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アメリカと日本、二拠点生活で磨く感性──岩橋玄樹『焦らない生き方』

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岩橋玄樹 (撮影/梁瀬玉実)

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2021年12月1日にシングル『My Lonely X’mas』でソロデビューを飾り、現在はアメリカと日本の二拠点で活動している岩橋玄樹。現在28歳でありながら、カメラの前に立つと年齢を感じさせない美しさを放つ。10代の頃と変わらず、芯の強さを持ちながらもどこか永遠の少年のような自由さを持っているところが魅力だ。 この秋、映画デビュー作となった「男神」では、建設会社で働くガテン系の役どころで登場。久しぶりのお芝居の現場で奮闘したエピソードや二拠点生活においてのモットーなど、飾らない言葉で教えてくれた。

台本を読んで、『むずっ!!』って思いました(笑)

物語は、日本の伝統美に潜む狂気と、家族の恐怖を描く禁断のファンタジーホラー。ある日、新興住宅地の建設現場に正体不明の深い穴が発生することから始まる。主人公の和田の息子も姿を消したことから、その穴の謎に迫っていくストーリー。岩橋は台本を1度読んだだけではこの世界観を理解できなかったという。

「台本を読んで、『むずっ!!』って思いました(笑)。ナレーションにしたら雰囲気で分かるかなと思って、何回も台本を声に出して読み直しましたね。クランクインしてからは、監督と話したり、何度も打ち合わせを重ねたりして、作品の雰囲気を掴んで。イメージ画像や資料もいただいて、理解を深めていきました。監督はとにかくこだわりが強い方で。昔からその地域で、根の国で男の子を生贄に差し出す儀式をしてきたことから“男神”と呼ばれてきた神様がいて、その神様は目に見えないもの。見えないものを撮るところがすごく難しい作品なんですが、スモークの演出だったり、カメラワークなどで、ファンタジーで不思議な感じを映像に残していました。監督は、セリフやお芝居より、カメラワークやアングルを丁寧に指示されている印象でしたね」

岩橋が演じたのは、主人公の和田(遠藤雄弥)が働く建設会社の社長の息子・山下裕斗。2年間ほどNYに留学していたという設定は、岩橋にぴったりな印象。しかし、粗野で勇ましい役どころは、本人とのギャップもあって新鮮に映る。

「細かいところまで監督がキャラクター設定を作って下さって。留学していたから英語を話せるということで、アーサー教授と英語を話すシーンもあります。そこでは普段のネイティブな英語ではなく、日本人っぽい英語を意識しました。いきなり僕が出てきて、英語をしゃべっていると、留学していたという役設定が分からない視聴者の皆さんは混乱するので、わかりやすい英語を使いました。最初はもっと複雑な英語を話すシーンだったんですけど、全部カットして、その場の雰囲気で、アドリブで全部やったんですよね。色々なシーンがある中で、ああいうアクセントが1個あると、いい味になってくると思いましたし、いい経験になりました」

劇中では巨大な建機を操る職人役ということで、重機に乗って現場に駆け付けるような場面も。二の腕が覗く、ノースリーブのタンクトップの衣裳がガテン系の雰囲気が漂う役だ。

「僕は重機を運転するお芝居をしたんですが、そのシーンは監督がトランシーバーを持って走り回って、大変そうでした。重機に乗る機会ってあまりないので、小さい時は大きい車を動かすことに憧れてたなとか、トラックから見える景色はこんな感じなんだって思いましたね。トラックに乗るシーンでは、大声で指示を出すような台詞もあるんですよ。そのシーンで何回か声を張って喋ったら、めちゃくちゃ声が枯れました(笑)。僕は、普段裕斗のようにガツガツは喋らないので、いつもよりかなり大きな声を出すように意識しましたね。喋り方は役と違うけど、性格は意外と僕もガツガツしてる方かなと思います。自分が好きなことに対してはガツガツ行く性格。ただ普段はそんなに喋らず、静かに黙っているタイプです(笑)」

人を助けたい、力になりたいっていう気持ちを持っているところは共感できました

山下は、困った人がいたら、我さきにと駆け付ける性格。その辺りは、岩橋が役を演じていてとても共感できるポイントだったという。 「人を助けたい、力になりたいっていう気持ちを持っているところは共感できました。僕もそう思うので。そういう場面があったら、誰かの役に立ちたいし、勇気のある行動をしたいなと思います」

今回の現場は、愛知県や岐阜県でのロケが中心。愛知牧場では穴を掘るような撮影も。撮影現場でのエピソードを尋ねると、ちょっぴり人見知りでシャイな一面が明るみに。

「撮影前の待機部屋が一軒家だったんですが、皆さんお喋りで盛り上がってるんですけど、僕は最初はちょっと輪に入りきれなくて。喋りかけるのって、すごく緊張しちゃうんですよね。でも、撮影中は僕も合間にお話ししたり、教授役のチャールズ・グラバーさんとは英語のシーンをどうするか話したりもしたんですが、皆さん、本当に優しかったです。遠藤さんと須田さんとは同じシーンが多かったので、自己紹介から始まって、『ご飯は何を食べました?』みたいな他愛もない話をしました。遠藤さんは僕のアメリカ生活の話も聞いて下さって、楽しかったです」

「穴」の先は、不思議な森に繋がっていて、そこでは巫女たちが「男神」を鎮めるために異様な儀式を行う場面もある。大きな岩が立ちはだかるその儀式は、神社ではなく、アニミズム信仰を感じられる金山巨石群が並ぶ場所で撮影。実際に縄文時代から崇拝されていたという場所で儀式のシーンに説得力を与えている。

「あの儀式のシーンは、日本ならではだなって思いました。巫女さんたちがたくさん踊るこの意味ってなんなんだろうって考えたり、神様に男の子を生贄する意味ってなんなんだろうとか、いろいろ考えることが多かったです。こういう世界が本当にあってもおかしくないのかなって思いました」

日本には不思議な伝統や都市伝説は存在するもの。この物語も古事記が書かれた飛鳥時代以前の大和朝廷で封印された荒ぶる神・男神がいたという伝説があることが軸になっている。実際に日本に法的な立ち入り禁止だけでなく、その土地の伝承や歴史的背景などから入るべきではないとされている禁足地は存在しそうだ。

「僕、都市伝説やホラー的なものが大好きで、YouTubeや動画はよくチェックするんですよ(笑)。そういう都市伝説系ユーチューバーの動画ってこの土地はこういう歴史があったんだとか知れますし、『あの地域に行くとちょっと体が重いかも』っていうのを感じる気がして、面白いですよね」

「最近ゾッとした話」は?

禁足地の穴を目の前にする撮影は、岩橋から見て一体どんな雰囲気だったのだろうか。

「牧場で撮影は行われたんですが、牧場の真ん中に大きな穴をあけて撮りました。穴を埋める景色は、土地のお祓いで使われるような白い紙(紙垂・しで)がズラッと立っていて、幻想的でした。スモークの白い煙が演出でバーッと炊かれていて、キレイでしたね。僕の目から見た風景は、重機のライトを灯さないと真っ暗だったんですけど。後半は、火の演出もあったんですが、僕はそのシーンのときは中空きだったので、馬と戯れていて、仲良くなっていましたね(笑)。ちなみにその儀式のシーンの前には本物のお祓いの儀式も行われていました」

ホラーファンタジーという本作にかけて、「最近ゾッとした話」というお題で質問を投げかけると、こんなエピソードが飛び出した。

「先日、リフレッシュするために山の方へ遊びに行ったんですよ。深夜、そこで友達と一緒にコンビニで買った花火をしようと思ったんですが、山の中って真っ暗で何も見えなくて、近くの川岸まで行ってやることにしたんです。ライトを照らして花火をしようと思ったら、ポチャンって聞こえて。パッと見たら、こんなでっかいカエルが飛び跳ねていて、ビックリ! 僕、世界一、カエルが苦手だから大声で叫んじゃいました。マジで全身の毛穴が開きましたからね、鳥肌がヤバかったし、マジで怖かった~!! 本当にゾッとした話でした(笑)」

2021年12月1日にソロデビューを飾った岩橋。現在は、アメリカと日本の二拠点で活動している。音楽制作においては、海外で取り組むことが多いという。

「一カ月アメリカにいて、日本に一カ月帰ってきて……というように不規則ですね。本当に仕事次第で、アメリカでミーティングやレコーディングなどを2、3週間で一気にしちゃって、日本でライブをするという時もあります。アメリカと日本のスピード感って結構違っていて。アメリカでは物事が進むのが本当に遅いんで、ゆっくりといろんなことをやっています。いろいろ制作しているけど、まだ世に出てないことがいっぱいありすぎて、いつこれらは発表できるんだろうって思ってます(笑)」

役者としてもいろんな作品に出たい

TOKYO MX 日曜ドラマ『恋愛ルビの正しいふりかた』では、元陰キャでトップスタイリストという二面性をある不器用な役どころを演じたばかり。この秋は『男神』で映画初出演とお芝居の活動も続く。

「これまで俳優としていくつかの作品に出演させていただきましたが、今作ではさらに俳優として深く学び、成長することができた現場でした。改めて、何事も初心を忘れず、真剣に作品に向き合うことの大切さを感じることができました。撮影の期間は短かったものの、とても内容の濃い作品に携わることができたと思います。普段は音楽活動をメインでやっていますが、役者としてもっといろんな作品に出たいなっていう夢はありますね。昔から歌やダンス、お芝居など、いろんなことに挑戦してきましたし、今後ももっといろんなジャンルのお仕事にチャレンジしていけたらいいなと思ってます」

海外生活経験も長い岩橋は、アメリカのあらゆるトレンド事情も詳しいはずと思い、「今ハマっていることは?」という質問をぶつけると、「焼き鳥が好きです!」と意外な答えが返ってきた。

「焼き鳥は、アメリカでは食べられないんで。日本に帰ってきた時は、絶対に炭火焼きの焼き鳥を食べます。もうずっと食べちゃう(笑)。焼き鳥以外だと、どこにいても食べるものって、あまり変わらないですよ。ステーキばかり食べちゃう。食べたいものを食べるために毎日ジムに通って走っています。やっぱり好きなだけ食べるなら、運動はマストっていう精神で頑張っています。どんなに疲れていても、走ることだけは欠かさないです。毎日5キロぐらい走っていて、今日も朝から5キロ走ってきました!」

アメリカにいると焦るだけ無駄だなって思うようになりました

現在28歳でありながら、年齢を感じさせない美しさを放つ岩橋。10代の頃と変わらず、芯の強さを持ちながらもどこか永遠の少年のような自由さを持っているところが魅力だ。最近はどんなことを大切に日々の生活をしているのか、モットーが気になるところ。

「焦らないこと。焦ったら、全部失敗すると思います。いろんなことで焦っちゃって心配になっちゃう性格だからこそ、『焦らない、焦らない!』って思うようにしています。気持ちを落ち着けるために、昔から行き慣れてる場所に足を運んだりして、まずは精神を落ち着かせるっていうことは大事にしていますね」

その焦らないという精神は、マイペースで大らかなアメリカの人たちと一緒に活動しているとより意識していると話す。

「アメリカにいると、焦るだけ無駄だなって思うようになってきて。日本人って本当にせかせかしがち。アメリカ人は逆に何事も遅いんです(笑)。その両方で、生きてるからこその考え方かもしれないです。基本的にアメリカ人はレスポンスがゆっくりで、自分の時間を大切にしている方が多いですね。土日は絶対に連絡来ないとか、祝日は絶対に家族や自分のことを優先するんですよ。家族や自分の時間を大切にすることは素敵だなって思いますね。日本とアメリカ、両方のいいところを中間で模索しつつ、生きていきたいです」

撮影/梁瀬玉実、取材・文/福田恵子

<作品情報>
『男神』

2025年9月19日(金)全国ロードショー

【STORY】
全国各地で母と子の失踪事件が相次ぐなか、ある日、新興住宅地の建設現場に正体不明の深い「穴」が発生する。時を同じくして、そこで働く和田の息子も忽然と姿を消してしまう。その「穴」の先は不思議な森に繋がり、そこでは巫女たちが「男神」を鎮めるため異様な儀式を行っていた。息子がそこに迷い込んだ事を知った和田は、その穴に入っていくが……。
「決して入ってはいけない」と語り継がれる穴に、禁忌を破り息子を助けにいったことにより起きる得体のしれない恐怖と狂気、家族の悲劇を描くファンタジーホラー。

【CAST・STAFF】
遠藤雄弥 彩凪翔 岩橋玄樹 須田亜香里 カトウシンスケ
沢田亜矢子 加藤雅也(特別出演) 山本修夢 塚尾桜雅 アナスタシア すずき敬子 大手忍
チャールズ・グラバー 藤野詩音 齋藤守 清水由紀(友情出演) 永倉大輔(友情出演)

監督・脚本:井上雅貴
原案:「男神」(八木商店)
ロケ地:愛知県日進市、岐阜県下呂市
協力:高山市、飛騨・高山観光コンベンション協会
支援:日進市企業ふるさと納税 下呂市ふるさと文化振興助成金
協賛:マテラ化粧品 ワンダーランド そうび社 龍の瞳 イオス コーポレーション
題字:小林芙蓉
2025年/日本/93分/カラー/シネスコ/5.1ch
配給:平成プロジェクト/配給協力:東京テアトル

公式サイト:
https://otokogami-movie.com/

(C)2025「男神」製作委員会

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