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板垣李光人が見つめた“人との距離”「他者と向き合うことで自分を知ることができる」

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板垣李光人 (撮影/梁瀬玉実)

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映画『八犬伝』『はたらく細胞』『陰陽師0』で第48回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、その演技力にも定評がある板垣李光人。この秋公開の『ミーツ・ザ・ワールド』では、歌舞伎町のNo.1ホストという役どころで金髪ヘアに軽快なトークを繰り広げ、新境地を開拓。誰からも愛されたい役の寂しさに寄り添いながら、今作に登場する生きづらさを抱える主人公たちの心情を汲み取ったお芝居を体現していた。自分とは価値観が違うキャラクターを演じたことで、自分自身にいろいろ気づきがあったようで――。

アサヒを演じるのに一番大事にしたのは「寂しさを持っているところ」

金原ひとみの小説を映像化した『ミーツ・ザ・ワールド』は、歌舞伎町を舞台に新たな出会いが導く世界を描いた物語。平日は銀行員として働いているが、擬人化焼肉漫画「ミート・イズ・マイン」を全力で推す腐女子の由嘉里(杉咲花)が考え方も、生き方も、何もかも違うキャバ嬢のライ(南琴奈)と出会ったことから変わっていく。板垣李光人が演じるのは、ライの知り合いのNo1.ホスト・アサヒ。妻の財力でNo.1にしてもらっているホストという今までにない役どころに挑んでいる。

「僕は映画やドラマとか、作品でしかホストの世界を見たことがなくて。どういう職業なのか全く知らなかったので、リアルにどういう場所で、どういう方たちが働いていて、どういうルーティーンで生活をしてるのか知るところから役作りを始めました。実際にホストクラブへ行って、10人ぐらいの方からお話を伺ったら、皆さんそれぞれキャラクターも違えば生活のルーティーンも違っていて、本当にいろんな方がいましたね。でも、この人のこういう部分はアサヒに活かせそうというヒントをもらうことができました」

アサヒは、既婚者であるが、不特定多数から愛されたいという願望を持つ。普段は明るくノリ良くふるまっているが、内側には寂しさを抱えている人間だ。

「演じるうえで一番大事にしていたのは、寂しさを持っているところ。原作小説が出版された当初ぐらいの金原さんのインタビューでアサヒというキャラクターは、実際に金原さんが歌舞伎町の街を歩いてた時に出会ったホストの方がモデルとお話されていたんです。そのホストの方は、寂しそうに見えたらしくて。そこからアサヒという人間を作ったんですって。なので、寂しさをベースにして、ホストとして、いろんな人間に見せる顔の奥に何があるのかっていうところを大事に演じました」

名刺を渡すときにウインクしたり、しゃべり方がチャラかったり、オーバーリアクションなしぐさも普段の板垣とはまるで違うキャラクターで新鮮に映る。

「テンション感だったり、喋り方やしぐさは、実際にお会いしたホストの方からヒントをもらいました。これは、映っているかどうか分からないですが、ホストクラブでは、お客さんに出すおしぼりを三角に畳むことがあったり、ご飯を食べ行って、グラスに水滴がついていたら、普段からお客さんのグラスの水滴をふき取っているから、癖になっていて、つい拭いてしまうとか(笑)。おしぼりを畳んでしまうっていう癖みたいなものを由嘉里と焼肉屋さんにいるシーンでやってみました」

ビジュアルも作り込んだホスト役

アサヒを見て、まず目を引くのは、金髪ヘア。そして、大振りのピアスやネックレス、ネイルを塗った爪に光沢のあるスーツなど、ホストっぽいビジュアルも作り込んでいる。それらは板垣のアイディアもいくつかあるのだとか。

「髪型に関しては、原作にあわせて金髪にしました。衣裳やアクセサリーは、衣裳さんと打ち合わせをしながら、カラコンをしたいなど、僕もいろいろアイディアを出させてもらいました。由嘉里と初めて出会うシーンは、夜の歌舞伎町でホストクラブに向かうところなんです。その仕事に行くシーン以外は、家からちゃんと靴下を履いて、靴紐を結んで外に出かけてる生活が想像できなかったので、衣装さんに『サンダルを用意していただけますか』と提案して、サンダルを履いています。あと、メイクは自分でしているのがこだわりです」

ホストを実際に職業としている人たちと触れ合って、自分自身の価値観とは大きな違いがあったり役に近づくのに難しかった点はあるのだろうか。

「そこに関してはいつもそうなんですが、常にフィフティー、フィフティーでやってる感覚というか。自分半分、アサヒ半分という感じです。というのも、共感できるとか、できないとかっていうこと以前に、そもそも自分が演じる上で自分の中にないものってどうやったって出てこないので、演じる以上は自分が共感できてるものになると思うんですよね。その役の人間のどこかしらと自分の中にあるものを繋げてかないと、役として生きることはできないと思っています」

由嘉里は大好きな漫画「ミート・イズ・マイン」の推しカプに全力で愛を注いでおり、好きなことを話す時は早口になってしまう。彼女が捲くし立てるように饒舌に話すシーンでは、杉咲花のリアルな演技が光る。

「杉咲さんにはたくさん助けていただきました。原作や台本を読んでいて、さらっと読み流してた部分や違和感がなかった部分も杉咲さんの由嘉里を本読みで初めて受けた時にいろいろ感じるものがありましたね。杉咲さんの言葉の力だったり、人としての力やエネルギーを受け止めて、アサヒとしての向き合い方はもちろん、役への新しい気付きがありました。由嘉里を違う方が演じてたら絶対このアサヒにはなってなかったなと思いますし、杉咲さんが演じる由嘉里と一緒にいるアサヒが好きです」

役を演じる中で気づいたこと

由嘉里は、まるで価値観が違うライとの共同生活をする中で、違いを受け入れることで、嫌いだった自分を受け入れられるようになっていく。タイプの違う二人がかけがえのない存在になっていく凸凹コンビぶりが面白いところだ。そして、由嘉里にとってアサヒの存在もライと同じで、変わるきっかけをくれる相手だ。

「アサヒと由嘉里の関係性は、不思議ですよね。アサヒからしたら、由嘉里みたいな人って、今まで彼が生きていたフィールドではなかなか出会うことのなかった人だと思うんです。二人が一緒に行動するのは、何でだろうっていう風に考えてみたのですが、杉咲さんのエネルギーが乗った由嘉里と会った時に、『この人についてったら、なんか分かんないけど新しいものが見えるんじゃないか、変われるんじゃないか』みたいな感覚が漠然と生まれました。多分、アサヒも深いこと考えずになんとなく一緒に行動を共にしているけれど、そんな感覚があったんじゃないかなと思いますね」

役者としてはテレビや映画など、話題作への出演が相次ぐ板垣。ここ2、3年で数多くの作品に挑む中で、役と自分のバランスをフィフティ、フィフティで演じながら、自分自身において気づきがあったと語る。

「やっぱりこうしてインタビューをしていただいている時が1番自分自身の発見があります。演じている時は、意識はしてなかったけど、話している最中にそういえばあの時はこういう感じでやっていたなとか、思い出したりすることもあります。質問されたことに対して、1回自分と向き合って、答えを出して返答するという時間は、自分自身で気づくことがいろいろあるんです。この作品で言うと、自分の形を歪めてまで自分を変える必要はないと気づきました。例えば、成長したいという思いがあっても、それで自分本来の形が歪んでしまったら元も子もない。今の自分の居場所や現在地を受容するということ、その器を持てるということだけでも人としては大きな1歩というか、成長になるなというのは、アサヒという人間を通して気づいたことだと思います」

愛されたい願望は? できるなら好かれたいです(笑)

皆から愛されたい人間を演じた板垣自身の愛されたい願望はあるのかどうか気になるところ。

「もちろん自分が好きな人がいれば苦手な人もいると思います。自分自身も誰かにとっての好きな人であって、苦手な人であるのは仕方がないことですよね。でも、できれば、敵もいなくて、万人に好かれるに越したことはないと感じることはあります。そういう思いって多分、誰にでもあると思います。例えば会社とか、学校とか、身の回りのコミュニティの中でも、みんなから人気な方がいいよねという。できれば、人から好かれたくないですか?(笑)」

そうこちらに質問してから、「万人から好かれるのは無理だとわかっているから、別にいいかなと思って(笑)。無理するとヘルシーじゃないですしね」と笑う。今作のヒロインのように自分のことをあまり好きじゃないという若い世代も増えているという。SNSを通して、人と自分を比べがちで自己肯定感が低い人や生きづらさを抱える人たちにアドバイスするなら――?

「名前も年齢も知らないような人と、自分を比べてしまう時代じゃないですか。同じ学校でとか、同じ職場とか、会ったことがある人ではなく、不特定多数と自分を比べてしまう時代なんだと感じます。SNSって国も関係なく繋がれるツールだから、広いようで、でも、すごく閉鎖的な空間だと思うんですよね。だからこそ、画面の中での付き合いではなく、他者と関わる時間も大切なのかな。さっき、インタビューが自分の気づきの時間と話しましたが、やっぱり他者と向き合う時間って、圧倒的に自分のことを知ることができる時間だと思います。『ミーツ・ザ・ワールド』でも描かれていますが、いろんな世界を見て、目の前にいる人たちと関わってみて、話してみることって、改めて大事だと思いますね。そこから自分が好きになれるきっかけもあるかもしれない」

身も心もヘルシーでいるために自分自身の機嫌の取り方が重要になってくるだろう。

「自分のモチベーションを上げるために重要なのは、服かなと思います。服を買うことでテンションが上がります。最近も秋ものを買ったんですが、暑い日が続くので秋服に袖を通すことなく、そのまま冬物に衣替えしそうな感じですよね。ファッションの幅がだんだん狭まった気候になっていくのは寂しいです(笑)」

自分を変えてくれた出会いについて

今作では、人との出会いによって、変わっていくヒロインの姿が描かれるが、板垣にとって、自分を変えてくれた出会いとはどんなものなのだろうか。

「僕にとっては、中学時代に出会ったものの影響が根強くあるなと思っています。音楽もそうですし、美術もそうですね。そこから好きなものって変わってない感じがするんですよね。中学の時は仕事に行っているほうが楽しかったのですが、国語の先生で、面白い先生がいたんですよね。僕は当時、美術部でその先生が美術部の顧問もやっていて。ちょっと変わった先生だったんです(笑)。アニメの『モノノ怪』のDVDを全巻セット貸してもらって、観てみたら、とても刺さって。斬新なアニメで色彩も世界観も、結構全部が衝撃的だったんです。当時好きになったものって今も好きなものばかり。絵を描くこともそうですし、今の自分に繋がっていると思います」

物語の登場人物たちだけでなく、板垣にとって未知の世界を知って自分を知ることができた今作へのチャレンジもまた新たな自分との出会いだった。

「作品での出会いは、毎回チャレンジングではありますが、どの作品も同じものはひとつもなくて。キャラクター像も違いますし、同じものに取り組むことがないのが面白いところです。今回で言うと、やっぱりホストという未知の職業と、自分があまり足を踏み入れたことのない歌舞伎町という場所が舞台で、それだけで挑戦でした。自分を許容して生きていくアサヒと寄り添いながら時間を過ごせて良かったです」

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<作品情報>
『ミーツ・ザ・ワールド』

10月24日(金)より全国公開 https://mtwmovie.com/

出演:杉咲花、南琴奈、板垣李光人、蒼井優、渋川清彦
監督:松居大悟 原作:金原ひとみ『ミーツ・ザ・ワールド』(集英社文庫 刊)
配給:クロックワークス ©金原ひとみ/集英社・映画「ミーツ・ザ・ワールド」製作委員会
公式サイト:mtwmovie.com
公式X:@mtwmovie


撮影/梁瀬玉実、取材・文/福田恵子
ヘアメイク/KATO(TRON)
スタイリスト/稲垣友斗(CEKAI)

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