高い評価を集めた劇団ミュの『Liebe シューマンの愛したひと』が待望の再演! ふたつのチームを牽引するキャストがその魅力を語る
ステージ
インタビュー
(左から)榊原徹士、希水しお、青野紗穂、伊勢大貴
続きを読むフォトギャラリー(7件)
すべて見る生声・生音にこだわり、日本オリジナルのミュージカルを創作する、劇作家・演出家、岡本貴也が主宰する劇団ミュ。その旗揚げ公演(2024年)の演目、『Liebe シューマンの愛したひと』(Musical Awards TOKYOプレシーズン2024《作品賞(500席以下)》ノミネート作品)が、2026年1月22日(木)〜2月1日(日)に恵比寿・エコー劇場にて再演される。今回集結したキャスト陣は、青野紗穂・希水しおが主人公のクララを、伊勢大貴・榊原徹士がロベルト・シューマンを2チーム制のダブルキャストで演じる。19世紀ドイツで活躍したピアニストのクララと、彼女の夫となった作曲家のシューマン。その姿を通して、私たちは何を感じるのだろう。それぞれ多彩なフィールドで活躍を続けるキャスト4人が率直に語り合ってくれた。
『Liebe』という作品、そしてマイクを使わないステージへの挑戦
――今回、出演が決まってどんなことを感じましたか?
榊原 劇団ミュさんには以前に一度出演させていただいたことがあり(2024年『추락 ―墜落―』)、再び機会をいただいて嬉しかったです。そして本作は、とにかく脚本が面白い。ひとりの人生を描くなかで、それぞれのハイライト部分をきちんと演じきることができたら、と思いました。
伊勢 僕は音楽劇(2023年『李香蘭 ―花と華―』)で初めて演出の岡本(貴也)さんにお会いし、朗読活劇『信長を殺した男 2024』でもご一緒して、歌と芝居の両方を見ていただきました。そのうえで今回のオファーをいただけたと思うと素直に嬉しかったです。
青野 『Liebe』については、初演に出演した友人たちから話を聞いたことがありましたし、映像も拝見していましたが、正直、クララは私自身とはかけ離れている役だと思っていました。オファーをいただいたときは少し驚きもありましたが、私もとても嬉しかったです。でも大きな挑戦にはなりそうです。

――自分とリンクするような役もあれば、かけ離れた役もありますよね。どちらが演じやすいのかは、演者さんによって違いもあると思いますが。
青野 ミュージカルを中心に活動させていただくなかで、いただく役に共通する部分があるとは思っていました。でも、私はそこまでパワフルに生きてきた人間じゃないんです、見た目はこんな感じですけど(笑)。
伊勢 こんな感じって(笑)!
青野 そういう意味でも今回は挑戦です(笑)。人生の初めから最期までを舞台で表現することには膨大なエネルギーが必要ですし、みなさんとの連携も大事。この作品の持つ素晴らしいスピード感のなかで、最後まで丁寧に演じなくてはいけない。ハードルは高いと思いますが、しっかり演じていきたいです。
希水 私は『추락 ―墜落―』で初めて劇団ミュさんを拝見して、たくさんの感動をいただきました。2時間弱の公演があっという間でした。観劇中、どうしても緊張や集中が途切れちゃう瞬間ってありますよね。それがまったくなく、ずっと舞台を見入ったままでしたから、「すごい!」って驚いた記憶があります。その劇団ミュさんからお話しをいただいて、大変嬉しく思っておりました。

――劇団ミュでは、キャストは一般的なミュージカル作品で使用されるウェアマイクを使用しません。舞台上の生の声にこだわって、「ストレートプレイのような演劇の延長線上にある、人間の持つ力が直接伝わるミュージカル」を意図しているそうです。マイクを着けずにステージに立つことについては、どう思いますか。
榊原 僕は劇団ミュが初体験でした。みなさんもたぶんそうかな?

伊勢 僕は、ストリートで活動していた頃はマイクなしでした。
希水 えっ、すごい!
――ストリートというと、音楽活動ですか?
伊勢 はい。高校生の頃、地元の商店街で歌っていて、「がんばってくださいね」っておばちゃんがのど飴をくれてました(笑)。
青野 いい話!
伊勢 (笑)。もちろん、ミュージカルでマイクなしは大きなチャレンジ。決まった瞬間からワクワクしてました。

青野 普段はマイクにどれだけよくのるかを考えて、声の鳴らし方や響きを変えながら歌うことが多いんです。発声法そのものも変わってくるでしょうし、研究することは多くなりそう。
希水 私は声優の仕事もしていますが、普段はマイクなしで声をお届けすることってありません。あらためて発声からしっかりやっていきたいと思います。
クララの支える愛、シューマンのピュアだからこそ切りつけるような愛
――『Liebe』という作品について感じていることを教えてください。
希水 まず、音楽がすごく好きです。クララが絶望の中にいながらも、シューマンを愛して支えると歌うナンバーがあって、女性として愛に生きる力強さが表れていてとても素敵なんです。その表現が強すぎてしまうと浮世離れしそうな気もしますが、しっかり人間らしさが感じられるように、そのナンバーは特に頑張りたいです。
青野 クララは、ことあるごとに「大丈夫よ、大丈夫」って言うんです。それは、一見すると相手に言っているようで、本当はクララ自身に向けていると感じる瞬間が多い。
希水 わかります!
青野 クララは、愛がなくては生きていけない人なのかもしれない。どんなに苦しくても、人を支えて、自分が愛したものを信じて生きていくことが彼女の生きる支えなんでしょうね。
――まさに“愛に生きる人”。
青野 人を信じたり、愛に生きたりすることをナンセンスと考える人も少なくない今だからこそ、こういう作品を若い人にも観ていただいて、“好き”だとか“愛してる”っていう感情の素晴らしさを見つけていただける作品になると思います。
希水 私自身、クララのような“自分はこの人のために存在する”感覚はこれまで感じたことはありませんが、盲目にひとりの人を愛し抜く……凄いパワーのいることだと思います。周囲の人たちから見たら心配な状況かもしれませんが、クララにとってはそれこそが明日を生き抜く力なんですね。
――男性目線で言うと、クララってどんな人でしょう。
伊勢 才能があったばかりに行く道を決められてしまい、かわいそうな人、という印象が当初ありました。ですが、時代を考えれば女性が生きる術を見つけることができたのは幸運だったのかもしれない。そうした環境がクララをクララたらしめた部分はすごく大きいでしょうね。
榊原 クララには、シューマンにとことん尽くす母性がある。そもそもクララという女性が生まれたのはヴィークという父親がいたからで、そのヴィークがお客さまからのヘイトを全部集めてくれていると思います。心が裂ける寸前まで徹底的に人を追い込むヴィークがいるから、「かわいそう」と思える部分が多いのでは。
――そんなクララの愛を一身にうけるシューマンはどんな人物像に?
伊勢 シューマンはすごくピュアで、最初の曲もすごく爽やかですから、好青年の印象が強いと思います。でも音楽、愛、生きる、食べるといった普通の人なら自然と取捨選択をしていくことに優先順位がなく、すべて混然としている。そうしたことがシューマンからクララに対する矢印として刺さって、彼女はそれに振り回される。クララの一生を思うと、シューマンが自分本位で好きなものにガツガツいけばいくほど愛情で切りつけるような感じになり、クララは周りの人に心配してもらえるし、お客さまにも愛していただけるのでは。
榊原 まったく同感!
伊勢 ちょっと!(笑)
――お話の締めくくりとして、どんな方に観ていただきたいか、そしてどんなところに注目してほしいか教えてください。
伊勢 僕がお勧めするなら、愛情を探している人、愛する対象を見つけたい人ですね。クララやシューマン、その他のキャラクターも、それぞれ何かに執着をしているし、愛情をもっている。自分がほしい、与えたい愛の形みたいなものを見つけていただける手助けになると思いますし、そんなメッセージを感じていただければ。
青野 もちろん愛も大事ですけど、人とのつながりや誰かを信じる気持ち、何かに向かって歩んでいく気持ちは生きていくうえですごく大事ですよね。私たちよりも上の世代の方たちには「こういうことがあったな」と懐かしい気持ちになっていただきたいですし、下の世代の方たちには「将来こういう愛し方をしたい」とか逆に「こういう愛は絶対に嫌」とか、自分が生きていくうえでの選択肢がすごく広がる作品だと思います。今回は“♭”“♯”というふたつのチームでお届けしますが、一度観に来ていただいて「もう1回観たいな」と思われたら別のチームも観ていただければ幸いです。

希水 自分はどんな人間でありたいのか考えている方にとっては、いろいろな選択肢というか、登場人物それぞれの選んだ人生が感情も含めて描かれているので、きっと誰かに共感していただけると思います。そして私が一番勧めたいと思ったのは、自分の母なんです。クララが子どもを授かって育てていくために必要だったことや苦労したことを一番知っている存在だからこそ、どう感じるのか気になります。もちろん、他のお母さん世代の方にも観ていただきたいと思っております。
榊原 劇団ミュの公演は楽器も生ですし、機材にもあまり頼らない。俳優としてより高いプロ意識と気概をもってお届けできる、とても熱量の高い作品です。メディアやツールがどれだけ進歩したとしても、人間にしかない感性は実際に劇場に足を運んで体感していただくのがベストじゃないでしょうか。2026年の初めにぜひ、これまでにない演劇体験を楽しんでいただければ幸いです。

取材・文/金井まゆみ
撮影/藤田亜弓
〈公演情報〉
劇団ミュOp.5 Musical
『Liebe シューマンの愛したひと』
日程:2026年1月22日(木)~2月1日(日)
会場:恵比寿・エコー劇場
[作・演出] 岡本貴也
[音楽] 鎌田雅人
[振付] 富田 彩
[演奏] ピアノ:植村カンナ
[出演 ♭(es)チーム]
青野紗穂
伊勢大貴 / 長谷川開 / 梅田彩佳
音くり寿 / 村上貴亮 / 磯部杏莉 / 下野由貴 / 渡辺七海 / 常川藍里 / 橋本茉子 / 梅谷心愛 / 森田陽大
今 拓哉
[出演 ♯(is)チーム]
希水しお
榊原徹士 / 磯野 大 / 山本咲希
社家あや乃 / 馬越琢己 / 宮下舞花 / 夏葉ことり / 師田実澪 / 谷 怜由 / 入江うり / 岩本ひなた / 山﨑由晏
KENTARO
※各チームの出演日程は下記よりご確認ください。
チケットURL
https://w.pia.jp/t/gekidanmu-op5/
公演オフィシャルサイト
https://www.gekidanmu.com
フォトギャラリー(7件)
すべて見る
