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オスカー女優が全裸で怪演! 本物の悲鳴が轟く流血事故! 英国の名優たちが巻き込まれた大問題作『カリギュラ』の裏側

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『カリギュラ 究極版』 (C)1979, 2023 PENTHOUSE FILMS INTERNATIONAL

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1980年に公開され、映画史を震撼させた問題作が『カリギュラ 究極版』として、2026年1月23日(金)に公開される。

1976年、ペントハウス誌の創設者ボブ・グッチョーネは、映画史上最高額の製作費を投じて“自主製作映画”『カリギュラ』を企画した。セックスとアートを融合させ、史上最も退廃的とされる皇帝カリギュラを描く歴史大作として、公開前から大きな期待を集めていた。しかし、製作中に様々なトラブルに見舞われ、完成時には製作費は2倍に膨れ上がり、脚本家やスタッフらが訴訟を起こす事態に発展。撮影完了後には、監督は解雇され、編集と音楽の担当はクレジットを拒否した。

トラブルを経て公開された『カリギュラ』は、観客だけでなくキャストにも衝撃を与える。グッチョーネが勝手にポルノシーンを付け加え、脚本を書き換えたものが公開されたからだ。しかし、あれから45年。破棄されたと思われていたフィルムが奇跡的に発見され、90時間以上の素材を再編集した本来の姿で全国上映される。

主人公カリギュラを演じるのは、スタンリー・キューブリック監督作『時計じかけのオレンジ』(1971)で、アレックス役として強烈なインパクトを残したマルコム・マクダウェル。人間の奥底に潜む狂気と暴力性を体現してきたマクダウェルが、本作では若きローマ皇帝として再びその異才を放つ。

脇を固めるキャスト陣も、後に『クィーン』(2006)でエリザベス女王を演じオスカー女優となり、演劇界への貢献から大英帝国勲章を受勲しデイムの称号を持つヘレン・ミレンが、カリギュラの妻であり浮気癖のあるカエソニアを熱演 。そして、『アラビアのロレンス』でスターダムに駆け上がり、アカデミー賞に計8回もノミネートされた名優ピーター・オトゥールが、病に侵され異常性癖を持つ老皇帝ティベリウスを怪演するなど、まさに英国俳優界のロイヤルファミリーが勢揃いしている。

しかし、本作は批評家からは“価値のないゴミ”や“倫理的ホロコースト”と酷評され、問題作の烙印を押され、キャストはそのキャリアを脅かされることに。では、問題作と世間を賑わせた作品になぜ彼らは出演を承諾したのか? それは、本作が当初「製作費46億円の歴史超大作」として企画されたからだ。『スター・ウォーズ』の約2倍という破格の予算に加え、脚本には『ベン・ハー』のリライトなども手掛けた著名な作家ゴア・ヴィダルが担当。キャストはあくまで、芸術的かつ重厚な歴史スペクタクル映画に参加したつもりだった。

しかし、撮影が進むにつれて事態は一変する。プロデューサーのグッチョーネ、脚本のヴィダル、そして監督のティント・ブラスという、思想も方向性も全く異なる3人の対立が激化。最終的にはグッチョーネが現場に介入し、監督やキャストが関知しないところでポルノシーンを勝手に追加撮影するなど暴走した。名優たちは知らぬ間に、芸術とポルノの境界線が崩壊したカオスの中に放り込まれ、そのキャリアを脅かされることとなった。

本作の撮影現場は、映画の内容さながらに狂気に満ちていたという。病に侵された皇帝ティベリウスを演じたオトゥールは、当時実生活でもアルコール依存の問題を抱えており精神的に不安定だった。その鬼気迫る状態が役柄に乗り移ったのか、護衛の腸を剣で突き刺すシーンの撮影中に事故が発生。本来、護衛が持つ袋を突き通すはずが、オトゥールがあまりに強く剣を突いたため、本当に俳優の肋骨を突き抜けてしまった。そのシーンで記録された俳優の悲鳴は、演技を超えた本物の叫びとしてフィルムに残されている。さらに、公開後、オトゥールは自身の出演作がポルノとして扱われたことに激怒。訴訟まで考えたものの、自身の健康問題もあり結局実行には至らなかったという。

そして、主演のマクダウェルもまた、並々ならぬ情熱を本作に注いでいた。当初のヴィダルによる性描写を強調した脚本に難色を示したマクダウェルは、ブラス監督と共に脚本を全面的に書き直すほど、作品作りに深くのめり込む。しかし、その情熱もまた製作の混乱とスキャンダルによって、長らく正当に評価される機会を奪われてしまった。

一方で、意外な反応を見せたのが、当時若手であったヘレン・ミレン。ミレンは後に2015年のインタビューで、当時の思い出について「全員が全裸になって、毎日ヌーディストビーチに行っていたような時間でした」とあっけらかんと振り返っている。さらに「あの映画で服を着ていたら、その方が恥ずかしいと思います」と語るほど、自身の裸体を晒す撮影を楽しんでいたという。ミレンのこの肝の据わった姿勢は、後の大女優としての器の大きさを予感させる。

45年の時を経て、本来の意図である歴史劇として復元された本作。オスカー俳優たちが人生を賭して挑んだ、美しくも過激なアンサンブルを、ぜひその目で確かめてほしい。

<作品情報>
『カリギュラ 究極版』

2026年1月23日(金)公開

公式サイト:
https://synca.jp/caligula_kyukyoku_movie/

(C)1979, 2023 PENTHOUSE FILMS INTERNATIONAL

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