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夏目愛海「この作品でしか味わえないものがたくさんある」 米劇作家の問題作『Downstate』に挑む

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夏目愛海 (撮影:藤田亜弓)

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演出家・稲葉賀恵と翻訳家・一川華のユニット「ポウジュ」。その第2弾では、アメリカの劇作家ブルース・ノリスの問題作を取り上げる。舞台はイリノイ州南部にある、小児性加害者たちが共同生活を送るグループホーム。そこに幼少期に被害に遭ったアンディが、妻と共にやって来て…。加害者のひとりであるジオの同僚・エフィーを演じる夏目愛海に、ここまでの稽古の感触、作品への想いを訊いた。

「いつか絶対ご一緒したい!」が現実に

――夏目さんはオーディションからの参加だそうですね。

はい。一川さんと稲葉さんがいらっしゃって、たっぷり時間をかけてお芝居を見てくださいました。それがオーディションとは思えないほど楽しくて! おふたりのことが大好きになりましたし、今回は厳しくてもいつかご一緒したい!と思ったほど。それだけに出演が決まった時は本当に嬉しくて、今までで一番の嬉し泣きの日になりました。

――ただ作品の題材としては、小児性加害者という非常に厳しいものですね。

私は加害者4人のことは全く許せないですし、意味が分からないですし、理解することも出来ません。ただ勉強会で先生が「理解出来ないということを知ることが大事です」とおっしゃっていて。つまり自分の嫌悪感だけで終わらせてしまうのではなく、この作品を通じて知ることで、なにか考える機会になれば……。それはお客様だけでなく、今、自分自身が実感していることです。

――演じられるエフィーについて、現段階ではどういった人物として捉えていますか?

エフィーはADHDと、間質性膀胱炎という病気を抱えている女の子で、今までに生きづらいことはたくさんあったと思います。ただこの日、この場所においては、完全なる部外者で。そういう本来存在すべきではない人間として、しっかりそこに存在出来たらと思いますし、ここで見せるエフィーの無知さは、社会全体の無関心さを表しているところもあるのではないかと思います。

――劇中ではジオとの関わりが多いですが、彼との見え方や関係性で意識されていることはありますか?

稲葉さんから、「ふたりがセットに見えたらもったいないよね」というお話がありました。というのもジオとエフィーは似ているところがあって、それだけにジオなりの、エフィーなりのアプローチの仕方を模索していくことが大事ではないかと。またふたりの関係性としては、仲間ではあると思いますが、お互いにとって単に都合のいい存在だと思います。なにかあったら簡単に切れてしまう。そういう冷たい、細い、それでいて大事な繋がりなのかなと思います。

重い題材でも稽古場は前向きに――言葉と向き合う時間が楽しい

――稽古開始から約2週間とのことですが、ここまでの感触はいかがですか?

こんなに何度も本読みをする稽古というのは、私にとって初めての経験でした。海外戯曲ってちょっと堅苦しくなりがちだと思うのですが、一川さんが翻訳し直す度に、言葉がどんどん作品に溶け込んでいって。その作業がとにかく楽しいですね。稲葉さんの演出はとてもわかりやすく、とにかくやってみよう!と思えるような声がけをしてくださいます。また稲葉さんご自身がとても明るいので、作品自体の重さが稽古場の空気に浸食することなく、うまく中和してくださっているなと思います。

――実力派のキャスト陣がそろっていますが、稽古場からどんな学びを得ていますか?

もう学びだらけです! 最初の本読みの時から、この作品ってこんなに笑いが起きるんだ!?と驚いたくらい、皆さん本当に面白いです。もちろん内容としては重いのですが、加害者なのに軽やかで、それが見ていて逆に痛くて…。日々、すごいものを見ているぞ、という気持ちでいっぱいです。

――本作を通し、お客様にはどんな体験をお届け出来るのではないかと思いますか?

この作品でしか味わえないものがたくさんあると思います。これが悪、これが善、と押しつけるような作品ではなく、「あなたはどう思いますか?」という作品だと思うので。黒か白か、はっきり分かれていたらわかりやすいんですけどね。グレーでもないし、限りなく黒だけど、そこにぽつんと白い点が落とされたりして。その中で自分がどう思うのか、ぜひ体感しに来ていただけたらと思います。


取材・文:野上瑠美子 撮影:藤田亜弓

<公演情報>
ポウジュ Vol.2『Downstate』

作:ブルース・ノリス
演出:稲葉賀恵
翻訳:一川華

出演:
尾上寛之 豊田エリー 大鷹明良 植本純米 串田十二夜 大石将弘 桑原裕子 夏目愛海
岡野一平 中野風音 丸林孝太郎

2025年12月11日(木)~21日(日)
会場:東京・駅前劇場

関連リンク

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/pauju/

公式サイト:
https://www.pauju-play.com/

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