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俳優デビュー10周年記念インタビュー:松本穂香編

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松本穂香

2015年にオープンし、今年で10周年を迎えた映画ナタリー。アニバーサリーイヤーを記念して、デビュー10周年を迎える俳優たちにデビューから現在までについてインタビューを行う連載をスタートする。

初回を飾るのは、2015年のデビュー以来、映画・ドラマ・舞台と幅広いフィールドで活躍を続ける松本穂香。大阪から上京した2015年当時の思いや、連続テレビ小説「ひよっこ」で“役が腑に落ちた”経験、主演ドラマ「この世界の片隅に」と「嘘解きレトリック」での心境の変化、有村架純ら事務所の先輩から受けた影響など、自身が選んだ“10大トピック”をもとに10年間の歩みをたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 脇菜々香 撮影 / 清水純一 スタイリング / 道端 亜未 ヘアメイク / 尾曲いずみ

松本穂香が選ぶ10年間の10大トピックと、上京当時のこと

──俳優デビュー10周年、おめでとうございます! 映画ナタリーの10周年企画にご参加いただけてとてもうれしいです。今回は事前にご自身で“10年間の10大トピック”を選んでいただきましたが、改めて振り返ってみていかがでしたか?

いろんな経験をさせていただいたなと思います。

松本穂香が選んだ10年間の10大トピック

──トピックの話をする前に、まずは高校卒業後の2015年に上京されたときのことについてお聞きしたいです。当時、どんな思いで地元・大阪を出ることを決意したのでしょうか?

高校を卒業して少し経ってから上京したのですが、若かったのもあって、あまり“決意”という感じではなく。怖いもの知らずみたいなところもあったのかなと。「このお仕事をしたいから東京に行くのは当たり前」という感覚でしたね。わりとナチュラルな感じでした。

──すごく意気込んで上京したわけではないとは意外でした。目標や“こういうふうになりたい”というイメージはあったのでしょうか。

何を考えていたのかな?(笑) 当時のマネージャーさんと「こうしていきたいね」みたいな話し合いをして、そのマネージャーさんに導いてもらっていたと思います。基本的に、昔から“これ”っていう目標がよくも悪くもあまりないタイプで、わからないことも多かったのですが、マネージャーさんが私に合いそうな監督を教えてくれたことや、目標リストを渡してくれたのを覚えています。

──当時出会った方で印象的な方はいらっしゃいましたか?

松永大司監督は、今でもワークショップを開くときに声を掛けていただいて、たまに見学をさせていただくこともあるので、当時の関係がいろんなところでつながるんだなと思っています。でもまだ(リストで)叶っていないこともありますし、宮藤官九郎さんが好きなので、いつかご一緒してみたい。

──2015年から映画や舞台には出演されていましたが、まだ知名度としては全国的に大きく広がる前だったと思います。この1~2年間はどういった日々を過ごされていたのでしょうか。

その時期はいろんな監督のワークショップに参加させてもらっていた記憶があります。あとは事務所のボイストレーニングや演技レッスンで声の出し方、滑舌など基本的なところを指導していただきながら、とにかく映画を観たりしていました。当時のマネージャーさんがいろいろ指摘してくれるんですけど、10代だったからビービー泣いたりして(笑)。「こういうときはこういう言葉遣いをしたほうがいい」など、ちゃんとした社会人になっていくために怒られることも多かった時期ですね。

──その時期、お芝居は楽しかったですか?

「楽しい」は全然まだまだ。今でもたまに「うわ、楽しいな」と思うときがあったり、「振り返ってみたら楽しかった」ということがあるぐらいで、そんなに余裕はないんです。最初から「お芝居楽しい!」って言える人がうらやましいなと思うタイプですね。ただ、好きだから続けられているんだろうなと思いますし、刺激がないと続けられないタイプなので、そこは合っているんだろうなと。

──当時大事にしていた意識や、ご自身のルールはありますか?

ちょっとずつ成長すること、ですね。最初の頃にカフェ店員という役をいただいたとき、言ってしまえばほかの人でもできる役ですが、当時のマネージャーさんから「松本にしかできない役にしてほしい」と言われて。確かにその通りだと思い、自分が演じる意味を見出すために勇気を出して自分の色を出すなど、オーディションでも現場でもとにかく印象に残ること、爪痕を残すことを意識していました。

「ひよっこ」で「澄子ってこれだ」と腑に落ちた感覚

──松本さんが選んだ1つ目のトピックは、2017年前期の連続テレビ小説「ひよっこ」でした。初めての朝ドラでいろんな出会いがある中、特に学んだことがあれば教えてください。

役について考えることです。「いい役にしたい」という思いで青天目澄子という役について考え続けたことで、台本にない役の背景などを考える時間も楽しいんだ!という気付きがありました。プレッシャーもすごくあったのですが、撮影初日に澄子を演じたときに「あっ、澄子ってこれだ」とすごく腑に落ちる感覚があったのは今でもすごく印象に残っています。

──うまく芝居ができず泣いていた際、事務所の先輩である有村架純さんから「今できちゃダメなんだと思うよ」と優しく励まされたという話もお聞きしました。当時はどんな心境だったのでしょうか。

ものすごく悔しくて、感情が止められなくなり、カットが掛かっても涙が止まらなくて。架純さんに支えてもらいながらセットを出て、楽屋でその言葉を掛けてくださり、とても救われました。あの歳(当時有村は24歳)でその言葉が出てくる架純さんってやっぱり偉大だなと思いますし、今振り返ると、自分自身がそこまでの覚悟や責任を持って役に取り組めていたんだ、ということにも気付かされます。

──過去のご自身を肯定される姿が素敵です。続いて2018年に始まったauのCM「意識高すぎ!高杉くん」シリーズは、松本さんのキュートさやツッコミ力が世間に知れ渡った1つのきっかけだと思います。これを10大トピックに入れた理由をお聞きしたいです。

やっぱり世間では「auの人だ」という認識の方が多いと思うので、そう印象付けてくださったことはありがたいなと思っています。これだけ長く続いているのもすごいことですよね。

──あの制服を着始めて8年ですね。

制服着てますねー。毎回「大丈夫ですかね?」って確認しながら(笑)。でもいつも刺激があって楽しいです! 共演している神木隆之介さんは、人生=芸歴みたいな方なのに、ずっと謙虚でお芝居に対してワクワク楽しむ精神があって。できあがったCMを観ても毎回「すごいなあ」と思いますし、尊敬する先輩の1人です。

──今まで出演されたCMの中で特に印象的なものはありますか?

なんだろうな、本当にいっぱいあるので(笑)。WebCMだと尺の長さが決まっていないので、お芝居としての掛け合いができたのも楽しかったですし、高杉くん(神木)と細杉(こますぎ)くん(中川大志)が集まるとすごいです。全然コンテにないことを、2人で「こうします」とアイデアを出して演じていたカラオケ編やバスケ編は印象的ですね。2人とも実際は運動神経抜群なのに、バスケのシュートができない演技も上手で、本当になんでもできるんだなと毎回感じさせられます。

「この世界の片隅に」の撮影が終わったときは空っぽ

──続いて選ばれたのが、2018年7月期のTBS日曜劇場「この世界の片隅に」。約3000人の中からヒロインに選ばれ、ドラマ初主演を果たしましたが、オーディションのときのことって覚えていますか?

ほかのオーディションと変わらず、いただいた台本を演じる、という形でしたね。

──放送が始まると「役にぴったり」「すずさんそのもの」という反響が大きかったと思いますが、オーディション時から役との共通点は感じていたのでしょうか。

私自身は、時代が違うということもあってそんなに近いとは思っていなかったのですが、プロデューサーの佐野亜裕美さんからは「ぴったり」と言われました。私は人からよくぼーっとしているように見られがちで、事務所の社長にもそのあたりが「すずさんっぽい」「演じすぎずそのままでいいと思う」と言ってもらっていました。でも私自身はほかの役と変わらず、「どういう人なんだろう?」と想像して練習していったのを覚えています。

──撮影が始まってからはいかがでしたか?

日曜劇場という枠のすごさを今ほど理解していなかったので、最初はふわふわした感覚だったのですが、始まってからは必死でした。駆け出しだったので現場への行き帰りが車ではなく電車とバスで。

──電車で撮影に行っていたんですか!?

最初の頃はどの現場もそうしていたんですけど、さすがに「この世界の片隅に」の初日は帰りの電車で疲れすぎて寝ちゃって、1駅寝過ごして「はっ」と起きて、また反対方向に乗って寝過ごして、なかなか帰れなかったということがありました(笑)。相当がんばってやりきったなと思いますが、撮影が終わったときはもう空っぽというか……。反省点もたくさんあったのですが、何を反省して、何を改善すればいいのか?と、頭の中がぐちゃぐちゃな状況だったんです。あんまり自分を肯定できていなかった。そんな頃に、主演映画「わたしは光をにぎっている」など、“そのまんまでいいんだ”と思えるような作品が続いたのは大きかったですね。

──燃え付き症候群のような状態に陥ったとき、松本さんはご自身で切り替えるタイプか、別の作品に入ることで自然と変わっていくタイプか、どちらですか?

普段は役を引きずったりはしないタイプなのですが、そのときは特別に落ち込んで整理がつかない状態だったので、今とはちょっと違うかもしれないですね。

──「この世界の片隅に」で共演した皆さんは、松本さんにとってどんな存在だったのでしょうか。

自分自身が本当にいっぱいいっぱいだったので、皆さんすごすぎた、という記憶が残っています。(村上)虹郎くんは同い歳なのですが、持っている貫禄が違うのがすごいなって。なんでこんなに余裕があるんだろう?と、余計自分に自信がなくなったりもしましたが、必死で食らい付いていましたね。松坂桃李さんや伊藤蘭さんが優しく気にかけてくださったり、同世代の伊藤沙莉さんが現場ですごく和ませてくださったりして、そういう時間があったからこそ乗り切れたと思っています。

またどこかでラジオをやれたらいいな

──大きな作品を経験されて、主演映画の公開も続いたあと、コロナ禍に突入します。そんな2020年4月にTBSラジオ「新米記者・松本穂香です。」が始まりました。パーソナリティを務めた2年半はどんな期間でしたか?

もともとしゃべるのが得意じゃないので……。

──本当ですか!?

本当です(笑)。だから大丈夫かな?と思いつつ、毎回自分が会いたい人や全然違う職種の人にお会いできるのはすごく楽しかったですし、ラジオの年越し特番「ハライチのタァァァン!!」にアシスタントで呼んでいただくなどそこからつながったお仕事もありました。逆に、ラジオきっかけで私を知ってくださって、俳優としての姿を見て「こういう見た目の方なんですね」と知ってくださる方も。

──リスナーからお便りが届くなど、普段映像作品を中心にお仕事をされているときとは距離感も違いますよね。

そうですね。お電話をさせてもらうこともあって、これはラジオをしていないと絶対にあり得なかったと思うので楽しかったです。最初の頃、ラジオのスタッフさんに「僕たちはいろいろ言わないので、松本さんはそのままでやってください」と言われて。自由に話させていただきましたし、またどこかでラジオをやれたらいいなと思っています。

──そのラジオきっかけで、ジャルジャルさんのYouTubeにも出演されました。

ゲストで出演してくださったときに「ぜひ(YouTubeに)出てくださいよ」と言われて、「なんでもやります!」と答えたら、私がオールバックになるコントに参加させていただくことになって。

──「松本穂香のヘアメイクでオールバックする美容師【日常撮る奴】」が配信された当時、ここまでやってくれるの!?と衝撃で(笑)。松本さんの困惑した表情が絶妙で素晴らしかったです。ジャルジャル好きとして、以前映画ナタリーにコラムを寄稿していただいたこともありますが、共演するにあたって特に楽しかったのはどんな瞬間ですか?

ファンということもあって、ジャルジャルさんたちの裏を見れるのは楽しかったです! コントをやっているときはすごく生き生きしてるんですけど、余計なことをしゃべらない(笑)。始まる前に「このときはこうして」「終わり方はこうで」といったことは特に言われませんし、2人でも何かを話すわけではない。やっぱりこの空気感がジャルジャルなんだなと思いましたし、そこが2人らしくてすごく好きですね。

──芸人さんとコントをやることは、俳優業にどんな影響があるのでしょうか。

「コントの日」というNHKの番組に出演したときも、芸人さんが型にはまらず、その瞬間瞬間で臨機応変に反応するところがすごいなと思ったんです。その場の空気感を大事にすることはお芝居でも大事なことだと思うので、すごく勉強になりました。ジャルジャルさんとは一緒に写真集「アイ アンド ランド」を出させていただいたり、今年の単独ライブも招待していただいたりして、「またなんかやりたいですね」とお話ししたところなので、また機会があればいいなと思ってます。

加藤拓也は「年々すごみが増していて、どこに行っちゃうんだろう?」

──続いて、加藤拓也さんが作・演出を担った主演舞台「ぽに」を挙げていただきました。5年ぶり2度目の舞台だったとのことですが、加藤さんは同世代としてどんな存在なのか聞いてみたいなと思っていました。

すごいです。普通の人間ではないと思っています(笑)。加藤さんとは「平成物語」というドラマがきっかけでつながり、劇団た組の「心臓が濡れる」という舞台を初めて観たときに涙が止まらないほど衝撃を受けて、そこから劇団と加藤さんの大ファンなんです。ずっと自分で普通にチケットを買って通っていたので、「ぽに」のお話があったときは、尊敬している分すごくプレッシャーが大きくて……。ほかにはないセリフの書き方で、「あっ、えっと」「あっそうですね。うん」といった話し言葉も全部書いてあるので、まず覚えるのが大変でした(笑)。同世代だけど飛び抜けている方ですし、何を考えているかわからない。この前ごはんに行かせてもらったときも、話していると同世代な感じはあるんですけど、底知れないというか。一緒にお仕事をするとなっても簡単に「はい」とは言えない緊張感もあるし、大ファンだからこそ身構えます。

──そんな関係の中で、食事に行かれるのは意外でした。

誘っていただいたときは「なんで?」と(笑)。自分の中では「ぽに」もうまくできたかと言われると「どうだったかな?」という思いがあったし、加藤さんにどう思われているかもわからなかったので、連絡をいただけることはすごくうれしかったです。ただ、今も「ぽに」ってなんだったんだろう?と考えることがあります。

──作品の余韻が残っていらっしゃるんですね。加藤さんから、次にどんなオファーがあるのか楽しみです。

私はしばらく無理かもしれないと思っていて……(笑)。恐れ多いというか、お話をいただいても、「ファンとして関わらせてください」と言ってしまうかも(笑)。舞台を観に行くたびに言い表せないような気持ちになりますし、年々すごみが増していて、どこに行っちゃうんだろう?と感じています。

相手役の中島健人に「やっぱりこの人すごいな」

──続いて、2022年にNetflixで配信された映画「桜のような僕の恋人」の話題に移ります。主演映画も多数ある中で、この作品を10大トピックに入れたのはなぜですか?

ほかにはない演出方法だったり、私の台本には中島健人さん演じる(朝倉)晴人のシーンが書かれていなかったことなどが印象的だったからです。

──セリフが書かれていない?

主人公2人には「会えない」「相手のことがわからない」という時期がある作品だったので、相手だけが出演するシーンはお互いの台本が空白になっていたんです。私が演じた有明美咲は急速に老化していってしまう役柄だったのですが、その姿で中島さんと鉢合わせないように現場でスタッフさんがすごく配慮してくださいました。プロモーションに関しても、渋谷駅の広告など、あれ以上の規模はないんじゃないかなという宣伝の仕方で、なかなかない経験をさせていただいたなと思います。

──同作の撮影時にもっとも悩んだこと、または楽しかったことはありますか?

最終段階の特殊メイクには確か3~4時間ぐらい掛かっていて、(メイク中に)寝て起きたらおばあちゃんの姿になっているので、頭が付いていかないというか。役としても心は20代の設定でしたが、理解するのが難しかったですね。あとは、相手役の健人くんに「やっぱりこの人はすごいな」と思うタイミングがたくさんあって。「お互いの写真をチェキで撮り合って、会わない間はこの写真を見よう」と提案してくれたんです。

──共演者を巻き込んで役作りをされるんですね。

小さなかわいいチェキ用のアルバムを2つ用意してくださり、私は晴人くんの写真、健人くんは美咲の写真をアルバムに入れて持っておくという。2人で「ちゃんとのめり込んでお芝居を作ろう」とやっていましたし、そんなことをした役者さんは今まで健人くん以外いないんじゃないですかね。本当にすごい人だなと思いました。

松尾スズキのシュールな世界観がすごくツボ

──舞台「ふくすけ 2024-歌舞伎町黙示録-」は、コントドラマ「松尾スズキと30分の女優2」以来の松尾スズキさんとのタッグでした。松本さんにとって、松尾さんの現場はどんな場所ですか?

松尾スズキと30分の女優2」のときは、松尾さんもたぶん私のことをあまり知らなかったし、私もどういう感じなんだろう?と思いながら一緒にお芝居をさせてもらったと思うのですが、ものすごく面白くて。その中の1作「第十一回WOWOW歌舞伎 春の大犬自慢踊り『世情犬絵見栗捨』」では舞ったり、犬の絵を見せたり見せなかったり、あのシュールさがすごくツボでした。「人は叱られているとき、何を考えているのだろう」という作品で松尾さんがスチームパンクおじさんという役を演じているときも、一緒にお芝居をしながら「こんなに面白いおじさんいるんだ!」と衝撃でした。ブリッジ(場面と場面のつなぎ)のタイトルコールは、松尾さんがカンペに書いたことをその場で言って撮影したのですが、その瞬発力に感心してくださって、それが「ふくすけ」につながったのかなと思っています。

──1カ月の舞台公演期間、1つの役を演じ続けるのはどういった感覚なのでしょうか。

奇抜な舞台でしたし、飽きなかったです。私は、ホスト狂いのホテトル嬢・フタバ役だったのですが、松尾さんからは「ろれつが回っていなくてふらふらしてる感じ」と演出を受け、声も変えて演じました。面白いけれど、体現するのは難しかった。でも、周りの人には「稽古中のフタバと最終日のフタバが全然違う」と言ってもらえて、稽古と本番の長い期間があったからこそ味わえる経験なのかなと感じました。

──舞台期間中のこだわりやマイルールはありましたか?

「ふくすけ」のときに、松尾さんから「もっと声を大きく」と言われて。周りの人たちは舞台経験者ばかりでしたし、もっと声を出さなきゃと思って、まずはプランク(おなか周りを鍛えるトレーニング)を習慣付けました。ふらふらしている役ですし、ヒールも履いていたので、けがをしないことを目標に体幹を鍛える体作りをルーティンにしていましたね。

大泉洋のアドバイスを本番で実践したら、本当に笑いが起きた

──9つ目のトピックは、月9初主演作であり、鈴鹿央士さんとダブル主演した「嘘解きレトリック」です。“月9主演”という響きは、最初どう感じられましたか?

びっくりしましたね。責任も感じましたし、正直「私で大丈夫?」とも思ったのですが、本当に丁寧に作っていただいた作品でした。監督も西谷弘さんや鈴木雅之さんなどレジェンドが集まっていて! 「この世界の片隅に」の時期の自分だったらできなかったであろう、いろんな経験を経た今だからこそ納得してお芝居ができたなと思う作品です。

──単独主演で、戦争を題材にした作品のほうが大変なのでは?と安易に考えてしまうのですが、「嘘解きレトリック」で演じられた浦部鹿乃子役の難しさは、どんなところにあったのでしょうか。

嘘が聞き分けられるという特殊な性質は持っているのですが、等身大のキャラクターなんです。また、ミステリーものではありつつ派手な作品ではないので、人と人とのつながりや会話が大事になってくる。そういう、小さいところにいろんなものを宿さなければいけないドラマだったので、その目線を持てていたあのタイミングだったからこそ楽しめたし、いい作品になったのかなと思いますね。

──今年は、三谷幸喜さんの作品にも初出演を果たされました。舞台「昭和から騒ぎ」はいかがでしたか?

楽しかったです! 現場もすごく平和で、三谷さんと大泉(洋)さんの掛け合いは裏でもあのまんま(笑)。シェイクスピア作品が題材ではあるのですが、カーテンコールの際に大泉さんがお客さんにも言っていた「なんの中身もない舞台です」「楽しいだけの芝居でしょ?」みたいなのってすごくいいなと思って。特にコメディは難しいし、どうやって舞台に立ったらいいんだろう?と悩みましたが、このときも「稽古中のひろこと本番のひろこが全然違うものになったね」と言っていただいて、成長の実感を得られました。周りの先輩方からいろんなアドバイスもいただいたんです。「このセリフは止めないで一気に言ったほうがいいんじゃないか」とか。

──そこまで具体的に言ってくれるんですね!

そうなんです。大泉さんは楽屋に来て「あそこ、こういう言い方にしたらどうかな?」と伝えてくれたりするんですよ。アドバイスを本番で実践したら本当にその場面で笑いが起きて、すごいなと思いました。

10年前の自分に「幸せな瞬間もこの先たくさんあるからね」

──ここまで、それぞれのトピックについてお聞きしてきましたが、10年間を通してご自身にもっとも影響を与えた出会いについても教えていただきたいです。

やっぱり事務所の先輩方です。山口紗弥加さんとは、NHKの夜ドラ「ミワさんなりすます」で共演させていただいたのですが、どんなシーンでも私の想像を超えてくる面白いセリフ回しやお芝居にすごく刺激をいただきました。普段はすごくチャーミングで少女みたいなかわいらしさもあり、人として素敵だなと。あと有村さんは私の中で“無敵”の存在で、ずっと憧れながら追いかけています。先輩なのに、会うと「えっ? かわいすぎるな……」と言ってしまうぐらい(笑)。皆さん人としてやわらかくて、見た目だけじゃなく人としてかわいくて平和なところが素敵だなと思いますし、そんな女優さんになりたいなと思います。

──すごくいい職場環境ですね。

いい事務所だと思います!(笑)

──活動期間のうち数年は、コロナ禍で思うように作品作りができない時期もあったかと思います。

「今から撮影する番組、もう1人が来れないかも」とか「スタッフさんに感染者が出ちゃった」といった理由で、メイクまでやったけどバラシ、みたいなこともありました。混乱の時期だったなと思いつつ、やっぱりみんな働きすぎだったので、休む時間も大事なんだなと、いったん“ゼロになれる時間”でもあったのかなとも思いますね。映画やドラマを娯楽としておうちで楽しめた時期でもありました。

──最後に、10年前のご自身に伝えたいことを教えてください。

18歳の私かあ。「この先いろんなことで傷付くこともあるだろうけれど、泣くことないよ」みたいな……いや、違うな(笑)。「いろいろあるけど、幸せな瞬間もこの先たくさんあるから、あんまり力みすぎず無理しないで」って感じですかね。

──それはこの10年間で意識が変わってきた部分なのでしょうか?

そうですね。最初の頃はとにかくやりすぎなくらい必死だったのですが、それって精神的に健康じゃない面もあったと思うので、ほどほどなバランスも大事だとだんだん気付いてきました。もちろんがんばるのも大事だと思うんですが、まずは自分の体や心を大切にしないといけないなと今は思います。

松本穂香(マツモトホノカ)プロフィール

1997年2月5日生まれ、大阪府出身。2015年に「風に立つライオン」で長編映画デビュー。2017年放送の連続テレビ小説「ひよっこ」で注目を集め、翌2018年にはオーディションで役を射止めた日曜劇場「この世界の片隅に」で連続ドラマ初主演。そのほかWOWOWオリジナルドラマ「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」、「リエゾン-こどものこころ診療所-」、夜ドラ「ミワさんなりすます」に出演し、2024年10月期の「嘘解きレトリック」で月9初主演を果たした。主演映画には「おいしい家族」「わたしは光をにぎっている」「酔うと化け物になる父がつらい」「君が世界のはじまり」「みをつくし料理帖」「恋のいばら」、出演舞台には「COCOON PRODUCTION 2024『ふくすけ 2024-歌舞伎町黙示録-』」、シス・カンパニー公演「昭和から騒ぎ」などがある。

<衣装協力>
ジャケット Ameri(税込2万9700円)、パンツ Ameri(税込2万4200円)
問い合わせ先:AMERI VINTAGE(03-6712-7965)

ブーツ HENRI EN VARGO(参考商品)
問い合わせ先:アポロ(03-3806-6571)

イヤカフ(右耳 / 税込1万1000円)、イヤカフ(左耳 / 税込1万3200円)、リング(右手人差し指 / 税込1万2100円)、リング(左手人差し指 / 税込2万2000円)、リング(左手中指 / 税込1万4300円)
問い合わせ先:TEN.(092-409-0373)

松本穂香 2015~2025年の活動年表

2015年

  • 高校卒業を機に大阪から上京
  • 「風に立つライオン」で長編映画デビュー(3月)
  • 映画「ガールズ・ステップ」公開(9月)

2016年

  • 舞台「ヨミガエラセ屋」上演(3月)
  • 映画「にがくてあまい」公開(9月)

2017年

  • よしもと新喜劇 映画「商店街戦争~SUCHICO~」公開(3月)
  • 映画「MATSUMOTO TRIBE」公開(4月)
  • 「ひよっこ」で朝ドラ初出演(4月)
  • ドラマ「下北沢ダイハード」放送(7月)
  • 第7回きりゅう映画祭にて「リクエスト・コンフュージョン」上映(10月)
  • オムニバスサスペンスホラー「狂い華」公開(10月)
  • 映画「Music Of My Life」公開(10月)

2018年

  • auのCM「意識高すぎ!高杉くん」シリーズに初出演(1月)
  • 「ドラマW 食い逃げキラー」放送(3月)
  • 映画「恋は雨上がりのように」公開(5月)
  • 映画「世界でいちばん長い写真」「名前」公開(6月)
  • 応募者約3000人の中から選ばれ「この世界の片隅に」でドラマ初主演(7月)
  • 1stフォトブック「Negative Pop」発売(9月)
  • 映画「あの頃、君を追いかけた」公開(10月)
  • ティファニー×ゼクシィ制作のショートフィルム「TIFFANY BLUE」出演(11月)
  • 「VOGUE JAPAN Women of the Year 2018」で“VOGUE”な女性に選出(11月)

2019年

  • 映画「チワワちゃん」公開(1月)
  • 主演映画「アストラル・アブノーマル鈴木さん」公開(1月)
  • ドラマ「JOKER×FACE」で松尾諭とダブル主演(1月)
  • 映画「君は月夜に光り輝く」公開(3月)
  • 主演映画「わたしは光をにぎっている」がモスクワ国際映画祭の特別招待作品に(4月)
  • 映画「きみと、波にのれたら」でアニメ声優初挑戦(6月)
  • スペシャルドラマ「夢食堂の料理人~1964東京オリンピック選手村物語~」放送(7月)
  • 主演映画「おいしい家族」公開(9月)
  • 「ほんとにあった怖い話 20周年スペシャル」放送(10月)

2020年

  • ドラマ「病室で念仏を唱えないでください」放送(1月)
  • 映画「his」公開(1月)
  • 主演映画「酔うと化け物になる父がつらい」公開(3月)
  • TBSラジオ「新米記者・松本穂香です。」スタート。初回ゲストは伊藤沙莉(4月)
  • 主演映画「君が世界のはじまり」公開(7月)
  • ドラマ「竜の道 二つの顔の復讐者」放送(7月)
  • コメディ番組「ん」放送(8月)
  • 映画「青くて痛くて脆い」公開(8月)
  • ジャルジャルのYouTube「松本穂香のヘアメイクでオールバックする美容師【日常撮る奴】」配信(10月)
  • 主演映画「みをつくし料理帖」公開(10月)
  • 主人公の声を担当したアニメ映画「君は彼方」公開(11月)
  • 第12回TAMA映画賞で最優秀新進女優賞を受賞(11月)
  • 年越しラジオ特番「ハライチのタァァァン!!」でアシスタントに(12月)

2021年

  • ドラマ「おじさまと猫」で猫・マリンの声を担当(2月)
  • 「怖い絵本 season2」放送(3月)
  • ドラマ「ペットにドはまりして、会社辞めました」放送(3月)
  • 「連続ドラマW 華麗なる一族」放送(4月)
  • ドラマ「ボクの殺意が恋をした」放送(7月)
  • 岩井秀人プロデュース「いきなり本読み!」開催(8月)
  • WOWOWオリジナルドラマ「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」で主演(8月)
  • 映画「DIVOC-12」公開(10月)
  • 劇団た組「ぽに」上演(10月)
  • 時代劇「剣樹抄~光圀公と俺~」放送(11月)
  • 映画「ミュジコフィリア」公開(11月)

2022年

  • WOWOWオリジナルドラマ「松尾スズキと30分の女優2」放送・配信(3月)
  • Netflix映画「桜のような僕の恋人」配信(3月)
  • ドラマ「拾われた男」ディズニープラスにて配信(6月)
  • ジャルジャルとのコラボ写真集「アイ アンド ランド」発売(7月)
  • 映画「今夜、世界からこの恋が消えても」公開(7月)
  • 映画「“それ”がいる森」公開(9月)

2023年

  • 玉城ティナとのダブル主演映画「恋のいばら」公開(1月)
  • ドラマ「リエゾン-こどものこころ診療所-」でヒロインに(1月)
  • 単発ドラマ「大河ドラマが生まれた日」放送(2月)
  • 映画「“それ”がいる森」で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を獲得(3月)
  • Amazon Originalドラマ「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」配信(3月)
  • 「お笑いインスパイアドラマ ラフな生活のススメ」放送(7月)
  • indigo la End「忘れっぽいんだ」MVに出演(8月)
  • 夜ドラ「ミワさんなりすます」で主演(10月)
  • スペシャルドラマ「自転しながら公転する」放送(12月)

2024年

  • 映画「笑いのカイブツ」公開(1月)
  • WOWOW番組「第96回アカデミー賞直前総予想」出演(2月)
  • ドラマ「95」放送(4月)
  • 「劇場版 鬼平犯科帳 血闘」公開(5月)
  • 舞台「ふくすけ 2024-歌舞伎町黙示録-」上演(7月)
  • 月9ドラマ「嘘解きレトリック」で鈴鹿央士とダブル主演(10月)
  • デビュー10周年を記念した2025年版カレンダー発売(12月)

2025年

  • TBS新春スペシャルドラマ「スロウトレイン」放送(1月)
  • 映画「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」公開(4月)
  • 舞台「昭和から騒ぎ」で三谷幸喜作品に初参加(5月)