いま、つかこうへい作品を演じることの意味「70年代の劇場空間の熱気を伝えたい」インタビュー 宮原奨伍×広山詞葉
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俳優の宮原奨伍がプロデューサーを務め、つかこうへいの代表作2本を日替わりで上演する「熱海殺人事件と売春捜査官」が紀伊國屋ホールにて2026年2月4日(水)〜8(日)に上演される。
「北区つかこうへい劇団」に研修生として1年間在籍した経験を持つ宮原だが、今回の公演と並行して「つかこうへいを知る旅」と銘打ったプロジェクトを始動。つかにゆかりのある俳優や関係者へのインタビューなどを行なっている。なぜ、いまの時代につかこうへいの作品を発表するのか? 宮原、そして「売春捜査官」で主人公の女性部長刑事・木村伝兵衛を演じる広山詞葉の二人に話を聞いた。
――まずこの企画の成り立ちについてお伺いします。
宮原 僕が俳優になると決めたのが20代はじめのイギリス留学中で、それ以前は演劇を見たこともありませんでした。現地で知り合った日本人の方から「蜷川幸雄やつかこうへいの舞台に出るといいよ」とアドバイスされて、帰国して「つかこうへい劇団」のオーディションを受けました。10期生のオーディションだったんですが、その時は落ちてしまい、大学に戻って演劇を始めて、4年後の14期生に受かって研修生になりました。 当時、研修生はつかさんに話しかけるのは禁止されていて、つかさんが演出する稽古場に入ることも許されませんでした。一度だけ、「今日は見学していい」という日があり、つかさんが演出をつけているのを見たのはその1回きりです。
その後、二十年ほど俳優をやっていますが、いまの自分があるのは、あの劇団での1年のおかげだと思っています。2019年に近江谷太朗さんがプロデュースされた『熱海殺人事件』で熊田留吉役を、さらに昨年は「~新感覚つかこうへい~『熱海殺人事件』『売春捜査官』」において、『熱海殺人事件』で初めて木村伝兵衛をやらせていただきました。初日に風間杜夫さんがいらして、これまで褒めていただいたことのない風間さんから「今日はお前を褒める」という言葉をいただきまして。それがすごく嬉しくて、なおかつ「いまだからこそ、この作品で伝えられるものがあるんじゃないか?」という思いも込み上げてきて、風間さんからいただいたアドバイスも踏まえつつ、新たにやりたいと思って、この企画をスタートしました。

――広山さんは、いま宮原さんの話にも出た昨年の「~新感覚つかこうへい~」の『売春捜査官』で木村伝兵衛を演じられましたが、つかこうへいという作家に対し、どのような思いを抱いていますか?
広山 私は大学進学を機に広島から上京して、日大の演劇学科で、それこそ“教科書”としてつかさんの戯曲に触れて「かつては紀伊國屋ホールが人であふれて……」といった話も授業で耳にしました。実際に紀伊國屋ホールで『熱海殺人事件』を拝見したこともあり、その時、ものすごい衝撃を受けました。当時はつかさんの戯曲のセリフを「過激」と感じたこともありましが、それがものすごく刺さってずっと残っていましたし、あの爆音にも魅せられました。
つかさんの作品からは、人に向き合うエネルギーを感じます。『売春捜査官』でいうと木村伝兵衛という女性は、すごく踏ん張っているなと感じます。実際、稽古で言葉を口に出してみて「踏ん張って生きる」というところにすごく魅力を感じています。
ですが、いま稽古をする中で、伝兵衛は決して強いわけではなく、弱くてかわいい人で、でもそんな彼女があえて踏ん張っているのではないか? とも感じています。弱いからこそ人の痛みがわかるし優しくできる。その表し方は独特ですけど、すごく愛情深い人だと捉えています。
2026年に伝える、つかこうへい作品の力
――特に今回の『熱海殺人事件と売春捜査官』に関して、これまで、つかさんの作品に触れてこなかった若い世代にどんなことを伝えたいと思っていますか?
宮原 『熱海殺人事件』の初演は1973年ですから、もう50年以上の時間が経っています。当時とは価値観、人と人の関わりなど、時代が大きく変わっていて、僕はもしかしたら、その変化にたまに不自由さや窮屈さを感じるギリギリの世代かもしれません。この作品は、人が生きている実感とか、何のために生きるのか? 何をあきらめ、何に夢中になるのか? そういったことを感じさせてもらえると思っています。単純な言い方ですけど、若い人にとって“生きる力”を与えてくれるような作品になればいいなと思っていますし、そういう力のある戯曲だと思います。
――演出をつかさんの“最後の弟子”と言われる逸見輝羊さんが担当されています。
広山 今回の「つかこうへいを知る旅」公演において逸見さんが演出されるというのが、ものすごく大きいと思います。つかさんと言えば、“口立て(※稽古場で生み出したセリフを、つかが役者に口頭で伝えながら芝居をつくっていく演出)が有名ですけど、私たちは、つかさんが口立てで生み出したものをテキストで読むしかできません。
文章になった言葉をそのまま演じるってナンセンスなんじゃないか? でも、そこに逸見さんがいてくださることで、私たちが「これはどういうことですか?」とお尋ねした時、逸見さんが「これは、つかさんが言ってたんだけどね……」とつかさんの言葉ですべてに答えてくださる。まさに稽古しながら「つかこうへいを知る旅」をやっています(笑)。

宮原 今回も、逸見さんが口立てで演出してくださるところがあって『熱海殺人事件』の浜辺のシーンなんですけど。
広山 去年の逸見さん演出の『熱海殺人事件』を拝見していて「これは絶対、台本じゃないな」と感じたメチャクチャ素敵なシーンがその浜辺のシーンだったんです。今回もそこを口立てでつくってくださっていて、ひと言ずつ、話す私を見ながら次のセリフを考えてくださるんです。「これか!」という感じです(笑)。その生々しさは絶対にお客さまにも感じていただけると思います。
宮原 そこも含めて1970年代の熱気にあふれた劇場空間をつくり上げたいと思っています。劇場に足を踏み入れた瞬間から「何か起こりそうだ」と感じていただけるように工夫していますので、ぜひ劇場に来てほしいです。
取材・文/黒豆直樹
<公演情報>
宮原奨伍プロデュース
『熱海殺人事件と売春捜査官』

日程:2026年2月4日(水)〜8(日)
会場:紀伊國屋ホール
[脚本] つかこうへい
[演出] 逸見輝羊
[出演 『熱海殺人事件』]
宮原奨伍 広山詞葉 潮見勇輝 丸山正吾
[出演 『売春捜査官』]
広山詞葉 宮原奨伍 前田剛司 宮本大誠
※『熱海殺人事件』『売春捜査官』の上演回は下記よりご確認ください。
チケットURL
https://w.pia.jp/t/miyaharashogoproduce-2026/
公演オフィシャルサイト
https://shogopro.com
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