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寺西拓人、初主演映画で魅せた“まなざしの演技”――『天文館探偵物語』で体現した人情と熱さ

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timeleszのメンバーであり、舞台やミュージカルを中心に俳優として活躍中の寺西拓人。包容力たっぷりの落ち着いた雰囲気を持つことから“国民の元カレ”という呼び名を持っている。そんな寺西がtimeleszのオーディションが開催される直前に挑んでいたのが、初主演映画「天文館探偵物語」だ。人情に厚い探偵役でもその献身力を発揮しながら作品に尽力したことで、困っている人を見過ごせない熱い探偵役でも包み込むような優しさがスクリーンにほとばしっている。

台詞だけでなく、まなざしや呼吸で人間の弱さや葛藤を表現

寺西拓人の映画初主演作は、南九州最大の繁華街・天文館を舞台にした探偵物語。天文館は、鹿児島の人なら誰もが知っているエンターテインメントの発信地。訪れる人たちを包み込む憩いのようなバーの一角にあったのは、冴えない探偵の姿……。その探偵こそ、寺西が演じる困っている人を見たら、つい助けたくなる人情に厚い宇佐美蓮という男だ。

「探偵役と聞いて、トレンチコートを着てどこかに潜入するのかなと思いきや、アロハシャツを着た便利屋さんみたいな感じ(笑)。脱走したペットの亀探しとかもするんですよね。探偵って、あまり想像がつかない職業。僕にとって探偵ものといえば、『名探偵コナン』みたいに漫画やアニメの世界の印象が強くて。あと、『探偵はBARにいる』の大泉洋さんですかね。現実の探偵よりもちょっとディフォルメされた探偵像が思い浮かびます。とはいえ、僕が演じる蓮は、天文館の人たちのホントにちょっとしたお願いを聞いてあげるような存在だったので、自分の中では探偵としての役作りはあまりなく、お助け屋さんというところで役を作りましたね」

主人公の蓮は、作品のテーマでもある人間臭さや人のために動くような人物像。俳優として真摯に演技に向き合っていた寺西がぴったりだと蓮役に抜擢された。監督は主演を務めた寺西の芝居について「台詞だけでなく、まなざしや呼吸で人間の弱さや葛藤を表現してくれた。脚本には描ききれなかった余白を映画に息づかせてくれました」と絶賛している。現場では、どんなオーダーがあったのか、気になるところだ。

「『鹿児島の天文館という場所で、そこに息づく人たちの温かさを表現したい』ということは説明を受けましたね。とにかく人のために動く、そこに理由があまりないというところは演じるにあたって大切にしましたね。監督からはシーンごとにこういう風に、っていう演出はありましたけど、全体を通して“こういう人でいて欲しい”みたいなことは、改めて何か言われたっていう覚えはないですけど。普段は言わないような少年漫画の主人公みたいな、ちょっと熱い台詞もあるので、そこは熱いことを自然と言える人という風に演じました。自分は、一生言わないだろうなっていうようなカッコいい台詞がいっぱいありました(笑)」

『あ、俺キザなことを言ってんだ』

熱い人柄が丸分かりの熱い台詞が多い蓮の言葉。「自分自身なら一生言わない」と思った印象に残っている台詞はというと……。

「僕がすごく印象に残っているのは、“二兎追うものは一兎も得ず。でも、二兎とも捕まえちゃった”ですね。亀を持ちながら言った台詞なんですよ。僕は入り込んでカッコよく蓮の台詞を言ったんですけど、ヒロインの大原優乃さんがツボっちゃって……。その台詞を何回も繰り返しやったっていうことをすごく覚えていますね。普段生活していて、そんな格言みたいなこと、なかなか言わないじゃいですか。大原さんがツボっている様子を見て、初めて『あ、俺キザなことを言ってんだ』って気づきましたけど(笑)」

天文館の人たちのためなら身体を張ってしまうキャラクターをリアルに体現した寺西。蓮は6歳の息子を抱えてDV夫から逃げてきたシングルマザーの凪(大原優乃)の力になるなど、お人よしなキャラクター。困っている人を助けるという信念を胸に秘めている役を演じるにあたって大切にしたこととは――?

「人情溢れる街で、人のために動くっていう人間をしっかり演じようと思っていました。蓮が自分の気持ちを吐露するシーンがあるんですが、そのシーンは、めちゃくちゃやったんですよ。パスを出してくださる相手の方が、結構台詞を噛んじゃうことが多くて。毎回フルパワーでやるっていうことの難しさを感じた印象的なシーンではありますね」

人に尽くすまっすぐなキャラクターだが、ちょっと冴えない探偵でもある蓮を演じていて、共感できた部分もあったという。

「蓮は熱い人間ではあるんですが、普段はそこまで抑揚がないっていう感じなんですよね。僕も普段は感情の波が大きいタイプじゃなくて、楽しい時にたまに弾けるみたいなタイプなんで、そこは似ているところかもしれません。逆に似ていないところは、やっぱりキザなことを言わないところかな。あと、僕は蓮みたいにそんなにまっすぐに人のために動けないなって思うので、羨ましいなと思います」

関わってくださった方に携わって良かったと思ってもらえる作品に

今回が初の映画主演作。あまり主演として意識することはなかったという寺西だが、座長として現場ではどんな立ち振る舞いを心掛けていたのか、聞いてみると……。

「映画出演することになったということは聞いていたんですが、だいぶギリギリになってから、『あ、主演だよ』とポンと言われて、『えっ…』みたいな。割と消化しきれていないまま撮影に挑んだんですよね。主演をやらせていただくにあたって、やはり関わって下さった皆さんにこの作品に携わって良かったと思うような作品になればいいなと思っていたんですが、僕は主演として何かできたかというと、本当に鹿児島の天文館にお邪魔させてもらっただけで。周りの方が盛り上げて下さいました。キャストの方やスタッフさんは、鹿児島の方が多かったので、鹿児島のことを色々教えてもらったり、美味しいものを食べさせてもらったり。僕はホントに長めに撮影現場にいただけですね(笑)」

映画初主演にチャレンジした寺西が今作で挑戦となったと思うこととは?

「こんなに長い時間、映画の撮影をすること自体が初めてだったので、単純に刺激的な日々でした。実際に天文館の街で、走り回ったり、自転車を漕いだり。街で撮影するのは、いろんな方の力があって成立するんだなっていうのは思いましたね。鹿児島の人たちにも協力してもらって撮影ができました」

天文館は、長い歴史が育んだ九州人ゆかりの心のふるさと。アーチ型のアーケードをくぐると、目に飛び込むのは、活気あふれるモール街。温もり溢れるお店が立ち並んでいる。劇中でも路面電車が走る情緒あふれる光景が映し出され、鹿児島ならではのロケーションをふんだんに取り入れた撮影が盛りだくさんだ。

「本当にロケが多かったので、天文館の皆さんや鹿児島で活躍されている役者の方と実際にコミュニケーションをとりながら撮影できて楽しかったです。鹿児島の名物というキビナゴのお刺身を初めて食べたら、美味しかったですね。キビナゴって唐揚げで食べるとか、基本的に火が通っているイメージだったんですが、酢味噌みたいなものでお刺身として食べました。天文館は、建物を含めて、すごく昔ながらの古き良き街なみの雰囲気が印象的でしたね。どこか昭和感あるなと思いました。おじいちゃん、おばあちゃんが多い印象で、普通に街の人とお話させてもらったら、みんな知り合いみたいな感じで、すごくあったかい場所なんだなと思いました。こんな街に住んでいたら、人助けをしたくなるんだろうなっていう風に思ったんですよね」

鹿児島は人との距離感が東京よりも近いのが魅力

天文館と東京との違いを聞いてみると、「人との距離感がみんなすごく近くて。多分、東京で“困ったことあったらなんでもやります”って言っても、多分誰もお願いしに来ないと思うんすよね。でも、それが実際にありえそうな街の雰囲気だなっていうのは、そんなに長いこといたわけじゃないですけど思いました。この作品を通してそんな鹿児島の人や街の魅力がたくさんの人に伝われば嬉しいなと思っています」と、すでに天文館が第二の故郷のように愛着が湧いているようだった。

ちなみに蓮たちと対立する議員の息子・板倉靖幸役には室龍太、誘拐犯の蒲生清彦役に高田翔、凪の兄で医者の橋口拓海役に原嘉孝が友情出演している今作。かつて寺西と演劇ユニットを組んでいた気の置けない盟友たちとの共演は、感慨深いものがあるとしみじみ。彼らとの強い連帯感が発揮されたシーンもあるので見逃せない。

「元々同じタイミングでジュニアというところから、ジュニアを卒業して一人のアーティストとなった4人なので、なんとなく仲間意識がずっとあります。映画の撮影の後に4人でこういうのがやりたいっていう舞台『カリズマ』をやらしてもらったメンバーでもあるので、すごく気心の知れたメンバーと映像という場所でお芝居ができて、嬉しかったですね。僕は撮影中、ずっと鹿児島にいたんですが、原は半日で撮影が終わったにも関わらず、なぜか2泊くらいして、打ち上げにも参加するという、よく分からない状況でした(笑)」

今作を撮影したのは、今年2月、timeleszの一員になる直前。この1年間、激動の日々を送ってきた寺西。映画撮影をもしも今の寺西で演じたら、違うものになっていたか尋ねると「違うのかもしれないですけど、その時できることは全部やってきているので」とニッコリ。

「この映画はオーディションに挑む2日前まで撮ってたもの。当時はまさかこうなるなんて、僕も思っていませんでした。もしもグループのメンバーになってから、撮影したら、ちょっとだけ前よりも鹿児島で騒がれるかもしれないですよね。ほんのちょっとだけですよ?(笑)。 元々、映画が好きなので、スクリーンで観られるのが楽しみです」と映画館で主演作を観られる喜びを語っていた。

舞台の経験が豊富な寺西。舞台と映画の演じ方の違いや舞台で表現することの難しさはどんなところで感じているのだろうか。

「映像作品は舞台と違って、必ずシーンの流れ通り、順撮りで撮るわけでもないんですよね。結構、ぶつ切りで撮っていくので、そういった意味での表現の仕方みたいなのは、舞台とは違うなと思います。僕は舞台に慣れてるので、まず稽古をしてから、最初から終わりまでを通して、その時間軸でその役でいられるっていうところが舞台の良さというか、舞台の魅力だと思いますね。そういった意味で言うと、ドラマや映画は、ワンシーンワンシーン、瞬発力がすごく大事なんだなっていうのを改めて思いました。あと、演劇と違って、切り取る画によって、伝えたいことや伝わることって全然違うんですよね。表情に寄って切り取ってもらえるのは、映像の魅力的だと思います」

timeleszのメンバーに会うとホッとします

世のため人のためなら熱くなれる蓮を演じた寺西が思わずこういう時は、熱くなってしまうという瞬間は、一体どんな場面なのか、気になるところだ。

「なんかいいものを観た時ですかね。演劇にしても、映画にしても、ライブにしても、主に生のものですけど、そういう瞬間はもう感情がすごく高ぶりますね。それが友達の出ている舞台だとか、友達がやってるライブとかだったら尚更、その人に全部高ぶった気持ちをぶつけたくなるぐらい熱くなります」

憧れのアーティストのステージよりも自分と縁のある周りの人たちが頑張る姿に心が動くというところが寺西らしい。そんな寺西が最近心を動かされたこととは――?

「音楽をやっている友人の舞台があって、その物語が本人たちともリンクするような作品だったんです。それを観た時に結構いろんな感情になって、もう終わってすぐの勢いで楽屋裏に行って、熱い思いをぶつけたのは覚えてますね」

とにかく多忙の寺西にリフレッシュ方法を聞いてみると、こんな回答が。やはりメンバーと過ごす時間にホッとすると判明。

「結構短いスケジュールで撮り終えたので、撮影期間中は、夜が遅くて朝が早いっていうスケジュールが割と続いていたんです。もしこれがもうちょっと緩い撮影スケジュールだったら、多分もっといろんな所へ行って遊んじゃってたんじゃないかな。タイトだったからこそ、普通に規則正しい生活をしていましたね。最近は、ちょっとゆっくりできる時間ができた時は、前からお世話になってる人とか、仲良くしてくれてる人と会って話す時間をより大切にするようになりましたね。あと、リフレッシュ方法ではないですが、ライブが週末にあって、メンバーと会うとホッとするというか、やっぱり安心感がありますね」

撮影/梁瀬玉実、取材・文/福田恵子
ヘアメイク/二宮紀代子、スタイリング/九(Yolken)

<作品情報>
『天文館探偵物語』

12月5日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

主演:寺西拓人
出演:大原優乃 肥後遼太郎/室 龍太 高田 翔 原 嘉孝(友情出演)/SHIGETORA 西田聖志郎 新名真郎/西岡德馬
監督・脚本: 諸江 亮

【ストーリー】
バーで働きながら密かに探偵業も営む・宇佐美蓮(寺西拓人)は相棒の山下健斗(肥後遼太郎)と共に、DV夫から逃げてきたと言うシングルマザー・凪(大原優乃)と出会う。蓮と健斗は、凪の働き口と凪の息子を預けられる託児所を紹介するが、安心したのもつかの間、凪の息子の誘拐事件が起きる。やがて事件の背景にある天文館の再開発に巻き込まれてしまう。蓮たちは、凪親子と天文館を守るため立ち上がる―― 

(C)2025「天文館探偵物語」製作委員会

関連リンク

公式サイト:
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