ミルクボーイ駒場孝の「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」第29回:アジアの映画が好きかもしれないと気付けた「パラサイト 半地下の家族」
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ミルクボーイ駒場孝の「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」第29回ビジュアル
これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。
第29回のお題は、第92回アカデミー賞で作品賞を受賞した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」。前回の「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」と続けて観たことで駒場はあることに気付き、「今後の映画人生においてとても重要なポイント」になったという。
文 / 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」)
ミルクボーイが地下から出たての時期の公開作
こんにちは、ミルクボーイ駒場です。今回鑑賞した作品は「パラサイト 半地下の家族」です。この映画も観たことはなかったですが、ポスターのビジュアル(家族写真のような写真に全員目にモザイクが入っているやつ)がとても目を引き、怖いのが苦手な僕ですが、観てみたいなぁと前から気にはなっていた作品でした。ただ2020年1月に日本公開ということで、リアルタイムの公開時はまったく知りませんでした。この頃と言えば、「M-1グランプリ2019」の優勝直後で、次々いただくお仕事に必死で立ち向かっている時期。まさに自分たちが芸人として半地下(どころか深めの地下)から地上に出たてのときで、最新映画情報を気にしている余裕はありませんでした。
そして改めて今回鑑賞するにあたりしっかり向き合って初めて知りましたが、タイトルが「パラサイト~半地下の家族~」だと思っていたら「パラサイト 半地下の家族」なんですね。“~”がないんですね。“~”があると思っていました。確かに、「パラサイト~半地下の家族~」と「パラサイト 半地下の家族」、“~”があるとないとで雰囲気が全然違います。“~”があると不気味さが激減している印象です。“~”があると“半地下の家族編”みたいな雰囲気が出てしまい、なんか“「北の国から」感”が出ます。「北の国から~'87初恋~」みたいな感じになりますね。不思議なものです。こんなことを書きつつ、僕は「北の国から」も一瞬も観たことがないので念の為「“~”付いてるよな?」と確認したところ、なんと「北の国から」にも“~”は付いていませんでした。「北の国から '87初恋」でした。勝手に付いてるもんやと思っていました。危ないところでした。イメージでもの言っちゃだめですね。じゃあ何に“~”が付いてたかなぁと思いましたが、まぁ今回は調べずに終わりました。何かには付いているはずです。
アジア系の映画が圧倒的に見やすいことがわかりました
そして観た感想としましては、とても面白かったです! 公開当時も言うてたのかもしれないですが、もっと言ってくださいと思いました。観てよかったです。イメージで、最初からめっちゃ気持ち悪く怖い話と思って構えていましたが、前半は理解ができる範囲でテンポが良く、少し面白風味もあり観入ってしまいます。うまいこといきすぎてる、という意見もあるかもしれないですが個人的には確かに無理あるかもしれないけど、なんとかルールは破ってないような気がして、冷めずに付いていける感じでした。僕は吹き替えで観たのですが、会話の間も良く、絵を見て話しているワンシーンがあるのですが普通に「おもろ」と思うやりとりもありました。そして、前半うまいこといきすぎて残り時間どうなるのかなと思っていたら、後半はぐいっと怖さが入ってきます。でも怖いと言ってもいわゆる心霊的な怖さではなくじめじめした嫌な怖さ、しんどい怖さで、「なんやこの話めちゃくちゃフィクションやなぁ」とずっと外野から観られる感じではなく、「まったくないことはないかもしれん」と思わせるような妙なリアルさがありました。前半後半で別の面白さであっという間に観終わりました。ホラー系とかの怖いものが苦手な僕ですがまぁ観れる範囲でしたので、そんな方でも観てもらえるかと思います。
というか、前回の「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」と今回の「パラサイト」を観てみて、僕個人の映画に対する見解が出たのですが、僕は“アジアの映画が好き”かもしれないです。ハリウッド映画ももちろんいいのですが、アジアの映画は湿っぽくていいです。その場面の空気や温度に湿度、匂いまでもが画面を通して感じられる気がして、いい気分にも嫌な気分にもさせられて深くまで世界に入り込めます。これがアメリカやヨーロッパの映画だとこの感覚になりにくいんですよね。なんなんでしょう、俳優さんの顔なのか街並みとかの雰囲気なのか。そもそもアジア圏で生まれ育っているから? それとも使用している機材、撮影技術によるものなのか? あと変な粗さもいいです。とにかくアジア系の映画が個人的に観やすいことがわかりました。これはこのコラムをやらないと絶対わからなかったことであり、今後の映画人生においてとても重要なポイントであると思います。これから、迷ったらアジア映画を選ぼうと思います。
そして今回の「そんなこと言うてた?」ですが、この作品に出てる役者さんは「梨泰院クラス」とか「愛の不時着」にも出てた役者さんだったって言ってた?です。当時めちゃくちゃ話題になってたそれらの作品も僕は観てないので、そうなると改めてそちらも気になってきました。こうなると映画やドラマは観ても観ても終わりがないですね。「あの人が今度はこんな役をしてる」とかの目線で観始めたらもう楽しすぎますね。こんな楽しい世界があったんですね。勘弁してほしいです。
映画ナタリーさんの連載29回目にして自分の好みがわかった記念の回になりました。これからももっと自分の映画観と向き合うため、いろいろな作品を観ていきたいと思います!
編集部から一言
前回の「トワイライト・ウォリアーズ」が駒場さんに好評だったことを踏まえ、「そもそもアジア映画全般を観てもらってなかった」という考えから「パラサイト」だったのですが、まさか「迷ったらアジア映画を選ぼう」というところまでいくとは。「好きな映画の共通点を考えて観る映画を選ぶ」というのはある程度いろんな作品を観ないと出ない考えだと思うので、お役に立ててうれしいです。とはいえ「好みではなさそうなものもたまには観てみる」というスタンスも大切だと思うので、この連載ではなるべくランダムにお題を選ぼうと思います。
「パラサイト 半地下の家族」(2019年製作)
半地下の家で暮らす貧しい一家の長男であるギウは、ひょんなことからIT企業のCEOである大富豪パクの家で家庭教師の面接を受けることに。やがてギウの妹ギジョンも豪邸に足を踏み入れ、対照的な2つの家族の出会いは思わぬ事態を招き寄せていく。主演はソン・ガンホ、監督はポン・ジュノ。第72回カンヌ国際映画祭では最高賞のパルム・ドール、第92回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞を受賞した。なおキャストのチャン・ヘジンとパク・ミョンフンは「愛の不時着」、パク・ソジュンは「梨泰院クラス」にもそれぞれ出演している。

