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舘ひろしの最高傑作!『港のひかり』──いまをときめく藤井道人監督と、レジェンド木村大作撮影監督がタッグ【おとなの映画ガイド】

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『港のひかり』 (C)2025「港のひかり」製作委員会

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すごい顔合わせで作られた映画『港のひかり』が、いよいよ11月14日(金)に全国公開される。いま一番ノッている藤井道人監督が、能登の港町で撮影した情感たっぷりの名匠木村大作による映像とともに紡ぐ、元ヤクザの漁師と視力を失った少年のヒューマンドラマ。主演は舘ひろし、畢生の名演です。

『港のひかり』

この映画、チャールズ・チャップリンの名作『街の灯』を下書きに発想されたという。日本海に面した小さな港町で、漁師をしながらひっそりと生きる元ヤクザの三浦(舘ひろし)と、交通事故で両親と自分の視力を失い、非情な叔母に預けられた少年・幸太(尾上眞秀)。孤独な身の上のふたりが、ふとしたことで知り合い、心を交わし合う。「海を見たい」とつぶやいた幸太をみて、三浦はその夢を叶えたい、と思う……。

藤井道人監督のオリジナル脚本。舘は、2021年の『ヤクザと家族 The Family』(主演・綾野剛)でヤクザの組長を演じた。そのとき、監督と「必ずもう一度」と約束、約3年企画をあたため、この役を作り上げた。ストイックに生きる主人公は、高倉健さんの晩年を彷彿とさせる役どころ。

その高倉健主演の『駅 STATION』『鉄道員(ぽっぽや)』をはじめ、多くの名作を手掛けてきた日本映画のレジェンド、木村大作が撮影を担った。これは映画ファンでも想像できなかった、驚きの“座組み”だ。

木村は「能登半島・富山の素晴らしい場所にこだわって撮影を行った。そこに立つ舘ひろしは、誰かのために生きる男を情感たっぷりに演じ、自分がこの人を一番表現できる位置にキャメラを据えた」と語っている。その揺るぎない姿勢が、映画全体を貫く。

デジタルでなく、昔ながらの35ミリフィルムを使用。能登半島地震直前の2023年末に撮影された映像には、港の朝焼けに始まり、荒れた海も、厳しい雪も、木村といえばおなじみのカモメの乱舞も、あますところなく収められた。

木村より50歳近く年下の藤井監督にとっては、まさに挑戦だったようで、「“映画っつうのはこうだ”と改めて、大学で映画を学んでいた頃を思い出すような瞬間もあり、すべてが新鮮だった」と撮影を振り返っている。

冒頭の5分で主人公たちが置かれた状況をきっちり描き、1時間近くで漁師と少年の最初のドラマが思わぬ結末を迎え、そこから12年後の第2の物語が始まる。いくつもの伏線が見事に回収されていき、胸を打つラスト……。オーソドックスでありながら、緩急を心得た展開。誰かのために生きる──そんな自己犠牲というテーマを、一途な老元ヤクザに投影した。

少年時代の幸太役は歌舞伎俳優・尾上眞秀。七代目尾上菊五郎の孫、寺島しのぶの長男で、本作が映画デビューだが、視力を失い絶望的な環境でけなげに生きる少年を好演している。大人になった幸太は眞栄⽥郷敦が演じている。

脇を固める役者もかなりの顔ぶれ。三浦と幸太を見守る民宿の主人に笹野高史。ヤクザ時代に世話になった昔気質の組長は宇崎竜童。跡を継いだもののドライで金儲けに走る現代ヤクザの組長に椎名桔平。その手下は、斎藤工、ピエール瀧。マル暴の元刑事に市村正親。幸太の叔母はMEGUMI、恋人役は黒島結菜、同僚役に『サンクチュアリ-聖域-』で話題の一ノ瀬ワタル。それぞれの人生が1本の映画になるような設定に、名優、個性派たちが応えた形。

そして、主演の舘ひろし。相手のセリフを静かに聞く受けの演技、一方で、ほんのひとことで相手を睥睨する貫禄もちらりとみせる。今年で75歳。『あぶない刑事』タカ役の軽快でカッコいいアクションスターとしても健在だけれど、本作の、陰りのある人間像もびっくりするくらい様になる。彼の最高傑作ができたんじゃないか、そんなふうに思わせる名演です。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

(C)2025「港のひかり」製作委員会

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