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なんて切ないラブストーリー…堺雅人と井川遥の『平場の月』、中学時代の初恋相手とめぐり逢って──【おとなの映画ガイド】

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『平場の月』 (C)2025 映画「平場の月」製作委員会

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『花束みたいな恋をした』の土井裕泰監督が、朝倉かすみの山本周五郎賞受賞小説を映画化した『平場の月』が、いよいよ11月14日(金)に全国公開される。主演は堺雅人。彼が35年ぶりに地元で再会する、中学時代に想いを寄せていた女性を井川遥が演じる。瑞々しい初恋時代と、大人になったからこその恋愛を描いた、心の琴線にそっと触れてくるラブストーリーだ。

『平場の月』

タイトルの“平場”は、原作作家の朝倉かすみさんがお笑い好きで、「芸人がネタ以外のトークやアドリブをする場を平場という」のだと知り、そこからとったそうだ。実はこの言葉、さまざまな業界で使われていて、競馬などでは、特別ではないレースを指し、百貨店では、ブランドの垣根を越えて陳列する売り場のことらしい。つまり、“ごく一般の人がいる場”といった意味で使われている。

主人公、青砥健将(堺雅人)は、離婚して地元、埼玉県朝霞に戻り、印刷工場で働く50歳。検査を受けに行った病院の売店で、中学時代に恋心を寄せていた同級生の須藤葉子(井川遥)とばったり出会ってしまうところから物語は始まる。彼女も夫に先立たれ、地元に帰ってきていて、いまは独り身。

35年ぶりに再会したふたりだけれど、「あれ? もしかして須藤?」…「え?青砥?」みたいに、名前でもなく、サン付けでもなく、“名字の呼び捨て”で話す。そんなことが、中学生だったあの頃の時間を一瞬でよみがえらせる。

原作は、たとえば埼玉県に住む人が拠点にしている池袋でいえば、西武とかホテルメトロポリタンといった固有名詞がばんばん出てきて、“あるある感”と会話のリアルさが魅力だが、映画もそれは同じ。『花束みたいな恋をした』や『片思い世界』で観客を魅了してきた土井裕泰監督ならではの、本音の、刺さる言葉で溢れている。

ふたりは、再会後、懐かしさのあまりLINEともだちになり、“互助会”と称して、ときどき近所の居酒屋で飲むようになるのだが、そんな時に思い出話として出てくる中学時代の断片的な出来事を、映画は、原作よりもっと掘り下げてしっかり描いている。演じているのは、若手の注目株、16歳の坂元愛登と15歳の一色香澄。

監督は「まだ見ぬ先の人生についてギリギリ夢を見ていられる15歳と、人生で一通りのことを経験してきたその果てにいる50歳の対比が、痛切に響いてきたんです。中学時代を掘り下げることで、単に中年の男女の恋愛劇ではない、50年の人生を経て、その先を生きていく人たちに向けた話になったんじゃないかと思います」と語る。脚本を担当したのは『ある男』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した向井康介。

『半沢直樹』や『真田丸』『VIVANT』とドラマチックな役どころが多かった堺雅人は、8年ぶりの映画主演にして、“ふつう”の人役。しかも、ラブストーリー。強烈な背景をもつ人物像の時には、あの特徴的な“ニヤケ顔”が、かえって凄みに転じていたが、本作では、これが意外に、別な魅力となって活きている。堺は今年52歳。中学の同級生を演じる大森南朋や宇野祥平、吉岡睦雄、安藤玉恵、椿鬼奴……そして須藤役の井川遙も、みな、実年齢がほぼ同じ。

須藤は、恵まれない境遇で育ち、人に頼らず生きていくんだという覚悟を子どもの頃から持っているキャラクター。気丈にふるまう中学時代も印象的だが、50歳になり、あれほど香り立つ魅力を持ちながらも、何も望まず、慎ましくひとりで生きていくと覚悟して地元に帰ってきている姿が、なんとも切なく映る。演じる井川遥は言う、「でもやっぱり愛に枯渇していて、埋められない寂しさが波瀾万丈な人生を送ることになったのではないかと思います……」。

同級生以外では、ちょっぴり謎めいた須藤の元恋人役で成田凌、ストーリー展開で重要な役割をもつ妹役の中村ゆり、青砥の元妻役に吉瀬美智子、職場の先輩役ででんでんも顔をだす。

なかでも、ふたりがよく行く居酒屋の主人役・塩見三省がしみじみとしたいい味をだしている。ほとんどセリフはないのだが、そういえば、あの親父、切ない恋の行方を静かに見守ってくれる、平場の月、みたいな存在。

主題歌は星野源が、脚本を読んだ後にピアノをぽろぽろと鳴らしながら作曲していったという『いきどまり』。映画のなかで、薬師丸ひろ子の『メイン・テーマ』も効果的に使われている。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

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笠井信輔さん(フリーアナウンサー)
「うー! これは、ヤバい。大人たち、中年以上の男女が完全にはまってしまうヤツだ……」

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