと相場が決まっています。
よく叩かれ、炙られた干し鱈は手でパリッと割ると粉を吹くほど。食べると香ばしさが広がり、同時に口の中の水分が一気に奪われます。そこにビールを流し込むのが最高。試してみてください。
Q4 どうしたら酒場で韓国の人とふれ合えますか?
日本人に限らず、外国人は韓国人の興味の対象です。
テーブルとテーブルの近いこぢんまりとした店や、肩と肩がふれるような屋台のカウンターでは、酔いも手伝って声をかけてくる韓国人も少なくありません。そのときの言葉は韓国語だったり、ブロークンの英語だったり、日本語だったりします。
しかし、もっと積極的に交流の機会を作りたいなら、自分からアクションしてみることが大事です。
隣席の人と目が合ったら、まずは「アニョハセヨ(こんにちは)」とあいさつしてみましょう。
そのあとは、隣席のつまみを見て、「マシッケンネヨ~(美味しそうですね~)」と言えば、おすそわけにあずかれるかもしれません。
そして、自分の酒が来たら、「コンベ ハプシダ(乾杯しましょう)」と隣席の人にグラスを近づければ、相手も「コンベ!」と言いながらグラスをぶつけてくれるでしょう。
筆者の日本の友人知人には、酒場での日韓交流を楽しみにしている人が多いので、そのきっかけづくりにちょっとしたプレゼントを用意している人もいます。
ある人は100円ショップでまとめ買いした日本的な割りばし(チョッカラッ)を、ある人は100円程度のノド飴(モッケンディ)を、そして、またある人は質のよいポケットティッシュをカバンに忍ばせています。
プレゼントの効果というわけではありませんが、計算して帰ろうとしたら、すでに隣席の客が支払ってくれていたなんてことも珍しくありません。
筆者は日本からの旅行者や韓国駐在者を対象とした「ソウル酒場ツアー」を主宰しています。3時間半ほどの飲み歩きなのですが、参加者が地元の人たちと交流できるようなきっかけづくりに努めています。
「ソウル酒場ツアー」の問い合わせは、Xまたは、InstagramのDMで。
Q5 韓国の人とふれ合えるチャンスの多い店を教えてくだい。

屋台(ポジャンマチャ)は席と席が近いので、声をかけやすく、また、かけられやすいことは確かです。
しかし、最近のソウルでは他人に干渉しまいとするスマートな若者も増えているので、気をつかって話しかけてこなかったりします。
その意味ではソウルより第二の都市釜山のほうが人なつっこいでしょう。国際港としての歴史があったり、朝鮮戦争のときに全国からの避難民を受け入れた歴史があったりするので、釜山人は外部の人に対してフランクだといわれているのです。
ソウルでも釜山でも、人なつっこいのは若者ではなく中高年のおじさんたち。中高年が集まり、しかも席と席が近い飲食店として挙げられるのは、シュポと呼ばれる業態です。
シュポとは、スーパー(マーケット)の韓国的発音。つまり、個人経営の小さな食料雑貨店のことです。
日本に酒屋の店先で飲むスタイル(角打ち)があるように、韓国ではシュポで気軽に飲むことができます。市場の近くや零細工場の密集地に多く、日本の旅行者の行動範囲だと乙支路4街(ウルチロサーガ)や鐘路3街(チョンノサムガ)辺りに点在しています。
周辺の工場や商店で働いているおじさんたちが、茶菓子を買ったり、コーヒーを飲みに来たりする場所ですが、常連客は仕事終わりにシュポに寄って、お酒を買って飲んだりします。
そうすると、シュポの主人は常連のために座って飲める席を用意したり、簡単なつまみを作って出したりするようになります。酒場としてのシュポはそれが常態化した例です。
ふつうの飲食店より酒が1,000~2,000ウォンは安いのも魅力です。日本の角打ち同様、ポテトチップなどの袋菓子や缶詰をつまみに飲むこともできます。

客層は50~60代の常連が中心。彼らはそもそもシュポのようなところに日本の旅行者が来るとは思っていないので、珍しさも手伝って、積極的にかまってくれます。
シュポの主人はたいてい中高年女性。日本語で言う女将です。その人柄や料理の腕前で常連客の母親のようなアイドルのような存在です。彼女に愛想よくすれば、隣席の客と交流するチャンスも増えるでしょう。
(うまいめし)
チョン・ウンスク
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