Sonar Pocket、ラブソングを10年歌い続けて行き着いた境地「“好き”の奥にあるものを描けた」
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昨年デビュー10周年を迎えたSonar Pocketからニューシングル『好き』が届けられた。今作の表題曲は、なんと「束縛肯定ソング」。これまで数多くの好きという気持ちを歌にしてきた彼らが、好きの裏側にある嫉妬、不安、束縛という、人の心の奥深くにまで斬り込んだ。「その人にとってのナンバーワンで、オンリーワンのラブソングになればいい」と話す彼ら。なぜ彼らは今、こうしたテーマに取り組んだのか? そこからは、10年「好き」という気持ちを歌ってきたからこその経験則と自信がうかがえた。(榑林 史章)
狭く深くその人の深層心理にタッチできる
ーー「好き」は、すごくシンプルでストレートなバラードナンバーになりましたね。
ko-dai:10周年を迎えた上で、また新しい形を見せたいと思って、原点回帰のような、ストレートなものをリリースしようと思いました。「好き」という感情の裏にある気持ち、好きだからこそ感じてしまう、嫉妬、不安、束縛というものをテーマにした曲を作ったことがなかったので、今回チャレンジしようと思いました。一言で言えば、束縛肯定ソングです!
ーーでも嫉妬、不安、束縛というテーマは、決して誰もが共感するものではないと思うのですが。
ko-dai:以前にTwitterで、「あなたの恋愛を一言で表すなら?」という質問で、アンケートを取ったことがあって。たくさんの意見をいただいた中で、束縛、焼きもち、不安といったマイナスイメージの意見もすごく多かったんです。それも、リプライだと知り合いに見られる可能性が高くなるから、DMで送ってくれた人がけっこういて。つまり周りからは幸せそうに見えても、実は2人にしか分からないものを抱えているかもしれない。そういう、みんなが隠したいと思う部分を歌いたかったんです。自分の経験を振り返ってみても、俺は浮気されたこともあったから、また浮気されるんじゃないかという怖さから束縛をしていたことがあって。何で束縛をしたのかを改めて考えると、やっぱり相手のことが好きだからで、相手の過去を気にしていたり、自分に自信がなかったり、その人なりの理由があって。それを上手く音楽として表現したかったんです。
eyeron:束縛、嫉妬、焼きもちっていうとダサイ感じがするじゃないですか。恥ずかしいというか、束縛する男=ダサイみたいな。だから、口には出さないけど、みんな根本には持っている気持ちなんだと思います。俺はもともと束縛しないタイプだったけど、10代の時に相手によって束縛し始めてしまって、「自分にもこういう感情があったんだ!」って、気づいたことがあったし。
ーー好きという気持ちの裏側、より個人の心の奥深くに斬り込んだということでしょうか。
ko-dai:そうですね。最大公約数を導き出して、みんなに共感してもらえる音楽を作ってきたので、今はあえてそれをしなくてもいいと思いました。僕らがみんなから共感してもらえるものを作って、それを求められるようになったのが2011年あたりで、その頃はみんなまだガラケーで、SNSもまだTwitterくらいしかなかった。みんなの趣味・趣向は今ほど幅広くなく、音楽も今のような身近さではなかったと思います。それが今の時代は、いろんな種類のSNSがあり、スマホを開けばすぐに音楽が聴けるわけで。そこで最大公約数に届けるよりも、刺さる人に刺さってほしいと思ったんです。広く浅くではなく、狭くても深く。刺さる人に、深く深く刺さってくれたらいいな、と。
ーー音楽を聴く環境が、よりパーソナルなものになった。そうであるならば、音楽もより個人に向けたものがいいのではないか、と。
matty:音楽のサブスクリプションサービスでマイプレイリストを見ると、それぞれの主張が反映されていて、そこにはその人の本音みたいなものが表れていると思いました。今までは、みんなが聴いているから自分も聴くという人が多かったけど、今は、自分はこういう人間だからこういう音楽が好きなんだと、そういう選曲の仕方をしていると人が多いと思います。だからこそ、この「好き」という曲は、狭く深くその人の深層心理の部分に、ダイレクトにタッチできるんじゃないかと思いますね。
eyeron:僕もそういう時代なのかなと思います。今は、受信するだけじゃなく、SNSなどで発信することにも慣れている。昔ならこういうラブソングを出しても、聴き手は受信するだけだから、みんなに受け入れてもらえそうな曲を書くしかなかったんです。今は、誰か1人でも受信してくれさえすれば、その人が発信してコアな広がり方をすることもある。今までたくさんのラブソングを歌ってきましたけど、今回はタブーぎりぎりか、一線を越えてしまっているくらいの内容だから、僕らにとってもすごくチャレンジの曲でした。だけど、今まさにそういう状況を経験した人には深く刺さるし、その人にとってのナンバーワンで、オンリーワンのラブソングになればいいと思っています。
ko-dai:それに女性アーティストならこういうタイプの曲を書いている人はいるけど、男性アーティストではいなかった。僕らSonar Pocketは、そういうかゆいところに手の届くアーティストでいたいですから。束縛したりされている人が、この曲を聴いて話し合うきっかけになったらいいし、束縛して別れた人が聴いて「自分もこんな恋をしていたな~」と思い出にひたってくれてもいいし。
ーータイトルの「好き」という二文字が、すごくシンプルなだけに、余計に刺さりますね。
eyeron:デビュー当時に使っていた「好き」という言葉とは、意味がまったく違っていますね。例えるなら、磨かれた玉なんだと思います。10年磨かれたからこそのシンプルな「好き」だし、歌詞の内容もすごく話し合って、ふるいにかけて残った言葉だし。
matty:中身が詰まっているよね。10年かけていろいろなラブソングを作って歌ってきたからこそ、中身をここまで濃縮して詰めることができた。10年やってきたからこそ、「好き」という言葉の奥にあるものを描けたと思います。
ーーどの言葉も研ぎ澄まされている。あいまいさがなく、どこを取ってもキラーワードになりそうですね。
ko-dai:物語として書いていないので。どこでも切り取って、自分の恋愛に当てはめてもらえたらいいなと思います。
eyeron:それも、以前のSonar Pocketの曲との違いかもしれない。前はストーリー性のあるものが多かったけど、今回はストーリー展開よりも、ブロックごとの完成度を求めた感じです。
ko-dai:壮大な曲なら「愛してる」という言葉のほうが合うと思うけど、今回はより身近な曲にしたかったから「好き」と付けました。口で言って伝わるものにしたかったから、ヌキサビでは、ディレイもリバーブも消して、生の声で耳元で囁くように歌っています。
ーートラックも前半はほとんどピアノとストリングスだけで、超シンプルで潔いというか。
eyeron:ドラムはほぼ出てこないですからね。
matty:シンプルであればあるほど人に届くと思うんです。実際にライブでこの曲を演奏すると、お客さんは初めて聴く曲なのに、ちゃんと心の真ん中に刺さっているリアクションをしてくださっている。曲を聴きながら泣いてくださる方もいて。自分たちとしては、狙い通りという言い方はあれだけど、こう伝わってほしいというものがちゃんと伝わっているんだなと実感しています。ここまでシンプルにするのはチャレンジだったけど、やって良かったと思います。
ーー「好き」という気持ちを10年歌い続けてきたSonar Pocketだからこそ歌える、11年目の新たな表現「好き」の表現があるわけですね。
eyeron:同じ「好き」という言葉でも、昔のことをトレースしているわけではない。確実にアップデートしている。表現の仕方、書き方、技術は確実に上がっています。
ko-dai:ただ、束縛されて悩んでる人、束縛して悩んでる人だけじゃなくて、「束縛されなくて悩んでいる人」もいて、そこが恋愛の難しいところなんです。
ーー自分から束縛してほしいと?
ko-dai:束縛されるのは嫌だけど、まったくされないのも、それはそれで嫌だと思う人のエゴもあるんです。「本当に私のことが好きなのかな?」と、不安や疑心暗鬼に繋がります。それが恋愛だし、だから恋愛って面白いんですよね。いろんな切り口が残っているので、まだまだたくさん曲が作れそうですね。
ソナポケの“今”が伝わる3曲
ーー「Come on!Come on!」は、アニメ『少年アシベ』のEDテーマで、老若男女が口ずさめる楽曲を目指したとのこと。
ko-dai:『少年アシベ』は、大人の世代も知ってるけど、基本的には子どもたちが見るアニメなので、難しい言葉を使っても伝わらないし、頭ごなしに何かを言っても届かない。そこで、分かりやすく伝わりやすい言葉を意識しました。あと、ちょっとした気づきや格言みたいなものも、届けられたらいいなと思いましたね。いつも僕らが作っている背中を押す曲は、主観的に「こうしたらこうなる」とか「頑張れ!」というものが多かったんですけど、今回は、よりよい未来へ促すとか導こうという気持ちで、お父さんお母さんの目線で書きました。「頑張れ」と言うのではなく、「未来はあなたを待っているんだよ!」と、柔らかく包み込むような応援歌を届けたかったです。
eyeron:時期的にも4月のリリースなので、新しい環境で新しい生活を始める人にも伝わったらいいなと思います。
ーー歌詞は、それぞれで自分のパートを書いているんですか?
ko-dai:今回は、歌詞の書き方が珍しいやり方で、全員それぞれでこの曲に対して歌詞を書いていって、それぞれの歌詞からいいところをつなぎ合わせて作ったんです。特に2番はそんな感じです。
matty:3人でコンペをしたんですけど、僕のは落ちました(笑)。でも言葉としては、どこかで拾ってくれているかもしれないけど。
ーー「GLORIA」は、MIZUNOとのコラボソング。
eyeron:MIZUNO「WAVE POLARIS」というランニングシューズとのコラボソングで、初心者のファーストシューズに適していると提案しているシューズなんです。ちょうど4月だし、新たな生活がスタートするという意味でも、背中を押せる楽曲になったらいいなと思って制作しました。“POLARIS”は北極星のことで、それを道しるべにして、それぞれの夢に向かって進んでいこうという楽曲です。
ko-dai:eyeronの趣味がランニングなので、僕らはそのバーターです(笑)。何曲か作ったうちの1曲で、これはNAOKI-Tさんと大知正紘くんが作曲して、そこにいつも走っているeyeronのスパイスを注入しました。自分の譜割りにはない面白さがあって、歌っていて楽しいです。ボーカリストとしての、僕の新たな一面を見てもらえると思います。聴いているだけで、闘志と言うか、頑張ろうという気持ちが、ふつふつと沸いてきますね。「Come on!〜」は、ゆっくりでいいから一歩ずつ歩いて行こうという曲。「GLORIA」は、走って突き抜けていこうという応援ソングです。
eyeron:今回の3曲で、今のSonar Pocketが伝わるんじゃないかって思いますね。
matty:三者三様で、曲調も今までの僕らにはなかったものになっています。「GLORIA」は、ベースになっているのはファンクで、こういう夜っぽいサウンドマナーに対して、J-POPのメロディを取り入れたのは新しいです。今までの僕らなら、J-POPの中にファンクを注入するじゃないけど、そういうスタイルで楽曲を制作していました。そうじゃなくて、そっちのジャンルに寄って行くというのは、アルバム『flower』から新たに取り組んでいるアプローチです。
それに加えてko-daiとeyeronは、今まで自分たちの歌に対して「これだ」というものがあったけど、それをあえてやらずに、違う歌い方のアプローチに取り組んでいて。そういう形で新しい楽曲がどんどん生まれているので、これから先がまた楽しみになります。今これができているということは、10年後にはもっと違うことができているんじゃないかって、夢がどんどん膨らんでいますね。
ーー歌は、どんな風に変わったんですか?
matty:インディーズの頃はラップをやっていて、そこから歌もやるようになって、どんどん階段を駆け上がっている感じが目に見えます。歌詞のバリエーションも増えているし。ko-daiは自分の確固たるものがありながら、器用だからすぐにいろんなものを取り込める。そういう意味では2人とも、のびしろがすごくあります。
ko-dai:いや~ありがとうございます(笑)。
eyeron:のびしろしかないです(笑)。
ナガシマスパーランドで初野外ワンマン
ーー現在ツアー中ですが、「好き」は後半戦の初日である2月2日の広島から披露されているそうですが、「好き」を初めて歌った時はいかがでしたか?
eyeron:最初はシンプルにステージを暗くして歌っていて、かえってそれが良かったと思います。ステージの雰囲気も良かったし、曲もシンプルで世界感にすぐ入り込めるし。耳障りとして最初は失恋ソングだと思ったかもしれないけど、歌詞が入ってきて理解した時に、思わず涙して聴いてくれるお客さんがいたのは、こういう曲調と雰囲気がマッチしたからもしれないですね。
ko-dai:やっぱり曲ができたら、すぐに聴かせたいですよね。炊きたてのご飯をすぐ食べてほしいのと同じです。僕らはどういう曲か知っているけど、みんなはどういう曲か知らないわけで。最初は「新曲を聴いてください。『好き』です」と曲名を紹介したんですけど、その時はどういうニュアンスで言っていいか迷ったまま言ってしまったので、ちょっとヌケた感じになって、「クスクス」と笑いがこぼれてザワザワしちゃって。その雰囲気から歌い始めるのはけっこうキツくて、「タイトルコールはしないほうがいいな」って学びました(笑)。まあでも、頭のサビを歌った瞬間、ピンッと張り詰めた空気になったので、伝わったんだなって。
ーー終盤戦ですが、ツアーはどんな状況でしょうか?
ko-dai:感謝の気持ちを持って10年やってきた、僕らの集大成でもあります。11周年、12周年、もっとその先に向かっていく上で、みんなのサポートが不可欠ですから、「どうかこれからも、あなたの側にいさせてください」と、お願いをしに行っている時間でもあって。こうやってこんなにたくさんの地域を回らせていただけるのは、僕らとしてありがたいし、応援してくれるファンのみんなの大切さを、改めて感じています。
eyeron:ファンの姿が目に見えるのは、とても嬉しいですね。ホールツアーは毎年やらせていただいていますけど、今回のツアーで3年ぶりに行く県もあって。3年前に観てから3年待ってくれていて、今回また来てくれている方もたくさんいて、そういうファンの姿を直接観ることができる。やっぱりそういうファンの方に支えてもらって、10年音楽を続けてこられたんだなって実感します。
matty:デビューして10年、感謝の気持ちを伝えながら、これから先の10年もよろしくお願いしますじゃないけど、両方の気持ちを同時にひとつのライブで展開している形です。これから先もどんどんいろんなことをやっていこうと思ってるから、未来を見つめながらみんなと歩んでいけたらいいなって。それをライブの中で表現できていると思います。僕は、今回のツアーは、やりがいをすごく感じています。10年という区切りで、自分たちにとって最初の集大成だし、それがしっかりやれているなと思います。
ーー7月20日には、三重・ナガシマスパーランドで、『Sonar Pocket 初 野外ワンマン Welcome to ソナポケスパーランド』を開催。三重は、みなさんの地元と言えば地元なんですよね。
ko-dai:僕らが幼少期から家族と行ったり、デートで行ったり、友だちと遊びに行ったりしていた場所です。それに、SEAMOさんの呼びかけで開催されたイベント『TOKAI SUMMIT』の会場がここで、僕らは2007年の初回に出させていただいたんですけど、それが僕らにとって初の野外だったんです。メインステージの隣のサブステージで、オープニングアクトとしてわずか5分の出番でしたけど、その時に観た景色がずっと心に残っていて。いつか3人で同じ場所でやりたいねと話していた、思い入れがある場所です。メジャーデビュー10周年に合わせていろいろなチャレンジをしているうちの1つとして、野外ワンマンライブはやったことがなかったので、今回この場所で挑戦したいと思いました。
eyeron:昼公演は「水の祭り」、夜公演は「炎の祭り」と銘打って、内容を変えて行います。20曲くらいずつやれば、持ち曲120曲のうちの3分の1はできますね。今公式サイトでリクエストを募っています(4月27日23時59分まで)。
ko-dai:あとは天気しだいかな。
matty:雨が降ったら降ったで、夜も「水の祭り」になっちゃってもいいかもしれない(笑)。
(取材・文=榑林 史章/写真=竹内洋平)
■リリース情報
31stシングル『好き』
発売中
価格:初回限定盤A(CD+DVD)¥1,852+税
初回限定盤B(CD+DVD)¥1,852+税
通常盤(CDのみ)¥1,389+税
<CD収録内容>
01.好き
02.Come on!Come on!
03.GLORIA
04.好き– Instrumental(※通常盤のみ収録)
05.Come on!Come on!- Instrumental(※通常盤のみ収録)
06.GLORIA - Instrumental(※通常盤のみ収録)
<初回限定盤A DVD収録内容>
「好き」Music Video、「GLORIA」Music Video
<初回限定盤B DVD収録内容>
「好き」Off Shot Movie、「つぼみ」Music Video
<特典情報>
CDショップ別 先着購入者特典情報
A5サイズクリアファイル
①TSUTAYA RECORDS ver.
②Loppi・HMV ver.
③TOWER RECORDS ver.
④Amazon.co.jp ver.
⑤楽天BOOKS ver.
※特典は無くなり次第終了
※特典用意の無い店舗もあり。特典の有無は各店舗まで
■イベント情報
『ハイタッチお見送り会』/全国ツアー『Sonar Pocket 10th Anniversary Tour flower』(後半)
3月3日(日)札幌:わくわくホリデーホール
3月9日(土)福島:けんしん郡山文化センター 大ホール(郡山市文化センター)
3月10日(日)山形:山形市民会館 大ホール
3月16日(土)新潟:新潟テルサ
3月23日(土)福岡:福岡市民会館 大ホール
3月24日(日)山口:下関市民会館
3月30日(土)兵庫:神戸国際会館 こくさいホール
3月31日(日)大阪:グランキューブ大阪メインホール
4月11日(木)東京:NHKホール ※会場にてCD販売
4月12日(金)東京:NHKホール ※会場にてCD販売
4月20日(土)沖縄:ナムラホール ※会場にてCD販売
参加方法など詳細はこちら
■関連リンク
Sonar Pocket Official Site
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