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“役を生きる”という覚悟。長尾謙杜が二度目の時代劇でたどり着いた新境地

映画

インタビュー

ぴあ

(撮影/堺優史)

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映画「木挽町のあだ討ち」では物語の発端となる仇討ちをした若侍を演じている長尾謙杜。挑むのは、父の仇討ちを見事に成し遂げたと称えられるが、その裏には誰も知らない秘密を抱えており、物語の鍵を握る重要な役どころだ。17歳の若侍で美しい容姿を持つ菊之助を凛々しくもどこか影を帯びた眼差しで妙演。運命に翻弄されながらも秘めた覚悟を抱く役をまっすぐ繊細に表現した今作は俳優・長尾謙杜の魅力が花開く一作となった。

とにかく役を生きることを意識しました

2025年に「室町無頼」で時代劇に挑戦し、圧巻のアクションシーンで観る者を魅了した長尾謙杜。再び挑む時代劇となったのは、ひとつの仇討ちの真実を卓越した構成で明るみにしていく映画「木挽町のあだ討ち」だ。江戸の芝居町である木挽町で語り継がれることとなった仇討ちは、ただの仇討ちではない。歌舞伎の芝居小屋「森田座」が大入満員で千穐楽を迎えた夜の大事件をめぐる物語だ。

「今作は時代劇ではあるものの、物語が結構スピード感たっぷりに展開していくのが魅力だと思いました。ミステリー要素もありますし、いろんな仕掛けがあるので、時代劇に触れるのが初めての方でも、すごく楽しめる作品になっています。とにかく源孝志監督が撮る画が美しくて素敵なので観ていただきたいですね」

完成した作品に手応えを感じている様子でしみじみと語った長尾。今作で演じたのは、17歳にして武士の掟「仇討ち」の使命を背負った美濃遠山藩士の若侍・伊納菊之助。スクリーンいっぱいにほとばしる瑞々しい美しさが溢れ、長尾しか演じられない菊之助となったが、最初はプレッシャーに押しつぶされそうだったと語る。

「菊之助は、この物語を背負う大きな登場人物の一人ですし、柄本佑さんをはじめとした素晴らしいキャストの皆さんと共演させて頂くということで、菊之助を演じることへのプレッシャーは大きかったですね。この作品と立ち向かうには、自分にとって大きな壁を超えなくてはならないと思いました。現代の人間も背負うものがないわけではないですが、この物語の江戸時代というのは、戦もあれば、かたき討ちもあって、背負うものが大きい時代。生きるか死ぬかを背負う重みというものは一体どういったものなのかなと考えさせられました。ただ役作りに関しては、今回は役と自分と重ね合わせて考えることは少なくて、とにかく役を生きることを意識しました」

女形の自分を見て「美しいな」と思えて嬉しかった

「室町無頼」では六尺棒を武器にした“無敵の棒術”を身に着けて戦う才蔵役で魅せた身軽なアクションは記憶に新しいところ。前作では棒術の訓練に挑んだ長尾が今回は剣術にチャレンジ。かなり長尺の肉弾戦を前に準備をしっかり重ねたうえで取り組んだそうだ。

「前回は室町時代で今回の舞台は文化七年(1810年)の江戸・木挽町。戦う武器も違いますし、全く別物ではあるんですけど。『室町無頼』ではアクションが初めてだったので、右も左も分からずの状態に比べると前回のアクションの撮影で経験をしたことが活かされたのかなと思いますね。殺陣のシーンはもちろん、時代劇の所作というものを渡辺謙さんや北村一輝さんに教わりながらできたことは貴重な経験になりました。ひとつひとつの所作も教わりましたし、北村さんとは1対1で戦うシーンがあったので、アクションシーンで『こういうほうがよく見える』ということを教えていただいて。2人で『ここはこうしようか』とお話させていただきながら、撮影できたことは僕にとって、大きな財産になりました」

カメラの準備が整うまでの待ち時間では天然で可愛らしい長尾に北村がツッコミを入れるなどして、リラックスして過ごしていたが、シューティングが始まると一変。お互いが最良の動きをするため、しっかり相談を重ね、一緒に監督へアイディアを持ちかけていたという。そんな長尾と北村の関係性がふたりのシーンにしっかり反映されている。大先輩である北村や渡辺謙との共演は自身にとって、どんな時間になったのだろうか。

「いや、本当に贅沢な時間でした。撮影する中で気づいたことなどをたくさん教えていただけて、ありがたかったですね。北村さんには『もっと力を抜いたほうがいいよ』とか、アドバイスもいただいて。作兵衛と菊之助が二人で話すところを渡辺謙さんが演じる金次が見ているっていうようなシーンがあって、謙さんからはそこの会話の時の手の置き方であったり、体の向きを変える方法であったり、色々とアドバイスしていただきながら撮影したことをすごく覚えています」

北村とは、冒頭のシーンで雪が降る夜の仇討ちのシーンが。東映京都撮影所のスタジオ内で人工の雪を降らす中で撮影。人工の雪だからこそ、映画ならではの照明が映え、どこか幻想的で美しい光景が際立っていた。

「自分が出演した作品を観る時って『あの時、こうした方が良かったかな』とか、いろいろ気になってしまって、あまり満足をして帰ることが少ないんですよ。もちろんその時、自分は全力を出し切って撮影したシーンではあるんですけど、『今だったらこうするかな』って色々と考える方が多いんですが、源監督の映像美を感じられるシーンになったと思います。あのシーンはスタジオの中で、人工で雪を降らせているので、みんな喉をちょっと傷めながらの撮影だったんですけど(笑)。完成したものを観て、女形のところを観た時に、『美しいな』って自分ながらに思えたのは、すごく嬉しかったです」

女形の着物の着こなしは難しかったです

森田座の厄介になりながら、仇討ちの機会を狙っていた菊之助。舞台がはねた直後に父・清左衛門を殺害し逃亡していた男・作兵衛の首を見事、討ち取ったのである。心優しい菊之助が大男の作兵衛をどうやって仇討ちしたのか、総一郎(柄本佑)が解明しようとしていく。そこには芝居町らしい木挽町の人々が織り成す人情が秘められていた。

「森田座の皆さんとの人と人との会話の掛け合いのシーンでは、1人ひとりとの関係性を大切に撮影していきました。何よりも作兵衛と対峙するシーンでは、相手の気持ちもくみ取りながら、より大切に演じられたかなと思います。もちろん森田座の方々とのやりとりも大切なシーンですけど、作兵衛と菊之助が2人で会話するシーンで通じ合っているのが伝われば、この作品としてオッケーかなと思いましたね」

みどころのひとつは、長尾がで女形を演じるシーン。女形の艶やかな着物の衣裳もお似合いだ。普段はなにわ男子のライブで衣裳担当を務める長尾。凛とした衣裳の着こなしにもこだわりがあるように感じられるが……。

「いやいや、ライブの衣裳の着こなしとはまた全然違いますからね。でも、着物や和服などは、日本人として大切にしていきたい文化ではあります。いずれは自分自身でちゃんと勉強して、和の衣裳を作る時が来るのも面白いかもしれないですね。今回は、この作品を撮る前にアリーナツアーの衣装のことは全部終わらせてから来たので、アウトプットし尽くして現場入りして。菊之助のことだけを考えて集中して現場にいました。
女形を演じるにあたっては、イチから所作を教えていただいて、歩き方ひとつ、手の動きひとつでも、やっぱり男性と女性では違うので。男性の立ちふるまいは、男性なので何となく分かりますが、女性の着物を着ての動きの場合は、重心の持っていき方すら全然違うので、めちゃくちゃ難しかったです。女形としての動きが成立するか、間に合うのか、すごく不安になったくらいでしたから」

幸せなこと。楽しいことをしながら、自分を大切に生きていきたい

仇討ちの使命を背負うという役を演じた長尾が「今、自分自身の使命だと思っていることとは?」という質問をぶつけてみると、「あまり、重いものを背負って生きてるつもりもないので、そんな使命っていうほどのことはないですけど……」と前置きしてから、ちょっと背筋を伸ばして、こう答えてくれた。

「どこまで行っても自分の人生なので……。やっぱり自分が楽しいと思うことをしていきたいです。もちろんなにわ男子の活動を通して、観て下さる方たちにエンターテインメントを楽しんでもらって、幸せにしたいという思いは大前提にありますけど。僕自身、好きなことをお仕事にしているので、幸せなこと。楽しいことをしながら、自分を大切に生きていきたいです」

その好きなことのひとつには、もちろんお芝居のお仕事も。二度の時代劇出演を重ねて、時代劇への想いも語ってくれた。

「いつか時代劇に出たいという憧れは元々あったんですよ。ここ1、2年、時代劇に携わらせていただいて、東映京都撮影所で撮影の日々を送り、その夢が叶いました。そして、大変光栄なことに東映太秦映画村の第一期リニューアルオープンアンバサダーとして、僕が太秦サポーターに就任させていただけました。 まさか自分が映画村のアンバサダーに選んでいただけるとは思ってもみなかったことだったので、めちゃくちゃ嬉しいですね。
僕が務めることによってなにわ男子のファンの皆さんをはじめ、これまで時代劇に触れたことのなかった皆さんにも時代劇の魅力を知ってもらえるきっかけになって、劇場に足を運んでもらえたらいいなと思います。100年に及ぶ時代劇の歴史を未来へ繋ぐ1人になれるように頑張りたいです」

今作は、時代劇プラスミステリーという、これまでの日本映画にはあまりなかった作品。しかも、庶民にとって大切な文化だった江戸歌舞伎の熱気に触れられるのも醍醐味だ。日本の文化でもある時代劇を大切に受け継いだ長尾が今思うこととは――?

「時代劇は、大切にしていかないといけない日本の文化だと思います。昔の時代のエッセンスを知るには、大切なものだと思いますし、これを絶やしてはいけないですよね。最近では海外からも時代劇は注目されていて。渡辺謙さんが出演されてる映画『国宝』がアカデミー賞にノミネートされるなど、日本の作品が海外でも注目されているなぁと感じます。あと、僕は、普段、東京と大阪を行き来することが多いですけど、あまり改札で並ぶことってないんですね。でも、この作品の京都での撮影期間は、外国人の方がすごくいらっしゃっていて、混雑していました。京都駅から10分ぐらいなかなか出れないことがありましたからね(笑)。

その時、京都という昔ながらの神社仏閣が多い観光地が海外の方に人気なんだなっていうのは改めて感じましたね。日本独特の文化も人気で、茶道の柄杓などお手前用の茶道具も人気みたいですよ。今作も海外の方に触れていただいたらいいなと思いますし、日本の方には改めてこの作品で日本の時代劇の良さを知っていくきっかけになってくれたら嬉しいなと思います。ミステリー作品としてもすごい面白いので、ぜひ観ていたただきたいです!」

木挽町のあだ討ち

2026年2月27日(金) 全国公開

Ⓒ2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会
Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社

■原作:
永井紗耶子
『木挽町のあだ討ち』(新潮文庫刊)

■監督・脚本:源孝志

■出演:柄本佑
⻑尾謙杜 瀬戸康史 滝藤賢一
山口馬木也 愛希れいか イモトアヤコ 冨家ノリマサ 野村周平
高橋和也 正名僕蔵 本田博太郎 石橋蓮司
沢口靖子 北村一輝
渡辺謙

■主題歌:「人生は夢だらけ」椎名林檎
(EMI Records / UNIVERSAL MUSIC)

■企画協力:新潮社
■配給:東映
■映画公式ホームページ:https://kobikicho-movie.jp
■映画公式X:https://x.com/kobikicho_movie
■映画公式 Instagram:https://www.instagram.com/kobikicho_movie/


撮影/堺優史、取材・文/福田恵子

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