梅棒 20th Breakdown『FINAL JACKET』初日レポート

ダンスエンターテインメント集団「梅棒」の20回目の本公演となる梅棒 20th Breakdown『FINAL JACKET』が11月7日（金）、サンシャイン劇場（東京・池袋）にて開幕を迎えた。

セリフを用いず、ダンスとJ-POPの融合によって物語を紡いでいく梅棒にとって、記念すべき20回目の本公演となる本作には、今年、梅棒に新たに加入したSuGuRuを含め、11名のメンバー全員が出演（※日によって外部ゲストあり）。人々の心をひとつに束ねると言われる伝説の“ファイナルジャケット”を巡り、男たちが戦いを繰り広げるさまが描き出される。

主人公はバイクにまたがり、報酬さえ払えばどんな依頼も引き受けるというアウトローの男で、物語の舞台は文明崩壊後の荒廃した世界――。「マッドマックス」や「北斗の拳」を思わせるような“男臭さ”全開の物語は、これまで梅棒が築き上げてきた世界観とは対照的と言えるが、この“週刊少年ジャンプ”的な設定の持つ徹底したエンターテインメント性を存分に活用し、コミカルかつワクワクドキドキするような物語が展開し観る者を魅了する。

5つに分かれたジャケットのパーツを巡り、いくつもの勢力が火花を散らすという設定を活かし、個性あふれる多彩なキャラクターたちが次々と登場！ 主人公の用心棒・マグナス（櫻井竜彦）とその“窓口係”の少年・レオン（鶴野輝一）、軍の司令官・ギデオン（遠山晶司）にその部下のカリム（多和田任益）。ファイナルジャケットの一部を所有しているカンフーの国の師範代・王八宝（SuGuRu）にその下で働く少年・バオズ（野田裕貴）、同じくファイナルジャケットの一部を持つ宣教師のピエール（天野一輝）にセクシーなサーカス団長のアロン（楢木和也）。そして海に浮かぶ監獄・リヴァイアサンに収監されている凶悪な囚人で、ファイナルジャケットによる世界の支配を目論むバルザック（伊藤今人）、その部下のチャド（梅澤裕介）、監獄の所長を務めるルシャール（塩野拓矢）……。

まさに、この物語の設定だからこそ可能とも言える、バラエティにあふれた登場人物たちとなっており、ひとりひとりの登場人物がステージに姿を見せるたびに、客席からは拍手と歓声がわき起こる。荒野を往く男のワイルドな装いから軍服、囚人服にカンフー服など、色も形も様々な衣装、そして、それぞれの立場やキャラクターにあわせた多彩なスタイルのダンスは本作の大きな見どころ。また、男たちの戦いを描く本作だからこそ、アクションパートも圧巻！ 刀を使った激しい殺陣にカンフーなど、こちらも登場人物たちの個性に合わせたアクションで観客を楽しませてくれる。

20回目の本公演にふさわしく、メンバーひとりひとりに見せ場があり、個性が光る本作だが、特に初日の公演で客席をひときわ沸かせていたのが、カリムを演じる多和田とアロン役の楢木。軍司令官のギデオンに従順なふりをしつつ、己の出世欲を抑えきれないカリムを多和田はコミカルなダンスで体現し、爆笑を誘い物語が進むにつれて存在感を増していく。一方、楢木はセクシーなボンデージファッションに身を包み、猛獣を従え魅惑的でセクシーなパフォーマンスを披露し客席は熱狂の渦と化す。また、王八宝を演じている新加入のSuGuRuも、ジャッキー・チェンを思わせるようなコミカルかつ、キレッキレのパフォーマンスを披露しており、確実に梅棒に新たな“風”をもたらしていた。

マグナスとギデオンの過去の因縁、マグナスに何とかして認められようとするレオンの葛藤など、個々のキャラクターを深掘りしたドラマも魅力的。笑いあり、涙あり、友情あり、アクションあり。そして、5つのパーツがそろったファイナルジャケットに袖を通した時、いったい何が起こるのか――？ その結末も含め、まさに梅棒らしさ全開の2時間5分となっている。

取材・文／黒豆直樹
撮影／飯野高拓　角田大樹

〈公演情報〉
梅棒 20th Breakdown 『FINAL JACKET』

〈東京公演〉
日程：2025年11月8日(土)～24日(月・祝)
会場：サンシャイン劇場

〈愛知公演〉
日程：2025年11月29日(土)～30日(日)
会場：ウインクあいち

〈大阪公演〉
日程：2025年12月5日(金)～7日(日)
会場：COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

チケットURL
https://w.pia.jp/t/finaljacket/