【Earthists. インタビュー】愛と光を高圧縮して未だ見ぬ未来へ── 新たなメタルの可能性を拡張する新EP『GRANDRAY』リリース
音楽
インタビュー
左から YUYA(ds)、YUTO(g)、YUI(vo)、kurokawa(b) Photo:oct osawa
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Text:齋藤雅大 Photo:oct osawa
ボカロ楽曲の情報密度やアニメソングのフックを、ヘヴィなサウンドとシャウトで理屈抜きの多幸感へと昇華させていく──2024年リリースのEP『HYPERMETAL』でそんなオリジナルジャンルを確立したEarthists.。待望の新作EP『GRANDRAY』では、その音楽性がさらに進化。J-POPも射程に収めながらアグレッションも強化し、ポップとコアの両翼によりレンジを広げている。同作のことはもちろん、これまでのバンドの歩みについてもじっくり話を聞いた。
── 現在はキャッチーでハイエナジーな「HYPERMETAL」という独自ジャンルを掲げているEarthists.ですが、活動初期はテクニカルなプログレッシブ・メタルコアの色合いが濃かったですよね。
YUI(vo) Djentやプログレッシブ・メタルコアが好きなメンバーたちで、海外志向の音楽をやりたくて始めたバンドでしたね。ERRA、Elitist、Novelists、Invent Animateとか、Rise Records、Sumerian Records、Tragic Hero Recordsあたりに所属していたバンドがルーツにあります。
── 2015年の結成から2年足らずで海外レーベルと契約、アジアツアーも敢行するなどシーンの中では早い段階で存在感を放っていました。
YUI 音源を出す度に、「日本でコレをやったったぞ!」みたいな感じはありました。ただ、ニッチなジャンルだからこそ常に感じている限界もありましたね。明らかに自分たちの上位互換みたいな音楽を作るバンドが海外にはたくさん居たから。J.T. Cavey(ERRA)のシャウトを聴いては絶望する、みたいな(笑)。絶対的な憧れを持って始めた分、そこに届かない葛藤や諦めがあって。「日本だと」最先端、「日本の」プログレッシブ・メタルコアの礎を作った、のような枕詞があって初めて評価されるっていう。

YUTO(g) 欧米発祥のサブジャンルを日本の僕たちがやり始めた以上、どうしても追いかける構図になってしまっていました。オリジナリティを確立するよりも、なんとかして彼らに追いつきたい、みたいなマインドが強かったと思います。
YUYA(ds)アンダーグラウンドで一部の人しか聴いてない音楽を楽しんで演奏してはいたけれど、それが日本でどう広がっていくかまでは考えてなかったですね。
── 当時の、つまり2010年代半ばのラウドシーンを振り返ってみると、coldrainやSiMがフィールドを広げていく一方で、若手の間では「現行の本場っぽい音楽をやってるバンドこそがリアルだ」みたいな共通認識があったような気もします。
YUI 近いジャンルでやってるはずの先輩たちがまったく別のステージでライブをやっていて、そこに互換性がなかったような気がしますね。もちろん、いま(新宿)アンチノックとかでやっている若いバンドの子たちも同じことを感じているかもしれないですけど。当時は小さい箱が日本の中でもさらにガラパゴス化していて、海外の最先端を取り入れたもん勝ちみたいなムードがあったように思います。
── たとえばPaleduskだって初期はNorthlaneからの影響が色濃いモダン・メタルコアでしたもんね。そういう空気感ってどこから変わっていったんだろう。
YUI ここ5年ぐらいの話だと思いますね。それこそPaleduskが「NO!」でフォーカスを浴び始めて、俺たちの世代の中で一番最初に先輩と繋がり始めて。ただ、そのきっかけは随所にあったのかな。Crystal Lakeが『TRUE NORTH FESTIVAL』を始めた当時(2017年)って、ラウドのフェス自体そんなになかったと思うし。僕らも2019年にSiMが主催する『DEAD POP FESTiVAL』のオーディションでライブ選考まで進んだりして……今考えたら、(当時の音楽性で)オーディション受けたのすごいよね(笑)。初めてセキュリティがいるライブで、感動したのを覚えています。
── そうして2018年、19年あたりから徐々に。
YUI 変わってきた気がする。僕たちも「ラウドロック」っていう言葉を自分ごととして捉え始めたし。ジャンルっていうよりもシーンのことなんだなって。そう考えるとむしろ音楽的にはボーダーレスな言葉っていう気がしてきて、しっくり来るようになったんですよね。

── そういった流れの中でEarthists.にとってブレイクスルーとなったのは、やはり「HYPERMETAL」という概念を打ち立てたことなのだと思います。
YUI 「HYPERMETAL」の原初となったのは、『Have a Good Cult』(2022年)に収録された「Lost Grace」という曲でした。
── wowaka「ローリンガール」をラウド化させたようなキラーチューンですね。
YUI はい。ボカロっぽい曲を作りたい、っていうのが出発点で、すごいスピードで……2週間くらいで完成させた曲なんですけど、当時はそれがここまでウケるとは思ってなかったんですよ。でも、Spotifyでワーっと100万再生まで伸びて。
── アルバムの中のひとつのピースに過ぎなかった楽曲が。
YUI そう。一曲ぐらいこういう飛び道具をやってもいいんじゃないか、みたいな。でも「Lost Grace」が聴かれたことで、とにかく好きなものを混ぜたりするのが正義だってことに気付いて。根底にあるボカロやアニメ、オタクカルチャーへの愛を、バンドの楽曲にアウトプットしてもいいってことが分かったきっかけでした。
kurokawa(b) 自分は逆にメタルコアをちゃんと通ってきてなくて、個人的にずっとオタク文化に触れてきていたので……。
YUI 「やっと活躍できるよ!」って(笑)。もう、自分たちの本性を出していこうと。チー牛の逆襲ですね。
── そのトライアルが2024年にEP『HYPERMETAL』として結実します。
YUI 僕たちが今まで隠していた引き出し、好きだったカルチャーを、元々持っていたものに付与していきました。ゲームの『スカイリム』で言ったら、ただの剣だった武器に火属性の特性を付けるみたいな(笑)。楽曲の軸を組み立てるのはYUTOなんですけど、ギターだけを聴くと相変わらずテクニカルだったりもするんですよ。それを色んな要素でマスキングして、キャッチーに仕上げました。
── 『HYPERMETAL』リリース以降はSiMやFear, and Loathing in Las Vegas、打首獄門同好会のツアーゲストに抜擢されるなどスケールアップを果たしてきました。バンドの変化をどのように受け止めていますか?
YUI 一番変化を実感するのはお客さんの層ですよね。もちろんDjentが好きで聴いてくれている方も大切なリスナーなんですけど、僕らのライブで当たり前にみんながウォール・オブ・デスをやったりする光景っていうのは想像もしてなかったし、音楽を全身で楽しんでくれる人が増えているのはめっちゃうれしいです。いただく声も、「こういうところがすごい」っていうものから「楽しい」「気持ち良い」っていうファーストレイヤーの感情に変わってきているのが印象的で。直感的で理解を超えた感想を生み出せている実感がありますね。

── 曲間にエレクトロなSEを流してハッピーなムードを作ったり、YUIさんが熱いMCで曲のテンションにフロアを合わせていったり、エンジョイアブルなライブ設計は観る度に巧みになっているなと思いますよ。
YUI 人間性的に、「暴れろ!」みたいなのはできないんで(笑)。
YUTO 昔はMCもしないでスッと終了する感じだったけど。
YUI 静かにプラモを組み立てているみたいな(笑)。
── 地元・浜松で『浜松音球祭2026』を開催したり、盟友であるHIKAGE、Prompts、Sable Hillsとともに『4D』としてツアーを行ったりと、徐々にムーブメントを追う側から作る側に回ってきているのも印象的です。
YUI 僕たち自身もまだまだこれからではありますけれど、シーンの中で果たすべき役割みたいなものは意識するようになってきましたね。それこそガラパゴス化してしまう若いバンドをオーバーグラウンドへとシームレスに繋いでいけたらいいなと思うし、DIYで新しいムーブメントを起こせるんだよっていうことを知ってもらいたい。逆に言うと、上の人たちにも下でこういう動きが起きているんだよっていうのを伝えたいですね。
── さて、そんな中リリースされる今作『GRANDRAY』のイメージはいつ頃、どのような形で浮かび上がってきたのでしょうか?
YUI 『HYPERMETAL』の制作段階から、もう何作品かはこのシンボリックな音を続けたいと思っていました。なので、『HYPERMETAL』と『GRANDRAY』を合わせてようやくひとつのアルバムが完成するようなイメージですね。だから、「HIKARI」や「SAYYOUKILL」はフルアルバム後半に相応しい大団円になっています。
── 『GRANDRAY』単体で見たときのコンセプトやテーマはありますか?
YUI 根幹のメッセージはもう、「愛」と「光」。『HYPERMETAL』にはダークな歌詞や攻撃的な態度も含まれていたけど、『GRANDRAY』はそれと対を為す希望を描いて、コントラストを打ち出しています。3曲の新曲は、サビの最後のフレーズを「〇〇していけよ」みたいな未来に向かっていく言葉に揃えていますね。
── 前作が新たなジャンルを定義する作品だとしたら、今作はその定義をさらに拡張させていくような作品ですよね。
YUTO 前作に続いてリファレンスとして上がってくるボカロの楽曲を聴いて紐解いていたら、意外とジャズやフュージョンみたいなコード進行が使われていることに気付いて。僕もジャズが大好きなんですよ。だからルーツを活かして拡張できるものがあるなと。今作は自分が通ってきた道筋をアレンジに落とし込めたかなと思います。

YUI ボカロ曲って、責任を自分で取れるからいいよね。リミットをかける人がいないから、「やっちゃえ!」っていう。
── 今のお話を聞いて思い浮かぶのは1曲目の「CHAINDANCER」。メタルコアにあるまじき細かいコードワークが印象的でした。
YUTO テンポチェンジがある楽曲を作りたいよねっていうのが元のアイデアで、そこにJ-POP的なコード進行を織り交ぜてみました。シャウトも多いんですけど、その分前後のキャッチーなパートが際立つだろうというイメージもありましたね。
YUI その一方でブレイクダウンは2010年前後のRise Records直系、The Devil Wears PradaやOf Mice & Menみたいな様式美で。
── J-POPというキーワードから連想されるところでいうと、「HIKARI」も思い切ったアレンジですよね。歪んだギターが鳴らないセクションも多いし、テンポ感も新鮮です。個人的には、00年代にJ-POPアーティストが歌っていたアニソンに通ずる印象を受けました。
YUI サビでタオルを回す曲を作りたいっていうところから始まっていますね(笑)。イメージとしては、サッカー中継のテーマソングを俺たちがやるとしたら、みたいな。シャウトを削ることへの恐怖感みたいなものも、もうなくなっているんですよ。昔から聴いてきたDIR EN GREYやPay money To my Painのようなバンドにも、当然のようにバラード曲があったし。俺らもやっていいよね、って思えるようになりました。
── 「OMEGABLOSSOM」は、エレクトロな要素が最も前面に出ている一曲ですね。
YUTO この曲ではkurokawaくんだけではなく僕もギターでスラップをしてみました。サウンド面はもちろん、ライブのときには向かい合ってユニゾンしてもいいんじゃないかとか、生の見せ方としても新しい要素を入れたくて。
YUI 良いね。やってほしい。あと、「OMEGABLOSSOM」で言うとオートチューンを使ったのも初めてですよ。レコーディング中にふと、「これ、オートチューンで良いんじゃね?」って。スピーカーで聴いたときに出てこないアイデアってめっちゃありますから。桜をイメージした曲だから「Here I… here I stay」っていう歌詞を桜が舞い落ちる「ひらひら」と重ねたり、そういう言葉遊びもしましたね。
── 一方、「ICON」はむしろこれまでになかったぐらいアグレッシブで驚きました。
YUI サークルピットを作れる曲が「memento mori」以降ないよなっていう話から始まった曲ですね。ここまでの話からも分かるように「ライブでこういう景色を作りたい」っていう着想から生まれる曲が増えていて、それはすごく最近のEarthists.っぽいなと思います。

──「CHAINDANCER」「OMEGABLOSSOM」「ICON」の3曲では、ドラムアレンジをTatsuya Amano(Crossfaith)さんが担当されたんだとか。
YUI Crossfaithはもちろん、YOASOBIやTK from 凛として時雨でも演奏しているので、ちょうど俺たちのエッセンスと重なるところにいる人だなと思って、お願いしました。
YUTO アレンジしてもらったフレーズは歌に寄り添いつつ華やかで、衝撃でしたね。
YUYA ドラム単体ではテクニカルでメタルっぽいんだけど、J-POP的な楽曲に上手く馴染んでいて。展開の間の繋ぎが半端ないなと思いました。
── サウンドに関してはいかがでしょう。ミックス・マスタリングは前作までに続いてJeff Dunneが手がけていますが。
YUTO Jeffとは2019年のシングル「Suicidal Temple」以来の付き合いなんですけれど、彼も『HYPERMETAL』以降の僕たちを「クールだね」って気に入ってくれています。最初の頃は細かいオーダーをしていたんですけど、最近はEarthists.のことをよく理解してくれていて、細かいディレクションをしなくても理想に近いものが返ってくるようになっていますね。
── ここでJ-POPやボカロに慣れているエンジニアに任せないことが、Earthists.のメタルらしさを担保しているんじゃないかとも思います。
YUI バンドが変わっていく中で、変わらない剥き出しのDjentの精神がJeffの音には宿っていますね。脳に直接響くローとキックとか。この音の住所は変えちゃいけないと思っています。あと、Jeffは令和8年にしてまだ「音圧戦争」をやっているんで(笑)。
YUTO ピアノとかシーケンスを取ったら、コッテリとしたメタルの音。
YUI でも、ベースだけはめっちゃウチらのシグネチャー。Jeffはベースを生贄にするような音をよく作るし、ずっと「ピックで弾け!」って言われていたけど、指弾きのkurokawaくんのアイデンティティを守るために長い間話し合ってきましたね。
YUTO 何回「ベースをナチュラルにしてくれ!」といったことか(笑)。
kurokawa バキバキの音をピックでガリガリ弾くっていうトレンドはずっと続いていますけど、それが全然好きじゃなかったので。最終的にはその好みを汲んでくれて良かったなと思います。

── 改めて、いま『GRANDRAY』にはどんな手応えを感じていますか?
YUI めっちゃ大切にしたい作品だと思っていますね。前作の制作時は果たして受け入れられるのかどうかという不安もありましたけど、今回は期待に応えないといけないプレッシャーもありつつ、自分たちを知ってもらえている分、作りやすかった。実際、新曲は3カ月くらいのスパンで完成しましたし。本当は「メタル版裏表ラバーズ」みたいなストックもあったんですけど(笑)、新しく制作した曲だけを入れたので、今のモードが表れたと思います。
YUTO 今までは曲を作っても「ここ、何か物足りないな」と思うことが少なくなかったんですけど、今作は悔いがあまりないです。いま出せるフルパワーで完成まで持っていけたので、これからどう広がっていくのかにも期待できる作品だなと思っていますね。
YUYA 僕もかなり良いんじゃないかと思っています。アマタツさんにアレンジをしてもらったことで、前作ではポップに収まっていたドラムアレンジをメタルに戻しつつ、良い塩梅に仕上げることができました。

kurokawa 良い反応をいただけた『HYPERMETAL』がさらに進化した作品なので、不安はまずないですね。その上で新しい試みもできたので、お届けするのが楽しみです。
── 本作を引っ提げた『Earthists. GRANDRAY TOUR 2026』では全国7都市全8公演を巡ります。どんなツアーになるのでしょうか?
YUI 静岡、福岡は東京以外での初ワンマンですし、ツーマンはどの公演もライブにおいて百戦錬磨のアーティストを呼びました。僕らも今どんどんステージに立って自信を付けていっている中で、一度ボスラッシュにチャレンジしてみようと。昔からの友達でもあるGraupelに「おかえり」って言うところから始まって、TOTALFAT、NOISEMAKER、CVLTE、夕闇(夕闇に誘いし漆黒の天使達)、The Ravens。彼らに僕たちの現在地を伝えたいし、新しいお客さんにも安心して沼にハマってもらいたいですね。
── 最後の質問なのですが、やっぱりEarthists.の音楽にはジャンルやシーンの壁を超えられるフックとエナジーがあると思うんです。そういう意味で、これから新たに接続したい領域はありますか?
YUI もちろんボカロシーンとも絡みたいし、『BanG Dream!』にメタル系のバンドがどんどん出ていたりもするから、アニメカルチャーにも食い込んでいきたいですね。最近、YUTOがVTuberの熊乃ベアトリーチェさんに楽曲提供をしたんですけど、その飼い主の小岩井ことりさんとか、ずっと前から知っているような人ですから。
YUTO もっとオーバーグラウンドな、たとえば様々なジャンルのアーティストが出演するフェスにも出たいですし、そこで新しい親和性を見つけたいですね。どこかのシーンに接近するというよりも、出会った色々な人たちと面白いライブができたらいいなと思います。

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<リリース情報>
先行シングル
「CHAINDANCER」
配信中
配信先リンク:https://linkco.re/7YTP7ehC
EP
『GRANDRAY』
4月10日(金) リリース
【収録曲】
1.CHAINDANCER
2.OMEGABLOSSOM
3.ICON
4.HIKARI
5.SAYYOUKILL
<ライブ情報>
『Earthists. GRANDRAY TOUR 2026』
4月16日(木) 東京・下北沢ERA
ゲスト:Graupel
4月19日(日) 静岡・UMBER
ワンマン
4月30日(木) 兵庫・MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
ゲスト:TOTALFAT
5月9日(土) 宮城・仙台 enn 2nd
ゲスト:NOISEMAKER
5月29日(金) 大阪・Yogibo META VALLEY
ゲスト:CVLTE
5月30日(土) 愛知・RADHALL
ゲスト:夕闇に誘いし漆黒の天使達
6月13日(土) 福岡・OP’s
ワンマン
6月23日(火) 東京・渋谷WWW X
ゲスト:The Ravens
【チケット情報】
スタンディング:4,800円(税込/ドリンク代別)
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=IC200008
Earthists. オフィシャルサイト
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