クリスマス気分を先取り バッハ・コレギウム・ジャパン『クリスマス・オラトリオ』
クラシック
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年末が近づいてくるとなぜか聴きたくなるのが、ベートーヴェンの交響曲第9番『合唱付き』だ。この大定番に対抗するのが、ヘンデルのオラトリオ『メサイア』とチャイコフスキーのバレエ『くるみ割り人形』。そしてJ.S.バッハの『クリスマス・オラトリオ』というのが、年末のステージを飾る“4天皇”といった趣だ。
ベートーヴェンの『第九』以外はクリスマスに基づいた作品だけに、この季節に演奏されるのは至極当然。その意味においては『第九』の特異性が際立つわけなのだが、今回ご紹介したいのは、バッハがクリスマスのために書いた名曲『クリスマス・オラトリオ』だ。華やかなトランペットとティンパニが鳴り響く中、豪快な合唱で始まるこの作品はゴージャスの極み。バッハ作品はどうも難しくて敷居が高いとお思いの方にこそ是非体験していただきたい作品だ。しかも演奏するのが、世界最高のバッハ演奏団体のほまれ高い「バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)」となればこれは聴き逃せない。
作曲されたのは1734年。その年のクリスマスには、当時50歳のバッハが、ライプツィヒの聖トーマス教会聖歌隊を率いて、同地の聖ニコライ教会と聖トーマス教会の2つの教会をかけもちで往復しながらこの曲を演奏したというのだから素敵だ。何やら厳格でどっしりと構えたバッハのイメージが和らぐエピソードでもある。
全編に美しい音楽が散りばめられたこの作品の中でも特におすすめしたいのが、第2部冒頭で演奏される「シンフォニア」だ。作品の中で唯一器楽のみで演奏されるこの曲の美しさはまさに破格。これまたバッハのイメージが変わること請け合いだ。BCJの音楽監督、鈴木雅明氏によれば、この曲のキーワードは「愛」。ドイツ語では「リーベ(Liebe)」というこの言葉を、バッハは自筆スコアの中に1度だけ「リーベ(Liebe)」という文字の代わりにハートマークを書き入れてあるのだとか。つまりバッハこそは音楽史上初めて絵文字を使った人かもしれない。これはますますバッハのイメージが変わる逸話に違いない。
さてさて、クリスマスを約1ヶ月後に控えた11月23日(日)に、バッハの愛が満載の「クリスマス・オラトリオ」を是非体験されたし。愛に満ちた素敵な時間がここにある。
バッハ・コレギウム・ジャパン 第169回定期演奏会
11月23日(日)
東京オペラシティ コンサートホール

