特集:忌野清志郎 ナニワ・サリバン・ショー -令和残侠伝-
年末押し迫る2025年12月27日、5年振りにカムバックした『ナニワ・サリバン・ショー』の舞台は『FM802 RADIO CRAZY 2025』R-STAGEに用意された。忌野清志郎が宇宙へ旅立ってから16年。今秋にはドキュメンタリー映画の公開を控え、⽇本のロック史に不滅の⾜跡を刻んだKING OF ROCK・忌野清志郎のデビュ−55周年を記念して、「大阪に忌野清志郎が帰ってきた!ナニワ・サリバン・ショーに帰ってきた!5年ぶりのGO!GO! 腰をふれ 立ちあがれ!もう一度高くJUMPしよう! ナニワのロックン・ロール・ショーがはじまるぜ!!」を合言葉に、『忌野清志郎 ナニワ・サリバン・ショー -令和残侠伝-』として開催された。
ホストとなる「NANIWA SULLIVAN ROCK'N'ROLL CLUB BAND」のメンバーは、伊東ミキオ(p/key)、藤井一彦(g)、多田尚人(b)、サンコンJr.(ds)に、ホーン隊MONKY(t.sax)、石渡みなみ(a.sax)、MAKOTO(tp)を迎えたスペシャルバンドとして構成。参加アーティストは、アイナ・ジ・エンド、オカモトショウ・オカモトコウキ(OKAMOTO’S)、GLIM SPANKY、TAKUMA(10-FEET)、女優・歌手 三浦透子、ROY (THE BAWDIES)、和田唱。忌野清志郎の名曲を代わる代わる歌い繋ぎ、演奏していくスタイルの企画だ。
少し早めにR-STAGEに向かうとステージではホーン隊も入ってリハーサルが行われていた。本番さながらの演奏に集まったオーディエンスは思い思いに体を揺らし、ステージの脇にはおなじみヒトハタウサギの巨大バルーンが鎮座している。辺りを見渡すと往年のファンはもちろんのこと、若いオーディエンスも多く集まっていて、改めて世代を越え、令和の時代でも愛され続ける忌野清志郎の偉大さを感じる。
今日もこんな狭いライブハウスで演ります!
スタート時間になるとMC・新日本プロレスの高橋ヒロムがド派手な衣装でステージに現れ、「レディースアンドジェントルマン〜ようこそ忌野清志郎ナニワ・サリバン・ショーへ!!」とマイクパフォーマンスを繰り広げる。「今日もこんな狭いライブハウスで演ります! 大阪にナニワ・サリバン・ショーが帰ってきたぜ!」と声高々に響かせ、ビジョンに「ナニワ・サリバン・ショーのテーマ」にのせたキヨシローの映像が映し出されると、バンドメンバーがステージに登場。トップバッターでマイクを握ったのは和田唱だ。
選曲は忌野清志郎「JUMP」。聴くだけで心が晴れやかになるイントロに和田の甘いボーカルがのっていく。耳を塞ぎたくなるようなニュースがテレビやSNSで流れる日常に、《いい事が起こるように ただ願うだけさ 眠れない夜ならば 夜通し踊ろう》という歌詞がやわらかなメロディと一緒に心地よく響いていく。現代に、そしてこの年末にぴったりとハマる最高のオープニングだ。手を高く掲げ、ギター藤井一彦と背中を合わせながらリズムにのり、「大阪JUMP!!!」とオーディエンスと何度もジャンプしながら一気に会場の温度をあげた和田唱のパフォーマンスはさすがのひと言だった。ステージが終わったあと、和田唱に選曲の理由を尋ねると、「あえて定番の曲ではなくて、でも好きな曲を選びたくて「JUMP」を歌わせてもらいました。清志郎さんの復活の武道館を映像で観てグッときてそれ以来すごく好きな曲。しっとりというよりも今日はエレキで温度高めで始まりましたけど、一曲目からのロックンロールだから体あたためるために始まる直前に腕立て伏せやって。高橋ヒロムさんがやってたから俺も横で混ぜてもらって腕立てしてからの「JUMP」でした(笑)」と舞台裏を明かしてくれた。
「ありがとう!! 続いてはGLIM SPANKY!」と紹介し、入れ替わりでGLIM SPANKYの松尾レミと亀本寛貴が登場。間髪入れずに、RCサクセション「ベイビー!逃げるんだ。」へと繋がる。ギターのリフにぶち上がり、《最悪だぜ!女とイチャついてる暇もねぇ》と歌う松尾レミのボーカルがキュート過ぎる最高のロックンロール。藤井一彦と亀本寛貴が弾き倒すギターの掛け合いに痺れ、ステージの右に左に動きながら松尾レミが連呼する《ベイビー!逃げるんだ》の言葉が心に突き刺さり、この逃避ソングもまたいまの時代にマッチしていると確信する。逃げることはなにも恥ずかしいことではなく、その場から離れることもまた勇気であり、己を守るための大切な方法だ。それを軽やかに、でもずっしりと教えてくれたのもキヨシローなんだ。
キヨシローを凌駕する勢いの無骨なかっこよさが光った
「続けてのロックンローラーはTHE BAWDIESからROY!!」と松尾レミに紹介されステージに登場したROY。「よろしくお願いします!」と短い挨拶を終え、聴こえてきたイントロは洋楽のスタンダードナンバー「STAND BY ME」。キヨシローもステージで幾度となくカバーしていたこの選曲も最高だし、そのまま残ったGLIM SPANKY・亀本寛貴のギターの音色が優しくも力強く、拳を握りながら激渋に歌い上げるROYの歌声が本当にかっこよかった。キヨシローもオリジナルを凌駕する天才的なカバーを聴かせてくれていたが、ROYのカバーもまたキヨシローを凌駕する勢いの無骨なかっこよさが光った。
最後に笑顔を見せ、「続いては三浦透子!」とROYの紹介で登場したのは女優・歌手の三浦透子。長袖の白シャツを肘あたりまで捲ってデニムというシンプルな衣装だけど、それが透明感を引き立たせ、大きな拍手に包まれながら初めて聴くその歌声を待つ。ドラム・サンコンJr.のカウントから、あのイントロを伊東ミキオがキーボードで奏でる。流れてきたのはTHE TIMERSの「デイ・ドリーム・ビリーバー」だ。メロディだけでも安堵感半端ないのに、三浦透子の歌声がまた包容力あり過ぎていい意味で脱力した。大サビで聴かせたファルセットも美しく響き、「デイ・ドリーム・ビリーバー」の、キヨシローによる日本語詞が持つ愛が詰まった世界観と三浦透子の歌声との相性が最高だった。
三浦透子の紹介で次にステージに登場したのは、OKAMOTO’Sのオカモトショウ・オカモトコウキ。マイクコードを体に巻き付け、ポケットに手を入れ、雰囲気充分に聴かせてくれたのはRCサクセション「よそ者」。この曲を歌うキヨシローのせつない歌声に何度も心を動かされたものだが、オカモトショウが歌う「よそ者」もまたブルージーで、オカモトコウキのギターも歌っているかのようにブルージーで、カーステレオで聴いた当時を彷彿させてくれる瞬間が何度もあった。《けむる港町》という令和の歌詞にはなかなか出てこない世界観でも、キヨシローを知らない世代にエッジの立ったバンド陣がこうやって名曲をリスペクトし、継承していくことの重要性を強く感じる瞬間でもあった。
すべての人へリスペクトを込めて歌い上げたライブ巧者
「次はFROM 10-FEET!!TAKUMA!」とOKAMOTO‘Sからバトンを受けたTAKUMAはハンドマイクで軽やかに登場。ブルースハープの代わりにサックスがイントロを彩り、TAKUMAが歌うのは忌野清志郎「パパの歌」。キヨシローが憑依したかのような歌声にハッとして、《ときどき プーっとやらかして》の愛嬌たっぷりの歌い方がまさにそれだった。《昼間のパパはちょっとちがう》というおなじみのサビでは弾むようにリズムを取りながら歌い、会場をハッピーオーラで包んでいく。「がんばってるのはお父さんだけちゃうで!お母さんもがんばってるで!」と母へのリスペクトもしっかり伝えたかと思えば、ここからはTAKUMAによる替え歌が炸裂し、《レディクレの客もちょっとちがう レディクレの客は日本一かっこいいぜ、かっこいいぜ!!パパもママもかっこいい!》とここにいるすべての人へリスペクトを込めて歌い上げた。さすがのライブ巧者だ。ここにいるすべての人にハッピーを降り注いだ「パパの歌」だった。
「次はアイナ・ジ・エンド!!」TAKUMAの紹介で登場したのは、数時間前にここR-STAGEでパフォーマンスを披露し、超満員のオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んでいたアイナ・ジ・エンドがツインテールにボーダーのニット、ロングブーツといったそのままの衣装で登場した。大きな拍手と美しいピアノの旋律に迎えられ、歌いはじめのは「スローバラード」。ハスキーボイスで話しかけるように、心の底まで震わせたキヨシローの歌声と同じような圧巻の歌唱。サックスと共鳴しながらメロディを奏で、圧倒的な存在感でオーディエンスを魅了したアイナ。キヨシローのパフォーマンスを見ながら自然と涙が出たのはそのすべてが魂を響かせたからで、アイナの歌唱もまた、自然と涙がこぼれおちていった。
7組のゲストによるパフォーマンスが終了し、最後は全員でRCサクセション「雨あがりの夜空に」。高橋ヒロムの「オッケー!一彦〜」からギターソロが響き、ゲストボーカル全員がマイクを持ち、フレーズごとに歌い繋いでいく。多くのアーティストがカバーし歌い継がれたこの曲がラストなのがやっぱり心地いい。高橋ヒロムがゲストボーカリストを一人ひとり紹介し「そして最後に、忌野清志郎〜!忌野清志郎〜〜!忌野清志郎〜〜〜!!」と絶叫し5年振りの「ナニワ・サリバン・ショー」は幕を閉じた。MCはなく歌のみで繋がれ、濃縮された形で忌野清志郎と彼を敬愛するアーティスト、そしてオーディエンスを改めて繋いだナニワ・サリバン・ショー。最後の最後に、2025年の忘れられないステージのひとつとして刻まれた。このステージの模様はFM802の特別番組『FM802 RADIO CRAZY RADIO de LIVE CRAZY』にてライブ音源として放送される。
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