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石田組長も躍動! 横浜みなとみらいホール新シーズンへ多様なまなざし

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©藤本史昭

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横浜みなとみらいホールの2026年度自主事業ラインアップが発表された。1月29日に開かれた記者会見には、同ホール「プロデューサー in レジデンス」の任期2年目を迎えるヴァイオリニスト石田泰尚や館長の新井鷗子が出席、企画概要を紹介した。

ヴァイオリンを手に登場した“組長”石田。「弾いていいですか?」と、いきなり、リムスキー=コルサコフの《シェヘラザード》の「シェヘラザードの主題」をしなやかにひと節。新たなプロデュース企画「石田組オーケストラ」のメイン・プログラムが、この《シェヘラザード》だ。
弦楽アンサンブル「石田組」に管楽器を加えたオーケストラ編成の公演。石田組として初の試みで、「プロデューサーを依頼されたときにぱっと思い浮かんだのがオーケストラ」(石田)だったという。念願の企画が満を持して実現する。
ゲスト・ソリストには重鎮・徳永二男が招かれ、石田とともにJ.S.バッハ《2つのヴァイオリンのための協奏曲》を弾く。また、地元・横浜出身の作曲家・加藤昌則への委嘱作品も初演される予定。
石田「自分が高校3年生の時に、国立音楽大学の冬季講習でたまたま徳永先生に当たったのが最初の出会いです。すごい衝撃を受けまして。もう今でも──当たり前ですけど──尊敬してます。
加藤さんには、“とにかくカッコよくて、あまり難しくなく”。で、派手な感じでお願いしますと言おうかなと」

石田組メンバーによる室内楽公演「サロン de ストリングス」は前年度からの継続企画。どちらかというとマニアックな聴衆が多いイメージの室内楽のジャンル。正直、それを大ホールで、しかも平日の午後に開催して集客は大丈夫なのかと疑ったが、余計な心配だった。石田自身は演奏者としてではなくナビゲーター役での出演なのだが、それでも昨年の3公演はどれも満席だったというからすごい。
石田「お客さんがいっぱいでよかったと思います。まあ、僕が出れば、もっとお客さんが入ってたと思いますけど」
と“石田節”もクールに炸裂。新年度は「シューベルティアーデ」をテーマに、シューベルトの室内楽の名作を集中的に取り上げる。
石田「(前年とは)全員違うメンバーでいこうということで。自分の中で、コントラバスを入れたいなと思いました。ぱっと思い浮かんだのがシューベルトの《ます》で、じゃあ全部シューベルトでいこうかなと。3公演とも全部シューベルトにしました」

じつは横浜みなとみらいホールは“石田組発祥の地”でもある。年末恒例となった「石田組 年末感謝祭」は今年も2 DAYSで。来年3月、石田が全幅の信頼を寄せるピアニスト津田裕也とのシューマン&ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏にも注目が集まる。

さらに、若者たちに夢と刺激を与える「弦楽合奏部応援プロジェクト」も引き続き実施される。石田が弦楽合奏部を直接指導するアウトリーチ企画。対象が、プロの演奏家を目指す子供たちではなく、普通の学校の部活動で音楽を楽しんでいる生徒たちという発想が、とてもいい。今回は横浜市内の大学と高校の弦楽合奏部が対象。
石田「たとえば中学からヴァイオリンを始めました、という人たちも結構いて。感動しましたね。本当に素晴らしくて。みんなにも言ったんですけど、これからも音楽を続けていってほしいなと思いましたね。はい」

©藤本史昭

【2026年度石田泰尚プロデュース企画】
サロン de ストリングス「石田組のシューベルティアーデ」
 5月27日(水)、8月26日(水)、10月21日(水)大ホール
石田組 年末感謝祭 2026
 12月30日(水)、31日(木)大ホール
石田組オーケストラ(ゲストソリスト:徳永二男)
 2027年2月27日(土)、28日(日)大ホール
石田泰尚×津田裕也
 シューマン&ブラームス ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会
 2027年3月21日(日・祝)小ホール
弦楽合奏部応援プロジェクト(通年企画)

次に石田プロデュース事業以外の企画を、開催順にいくつか紹介してみよう。

【梅本佑利 新作委嘱演奏会 2026 I forgot the song and cried(歌を忘れて泣いた)】
7月17日(金)小ホール
新井鷗子館長の“きもいり”企画が、昨年から「ホールコンポーザー」に任命されている23歳の作曲家・梅本佑利の公演第2弾。
梅本は、私たちの周囲にある「音」を切り取り、生演奏と交錯させる作曲家。たとえば昨年9月の第1回コンサートで演奏された《萌え²少女》や《look at me, senpai(ねえ先輩、こっち向いてください)》は、アニメ風少女の声のサンプリング音声と生演奏をセッションさせる作品。ネット発の「音MAD」を思わせるその声のイントネーションと、生演奏が見事にシンクロする。一方で、無伴奏チェロ曲《スーパーバッハボーイ》では、バッハを「スーパーマリオ」の効果音風に再構成していた。以前新井館長が、初めて聴いた梅本作品の印象を、「衝撃的!」と語っていたのがとてもよく理解できる。なるほど、そういうことか!
今回のテーマは「合唱」。幼い頃にキリスト教の洗礼を受けた梅本。教会の聖歌隊でも歌っていたという彼の音楽のルーツには合唱がある。新作初演も予定されている。合唱はNHK東京児童合唱団。

【第44回横浜市招待国際ピアノ演奏会】
11月7日(土)大ホール
若手ピアニストをいち早く紹介する、40年以上の歴史を持つピアノ演奏会。昨年のショパン・コンクールでも注目を集めた中川優芽花も登場する。人選方法は独自で、複数の国際コンクールの入賞歴を持つ若い音楽家たちが、自身でエントリーするというもの。審査するのは海老彰子(委員長)、伊藤恵、須田眞美子、弘中孝、堀了介(チェロ)。今年はそこに福間洸太朗も加わり、選考体制がリフレッシュされる。

【『横浜WEBステージ』ガラ・コンサート】
2027年1月22日(金)大ホール
「横浜WEBステージ」は、コロナ禍をきっかけに2020年に生まれた、音楽の届け方を模索するプロジェクト。インターネット上のバーチャル音楽祭だ。通常の演奏映像だけでなく、視聴者が視点を選べるインタラクティブな映像や、斬新なカメラワーク・構図を用いた作品も含まれ、映像による音楽表現の可能性を探る多様なコンテンツが配信されている。登録者数が15,000人を超え、総再生回数は300万回を超える人気コンテンツになっている。
ガラ・コンサートでは、生演奏を楽しみながら、その撮影手法など、最先端のテクノロジーを駆使したバーチャル音楽祭の舞台裏が明らかにされる。もしこの映像をまだ見ていないという人は、ぜひ一度バーチャル音楽祭を体験してからコンサートに出かけたほうが、より濃密に楽しめるはず。出演は、阪田知樹(ピアノ)、﨑谷直人(ヴァイオリン)、浅井美紀(オルガン)他。

【Just Composed 2027 in Yokohama】
2027年3月6日(土)小ホール
新作委嘱を軸にした現代作曲家シリーズ。委嘱作曲家は小出稚子(のりこ)。小出稚子の音楽は、現代的な緊張感を内包しながらも、聴き手を置き去りにしない。丁寧な音の動きや重なりが、作品の輪郭をとらえるための手がかりを与えてくれる。作曲家を選ぶ選定委員に毎年演奏家が一人参加するのが「Just Composed」シリーズの特徴で、今回はヴァイオリニストの成田達輝が加わる。会見に寄せたビデオ・メッセージで成田は、「(小出さんには)イランのエンシャーにまつわる新作を書いていただきます」と述べた。“エンシャー”とはイランの作文技法のこと。成田は、社会学者・渡邊雅子の著書《「論理的思考」の文化的基盤~4つの思考表現スタイル》からこの発想を得たのだという。それが音として、音楽として、どのように表現されるのだろう。

©藤本史昭

このほか、ホールの象徴でもある大オルガン「ルーシー」をフィーチュアした多くのオルガン・コンサートや、子供たちの発達支援を目的に開発した親子ワークショップ&コンサート「音と光の動物園」など、さまざまな視点を持ったプログラムが用意されている。「音楽会場」としてのコンサートホールの概念を一歩広げて、「ひらかれた創造拠点」を目指す横浜みなとみらいホールならではの取り組みと言えるだろう。

新井鷗子・横浜みなとみらいホール館長の話
「世界情勢が目まぐるしく変化する中、もはや文化・芸術の名においてクラシック音楽が守られている時代は終わり、とりわけ公共ホールは文化創造の拠点であるだけでなく、社会的な価値を打ち出していかなければならなくなってまいりました。
私たちは、まず何よりも市民の皆様から必要とされるホール、愛されるホールを目指し、教育・福祉・医療等、他の分野とも連携しながら、異なる社会資源をつなぐ“ハブ”としての機能を果たしていきたいと思っております。
うれしいことに、ここ数年力を入れているインクルーシブ(社会的包摂)な事業によって、私たちのホールが世代を超え、障がいの有無を超えて、誰もが訪れやすいホール、というイメージが広がりつつあります。横浜みなとみらいホールは社会の“今”とつながるホールを目指してまいります」

取材・文:宮本明

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