「特別公演」へ向けて インタビュー 坂東玉三郎
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坂東玉三郎
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すべて見る坂東玉三郎が作り上げてきた美の世界が堪能できる「坂東玉三郎 特別公演」。竹久夢二の絵に着想を得た舞踊劇や、『阿古屋』の琴、三味線、胡弓の演奏など、その美しさと培ってきたものが映える演目が並ぶ。新橋演舞場の本公演の舞台に立つのは30年ぶり。久々の場所で、玉三郎にしかない芸が放たれる。
──今回の「坂東玉三郎 特別公演」で、新橋演舞場の本公演に30年ぶりに出演されます。その意気込みからお聞かせください。
玉三郎 久しぶりに新橋演舞場で何かやってくれないかというお話をいただきました。そのときに、まず『長崎十二景』を挙げてくださって。昨年の1月に大阪松竹座で、6月に京都・南座で上演している演目なので、それならできるかなとお引き受けしました。ほかにも、歌舞伎座とはまた違った、演舞場ならではのバラエティに富んだ演目で、お楽しみいただけたらと思っています。

──『長崎十二景』に加えて上演されるのが、昨年の南座で上演された『夢二慕情』の映像作品と、『三曲糸の調べ』です。それぞれの作品について伺えればと思いますが、まず、『口上』のあとに登場するのが『三曲糸の調べ』。歌舞伎『壇浦兜軍記』での遊女・阿古屋の三曲(琴、三味線、胡弓)の演奏を、披露されます。
玉三郎 阿古屋としてのお芝居はなく、本当に曲だけを演奏します。ですから、阿古屋の扮装はしません。あの前帯があると琴と三味線の音が上手く響かないので、演奏に重心をかけられる衣裳でやりたいと思っているんです。
──三曲を一人で演奏するのは至難の技で、阿古屋は大役といわれています。そういう難しいものにどう挑んでこられたのですか。
玉三郎 六世中村歌右衛門さんが非常に楽器が達者な方で、だんだん難しい手を使うようになり、ハードルが高くなっていったのが、今の『阿古屋』だと思うのですが、これはもう長く続けるしかありません。お稽古するしかないんです。
──ちなみにお好きな楽器はありますか。
玉三郎 キャリアが一番長いのは琴なんです。調弦も必要ないからいいんですよ(笑)。
──その次の演目は『夢二慕情』です。これは、夢二が愛した女性たちを玉三郎さんが演じられ、夢二の半生を描く作品です。1983年に初演、翌年には新橋演舞場・中日劇場で上演され、昨年、映像作品として新たに撮り下ろして南座で発表されました。
玉三郎 『夢二慕情』は、『愛の讃歌〜エディット・ピアフの生涯』でご一緒した岩谷時子さんにお願いして書いてもらいました。これで夢二の愛した女性を知っていただくと、『長崎十二景』の女性たちにも自然とつながって、作品に入り込みやすくなるのではないかなと思っています。ただ、両方を実演するのはとても大変なので(笑)、映像にすることにしたんです。
──映像で演じるにあたってはどんなことを大切にされましたか。
玉三郎 実在した人物を僕が演じるわけですから、夢を壊さないようにしなきゃいけないなと(笑)、それが大変でした。でも、実演と違って、着替えの時間を気にせず集中して演じられたので。妻のたまき、永遠の恋人と言われている彦乃、最後の女のお葉、それぞれの女性のエッセンスがギュッと詰まっていると思います。
──そして『長崎十二景』は、竹久夢二の絵をもとに唯是震一さんが発表された組曲「長崎十二景」の音楽で綴られる舞踊劇です。1979年の初演でしたが、どんな経緯で作られたのでしょうか。
玉三郎 僕の三曲の先生である川瀬白秋さんに、「あなた夢二の女をやったらどう?」と言われたのが始まりでした。そのときは実感がなかったんですけど、そのうちに唯是震一先生の組曲「長崎十二景」に巡り合って。友人の竹邑類さんという振付家・演出家に「これで一緒に何かできない?」と声をかけました。

──組曲の何にインスピレーションを受けられたのでしょう。
玉三郎 とにかく曲が素晴らしかったんです。邦楽でありながら西洋的な技法も入っていて、まさにいろいろな文化が混ざっている長崎みたいで。その組曲を並べ替えながら作っていって、最初はちょっとガタガタしたところもありましたけど、再演を続けるなかでなだらかになってきました。芝居ってそういうものなんです。相手役の「男」を演じてくださる方も変わっていきますしね。
──今回その「男」を演じられるのが進藤学さん。特撮ヒーロー作品やミュージカル「テニスの王子様」で注目され、ダンサーとしても活躍されています。進藤さんをお迎えになったポイントを教えてください。
玉三郎 踊れて僕の背丈に合う方をということでご紹介いただきました。映像で踊りも拝見しましたが、何より初めてお目にかかったときからラクだったんです。いい意味で遠慮せず、スッキリはっきりしていて。身長も180センチあって僕がつかまりやすい。いえ、手すりとしてではなく(笑)、そばにいやすい、寄り添いやすい、ということです。昔の歌舞伎役者さんたちは、立役は女方がどれくらいそばにいやすいかを考え、女方も立役にどのくらい寄り添えるかを考えたそうです。それくらい、舞台上の男と女の形をした人間が自然にそばにいられるかということは大事なんですね。
──『長崎十二景』では、玉三郎さんが演じられる、まさに夢二の絵から抜け出したような美しい女性と、「男」の逢瀬が描かれます。演出はどこから考えていかれるのでしょう。
玉三郎 まず初めに絵が見えていて、それは夢二の絵がもとになっているんですけど、その絵にはめていくように作っていきます。ただし、はまらないときは、キャストに合うように絵のほうを変えていく。でなければキャストが良くならないですからね。今回も進藤さんに合ったものにしていきますから、松竹座や南座とは、また違うものになるはずです。
──今回上演される三作をはじめ、たくさんの新作を作ってこられました。その際にはどんなことを心がけておられますか。
玉三郎 新作でもやはりできる限り質の良いものをお届けしたいと思っています。あまりバタバタした雑なものは作らないようにと。
──そのヒントは古典にあったりするのでしょうか。
玉三郎 新作と古典を比較して考えたことはないです。
──ということは、ただ作りたいものを作っておられると。
玉三郎 その通りです。これなら新しいだろうとか、お客様にウケるかなとか、あまり考えたことがなくて、興味あるものに向かっているだけなんです。
──今新たに興味を持っていらっしゃることはありますか。
たとえば今回出会った進藤さんと、自分は出演せずに何か作れたら面白いなと思ったりもしています。でも一番に思うのは、毎回無事に初日が開いて、お客様に来ていただいて、無事に千穐楽を迎えられること。本当に何よりも、それが大事なんです。
取材・文/大内弓子
<公演情報>
「坂東玉三郎 特別公演」

日程:2026年4月8日(水)~23日(木)
会場:新橋演舞場
[演目と出演]
一、口上(こうじょう)
坂東玉三郎
二、三曲糸の調べ
坂東玉三郎
三、〈映像〉夢二慕情
四、長崎十二景(ながさきじゅうにけい)
坂東玉三郎
進藤 学
チケットURL
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2606315/
公演情報
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/play/980/
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