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「菅原伝授手習鑑」に松本幸四郎「仁左衛門のおじさまの菅丞相をつなぐ責任を感じて勤めたい」

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左から市川染五郎、松本幸四郎。

9月2日から24日まで東京・歌舞伎座で行われる松竹創業百三十周年「秀山祭九月大歌舞伎」にて、「菅原伝授手習鑑」が通し上演される。同公演に出演する松本幸四郎と市川染五郎の取材会が、本日8月22日に東京都内で行われた。

「秀山祭」は、幸四郎の曽祖父にあたる初世中村吉右衛門の功績を顕彰する公演。菅原道真(菅丞相)の太宰府流罪を題材にした「菅原伝授手習鑑」は、「仮名手本忠臣蔵」「義経千本桜」と並ぶ歌舞伎の三大名作の1つだ。今回の「秀山祭九月大歌舞伎」では、昼の部で序幕「加茂堤」、二幕目「筆法伝授」、三幕目「道明寺」、夜の部で四幕目「車引」、五幕目「賀の祝」、六幕目「寺子屋」が、それぞれAプロ、Bプロの2通りの配役で上演される。幸四郎は昼の部の二幕目「筆法伝授」Aプロで武部源蔵、同Bプロと三幕目「道明寺」Bプロで菅丞相、夜の部の四幕目「車引」Aプロで松王丸、六幕目「寺子屋」Aプロで武部源蔵、そして同Bプロで松王丸を勤める。また染五郎は昼の部の二幕目「筆法伝授」Bプロで武部源蔵、夜の部の四幕目「車引」Aプロで梅王丸、六幕目「寺子屋」Bプロで武部源蔵を演じる。

片岡仁左衛門とWキャストで菅丞相を勤める幸四郎は「Aプロ、Bプロの配役が覚えにくいですが、『4回観て』ということですね(笑)」と笑いつつ、「仁左衛門のおじさまに菅丞相を教えていただける。これ以上幸せなことはない」と喜びをかみ締める。仁左衛門は先日、菅原道真を祭神とする京都・北野天満宮で成功祈願を行い、同じく菅原道真をまつる福岡・太宰府天満宮、大阪・道明寺天満宮、東京・湯島天神も訪れる予定だという。幸四郎はそのことに触れて、「先日の休演日に私も太宰府天満宮、道明寺天満宮に行ってきた。ゆかりの場所に行けば菅丞相を演じられるわけではないけど、おじさまには『菅丞相は気持ちや人間性を大事に勤める役だ』と言われました。舞台を拝見しているとおじさまが菅丞相にしか見えない瞬間があった。演じ方も含め、おじさまの菅丞相を次につなぐ責任を感じて臨みたい」と言葉に力を込めた。

幸四郎は太宰府天満宮で祈祷を受けたそうで、「ご祈祷をしていただいたとき、雷雨と強風がすごかった。『なぜお前が菅丞相なんだ』と怒られているのかと思いましたが、悪く捉えないようにしようと思っています」と笑い交じりに述べつつ、「とにかくこの名作を今の方に観ていただけるのがありがたい。歌舞伎をご存じの方はもちろん、そうでない方にもおじさまの菅丞相を観てほしい」と観客にメッセージを送った。

20歳の染五郎は「菅原伝授手習鑑」歌舞伎座興行としては最年少で武部源蔵に挑む。染五郎は「身に余るお役をいただき、間違いかと思った。いただいたからには今の自分の100%を注ぎ込む覚悟。私のその気持ちが源蔵自身の覚悟と重なって見えれば」と意気込みを口にする。武部源蔵、梅王丸は初世吉右衛門が得意としてきた役であり、二世中村吉右衛門も勤めた。染五郎は「播磨屋のおじさま(二世吉右衛門)のイメージも強い2役なので、おじさまの映像を観て研究したい。無駄がない、洗練された要素が残っている役だと思うので、自分の身体を通して表現できたら」と話した。

また「車引」で桜丸と松王丸を演じた経験がある染五郎が「今回の梅王丸で、三つ子をコンプリートします」と笑うと、幸四郎が「私はまだ桜丸をやっていません」とまぜっ返す。染五郎は「すみません、父より先に……」と記者を笑わせつつ、「私は5歳のとき、『寺子屋』で(菅丞相の息子)菅秀才を勤めました。そこからたった15年で武部源蔵ができるかな?と不安な気持ちもありますが、教わったことにきっちり取り組みたい」と気合十分。すると再び「私、菅秀才もやっていません」と茶々を入れる幸四郎に、染五郎は「今はもう無理だと思います」とツッコみ、再び会場を笑いで包んだ。

また本作の通し上演について染五郎は「先人が磨き上げ、無駄が削ぎ落とされた作品です。時代もお客様も変わっていきますが、先人たちが残してくれた演目を1人でも多くの方に観ていただけるよう、私も良い俳優にならなくてはと。自分自身、今回2つの大役をいただいたことで(作品と自分の芸を)磨き上げるためのスタートラインに立つことを目標にしたい」と思いを口にした。

幸四郎は「本作は“歌舞伎を観た感”を一番強く感じてもらえる作品ではないでしょうか。映画『国宝』で歌舞伎を知った方にも最適です。ストーリーを楽しむだけではないのが歌舞伎の個性。ご自分の興味を惹くものが何かあるはずなので、それを探しに来る感覚で歌舞伎座に来てもらえたら」とコメント。また幸四郎は染五郎に目をやり、「染五郎にとっても、本公演が源蔵と梅王丸を勤め続けていくきっかけになれば。『車引』には私と染五郎、そして父(松本白鸚)も藤原時平役で出演しますので、芸が継承される“現場”を観ていただきたいですね」と思いを込めた。

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