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講談社がクロエ・ジャオとともにハリウッド拠点の制作会社を設立 文化&ストーリーをつなげる“庭”に

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Kodansha Studios 設立発表会見より

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講談社が、アカデミー賞受賞監督のクロエ・ジャオ、プロデューサーのニコラス・ゴンダとタッグを組み、ハリウッドを拠点とする新会社「Kodansha Studios」を設立。11月4日(火)には設立発表会見が行われ、野間省伸(講談社代表取締役社長)、ジャオ、ゴンダが登壇した。

本スタジオでは、ジャオが最高クリエイティブ責任者(Chief Creative Officer)として企画やクリエイティブを統括し、数多くの映画やTVドラマを手がけてきたゴンダがCOO、講談社専務取締役の森田浩章がCEOに就任。講談社は本スタジオを通じ、日本で出版された多種多様なマンガや小説の海外実写映像化およびグローバル展開において、より主体的な役割を担っていくという。なお、ハリウッドに制作会社を設立することは、講談社としては初の試みとなる。

会見冒頭、野間社長は「このたび講談社は、ロサンゼルスを拠点にKodansha Studiosという、ハリウッドを中心に映画を制作する会社を設立いたしました。そのパートナーとして、こちらにいらっしゃいますアカデミー賞受賞監督のクロエ・ジャオさんとニコラス・ゴンダさんらによる制作会社Book of Shadowsと提携しました。今後、さまざまな日本のIPをハリウッド映画などの形で広めていきたいと思っていますのでご期待ください」と挨拶。

最高クリエイティブ責任者に就任したジャオは、「本当にワクワクしていて、今日はとてもうれしい機会です。わたしは子どもの頃から深く日本の漫画やアニメを愛してきました。ですから本当にこのような機会をいただけて光栄です」と喜びを明かし、COOに就任したゴンダも「特に講談社さんのように、100年以上の長い伝統、そして素晴らしいクリエイティビティを育み、保ってきた会社とご一緒させていただけることを心から光栄に思っております」とコメントした。

Kodansha Studios 設立発表会見より

Kodansha Studios設立への思いを尋ねられた野間社長は、「わたくしども講談社は、長年にわたってさまざまな物語を創出してきました。近年は海外へのIP提供にも力を入れているところでございます。いま世界的に日本のエンタテインメント・コンテンツの人気があるという状況もありますし、日本としてもコンテンツの輸出を世界に広めていこうといった追い風もございます。そういった中で、わたくしどももハリウッドをはじめ、海外からの実写映画化のお話をいただいてはいたのですが、やはりさまざまな課題が多い、というのが実情でございます」と日本のIPをめぐる現状を説明した。

その上で今後については「これまでは日本のIP、原作の権利を海外の企業にお渡しして、そこから企画・制作・プロモーションなどをすべてお任せするような形でしたが、今回、我々が制作会社を設立することによって、そういったところに深く関与していって。日本のIPを、そして日本のクリエイターを世界に広めていく。またこういった海外の素晴らしいクリエイターの方々とコラボレーションをして、ある種、化学反応を起こして新しいコンテンツを作っていく。そういったことを目指したいと考えております」と構想を明かした。

野間社長とジャオが出会ったのは2年半ほど前で、漫画、アニメという共通項で両者はすぐに意気投合したという。野間社長は「もちろん彼女が、アカデミー賞で監督賞を受賞した著名な監督であることは存じ上げておりましたし、日本の漫画が大好きだということも存じ上げておりましたが、実際にお話をしてみますと、本当に漫画が大好きで。中国にいた子ども時代からずっと漫画を読んでいたこともあり、漫画に対する愛情、深い造詣を持っている人だなと感じました」とコメントした。

さらに、その場でジャオから「アニメもぜひつくりたい」という話が飛び出したといい、野間社長も「実写とアニメ、両方とも一緒に作ればいい」と提案。「彼女からは“それはimpossible(不可能)なこと”だと言われたのですが、講談社は英語で“Inspire Impossible Stories”というスローガンを掲げていることもあって、“We're here to make impossible stories”と言ったら、彼女が大層喜んでくれて。そこから仲良くなっていきました」と経緯を説明した。その後、ゴンダとも食事をしたり、ゲームをしたりと親しく付き合いをするに至り、「非常に良い信頼関係を築けているのではないかと思っております」と付け加えた。

Kodansha Studios 設立発表会見より

一方、Kodansha Studiosに望むものについて、ジャオは3つのポイントを掲げた。「まずひとつ目は東と西の懸け橋となること。異文化間の理解を促進するということ。わたし自身、子ども時代からそれを成し遂げたいという思いがありました。そして2つ目は、Kodansha Studiosに“庭”として機能してほしいということです。映画作家として、ストーリーテラーとして、わたしがいつも望むものは安心できる場所です。作家、作品、アイデアがそこから発展して、そして外からの変革や情勢に左右されることなく守られる場所として機能させてほしい。つまり日本の作家と海外のクリエイターたちが共に植物を強く育て上げ、そこから巣立つことを助けられるような役割を担うことを期待しています。最後に3つ目は、野間社長と知り合ったときに、彼の勇敢さに非常に魅せられたのです。不可能なことに果敢に挑んでいく。ですからわたしは彼に“Mr. Impossible”というあだ名をつけたのです。その精神をKodansha Studiosに取り入れて。果敢に取り組んでいきたいという思いがあります」と説明した。

隣に立つゴンダもジャオの意見に深くうなずき、「この発表が行われる2年以上も前から、わたしたちはいろいろなものを学び続け、そしてたくさんの声を聞き続けてきました。もしかしたら今までもさまざまな課題があったかもしれませんが、そのような課題を克服するために、いろいろなシステムやプロセスをきちんと築き上げていきたいと思っております。このスタジオを設立することによって、まさにこれまで講談社さんがこれまで何年もしてこられたように、どんどん良いものに挑戦してつくっていきたいと思っています」と意気込んだ。

クロエ・ジャオが日本の漫画から学んだこと

日本のコンテンツへの思いについて、ジャオは「日本のコンテンツは、まさにこのわたしの血と肉をつくったと言えます。漫画だけではありません。小説、アニメ、同人誌といったすべてに影響を受けました」とコメント。「わたしは孤独な子どもでした。ですから漫画の中のキャラクターが友だちだったのです。それはわたしだけではなく、世界の多くの人に共通する思いだと思います。たとえば漫画のシリーズ、作品がずっと続いていく中で、わたしもその漫画のキャラクターとともに成長していったのです。わたし自身、今はストーリーテラーとして仕事をしていますが、もともとは漫画家を目指していたのです。ただ絵を描くのがあまりうまくなかったということで断念しました」と自身の原点を明かした。

その上で、「漫画のキャラクターには明るさ、暗さだけではなくて、グレーのような幅広い表現があります。ですから漫画の中のキャラクターというのは単一的ではなく複雑です。それを日本文化が表すようになったのは、やはり西洋の文化を観察し、それを取り入れ、統合した上でアウトプットをしているからでしょう。そこには人間とは何かといった問いかけがあり、深いレベルで漫画に描かれていました。わたし自身がストーリーテラーとして探求をする何か。埋もれてしまっているものや怖いもの、見えないもの、神秘的なもの、神話的なもの、科学、そういったものをわたしが映画で描こうとしているのも、やはり漫画の世界にわたし自身が何年も生きてきたことが大きな理由になっています」と子どもの頃に漫画から学んだことについてコメントした。

Kodansha Studios 設立発表会見より

日本IPのハリウッド実写化に挑戦していくKodansha Studiosが今後ハリウッドにどのような影響を及ぼしていくのかという質問に対し、ジャオは「我々は今までさまざまな作品が映画化される上での困難というのを目の当たりにしてきました。そしてそれはわたし自身も経験してきたことですが、その大きな要因は東西文化における理解不足と言えるかと思います。知らないものへの恐れというものもあるでしょう。ただそれを超えて、両者は強く求め合っている。そもそも文明というのはその上に築かれてきたものですから、今回、Kodansha Studiosが“庭”となって、文化、そしてストーリーをつなげる。そうした調和を生み出す、impossibleなものを実現化するということは、今から考えただけで待ちきれないほどに楽しみです」と説明。

さらに、「きっとハリウッドも深く影響を受けるのではないかと感じています。ある意味ハリウッドはこれまで違う文化のIPを勝手に解釈して扱ってきたわけです。でもこれからは、作家なり、元々のアイデアに耳を傾け、コラボレーションをして、作家を尊重して、より作家性に近いものをつくるというのは、ハリウッドにとっても健全な形ではないかと感じるからです」とコメントした。

Kodansha Studios 設立発表会見より

その言葉を受けた野間社長は、「今、クロエが話していたとおり、ハリウッドの実写作品に関しては、クロエやニックたちがやっているBook of Shadowsの皆さんという非常に力強いパートナーを得られました。その中で我々としては、これまであまり知られていなかった日本の数多くのIPを、より多く世界に広めていくということをまず目指したいと思っています。また日本の漫画家、作家といったクリエイターと、海外の監督や俳優に限らず、さまざまなクリエイターが出会うこと、コラボレーションすることによって、新しいコンテンツ、新しい表現方法が生まれてくることを期待しています」と今後の展望についてコメントした。

講談社 公式サイト:
https://www.kodansha.co.jp/

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