中村勘九郎・中村七之助が語る、歌舞伎を“もっと近くに”「春暁歌舞伎特別公演2026」
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インタビュー
(左から)中村七之助、中村勘九郎
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すべて見る全国を巡る恒例の中村勘九郎 中村七之助 巡業公演が、2026年3月に行われる。今回の演目は、華やかな舞踊『艶紅曙接拙(いろもみじつぎきのふつつか) 紅翫(べにかん)』と、歌舞伎役者が演じるのは77年ぶりの上演となる『墨塗女(すみぬりおんな)』。登壇した中村勘九郎、中村七之助の兄弟は、それぞれの挑戦に込めた思いと、地方巡業を通じて見えてきた“歌舞伎のこれから”を語った。
10月30日、都内で行われた「春暁歌舞伎特別公演」合同取材会に、中村勘九郎、中村七之助が登壇した。毎年、全国を巡る特別公演は、今回で22年目を迎える。勘九郎は「こうして長く続けられるのは、“近くで歌舞伎をやっているなら”と劇場に来てくださるお客様のおかげ」と挨拶。七之助は「毎年、やっている意味があるなと感じる。これからも続くように頑張りたい」と意気込みを語った。
手紙がつないだ地方との絆
この公演が始まったきっかけは、一通の手紙だったという。「地方の学生さんから“行きたいけど電車賃が高くて行けない”、“昼夜で公演を観ると終電がなくなってしまう”というお手紙をいただいて。それで“じゃあ僕らが行こう”と始めたのがきっかけです」と説明。
歌舞伎をご覧になったことがない方や、敷居が高いと思っている方にも楽しんでもらおうと、毎回、観客との距離を縮める工夫をしてきた。勘九郎は「演目の前にトークコーナーを設けまして、最初にスーツ姿で登場して“普通のおじさんたちですよ”と話すと、お客様がぐっとリラックスしてくださる」と笑う。
毎年恒例の質問コーナーでは、手を挙げて質問してくれる観客の土地柄の違いも面白いという。地域の交流が楽しみと言う七之助は、「こちらから“おすすめのご飯屋さんありますか?”と逆質問することもある。アットホームなコーナーです」と語った。
『紅翫』――江戸の町を練り歩く華やかさ
門弟たちが演じる『紅翫(べにかん)』は、実在した町人を題材にした舞踊劇。三味線を弾きながら太鼓を叩き、町を練り歩く趣味人・紅翫を描いた作品で、物売りたちが次々と登場する賑やかな舞台だ。「朝顔売りや虫売りなど、今では見かけない商いの光景が次々と出てきます。舞踊だけでなくお芝居の要素もあって、ミュージカルのような華やかさがあります」と話す。
『墨塗女』――歌舞伎俳優が演じるのは77年ぶり
一方、『墨塗女(すみぬりおんな)』は能狂言の『墨塗』を題材とした、滑稽で面白みにあふれた作品。歌舞伎役者が演じたのは昭和23年以来、じつに77年ぶりに上演されるという演目。勘九郎と七之助、そして、自主公演を開催するなど、近年めきめきと力をつける中村鶴松の3人芝居だ。
七之助演じる愛妾・花野が魅せる、女性の“したたかさ”が見どころ。勘九郎が「歌舞伎にはきれいで腹黒い女性というキャラクターはなかなかいませんから、腹黒い七之助さんにはぴったりかな」と言うと、七之助が苦笑いする場面も。
明確なキャラクター設定や感情描写が少なく、シンプルなストーリー。だからこそ、演じる側の解釈が問われるという。七之助は「最初に映像で見た時は“難しいな”と感じました。登場人物の誰が誰を本気で想っているのか、あえて曖昧なままに進んでいく。しっかり3人で話し合って、つくり込んでいきたい」と話す。
歌舞伎の魅力を一人でも多くのお客様に
取材の終盤では、全国巡業の楽しみについて「各地のおいしいご飯やサウナも楽しみ」と勘九郎がコメント。七之助も深く頷いた。
地方を巡ることで、どんな手ごたえを感じているかという質問には、「若い観客や、男性客が増えていると感じる」と勘九郎。「歌舞伎を生で観てほしいという思いがあるので、夜の部の料金設定を下げるなど、多くのお客様に来ていただく工夫をしています。ぜひ初めての方も来ていただきたいと思います」と語った。

取材・文/北島あや
撮影/福岡諒祠(株式会社GEKKO)
<公演情報>
中村勘九郎 中村七之助 春暁歌舞伎特別公演2026
〈府中(東京)会場〉
日程:2026年3月7日(土)
会場:府中の森芸術劇場 どりーむホール
〈練馬(東京)会場〉
日程:2026年3月8日(日)
会場:練馬文化センター 大ホール
〈静岡会場〉
日程:2026年3月10日(火)
会場:アクトシティ浜松 大ホール
〈愛知会場〉
日程:2026年3月11日(水)
会場:刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
〈大田(東京)会場〉
日程:2026年3月13日(金)
会場:大田区民ホール・アプリコ 大ホール
〈茨城会場〉
日程:2026年3月14日(土)
会場:水戸市民会館 グロービスホール
〈神奈川会場〉
日程:2026年3月15日(日)
会場:相模女子大学グリーンホール 大ホール
〈大阪会場〉
日程:2026年3月20日(金・祝)
会場:高槻城公園芸術文化劇場 トリシマホール
〈福岡会場〉
日程:2026年3月21日(土)
会場:J:COM北九州芸術劇場 大ホール
〈佐賀会場〉
日程:2026年3月22日(日)
会場:鳥栖市民文化会館 大ホール
〈青森会場〉
日程:2026年3月25日(水)
会場:リンクステーションホール青森
[演目と出演]
一
トークコーナー
中村勘九郎
中村七之助
中村鶴松
二
艶紅曙接拙(いろもみじつぎきのふつつか) 常磐津連中
紅翫 中村いてう
団扇売お静 中村仲之助
庄屋銀兵衛 中村仲四郎
朝顔売阿曽吉 中村仲助
町娘お梅 中村仲弥
蝶々売留吉 中村仲侍
虫売りおすず 澤村國久
大工駒三 中村山左衛門
三
竹柴其水 作
猿若清方 振付
墨塗女(すみぬりおんな) 常磐津連中
万之丞 中村勘九郎
太郎冠者 中村鶴松
花野 中村七之助
チケットURL
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2562615
公式サイト
https://nakamuraya-tour.srptokyo.com/shungyo2026/
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