伝説のステージ再び――『BACKBEAT』 加藤和樹×上口耕平インタビュー
ステージ
インタビュー
(左から)加藤和樹、上口耕平
続きを読むフォトギャラリー(4件)
すべて見るあのビートルズが伝説となる前夜、5人編成で活動していた彼らの青春の輝きを生演奏と共に綴る舞台『BACKBEAT』がいよいよファイナル公演を迎える。2019年の初演、2023年の再演からビートルズの5人を担ってきた不動のメンバーから、ジョン・レノン役の加藤和樹、ピート・ベスト役の上口耕平が本作への思いを語ってくれた。
――再々演となるFINAL公演の話を聞いた時の心境は?
加藤 常にファイナルの気持ちでやってきたので「もう1回やります?」という感じでしたね(笑)。でもまあ、やるんじゃないかという予感はありました。僕にとってはこれまでの舞台人生で一番大変な作品で毎回、喉を引きちぎられそうになりながらやっていますけど、終わったらどこか「まだこのメンバーで演奏していたかったな……」という気持ちもあったので嬉しかったです。「またやれるんだ!」って。
――今回は“FINAL”と銘打っていますが……。
加藤 「本当に最後ですか?」って(笑)。またやるんじゃない? というのは半分本気の冗談ですけど。FINALだからといってしんみり感傷的になるということでもなく、我々はやるべきことをやるだけという感じです。
上口 僕は今回、“FINAL”と聞いた時に、逆にスタートを感じたんです。これだけの時間、5人で音を積み上げて培ってきた絆があり、それぞれが成長して、再会するごとにブラッシュアップできている感覚があるので、これが新たなスタートになるんじゃないか―― 『BACKBEAT』が終わっても、たぶん僕らは終わらないんだろうなと感じていて、FINALの先の未来が新しく動き出すという気がしています。

――今回は稽古初日から5人で音を合わせたそうですが、初演、再演の積み重ねを踏まえつつ稽古を進めていていかがですか?
加藤 良い意味で何か焦りがないです。決して「楽勝だぜ」という意味ではなく、周りを見ていろんなことを考える心の余裕があります。もっと良くするためにどうしようか? と考える前向きな余裕ですね。
上口 年月を経て、人間は必ず変化、そして進化していくじゃないですか?
加藤 我々も40代ですから(笑)。
上口 そうなんです。初演時は30代前半だったのに、気づけばもう40歳。不思議なもので、感覚としてはずっと変わっていないつもりですけど、いざみんなで集まって演奏した時に、どこか俯瞰で見ている自分がいて、少し視野が広くなって、みんなでひとつの音を奏でる時のハーモニーを意識したり。これって人間としての成長なのかなと今回、改めて思いました。
――年齢の話が出ましたが、ジョンが亡くなったのは40歳の時。ビートルズがメジャーデビューをしてから解散までの活動期間は約8年で、この作品の初演(2019年)からファイナルまでの7年とほぼ同じくらいの期間です。彼らの時間の濃厚さが感じられます。
加藤 本当に怒涛の人生だったんだと感じます。僕はもう41歳になったので、ジョンの享年を越えてしまったんですけど、「いやいや、嘘でしょ?」って思いますもん(苦笑)。自分がこの年齢になって、彼らがつくり上げてきたものや考えに触れてみると、本当にとんでもない存在だったんだと。
上口 すごいな、あんな人間は二度と現れないだろうな、と思ってしまうよね。
5人の仲間と新たな伝説をつくる旅へ
――本作は、そんな彼らが伝説となる前夜を描いていますが、上口さんは自身が演じるピート・ベストをどのような存在だと感じていますか?
上口 『BACKBEAT』という作品の中でのピート、特に僕たち日本版におけるビートルズのピートの存在というのは、僕ら5人の関係性を踏まえてつくり上げられていった部分もあると思います。ひとつ言えるのは硬派なスタイルを持っていて、それを美学として貫いた人物だということ。ジョンたちのセンスとはまた違った独自のセンスとスタイルがあり、そこは僕も演じる上で大事にしたいと思っていて、「俺には俺のスタイルがある」というのを曲げない部分は見せたいと思います。
加藤 チームの中にいるんだけど、やっぱりピートのこだわりみたいなものは劇中でも表現されていますし、誰よりもメンバー思いで、言葉数は決して多くないけど、ジョンとの関わりという点でも、最もジョンに寄り添って、暴走しがちなジョンを止めてくれる存在でもあり。そこはすごく頼りになります。
――『BACKBEAT』におけるジョンの存在について、加藤さんは?
加藤 いや、もうヤバいです(笑)、というのは置いておいて、自分たちの音楽に対して絶対的な自信を持ちつつ、この作品で描かれるビートルズがメジャーになっていく過程において、スチュ(戸塚祥太)がジョンにとって欠かせない存在だったということは強く感じています。スチュがいるからこそ、ジョンもジョンでいられるところもあった。僕自身におきかえても、頼れるメンバーたちがいるからこそジョンとして立ち続けてきたと思います。

――初演からここまでで、思い出深いエピソードや忘れられない瞬間があれば。
上口 話せない思い出もたくさんありますが(笑)。
加藤 僕は尾藤(イサオ)さんが初演の稽古場で最初に歌われた「Hound Dog」が忘れられないです。「あぁ、これだな!」という、本物がそこにいる感覚で、稽古なのにみんな盛り上がっちゃって(笑)。
上口 素で騒いじゃったよね(笑)。
加藤 尾藤さんが『BACKBEAT』に出演してくださったことが本当に大きくて。当時の空気を体感されてきた唯一の方ですから。今回もエルヴィス役で出てくださることには感謝しかありません。
上口 思い返せばいろんなことがありましたが、僕はバンドの経験がそれまでになかったので、そういう意味で最も奇跡的な瞬間というのは、最初の音合わせですね。ドラムの練習はずっとしてきたんですけど、初めて合わせた時――曲は「Money」でしたけど、あの時のなんとも言えないピリピリ感というのは一生忘れないですね。「気持ちいい」という言葉だけじゃ片付けられない高揚感があって。
加藤 「これがバンドか!」って感じたよね。
上口 そうそう。多幸感もあったし、僕はずっとダンスをやってきて、リズムが好きだからこそ、音が重なっていくことの喜びを感じましたし、あの一瞬「バンドってすげぇな!」と思いました。
――最後に改めて『BACKBEAT』という作品はどういう存在で、ご自身に何をもたらしてくれたのかを教えてください。
加藤 5人のバンドメンバーから教わったものは仲間の大切さ。それから、僕自身も音楽をやっている人間なので、そこに自分を投じることの意味を改めて教えられた気がします。我々は表現者として何ができるのか? を考えさせられ続けた作品です。
上口 大人になってから青春をもう一度感じさせてもらえたこと、そして、楽器を使ってバンドとして表現するという、『BACKBEAT』でしか経験できない貴重な機会をいただき、アーティストとしてひとつまた道が拓けた、可能性を広げてくれた作品です。

取材・文/黒豆直樹
撮影/石阪大輔
〈公演情報〉
『BACKBEAT』
〈水戸公演(プレビュー公演)〉
日程:2026年4月12日(日)
会場:水戸市民会館 グロービスホール
〈愛知公演〉
日程:2026年4月17日(金)〜19日(日)
会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
〈大阪公演〉
日程:2026年4月25日(土)・26日(日)
会場:SkyシアターМBS
〈東京公演〉
日程:2026年5月3日(日・祝)〜17日(日)
会場:EX THEATER ROPPONGI
〈兵庫公演〉
日程:2026年5月21日(木)〜24日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
[作]イアン・ソフトリー / スティーヴン・ジェフリーズ
[翻訳・演出]石丸さち子
[音楽監督]森 大輔
[出演]
戸塚祥太(A.B.C-Z) 加藤和樹
辰巳雄大(ふぉ~ゆ~) JUON(THE& ex FUZZY CONTROL) 上口耕平
愛加あゆ ・ 林 翔太
鍛治直人 東山光明 田川景一 安楽信顕
尾藤イサオ
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/backbeat-stage/
公演オフィシャルサイト:
https://www.backbeat-stage.jp/
フォトギャラリー(4件)
すべて見る
