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若手ドラマプロデューサーが“ドラマの今”を語り尽くす座談会

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左から高橋眞智子(共同テレビ)、佐井大紀(TBSテレビ)、南野彩子(NHK)、加瀬未奈(テレビ東京)

今、若手プロデューサーが作るドラマがアツい!

日々さまざまな価値観がアップデートされる中、20代~30代前半の作り手ならではの感覚で、ヒーリングドラマと呼べる優しい物語や“王道だけど令和らしい”アプローチの作品が多数生まれている現代のドラマ業界。ドラマについて取り上げる連載「ナタリードラマ倶楽部」のVol. 20では、キャリア10年目以下のプロデューサーたちに“ドラマ業界の今”を語ってもらう座談会をお届けする。

参加者は高橋眞智子(共同テレビ)、佐井大紀(TBSテレビ)、南野彩子(NHK)、加瀬未奈(テレビ東京)の4名。議論が白熱した「企画書をどう通すか」というテーマでは、それぞれの異なる企画スタイルが明らかになったほか、“セルフブランディング”というキーワードも飛び出す。そのほか学生時代に熱中したドラマ、原作を探す際の苦労、地上波・配信作品でできることの違い、そして“攻めた企画とは?”という問いについても話してもらった。

取材・文・撮影 / 脇菜々香

座談会参加者プロフィール

高橋眞智子(共同テレビ / 2016年入社)

担当作品:「嗤う淑女」「人事の人見」「102回目のプロポーズ」ほか

佐井大紀(TBSテレビ / 2017年入社)

担当作品:「終のひと」「Eye Love You」「あのクズを殴ってやりたいんだ」ほか
※映画監督として、ドキュメンタリー「日の丸~寺山修司40年目の挑発~」「方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実~」なども手がける

南野彩子(NHK / 2018年入社)

担当作品:「パーセント」「いつか、無重力の宙で」「逆賊の幕臣」ほか

加瀬未奈(テレビ東京 / 2019年入社)

担当作品:「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」「ひだまりが聴こえる」「俺たちバッドバーバーズ」ほか

局・会社ごとに異なるドラマプロデューサーまでの道のり

──今日はドラマプロデューサーとして活躍されているキャリア10年目以下の皆さんに、会社の垣根を越えていろいろとお話しいただきます! まずはそれぞれ入社されてからどんな職種を経験されてきたのか、簡単に教えていただけますか?

高橋眞智子(共同テレビ) 就活の際に部門別採用で分かれていたので最初からドラマ部志望で受けて、同期4人がプロデューサー志望かディレクター志望かで分かれることになり、私はプロデューサーコースになりました。AP(アシスタントプロデューサー)を約5年やったあと、担当した連ドラのスピンオフ作品のプロデューサーを初めて担当させてもらい、その後もAPとPをやりながら年次を重ねて今に至る感じです。運とタイミングによりますが、弊社では5、6年目ぐらいでプロデューサーデビューする人が多いです。

南野彩子(NHK) 私はディレクター職で採用されました。私が採用された年は、1年目から東京以外の各地に配属されることが多かったです。100人くらいいるディレクターの同期が、研修後に順番に呼ばれて、人事から「あなたは北海道」「あなたは福岡」と配属地が発表されるんです。待機場所に戻ってきた人からホワイトボード上の日本地図に名前を書いていく、みたいなことがありました(笑)。

佐井大紀(TBS) ダーツの旅みたい(笑)。

南野 出身は東京なんですが、最初の配属は滋賀県の大津局。2年半くらいは報道の仕事で高校野球の中継や台風中継、ドキュメンタリーを作ったりして、そのあと大阪に異動してからはニュースの立ち上げや「バリバラ」という福祉番組を担当しました。ドラマ部に行けたのは4年目で、朝ドラ「カムカムエヴリバディ」(2021年度後期)が初めて参加した作品。扮装担当として、「何話くらいから昭和何年になって、服の流行りはこう変わって……」といったことを監督や扮装部さんと一緒に考えていました。助監督から始まって、自分で企画を出した特集ドラマ「忘恋剤」の演出をやり、2023年に「パーセント」というドラマで初めてプロデューサーを務め、そこからはプロデューサー業をメインにやっています。脚本を作るときって取材がすごく重要なのですが、その題材やテーマを深掘りしてどう物語にするか作家さんにご提案するときに、滋賀での報道経験はめちゃくちゃ大事だったなと思っています。

加瀬未奈(テレビ東京) 私はずっと映画、演劇、ドラマ、アニメ、マンガ、ゲームが全部好きで、アニメ志望でテレビ東京に入りました。最初の面談で「何がしたいの?」と聞かれて、「とりあえず新しいことがしたいです」と言ったら、初配属がビジネス開発部という新しい事業を生み出す部署。4年間の間にVTuberドラマ「四月一日さん家と」(2020年)のAPをやったり、お笑い×映画バラエティ「アルコ&ピースのメガホン二郎」(2022~2023年)のプロデューサーをやったりして、5年目にドラマを志望して異動してきました。ドラマを志望したのは、番組の一貫で松居大悟監督とショートフィルムをご一緒させていただいたのがきっかけです。1番最初に通った企画がドラマ「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」(2024年)で、続けて「ひだまりが聴こえる」(2024年)という作品も企画しました。

──ではドラマの制作現場での下積み期間は……?

加瀬 ほとんどないので大変です(笑)。最初は現場の苦労が見える範囲でしかわからなかったので「もっと想像力を働かせないとダメだ」と思いましたし、自分が勉強を怠ってはいけないなと感じました。今、ショートドラマにも携わっているんですけど、予算が少ない分、香盤表をプロデューサーが作ったりすることもあるんです(※編集部注:本来は制作部の助監督が作る場合が多い)。なので今ショートでようやく勉強できているという状況。順番が逆になっちゃったんですけど、現場で助監督さんの動きを見て、自分でも手を動かしたほうがいいのかな……とかいろいろ考えています。

佐井 僕はドラマ志望でTBSに入社して制作の部署に配属され、最初の半年間はバラエティ番組「マツコの知らない世界」のADをしていました。ドラマ制作部では、一番下のADとして出番の役者さんを呼びに行ったり、スタッフにトランシーバーを配ったりする仕事を最初の1年半ぐらい、美術や小道具の準備・管理をするサードADを1年ぐらいやって、APになり、ちゃんとプロデューサー表記されたのは妻夫木聡さん主演の日曜劇場「Get Ready!」(2023年)が最初です。その間、社内の公募で朗読劇の企画をやったりドキュメンタリー映画を撮ったりもしてきましたが、基本はドラマ部で仕事をしてきました。働き方改革やコロナ以降でペースが変わってきて、プロデューサーに上がる速度は早まっていますが、それでも6、7年目で上から3番目のプロデューサーぐらい。自分の企画が通るか、あるいはそれまでの仕事が認められるとチーフプロデューサーを任されるんですけど、それも早くて9、10年目じゃないですかね。

──話を進める前に読者のためにもイメージを共有しておきたいのですが、すっごく雑な聞き方なんですけど、プロデューサーの仕事ってドラマ「ブラッシュアップライフ」(2023年)の主人公・近藤麻美の3周目の感じで合っていますか?

高橋 友達から「なんの仕事してるの?」と聞かれたら「『ブラッシュアップライフ』の主人公みたいなイメージ」って言っています。もちろんあの中には描かれていない、地味で泥臭い仕事もあるんですけど(笑)。

リアリティとフィクションのバランスが変わってきた?

──では、ドラマを企画したり、脚本家や監督たちと脚本の打ち合わせをしたり、撮影現場でのトラブルに対応したり……と、そんなに雰囲気は外れていない前提で進めさせていただきますね。もともと皆さんドラマ志望で、世代も近いですが、学生時代に熱中したのはどういった作品ですか?

加瀬 最初は「探偵学園Q」(2007年)ですね。小学校5年生のときだったんですけど、あの頃の日テレドラマをめちゃくちゃ観ていた世代です。「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」(2006年)とか。

佐井 土曜日の21時からですね!

加瀬 そうです! あれで一気にドラマ好きになりました。自分が“人が死ぬドラマ”が好きだと気付いたのは高校~大学ぐらいの頃で、「ウロボロス~この愛こそ、正義。」(2015年)とか、最近の作品だと「MIU404」「テセウスの船」(ともに2020年)とかも好きですね。

──だから殺し屋(「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」)や、表社会では解決できないトラブルを引き受ける裏用師(りようし / 「俺たちバッドバーバーズ」)の物語を企画されるんですね(笑)。

高橋 私は小さい頃から「やまとなでしこ」(2000年)を観て“CAさんいいな”と思ったり、「anego[アネゴ]」(2005年)を観て“篠原涼子さんが住んでいた家に住みたい!”と考えたりしていました。今なら、商社の仕事ができる女性だからあの家に住めていたんだってわかるんですけど(笑)。はたまた「オレンジデイズ」(2004年)を観て“世の大学生は全員あの生活をしている”と勘違いして、いざ自分が大学に入ったら単位を取ることに追われる……みたいな。そこも含めて、自分が憧れた大人の世界の多くがドラマきっかけで、この仕事をしたいと思ったことにもつながっています。

南野 激しく同意です! ドラマの主人公が着ている衣装が欲しくなるし。「獣になれない私たち」(2018年)の主人公・晶(新垣結衣)が、会社からも恋人からもぞんざいに扱われて心をすり減らしたときに、「強くなりたい」って新しい靴を買って出社するんですよ。あのシーンが大好きすぎて、翌日自分も靴を買おうって(笑)。そんなふうに憧れるものがドラマの中にあることで救われてきたなって。

佐井 小学生のときはフジテレビの「ランチの女王」(2002年)とかを観ていましたね。中学ぐらいからはテレ東のドラマ24枠をよく観ていて、大根仁さんの「湯けむりスナイパー」(2009年)といった作り手の考えが色濃く出た作品が面白いなと思っていました。ゴールデン帯のドラマには“みんなを楽しませたい”という哲学があると思うんですけど、自分がいろんな音楽や映画を好きになっていった中学や高校時代にはこういう独自の世界を持っている作品に惹かれました。その趣味がだんだん、小学生のときに観た「TRICK」シリーズ(2000年~)といった風変わりなドラマともつながっていたと気付きました。

──当時熱中したドラマと最近のドラマで、違うなと思うところはありますか?

加瀬 最近のドラマはよりリアルさを求められるなと感じます。昔って、カウボーイとギャルが恋したり(「ギャルサー」 / 2006年)、とんでもない設定のドラマが普通にゴールデン帯で放送されていたじゃないですか。今それをやらないのはなんでなんだろうと考えていたのですが、SNSが普及して1人の意見がどんどん拡散される時代に、細かい設定の粗さが気になる人の拡散力が大きくなってきていることも1つの要因なのかなと。リアリティとフィクションのバランスみたいなものが変わってきたのかなと思っていました。

南野 当時流行っていた作品って学園ドラマが多かったですよね。「花より男子」シリーズ(2005年~)や「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」(2007年)など……。すっごくお金持ちな登場人物や、華やかな家や衣装に、子供の頃は「素敵だなあ」と憧れていたんですけど、いざ自分が作る立場になると“20代女性キャラクター”の生活を“20代女性の自分”と照らし合わせて「こんな家には住めないな」と考えてしまう。東京タワーが見えるマンションなんて!と(笑)。一方で、ドラマとして楽しんでもらうためには衣装やお部屋が心ときめくものであることも求められている気がしています。「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021年)の主人公の部屋にあったおしゃれな水色の壁紙とオレンジのソファみたいな。リアルとときめきのあんばいを探っている感覚ですね。

佐井 思ったのは、「もう“お茶の間”というものがないのかもしれない」ということ。僕らは小さい頃、面白い番組やドラマについて次の日学校で「あれ観た?」という話をしてきましたが、今はリビングでYouTubeを観ている子供も多いですよね。音楽業界で言うと、サブスクなどの登場によってCDが売れるサイクルが崩壊したのと同じように、今はドラマも「ヒットしている」ことの定義自体がかつてより不明確で、誰に向けて作ればいいのかわかりづらくなってきたところが一番大きな違いなんじゃないかなという気がします。逆に言うと、作ったら一定数には必ず届いてSNSには支持する声があるから、大ヒット作もないけど大失敗もないのかもしれない。数字的には大失敗もあるのでしょうが、作品数が少なくないので均一化されている印象もあります。ずっとそういうフィールドで作っていくのか、変わっていくのかはわからないけど……。

高橋 エンタメの媒体が多すぎるのですが、時間が有限なことは変わらないし、どこか1つの媒体に集中することはないはず。みんな取捨選択して自分の好きな作品を観るから、さっき佐井さんもおっしゃっていたように大ヒットもなければ大コケしている作品も少ないのかなと感じています。ただ、私は「silent」(2022年)の情報が解禁されたとき、あそこまでヒットするとは予想できませんでした。気付いたらSNSから火がついて、あんなに若い人たちが観るドラマになっていたのはすごいなと。こんなに世を動かし、若い子が行動するきっかけになったドラマがあることで、昔ほどテレビドラマが主流ではない現代でも、爆発的にヒットする作品が今後も出てくる可能性はあるのかも、と信じたくなりました。

企画を通すためには“セルフブランディング”が鍵

──プロデューサーとしてドラマの企画を考えるとき、どんなことを一番大切にしていますか? ご自身のやりたいことを“どう通すか”についても伺いたいです。

高橋 自分が作っているときにワクワクしなきゃ、観ている人も楽しめないだろうなっていうのは根底にあります。私は職業ドラマを観て憧れることが多かったので、まだ実現できてはいませんが、いずれ女性主人公の職業もののドラマを作って、同じような気持ちを持ってくれる人がいたらいいなと。もう1つは、なるべく自分が作った作品を観て傷付く人がいてほしくない。もちろん観る人や観る角度によっては嫌な思いをする人が出てくるかもしれないのですが、その絶対数をなるべく増やさない作品にしたいという思いはあります。

佐井 僕は、自己満足の企画にならないよういかに客観的に見るか、ということを心がけています。放っておいたら、誰をどんな気持ちにさせるか考えずにとにかく自分のやりたい企画を出しちゃうので(笑)。最初の3年間くらいはそういう企画を出し続けていたのですが、「いい加減にしなさい」となって……。

──ちなみに、どういった企画を?

佐井 例えば学園ものなのですが、大量殺戮の教育をしているエリート学校の話。どういう風にしたら世の中を転覆させられるか考えている生徒会長がいて、心理学や犯罪学などを学んでいる。戦時中に存在した陸軍中野学校(通称:“スパイ養成学校”)のような学園ものがあったらどうだろうって考えたんですが、ドン引きされました。あと「ウルトラマン」が好きなんですけど、“もしウルトラマンがいない世界で同じ宇宙人が攻めてきたらどう対処するか”という設定のドラマ企画書を書いたときも呆れられました(笑)。今はTBSの火曜ドラマだったら、女性が主人公で愛の要素があって前向きになるようなもの、自分は若手だから原作ものがいいかな、などと考えながら、企画書を書いています。数年前は、星飛雄馬の大リーグボール養成ギプスみたいな感覚のときもありましたが、今は何百何千とある原作の中から自分が何を選ぶかで、自分のやりたいことやどんなことに面白さを感じるかなど個性が出ると思っています。

高橋 私は制作会社の立場なので、いつだって局の方に企画を通す作業が大変で、逆に局員の方だとこんな苦労されていないのかなと勝手に思っていたのですが、局員だろうがなんだろうがこの大変さは変わらないんだなと思いました(笑)。

佐井 一度ドラマの企画が通っても、次も何か約束されているわけじゃないですしね。

南野 私はここ最近、自分が抱える悩みや、苦しいなという気持ちから企画を考えるようにしています。それが自分だからこそ書けるものになるんじゃないかと思って、身を削って、恥ずかしいけど書いちゃう!ということを大切にしています。私自身、ドラマに助けてもらった経験がすごくあって。例えば、しばらく彼氏がいないことに悩んでいたときに、登場人物が「恋人がいなくてもいいじゃん」という生き方をしているドラマを観たらちょっと心が軽くなる。自分が抱えている悩みってしょうもないのかな? 自分だけなのかな?と思っていたことで、同じようにドラマの主人公が悩んでいると友達になれた気がするというか。1人じゃないと思えた。私は「しんどいな」と思ったときに観る“お守りドラマ”のストックがあって、「けもなれ」もそうなんですが、自分のドラマも誰かのお守りになったらいいな、という気持ちで作っています。だからまずは自分の悩みをさらけ出す!

加瀬 私は佐井さんタイプ(笑)。自分には悩みや怒りがあまりなくて、でも「とにかくおもろいことしたい!」という気持ちが最初にある。企画を考えるときはまず「この組み合わせ・この設定面白そう」というものを書き出して、ログラインを作ってから、次にメッセージを考えるんですよ。もちろん物語の核になるのですごく大事ではあるんですけど、メッセージはいつも後付けです。

──では観る人を意識するのはどの段階なんですか?

加瀬 わりと研究型タイプなので、ひたすらそのジャンルを観て「今何が求められているのか」「この市場ではこういうのが一番観たいと思われてるんだ」というのを研究してからメッセージを後付けすることが多いです。似たターゲットになりそうな人たちが観ているドラマなどを観て、この作品が面白いと言われているのはこれが理由なんだ!という要素を抽出しています。最近はなかなか企画が通らなくて不調だったんですが、企画書の詰めが甘かったという自覚もあって。「これ絶対に通るわ」って思った企画って通るんですよ。

佐井 わかります。通るときって球筋が見えますよね。ドキュメンタリーの企画は通るときがわかってきましたが、それは何本かやっているからだと思います。ドラマはこれからわかってくるのかもしれないけれど、そのためには打席に立たないといけない。どういうときにこれはいける!と思いますか?

加瀬 TVerや切り抜き動画が回るビジョンが見える瞬間ですね。うちの会社には通し方がいろいろあって、「これはTVerで回る企画です」「これはグッズやビデオグラムが売れるキャラクターIPです」という通し方に企画がビシッとハマっていくときは手応えを感じます。でも最近あまりにも通らないので、変なプライドを捨てて企画を選んでる人たちに1人ずつお時間をいただいて根掘り葉掘り聞いたんです。「今どういう企画を求めていますか?」「今まで出した私の企画の何がダメでしたか?」という質問をぶつけて、フィードバックをもらったら「確かに」と納得できて。通らないには通らないなりの理由があるし、これを改善すればいいんだ!と明確になり、次の企画募集が楽しみになりました。

南野 私はこの前「南野さんの企画ってここ数年同じところをぐるぐる回ってるんだよね」と言われてグサッときました(笑)。テーマも設定も全然違う企画を出しているつもりなんですけど、うまく伝えることができていない。「まずは通すための企画の書き方を勉強しなさい」とも言われて……。

佐井 難しいですよね。だからと言って“通すための企画”をマーケティングして出したら「お前のやりたいことじゃないだろ?」と言われることもある。

高橋 ジレンマですよね。

佐井 よく言われるのは「大喜利と一緒だ」と。例えば「IPPONグランプリ」で千鳥の大悟さんとバカリズムさんが同じお題で回答するとき、“バカリズムさんだから面白い”答えと“大悟さんだから面白い”答えがあるように、結局は人と企画の組み合わせ。僕が「片付けられない女の子が掃除好きの男の子と出会って……」みたいな企画書を出したら、「やりたいわけないだろお前」「正直になったほうがいいよ」と言われました(笑)。TBSはいい意味でクリエイターファーストなところがあるので、そうなるんですよね。

──ただ「ヒットしそう」じゃダメなんですね。

加瀬 私も5、6年目くらいまでは企画が面白ければ通ると思っていたんですが、ここ1、2年はセルフブランディングと企画についてすごく考えています。社内で「この人にこういうジャンルを任せればいける」と思わせるものを決めようと思って、今はもう同性2人の物語の企画しか出していないんです。「ベイビーわるきゅーれ」も同性のバディものですし、「ひだまりが聴こえる」もそう。それは私自身が小中高ずっと女子校だったのもあって、異性同士の関係性があまり想像できないからです。自分の強みを生かしてどういう企画を出したら「この人はこれがやりたいやつなんだな」と思わせられるか、セルフブランディング中です。

南野 わかります。「同じところをぐるぐる回ってる」って、要は“南野が出した企画”という色が付いているということだと思うんです。それがいいほうに転がったら自分にしか書けない企画になるんですけど、自分よがりで書いてしまうと面白いとは思ってもらえない。自分のやりたいことは大事にしつつも、それが他人から見ても面白いと思ってもらえるような切り口を探さないとなあと思っています。

──あとは最近、“ただただ優しい作品”も増えている印象があるのですが、昔よりも企画として通りやすくなっているのであれば、それはなぜでしょうか?

南野 この前、夜ドラ「いつか、無重力の宙で」(2025年)でご一緒した作家の武田雄樹さんと話したのは、現実問題がどんどんシビアになっているということ。生きているだけでお金もかかるし、仕事も家族の問題も各々でがんばらないと成立しない。その切実さは大事にしたほうがいいよね、ともおっしゃっていました。そこを描かないドラマのほうが現実を忘れられて面白いこともあるんですけど、一方で、無視しないことも求められてるんじゃないかなって。ただ、夜ドラを作る中で、ドラマの中で悲しいことが起こったとたんに離れちゃう人が多いという実感もありました。

加瀬 確かに。悲しい回って配信でも再生数落ちませんか? 1回で十分重たいと感じるからか、悲しい回はリピートされなくて、あからさまに再生数が落ちるのは面白いなと思っていました。

南野 人がもめるシーンも嫌われますよね。友達同士がけっこう激しめの喧嘩をするシーンを、「つらくて観れなくて飛ばしちゃった」と言われたこともありました。人が怒るとか、悲しい思いをするのは、ドラマの中でさえ受け止めることが難しい時代に来ているのかもしれません。

ドラマの原作は「血眼になって探している」

──ドラマを企画することに付随して、原作ものの実写化についてもお聞きしたいです。そもそも原作をどう探して、選んでるんでしょうか。

加瀬 私は血眼になって足で探しています(笑)。作品にもよりますが、既に売れている作品は、ゴールデン帯の枠などで取り上げられるほうがその作品のためにも選択肢が増えるからいいなと思っていて、テレ東深夜でやる意義があるものは、ちょっとニッチな作品やまだ世間に見つかっていない作品に寄ります。TSUTAYAのマンガレンタルであ行から全部借りて、読みあさって、問い合わせして、でもだいたいどこかで実写化が決まってて、みたいなことを繰り返していますね。「ひだまりが聴こえる」も原作ものなんですけど、そんな感じで見つけました。

高橋 「ひ」まで長かったですね(笑)。

加瀬 しかもどんどん更新されるんですよ(笑)。あれ? 読んだことないのが追加されてる!って。

南野 私は今、原作ものの企画は出さないと自分に課しています。NHKのディレクターは100人ちょっとかな? たくさんいて、原作ものの企画もいっぱい出るんです。努力して探されている人に勝てる気がしないので、オリジナルを書くぞ!という気持ちでいるんですけど、とはいえ何が流行っているのかは気にしておきたいので、本屋に行って売れている本は読んでみるようにしています。

──市場のチェックという感じなんですね。

高橋 本屋で平積みされているものって既に人気作品だから、原作権も取られているだろうなと思うので、その作家さんの別作品を調べたり、キャッチーなタイトルを付けている作家さんの作品を掘り下げてみたり。マンガや本好きな友達に「最近読んで面白かったものとかある?」と聞くこともあります。

佐井 僕も本屋やAmazonで作品を探すことがありますが、だいたい読んで面白い!と思った作品は、ほかの人も企画書を出していることが多いんですよね。その繰り返しです。ただそれでも一応出しておくことで、選ぶ立場の人に「自分はその審美眼がある」ということを伝えられるよ、とアドバイスしてくれた上司がいました。自分がどういうドラマを作りたいのか、ということもわかってもらえるので、かぶっていても企画書を出したこともあります。

──2023年には、改めて実写化について考える機会となった「セクシー田中さん」の放送もありました。現在放送中の「終のひと」もマンガ原作ですが、佐井さんはプロデューサーとしてどんなことを意識されていますか?

佐井 原作者の方が何を変えたくないのか、何を大切にされているのか。やり取りを重ねて理解することから始め、我々も方針を立てます。丁寧に人間関係を築くのは、作品を預けてくださる原作者さんとだけでなく、俳優部に対しても同じです。例えば主演を演じることは人生を預けることだから、その作品がヒットすることや、クリエイティブ的な成功、世の中の市場的な成功などいろいろありますけど、キャリアの中で「やってよかった」と思える作品にしないといけないと思っています。

地上波と配信の違い…“攻めた企画”ってなんだろう?

──配信プラットフォームがどんどん増える中、地上波と配信の違いについてもお聞きできればと思います。できることの具体的な境目や、よく使われる“攻めた企画”という言葉について、皆さんはどう考えていますか?

高橋 根本的なことで言うと、掛けられる予算は確実に違う気がしています。映画「キングダム」級の海外ロケも行う規模のものや、CGがどうしても必要な世界観などを地上波の連ドラでやるのは、なかなか難しいことが多いです。

佐井 一番重要なのは、テレビは報道機関であって国から電波を預かっている公共のものであるということだと思います。日本は戦後、電波事業をやり続けてきて、その“相対的なもの”としてNetflixなどの配信プラットフォームが出てきたので。どっちが上とかではなくベースの違い。車を走らせるシーンであれば、報道機関の人間がリスクを犯してまで撮影するほどなのか、超大手のプラットフォームが莫大な金額と時間を掛けて安全を担保して撮るか、という違いも発生しますし、多くの人が偶然見てしまうものとお金を払って観たい人だけが観るものでは、倫理感や物事の取捨選択も変わってくる。

南野 その通りだと思います。子供がリモコンをピッと押してテレビがついたときに、センシティブな表現によってその子が傷付けられないか、ということを考えるのは大事。配信だと、自分の欲求のもと選んで観ているから“同意”があると思うんですけど、地上波の番組は同意がない状態で目に入る可能性もある。「差別はダメだよ」ということを伝えるために差別的な表現を入れるという場合もありますが、“差別的に描いたから攻めている”っていうことにはならないですよね。世代によっては今の時代、「コンプラが厳しい」「やりにくくなった」という方もいると思いますが、全部みんなの心を守るためにあるものだから。(テレビの前に)相手がいる、その相手がすごく広い、と考えていますね。

佐井 そのうえで“攻めた企画”をどう定義するかですが、今泉(力哉)さんが監督・脚本を担当している放送中のドラマ「冬のなんかさ、春のなんかね」とかは攻めていると思うんです。配信プラットフォームという相対的な関係性のものがあるから、日テレさんは「今泉力哉という作家に一枠預けてみよう」という札の切り方をしてきたと思うんですけど、地上波テレビドラマしか存在しない状況であの攻め方は成立しない気がするんですよね。これもまた配信プラットフォームができたことによる放送局の新しい立ち回り方なのかなと思います。

加瀬 私が放送と配信で明確に違うと思ったのは、「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」で胸糞の悪い悪役を作ろうとしたとき。そのキャラクターの描き方として「鳥を殺すシーンを入れていいか?」という話が出たんですが、地上波で動物を殺すシーンを流すのは(予告なく)不快な思いを与えてしまうこともあるので、やめておきたいっていう話になって。「じゃあ人間ならいいですか?」「いいですよ」と(笑)。ここの境界線だと思うんですよね。ただそうなると、悪役のキャラクター像が微妙にボタン1個掛け違うじゃないですか。こういうところで地上波と配信で描かれる物語の幅みたいなものは多少生まれているかもしれない。でも、攻めた・攻めてないには関わらないんじゃないかなと思います。

放送中・準備中の担当作品

──最後にそれぞれ、今担当されている作品について教えてください。

加瀬 「俺たちバッドバーバーズ」は、裏の顔を持つ理容師2人を描いた、バディアクションドラマです。全12話なのですが、3月上旬から「違うドラマが始まった」くらいテンションが変わっています(笑)。こんなドラマだっけ!?という展開を迎え、それによって前半のふざけていた時間がすごく尊くなるんです。そこも含めてぜひ観ていただきたいです!

佐井 「終のひと」では、(第1話の時点で)ベテラン葬儀屋の主人公が余命宣告を受けています。これまでは新人とのバディ感をコミカルに描く部分もあったんですが、最後は主人公がどういうふうに人生の幕を閉じていくかに焦点が当てられます。3月31日放送の最終回では「死とはなんなのか」「葬式をするってどういうことなのか」という話を、いわゆるテレビドラマというよりも演劇っぽいスタイルで見せるので、最終回まで楽しみにしていただけると。“攻めている”かもしれません。

南野 私は2027年の大河ドラマ「逆賊の幕臣」のプロデューサーチームに入っています。幕末を舞台に、グローバリズムの中でもがく人たちが描かれます。現代の我々が置かれている状況ととても似ている空気感の中で、主人公の小栗忠順たちが「それでも日本がよくなる未来があるんじゃないか」と信じて進む物語なので、希望を感じられるドラマです。主演の松坂桃李さんが記者会見で「健康的な時間に帰れる現場にしたい」とおっしゃっていて「その通り!」と。撮影はこれからですが、スケジュールの管理も担当しているのでがんばります。

高橋 3月19日からFODで先行配信(4月1日からフジテレビ系で放送)される「102回目のプロポーズ」を担当しています。もともとは鈴木おさむさんが企画のはじまりなのですが、自分も生まれていなかった時代の王道ドラマの続編なので、前作を観ていた世代の方も、今の若い世代にも、楽しんでもらえたらいいなと思っています。