『The Life of HOKUSAI』凱旋公演実現! サカクラカツミ、沙央くらまが描き出す、天才絵師・北斎と妻の姿とは──?
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すべて見る幼い頃から空手を学び、日本の伝統文化の身体の使い方をもとにした独自のダンススタイルを確立、生のパフォーマンスと映像をシンクロさせる「プロジェクションライブ」をもって国際的に活躍するサカクラカツミ。彼が構成・脚本・演出・振付と出演を務める『The Life of HOKUSAI』は、葛飾北斎生誕260年の節目となった2020年12月に誕生、コロナ禍の中、無観客で上演された。その舞台映像が翌年、英国エジンバラ芸術祭フリンジで4つ星を獲得、さらに2023年のイタリアをはじめ欧州7カ国での上演を果たし、各地で高評を得た。その凱旋公演が2026年4月18日(土)、東京・浅草公会堂にて実現する。北斎を演じるサカクラカツミと、北斎の妻・小兎役で本作に初参加を果たす沙央くらまが、公演への熱い思いを明かす。

──サカクラさんはこの『The Life of HOKUSAI』で、物語を伝える舞台作品に初めて取り組まれたそうですね。当初はどのようなお気持ちで北斎という題材に向き合われたのですか。
サカクラ 最長でも15分くらいの作品しか作ったことがなかったので、本当に悩みました。が、さまざまな文献で北斎の普段の素行や食の好み、人生のいろんな機微について読むと、どれも私とぴったり一致。人と接するのが苦手で、頬かぶりして下を向き、呪文みたいなものを唱えながら歩いていたそうですが、私も人が話しかけにくいようヘッドフォンを付けて歩いている。一緒だなと(笑)。
──沙央さんもサカクラさんのそんな姿をご覧になったのですか。
沙央 いや、私はお会いして今日でまだ2回目なので(笑)。以前、北斎のお墓参りにご一緒させていただいたんですが、実はそこに小兎さんも一緒に眠られていると伺い、びっくりしました。
サカクラ 公演日の4月18日がたまたま北斎の命日だったこともわかったんです。一般に知られている命日は新暦の5月10日ですが、北斎のお墓がある誓教寺では4月18日に催し物をされている。またパズルがはまったように感じました。


──沙央さんは今回の舞台へのオファーをどのように受け止められましたか。
沙央 実は昨年、二人目を出産したのですが、子育てをする中で、子どもたちに何を残したいか、未来をどうしていきたいのかと考えるようになり、日本の伝統芸能を伝えるためのお祭りやフェスを主催しようと活動を始めたところだったんです。これは運命! と思いました。自分がしたいと思うものが明確に見えてくると、こうして導かれるんですね。


──北斎の姿を描くにあたり、妻の存在、妻との関係に光をあてられたのは、どんな思いがあってのことでしょうか。
サカクラ 北斎は結婚29年目に突然奥さんを亡くしています。この作品を作り始めたとき、私もちょうど結婚29年目。その前年くらいに妻が救急車で運ばれ、6時間の緊急手術を受けて助かったという経験をしました。北斎が売れるようになったのは50過ぎで、それまでは奥さんがお金の工面をしていたそうですが、実は私もパフォーマンスでお金が貰えるようになったのは48歳になってから。手術後、私は妻に感謝し、大切にするようになりましたが、北斎は大切にしなければならないものを蔑ろにしてしまい、どん底に落ちる。そこから復活したからこそ、あれだけの作品を描けるようになった──。これこそがまさに、私がエンターテインメントで伝えていかなければならない北斎からのメッセージだ、と思いました。
──沙央さんの小兎役にはどのようなことを期待されていますか。
サカクラ 北斎は観音さまと龍をセットで描くことが多く、私は龍が北斎で観音さまが亡くなった奥さん、と捉えています。迷惑ばかりかける頑固者の北斎を温かく包んで、「それでもいいんだよ、私がついているからね」と支える。沙央さんの雰囲気もまさにそう。とても優しい目をされています。
沙央 声は少し図太めですが(笑)。北斎はたぶん、アイデアが浮かんだらすぐにアウトプットしないと壊れてしまう人。奥さんは横に並んだり、後ろに控えたりしながら同じ道を一緒に歩んでいたのかなと思います。私が北斎の絵を見て「面白いな」と思っていると、私の後ろにいる小兎さんが「でしょ?」って言っている感じもします。「この人、面白いのよ」って(笑)。


──サカクラさんは北斎の筆遣いを、専門家の方に習いに行かれたそうですが、どのような手応えを得られましたか。
サカクラ その筆さばきにはリズムがあるということがわかったんです。それが、私がやってきたパフォーマンスの手法とぴったり合う! 日本の武道の身体の動きは、すべて腰の動きから発せられますが、それが筆の中に現れていた。まさに北斎が筆でやっていたことを私は全身でやればいいんだと気づき、ダンスに取り入れています。
沙央 舞台の映像を拝見して、あの世界観はどう作られているのかな、と思っていました。演出も担うカツミさんは大きな責任を背負われていますが、演じ手が別の人ではここまで実現できないでしょう。逆に、北斎さんも踊りながら、ライブアートのように描いていたのでは、と感じたりもします。
──一日限りの公演に、期待が高まります。
沙央 貴重な一日に参加できて幸せです。運命的な一日になると思うので、その瞬間を観ていただけたらなと思っています。
サカクラ 二百年前の北斎のメッセージをダイレクトに受け取り、舞台化しました。ぜひご覧いただいて、皆さんにも北斎からのメッセージを受け取っていただきたいと思います。この作品は私のライフワークになりました。私は以前から85歳まで現役で舞台に立つと言っていましたが、5歳のばして、北斎の90歳の絶筆を、リアルな90歳で舞台にすることを目指し、頑張ります。


取材・文/加藤智子
※舞台写真は過去公演より
<公演情報>
『The Life of HOKUSAI -日本凱旋公演-』
日程:2026年4月18日(土)15:30公演/18:00公演
会場:浅草公会堂
[構成・脚本・演出・振付] サカクラ カツミ
[出演]
サカクラ カツミ(パフォーミングアーティスト)
小林太郎(和太鼓奏者)
鎌田薫水(薩摩琵琶奏者)
加藤花鈴(コンテンポラリーダンサー)
沙央くらま(俳優)
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/hokusai/
公演オフィシャルサイト
https://napposunited.com/hokusai_stage/
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