新日本フィルが来季ラインナップ発表。佐渡体制4年目
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すべて見る新日本フィルハーモニー交響楽団が2026/2027シーズン(2026年4月~2027年3月)の定期演奏会プログラムを発表。8月11日に本拠のすみだトリフォニーホールで記者発表会を行い、音楽監督の佐渡裕、楽団理事長の宮内義彦、ソロ・コンサートマスターの崔文洙らが出席した。席上、2023年4月から2027年3月まで4年間の予定で音楽監督に就任中の佐渡裕の任期を2030年3月まで3年間延長することや、新たな人材育成の場として「新日本フィルアカデミー」を設立することも併せて発表された。
「音楽監督就任1年目は“鳴るオーケストラ”を目指した。“新日本フィルの音”をお客様に届けること。2年目は、たとえばブルックナーの7番やマーラーの9番などで、より深い、緻密なアンサンブルに踏み込んでいけたのではないか」
佐渡はここまでの任期をそう振り返る。そして現在3シーズン目。
「“ウィーン・ライン”(注=佐渡が音楽監督就任以来掲げる、ウィーンで活躍した作曲家を軸にしたプログラム)をベースに、今年4月の《カディッシュ》のような珍しい演目もかなり念入りに作ることができる、非常に柔軟性のあるオーケストラ。新しい優秀なメンバーがどんどん集まってきてくれていることもあり、さまざまな可能性を持って進んでいける」
と来季への確かな手応えを語ったその4シーズン目。2026/2027シーズンのラインナップは以下のとおり。
まずは〈トリフォニーホール・シリーズ〉〈サントリーホール・シリーズ〉からなる定期演奏会。次の4つがキーワードだ。 ・新進気鋭の女性指揮者 ・“ウィーン・ライン”のひろがり ・自作自演と弾き振り ・バロック、古典というクラシック音楽の原点から次のシーズンへ
シーズン幕開けの2026年4月定期(第669回)はアイルランドの新鋭女性指揮者カレン・ニーブリンが日本デビュー。独奏に小林愛実を迎えた若き日のクララ・シューマンのピアノ協奏曲と、女性が躍動。メインはサン=サーンスの交響曲第3番。
5月(第670回)はスイスの円熟の名匠ミシェル・タバシュニクが登場。ブラームスの交響曲第2番を柱に、ラヴェル《ラ・ヴァルス》、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番(独奏:アンドレイ・イオニーツァ)と、“三者三様”の立体的な構成。
6月(第671回)は音楽監督・佐渡裕のマーラー交響曲第3番。切望した藤村実穂子(メゾ・ソプラノ)を独唱に迎え「気合が入る」と語る佐渡。期待が高まる、このシーズン唯一の声楽入り公演だ。
夏を挟んで9月(第672回)。佐渡が「刺激的でチャレンジングな曲」と評するブルックナーの交響曲第5番で大伽藍を築く。「何が得意なオーケストラなのかを示していきたい」と、“なんでも得意なオーケストラ”を超えたより深い音楽作りを追求していく佐渡が、レパートリーの中心にがっちりと据えたのが“ウィーン・ライン”。特にマーラーとブルックナーは継続的に取り上げていく予定だという。
10月(第673回)は、ピアニストとして名高いオリ・ムストネンが指揮・作曲の才も示す“三刀流”。ベートーヴェン《皇帝》を弾き振り。さらに作曲家としての個性が息づく自作曲《トリプティーク》も聴ける貴重な機会。
2027年1月(第674回)は佐渡のR.シュトラウス《英雄の生涯》。一方、サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番の独奏アレクサンドラ・コヌノヴァにも注目。1988年モルドバ共和国生まれ。今年2月にボローニャ市立劇場で同曲を共演した佐渡が、感激のあまり再共演をオファーした逸材。
シーズンを締めくくる2月定期(第675回)。世界屈指の人気と実力を誇る天才女性リコーダー奏者ドロテー・オーバーリンガーが登場。テレマンの協奏曲とバッハの管弦楽組曲第3番を吹き振りし、ベートーヴェンの交響曲第2番を指揮。バロックから古典へ。かつてリコーダーの巨匠ブリュッヘンも指揮した新日本フィルの柔軟なアンサンブルを際立たせる。

もう一方の定期シリーズである〈すみだクラシックへの扉〉は、金曜日と土曜日の午後の2公演からなる、人気の名曲を中心とする親しみやすいコンサート。現シーズンから引き続き、国や地域別のテーマで全8演目のプログラムが組まれている。
4月公演「オーストリア」を指揮するアルマ・ドイチャーは2005年生まれ。作曲家、ヴァイオリニスト、ピアニストとして幼い頃から神童として注目されてきた。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番では2008年生まれの日本のヴァイオリニスト中原梨衣紗とフレッシュな競演。
5月「北欧」には角野隼斗の妹の角野未来が登場、グリーグのピアノ協奏曲を弾く。
6月「ドイツ」は音楽監督の佐渡が指揮する重厚なブラームス・プロ。ヴァイオリン協奏曲の独奏に三浦文彰を迎える。
7月は「日本」。人気ヴァイオリニストの木嶋真優が“ゴジラ”のテーマも登場する伊福部昭の《協奏風狂詩曲》を。
9月「フランス」はオール・ラヴェル・プロ。今年のエリザベート王妃国際コンクール第2位入賞で注目の集まる久末航が《左手のためのピアノ協奏曲》で登場。
10月「ドイツ」は上岡敏之指揮の、《言葉のない「指環」》(マゼール編曲によるワーグナー《ニーベルングの指環》管弦楽曲集)。
11月「東欧」では、人気ピアニストの石井琢磨がリストの協奏曲を聴かせる。コロナ禍で活動が制限された時期にYouTubeから大ブレイク。もちろん実力は折り紙つき。
1月「ロシア」では先述のヴァイオリニスト、コヌノヴァが再び佐渡と共演。ハチャトリアンの協奏曲を弾く。
いずれも「名曲の名演奏」が期待される、クラシック音楽の理想的なプログラム。クラシック初心者にはもちろん、筋金入りの達人にも、新たな「扉」を開いてくれるに違いない。

「墨田区というまちと、ホールとオーケストラの3つがひとつになれば大きな意味を持つ」
会見で佐渡は、自らが掲げる楽団のあり方についても語った。
「新日本フィルの仕事を引き受けた時、まず最初に墨田に部屋を借りた。ここに住んで、町のことを知らなければいけないと。関東大震災があり、大空襲があったまち。祈ること、そして未来を考えるということが、テーマとして僕の中にいつもある。オーケストラが、町にとっての宝物になるように、まちの人たちの心がいっそう豊かになるものであるように」
「すみだ音楽大使」も務める佐渡。区内には、彼の等身大パネルが200体ほど置かれているそうで、文字どおり地域の「顔」になっている。楽団員による地域の学校での活発なアウトリーチ活動も含めて、地域との連携への取り組みは在京オーケストラの中でも際立っていると言える。そんな取り組みが功を奏しているのだろう、佐渡の音楽監督就任以来、集客数が増加しているという。苦戦を強いられているクラシック音楽界にあって、貴重なうれしい話だ。
なお、新シーズン・ラインナップの発表は、作曲家・加藤昌則が司会を務めてトーク・セッションの形で行われた。型通りの発表会見ではない楽しいイベントの模様は近日中に動画配信される予定なので要チェック。
取材・文:宮本明

新日本フィルハーモニー交響楽団
チケット情報
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=11011051
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