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『サムシング・ロッテン!』7年ぶり待望の再演! 中川晃教×福田雄一が熱き思いを語る!

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(左から)中川晃教×福田雄一

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数々の人気ミュージカル作品やシェイクスピア戯曲がところどころに顔を出す、舞台好きにはたまらない面白さが詰まったブロードウェイ・コメディミュージカル『サムシング・ロッテン!』。主演・中川晃教&演出・福田雄一によって2018年に日本版初演の幕を開けた本作が、7年の時を経て再登場する。主人公の劇作家ニック・ボトムに扮する中川とその妻ビー役の瀬奈じゅんが初演に引き続き出演、そのほかのメインキャストは新たに贅沢な顔合わせが実現した。再演を待ち望んでいたという中川と福田が、作品やお互いについて、さらに日本のミュージカルの展望について、ミュージカル愛のほとばしる対談を展開!

――主演&演出としてタッグを組んだ『サムシング・ロッテン!』が7年ぶりに動き出しました。

福田 初演の後、アッキー(中川)とは『グリーン&ブラックス』というWOWOWの番組で会う機会がありまして、もう会うたびに「ロッテンまたやろうよ!」って言っていたんだよね? やろうやろうと言っているうちにコロナ禍に突入してしまい……。だから僕とアッキーにとって、この再演は念願だったんです。

中川 初演から7年、あっという間でしたね。それこそコロナ禍ではいろんなエンターテインメントがストップして、辛かったじゃないですか。またみんなで再会できる日が必ず来るんだ! って気持ちも重なって、またやりましょう! と。そう言い続けてようやくここまで漕ぎ着けました。幸せです。

――ルネサンス時代のイギリスを舞台とした物語の中で、中川さん扮する主人公、売れない劇作家ニック・ボトムがライバル視するのは、あの有名なシェイクスピア。初演では西川貴教さんが演じられたシェイクスピア役を、今回は加藤和樹さんが担います。イメージが大きく変わるのは必至で、加藤さんのコメディセンスに注目ですね。

福田 カズッキー(加藤)はメチャクチャ面白い子ですよ! とんだ天然です。

中川 とんだ天然(笑)。

福田 『グリーン&ブラックス』で当時、僕が仕切るトークコーナーがありまして、カズッキーが一番饒舌だったんですよ! 実は笑いが大好きなんだよね。で、今回のきっかけになったのが、僕が演出したミュージカル『ビートルジュース』の初演(2023年)を観に来てくれた時に、もうだいぶスクロールしなきゃ読みきれないくらい長文の感想をくれて。

中川 へえ〜!

福田 「すごく面白かったです。福田さんとコメディミュージカルをやりたい気持ちが強くなりました」といった感想なんですよ。それで今回、再演をやろうとなった時に、カズッキーにナルシストな役をやらせたらメチャクチャ面白そうだなと(笑)。それで「『サムシング・ロッテン!』再演するんだけど、シェイクスピア役をやってくれないか」って直接連絡したら、「わかりました!」って(笑)。もしかしたら皆さんのイメージにはなかったかもしれないけど、僕からしてみれば、カズッキーは“お笑い大好き!”ってイメージです。だから今回はだいぶ暴れてくれるんじゃないかなって期待感はすごくありますね。シェイクスピアは、一幕では確実にナルシストとして登場するのでそこは本当に期待していますし、ブロードウェイのオリジナル・キャストのクリスチャン・ボールとカズッキーはなんとなく雰囲気が似ているから、ボールがやっていたナルシスティックなテイストは上手い気がするんですよね。で、二幕ではシェイクスピアはだいぶボケないといけないんですよ。一幕でバリバリのアーティストとして演じていて、二幕でガチ崩れする、そのカズッキーは絶対に面白いと思うんだよね(笑)。

中川 今から想像して、ひとりでニヤニヤしますね。僕と和樹さんは今年、ミュージカル『フランケンシュタイン』で博士と、博士が作った怪物を演じていて、そこにも愛があるわけですよ(笑)。和樹さんって、その時々の相手役に上手く変わってくれる人なんです。そこでお互いの核となる部分がしっかり通じ合った瞬間に、不思議とひとりではできない芝居ができたりするんですよ。今回は僕が売れない劇作家だから落ちぶれた役で、和樹さんはスターで優等生のシェイクスピアで。『フランケンシュタイン』とは逆の立場を演じるわけで、どうなるんだろうってドキドキしますね。

福田 二幕では、シェイクスピアは変装してニックの劇団の劇団員に志願して来る。そこのキャラクターは、今はカズッキーを何にしようかってことを考えるのが一番楽しいです(笑)。

中川 カンパニーの力で作り上げた初演を土台に、さらにどこに向かっていくのか。和樹さんを含め、今回のキャストの皆さんの顔ぶれを見たら、期待値は上がりますよね。初演から関わるひとりとして頑張らなくちゃ! と思います。

――福田さんが、この再演で中川さんにチャレンジしてほしいと思っていることは?

福田 たぶんアッキーが自分でチャレンジしようと思わなくても、せざるを得ないメンバーを集められたなという気がしています。初演のニック・ボトムは完全に僕の理想型だったから何の不満もないんです。でも予言者ノストラダムス役の石川禅さんやカズッキーに合わせなきゃいけないところが絶対に出てくるから、そこは楽しんでほしいなと思いますね。禅さんとか、生半可な遊びようでは許してくれないと思うよ(笑)。僕は禅さんとは、山口祐一郎さん主演のミュージカル『エドウィン・ドルードの謎』(2016年)を演出した時に、劇場で初めてお会いしているんです。祐一郎さんがお客さまをバッカンバッカン笑わすようなミュージカルで、禅さんが「祐一郎さんをあんなふうに演出する演出家、初めて見た! 本当に驚きました」って言ってくれて(笑)。それで「いつかご一緒しましょう」と言ってからの、ようやく今回なんですよ。

中川 僕はデビュー作『モーツァルト!』の次にやった20歳の時の舞台で、禅さんとご一緒しているんです。

福田 20歳以来なんだ!

中川 そうなんです。コンサートなどでご一緒したことはあるけど、こうして作品でガッツリ組むのは20歳以来。

福田 それは感慨深いね。

中川 今回はよく知っているメンバーが多いので、いろんなものを台本から読み取ってさらにもう一つ先へ、ガッといきたいですね!

福田 そうですね! 本当に、僕としてもよくこんなキャストが集まったなと思っているんです。ニックの弟ナイジェル役の大東立樹君……リッキーは、うちの長男の響志(福田響志。本作で翻訳・訳詞、タップ振付・演出補・振付補を務める)が『ピーター・パン』でジョン役をやった時のマイケル役なんですよ。

中川 へえ〜、すごい縁ですね。

福田 巡り合わせにびっくりですよ。また、ポーシャ役の矢吹奈子ちゃんは、さっしー(指原莉乃)がHKT48在籍時に「私がとくに可愛がっているこの子、可愛くないですか?」って写真を送ってきたのが奈子で、当時12歳ですよ。「ポーシャ役に矢吹奈子ちゃん、どうですか」と言われた時、これあの時の奈子だよなぁと(笑)。さっしーに「奈子って歌上手いんですか」って聞いたら、「メチャクチャ上手いですよ!」って返ってきました。だからリッキーにしても奈子にしてもあまりにも運命的で、驚くぐらい嬉しかったですね。

――初演での作品づくりを通して、お互いの印象や魅力についてお話しいただけますか?

中川 福田さんはやっぱり、すごい方だと僕は思っているんです。映画というもうひとつスケールの大きい世界でも戦われていて、その一方でミュージカルをこよなく愛している。初めてご一緒したこの作品を一回ぽっきりで終わらせたくない! と思ったし、福田さんも「もう一回やろう!」と言ってくださった。『サムシング・ロッテン!』という作品でしか得られないコメディの経験というものがあると思うので、今回も臆せずにやっていきたい……と思わせてくださる演出家さんです。

福田 ミュージカルの役者さんって、私生活が透けないというか人間味を感じさせないほうがベターなこともあるじゃないですか。だってミュージカルって“黄泉の帝王”みたいな(笑)、この世のものではないような役もあるわけで。ミュージカルを観るお客さまたちも多分、そういう部分に夢を抱いているところも絶対あるだろうなと。で、アッキーにもそういう面はあるんですけど、このニック・ボトムの役をやってもらった時に、ものすごく人間味を出してくれていることに驚きを感じたんです。お客さまのところまでちゃんと降りてきてくれた感があって。だから僕はアッキーのニックが大好きなんです。
なんなら僕も売れない劇団を率いて頑張っている人間なんで、すごくニックに共感があるんです(笑)。「シェイクスピア、何で売れてるんだ! 僕はアイツが大嫌いだ!」って言う気持ちもよくわかる(笑)。それって、役者さんがそこまで降りてきてくれないと、真実味を持って伝わらないじゃないですか。「いやいや、そんなん言うてもあなたカッコいいよ、全然売れない人じゃないじゃん」って言われたらそれまでなんですけど、アッキーはちゃんと売れない劇団の座長にまで降りてきてくれた。それは僕、すごいことだ! と思っているんです。なかなかミュージカル俳優さんで、これをやれる人は稀有なんじゃないかなって。最初は「本当にモーツァルトとフランキー・ヴァリ(『ジャージー・ボーイズ』)を演じていた中川晃教がこれをやってくれるんだろうか!?」という疑問はありましたけど(笑)、いい感じに降りてきてくれました。

――ミュージカル愛で共鳴するおふたりにお伺いしたいのですが、今は韓国ミュージカルが隆盛を極めていて、日本でリメイクもたくさん作られていますよね。そのような現状において感じる日本のミュージカルの問題点、また逆に誇れる点などもお話しいただけたらと思います。

福田 う〜ん。何だろうなあ。僕が思うに、攻めの姿勢に持っていくための余裕がなくなっているんじゃないかなと。制作側が……とくに大手の会社が作品力で集客しようという姿勢に方向転換されているじゃないですか。でもちょっと昔は違ったと思うんですよ。素晴らしいミュージカル俳優さんを主演に迎えて、こんな、あんな作品も試してみようという気概があったと思うんです。
劇団四季さんが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を持ってきた時に、社長さんが「劇団創設からこれまでの観客のデータを調べたら、8、9割が女性のお客さまだった。もっと男性や子供も楽しめる、家族で観にこられるミュージカルが必要だと思ったので『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を上演することにしました」とおっしゃっていたんですね。僕も先日観に行きましたが、特殊な劇場機構を必要とするからいわゆる貸し劇場では絶対に実現できない、劇団四季じゃないとやれない作品で、それを実現されたことは素晴らしいなと思ったんです。ひとつのエンターテインメントとして劇団四季があの作品を提案したことが、僕は嬉しかった。
結局、そこを攻めることができるかどうかだと思うんですよ。作品力を持ったメジャータイトルが確実にお客さまを集められる、その確証があるのは分かるんですけど、勝負に出なきゃいけないんじゃないかな、というのは常々思うことですね。

――そうした現状の中で、福田さんは攻めている演出家と言えるかもしれませんね。

福田 そうですね。自分で言うのもナンですけど、ミュージカル界では若干、僕は孤軍奮闘感があります(笑)。だって、『ビートルジュース』という作品があれほどお客さまに喜んでいただけるとは、制作側の人たちは思っていなかったと思うんですよ。たまたまジェシー君という天才を迎えることができて、ああいう形でお客さまにとても喜んでいただけたのは、すごくありがたいことだなと。

――ある意味、『サムシング・ロッテン!』も攻めの作品で、それは中川晃教さんが中心に立つからこそ攻められるということでしょうか。

福田 そうですね。僕だって野面で攻めるわけじゃないから(笑)、ちゃんと演出家として集客をしなければいけないことも分かっています。ミュージカルを愛してくれているお客さまに観てもらいたいから、やっぱりミュージカルに愛された役者さんでやるべきだという思いは絶対にある。そこは考えなければいけないけれど、その上で、こういう攻めた演目をやっていって「こういう作品でもいけるんだ!」という実績を作っていかないと。韓国は、創作ミュージカルにおいてその実績をちゃんと作ってきたから攻められるのだろうと思います。実績を積んで、制作の人たちに「これでもいけるんだ!」と思ってもらって、一緒に攻めていってほしいなという気持ちはすごくありますね。

中川 僕は俳優の立場として考えた時に、今、いろんな表現者の人たちがミュージカルを主戦場として考えてくれるようになってきたのはすごく嬉しいことだなと思います。僕は歌手として18歳でデビューして、19歳で初めてミュージカル『モーツァルト!』に挑んで、右も左も分からずただがむしゃらにやっていました。当時、歌声には自信があったけれど、それだけが武器でしたよね。でもミュージカルでやらなければいけないことは、歌だけじゃないですから。悩んで、どうすればいいんだろうと自暴自棄になる時もありました。
そうやって悪戦苦闘しながらミュージカルとともに歩んで来たこの時間を振り返ってみると、韓国も、世界も、絶えず新しいものを作り続けてきている。日本もその挑戦を止めてしまってはいけないなと、あらためて思います。そういう意味では、『サムシング・ロッテン!』が今の日本のミュージカル界に、あるメッセージを投げてくれるのではないかなと思うんですよね。

福田 そう思います。この攻めた演目を中川晃教がやる……アッキー、カズッキー、禅さんなどがやるというところに大きな意味があるんですよ。こういう挑戦をこれからも絶対にやっていかなければいけないなと思いますね。

取材・文/上野紀子

<公演情報>
ミュージカル『サムシング・ロッテン!』

【東京公演】
日程:2025年12月19日(金)~2026年1月2日(金)
会場:東京国際フォーラム ホールC

【大阪公演】
日程:2026年1月8日(木)~12日(月・祝)
会場:オリックス劇場

[作詞・作曲] ウェイン・カークパトリック、ケイリー・カークパトリック
[脚本] ケイリー・カークパトリック、ジョン・オファレル
[演出] 福田雄一
[翻訳・訳詞] 福田響志
[出演] 中川晃教 加藤和樹 石川禅 大東立樹(CLASS SEVEN)  矢吹奈子 瀬奈じゅん ほか

チケットURL
https://w.pia.jp/t/sr2025/

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