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車には詳しくないけど「ワイスピ」は大好きな映画ライターが「FUELFEST JAPAN 2025」に行ってみた

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「FUELFEST JAPAN 2025」の様子。左からコディ・ウォーカー、ミシェル・ロドリゲス

カーフェスティバル「FUELFEST JAPAN 2025」が8月11日に静岡・富士スピードウェイで開催された。4回目を迎えた「FUELFEST JAPAN」は、映画「ワイルド・スピード」シリーズの世界観、車の音や匂い、走りのかっこよさを堪能できるイベント。今年はレティ役で知られるミシェル・ロドリゲスと故ポール・ウォーカーの弟コディ・ウォーカーが参加した。

この記事では映画ライター・村山章によるレポートをお届け。「ワイスピ」は大好き、しかし車には詳しくないという彼は、イベントを楽しむことができたのか。

取材・文 / 村山章

ミシェル・ロドリゲスが来日する!と報道されたのは今年の7月末のこと。ミシェルといえば「ワイルド・スピード」シリーズのレティ役を2001年の第一作から演じ続けているハリウッドきっての姐御スター。しかし待望のシリーズ最新作は2027年公開予定でまだまだ先の話。別の出演作のプロモーションというわけでもなく、富士スピードウェイで開催されるカーイベント「FUELFEST JAPAN 2025」の特別ゲストとしてやってくる、というのだ。

FUELFESTは「ワイスピ」の主演スターだったポール・ウォーカーによって設立された非営利災害支援団体「Reach Out WorldWide (ROWW)」を守るため、実弟コディ・ウォーカーと共演者のタイリース・ギブソンが立ち上げたイベントで、日本開催は4回目。過去のFUELFEST JAPANでもタイリースやサン・カンというキャスト陣がゲストとして参加していて、「ワイスピ」ファンとして気になっていたイベントだ。

個人的には自動車の普通免許は持っているもののクルマやレース関係にはさっぱり詳しくないのだが、映画ナタリー編集部より「どんなイベントか観てきて!」とお声がけいただいたので「ヨシ、レティに会いにいくぞ!」と会場に馳せ参じてきた。

オープニングは力技で「ワイスピ」を再現!

ところが、である。開催当日の8月11日、富士スピードウェイがある静岡県御殿場近辺は朝から大雨に見舞われた。後で知ったが大雨警報が発令されており、控えめに言っても嵐。会場には暴風雨をくぐり抜けないとたどり着けない。「天空の城ラピュタ」でラピュタにたどり着く前に立ちはだかる荒れ狂う雷雲を思い出してほしい。幸いイベント自体は悪天候ながらも降ったり止んだりで大過なく済んだものの、タイムテーブルやイベント内容、観客動員に少なからぬ影響があったはずだ。

雨天決行となったFUELFESTは予定時間より20分ほど遅れて、雨足がゆるんだ隙に運営会社Kamiwaza-JapanのCEO一樂智也氏の挨拶でスタート。しかしサーキットを走ってくるどのクルマにミシェルやコディ・ウォーカーが乗っているのかがわからないなど運営はかなり混乱している模様。しかし嵐を越えてやってきた猛者ぞろいの客席には、その程度のハプニングでは動じない空気が漂っている。

事前に告知されていたオープニングのコーナーは、サーキットでの映画「ワイルド・スピード」の有名シーンの再現。ダッジ・チャージャーやトヨタ・スープラといった映画でおなじみのクルマが登場するとのことで、あの一作目のラストの踏切に突っ込むカースタントでも再現するのだろうか? いや、それはいくらなんでも危険すぎるし、普段はレースで使用しているサーキットでムチャをするわけにもいかないだろう。

フタを開けてみたら、「ワイスピ感ただようクルマたちが警察車両の大群に追いかけられる」という自動車による寸劇がはじまった! なるほど、最近のワイスピファミリーはすっかり正義の味方だが、本来はスピードを愛する窃盗団であり、確かに「ワイスピの再現」にウソはない。サーキットをぐるぐる走行しているだけで映画のシーンらしきものができてしまう、みごとなトンチで感心してしまった。

ミシェル・ロドリゲス、さすがのハイテンションで登場

いささかカオスな追いかけっこの中、オレンジ色のトヨタ・スープラがスタンド前にやってきた。「ワイルド・スピード」一作目でポール・ウォーカー演じるブライアンが乗っていた車両のレプリカで、降りてきたのはポールの実弟コディ・ウォーカー! 続いてスタンド前に入ってきたレッドパープルの日産S14型シルビア──といえば、これはミシェル演じるレティの愛車だ。

当然ながら乗っているのはミシェル・ロドリゲスで、悪天候でさぐりさぐり進行している煮え切らなさを吹き飛ばすハイテンションで登場。黒ずくめにライダースジャケットを羽織った姿はミシェルというよりほぼ100%レティ・オルティスであり、掛け値なしのワイスピセレブの登場に場はがぜん盛り上がる。スタンドの観客に向けたジェスチャーやマイクを持っての挨拶もスタジアムのコンサートくらいのノリで、さすがハリウッドスターと感心させられた。

ミシェルは再びシルビアに乗り込み、迫りくる警察車両に「ヤベえ! 逃げろ!」と小芝居もかまして走り去っていった。実にサービス精神にあふれていらっしゃる。

ドラッグレースで走り屋の気持ちに触れる

続いての催しは、(予定では)200台のクルマによる模擬ドラッグレース。「ゼロヨン」と呼ばれるドラッグレースは、公道を使った400mの直線コースでスピードを競うもので「ワイスピ」にほぼ毎回登場する名物でもある。

今回はスタンド前のレースコース200mの半分サイズだが、一般公募で集まった改造車たちが2台ずつ、映画さながらに女性スターターの合図で走り出す。全100レースと謳っているだけあって、個性豊かなクルマたちが轟音を上げて待機している様子はなかなかに壮観だ。矢継ぎ早に延々とレースが続くので、途中で退屈するかと思ったが、「ワイスピ」ファンとしてはこのコーナーが一番面白かった。

というのも、ドラッグレースがどんなものかは一応知識では知っているし、「ワイスピ」等の映画で観たこともあるのだが、200mの模擬レースとはいえ生で見るのは大違い。けたたましくエンジン音をかき鳴らしている車両が思いのほか遅かったり、みごとなシフトさばきでスタートダッシュを決めるクルマがいると思えば、わずか200mなのに後半で刺しにいって抜いて勝つクルマがいたり、何レースも見ているうちになんとなく勘所がわかってくるのだ。

たった10分ほど見ただけなのに、「今のクルマ、地味なわりに速くね?」とか「いまのスタートはちょっとダサかったね」とか(合っているかどうかはともかく)わかったような口がきけてしまうのも楽しいし、「ワイスピ」のキャラたちがどうしてドラッグレースにどっぷりハマったのか、その魅力の一端を覗くことができた気がしたのである。

「ワイスピ」完結編の新情報は…?

ほかにもTOYOTA GAZOO Racing WRTによるラリー走行のデモンストレーションがあったり(助手席にはミシェルとコディが乗っていたらしい)、「ワイスピ」ゆかりのクルマの展示コーナーがあって車内にキャスト陣のサインが飾られていたり、ミュージシャンのミニライブや能登の和太鼓実演があったり(2023年にはきゃりーぱみゅぱみゅも出演)、いろいろと催しが同時進行するのだが、やはり気になるのはミシェルとコディが参加するトークショー。ミシェル目当てで参加した自分のような「ワイスピ」ファンにとっては、本イベントのメインディッシュといって過言ではない。

サーキット上に停められたトラックの荷台が即席のステージとなり、主催者であるコディ・ウォーカーと一樂氏、WRTのレーサーたち、そしてミシェルが登壇するのだが、相変わらず進行が混乱しているようで、コディが到着しているのにミシェルはホテルでお色直し中らしいという情報が飛び込んできたり。まあこの日は天候もあってゴタゴタするのも仕方ない。この辺のユルさと観客側の寛容さもFUELFESTの愛嬌なのかもしれない。

少し遅れて到着したミシェルはメルセデス・ベンツGクラスの天窓から身体を乗り出してスタンド席にアピール。場の雰囲気も一気に華やぐ。正直トークで一番聞きたいのは、ようやく2027年4月全米公開と発表された「ワイスピ」最新作の新情報。一樂氏もミシェルにズバリ質問をしたのだが、さすがにハリウッド超大作のガードは堅い。「完結編となる大切な作品だけに、いま慎重に準備しているところです!」と優等生的な返答しか得られなかったが、まあ仕方ないことだろう。

しかし筆者の近くにいた家族連れの幼い女の子が「誰が来るの? えっ! レティが来るの!?」と大興奮していたように、「生レティ=ミシェルに会えるイベント」という今回の売りは確実に機能しており、老若男女の「ワイスピ」好きが集う幸福な空間が生まれていたことは間違いない。少しでもご興味を持った方は、来年の開催も予告されていたFUELFESTを体験しに行ってみてはいかがだろうか。

村山章(ムラヤマアキラ)プロフィール

映画ライター。2009年より続く「しりあがり寿 presents 新春!(有)さるハゲロックフェスティバル」では、初回から運営スタッフを務める。配信系映画やドラマのレビューサイト・ShortCutsの代表。2017年からハル・ハートリー作品の広報や配給業務にも携わっている。

村山章 (@j_man_za) | X