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「音そのものの魅力を届けたい」──日本音楽コンクール優勝・ピアニスト加藤皓介、19歳の決意

クラシック

インタビュー

チケットぴあ

加藤皓介

第94回日本音楽コンクール・ピアノ部門で第1位と岩谷賞(聴衆賞)を受賞したピアニスト、加藤皓介。
落ち着いた語り口で、しなやかな強さと熱量を秘めた19歳は、「ピアノを弾く時は、相撲の四股(しこ)を踏むように“どっしり” 構えるんです」と意外な一面も覗かせる。
音楽への姿勢、困難の乗り越え方、そしてこれから挑む未来まで――。今もっとも注目される若きピアニストが、自身の“音”を語った。

──1位と聞いた瞬間は、どのような思いがありましたか。

加藤 まったく想像していなかったので、本当に驚きました。たくさんの方からお祝いの言葉をいただいて、コンサートの依頼をいただくようになって、ようやく実感が湧いてきたところです。僕は「よし、行くぞ!」と気負うと体が固まってしまうので、できるだけリラックスした状態で、自分の思いをお届けしようという気持ちで臨みました。演奏の20分間はかなり集中できていたので、手応えはありました。

──岩谷賞(聴衆賞)とのW受賞です。大会関係者からは「情熱的な演奏だった」という声を聞きました。

加藤 本当ですか? うれしいな。観客のみなさんの拍手が温かくて、会場全体と繋がれたような感覚がありました。でも、表現力を磨くにはまだまだ人生経験が足りません。映画を観たり、本を読んだりして、感情の種類をもっと増やしていきたいと思っています。

──音楽以外の経験も演奏に反映されている?

加藤 はい。たとえば、僕はお相撲が好きなんでけど、ピアノを弾く時に相撲の四股を意識しています。

──四股ですか! ピアノと相撲、まったく繋がりがないように思いますが……。

加藤 お相撲って体幹がどっしりしているんです。ピアノの椅子に座る時は、四股を踏むイメージでしっかり足を踏ん張って、体の軸を安定させるようにしています。スポーツから体の使い方を学ぶことが多いです。

──5歳でピアノを始めてから数々の音楽コンクールで優勝しています。ピアニストとして順風満帆と言えるのでは。

加藤 まったくそんなことありません。小学生の頃はコンクールで1位をいただいていましたが、中学生になってからはなかなか優勝ができなくて……。結果が伴わなくて苦しい時期が続きました。その頃は、「自分はこう弾きたいんだ」と感覚だけで突っ走るクセがあったんです。楽譜に書いてあることを読み取れておらず、自分勝手な解釈やニュアンスで演奏してしまったり……。

──その壁をどう乗り越えたのでしょう?

加藤 高校で音楽理論を勉強して、“楽譜の美しさ”に気づいたことが大きかったです。楽譜を深く読み込むことで、作曲家が見ていた景色が見えてくる。自分を前に出すのではなく、“音の良さ”を伝えたいと思うようになってから、演奏が変わりました。

──“音の良さ”についてもう少し教えてください

加藤 ドラえもんの四次元ポケットみたいに、音色のレパートリーをできるだけ多く持っていたいんです。お客さまが“次はどんな音色が出てくるんだろう”とワクワクしてくださるように、会場の空気に合わせてアドリブ的に雰囲気を変えることもあります。その瞬間のスペシャルな音色を常に探しています。

──コンクール本選で、リストの「ピアノ協奏曲第1番 変ホ⾧調 S.124」を選んだ理由を教えてください。

加藤 3年ほど前、師事している先生がこの曲を薦めてくださいました。当時は曲の冒頭しか知らなくて手探りだったのですが、何度かオーケストラと共演させていただくうちに大好きな作品になりました。

──好きなポイントは?

加藤 第1楽章から第4楽章までがひとつの物語のようになっています。第1楽章のオクターブの壮大さ、第2楽章の涙が出るような抒情的なメロディ、第3楽章の異国感、第4楽章のラストに向けた盛り上がり……! 聴きどころが満載です。オーケストラとの掛け合いも面白くて、トライアングルが出てくるなど、華やかさがすごく好きです。

──2026年3月、第94回日本音楽コンクールの受賞者たちが勢揃いする演奏会が開催されます。

加藤 コンクールではオペラシティのコンサートホールでしたが、3月は東京芸術劇場コンサートホールです。同じ曲を違うホールで演奏できるのが、とても楽しみです。どんな響きになるのか、コンクールとは違う味を出して、宝石のように輝く音を届けたいです。

──今後はどんな活動をしていきたいですか。

加藤 海外に留学できればと思っています。今はすごくショパンを学びたいのでポーランドか、ドイツの作曲家が好きなのでドイツか……悩みます。まだ国際コンクールへの出場経験がないので、ここからがスタート。新たな気持ちで臨みたいです。
また、歌も好きですから、自分の演奏会で歌うなども挑戦してみたいです。中学1年から声楽を習っていて、高校の学祭でミュージカル「ノートルダムの鐘」の主役を演じたこともあります。あとは、自分でオーケストラをつくって、指揮者として弾き振りもしてみたいです。各国を飛び回る世界ツアーも理想です。

──夢が広がりますね。

加藤 たくさんのことに興味があるので、新しい音楽のかたちに挑戦していきたいです。僕はポップスも好きですが、音楽で感動するのはクラシックなんです。人の心を変化させてしまうくらい、感動をお届けできるピアニストを目指しています。

取材・文/北島あや
本選会撮影/宮森庸輔

<公演情報>
第94回日本音楽コンクール受賞者発表演奏会

日程:2026年3月5日(木)
会場:東京芸術劇場

【チケット情報】
チケットURL
https://w.pia.jp/t/mainichi-classic2026/

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