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『なつぞら』松嶋菜々子が語る、約20年ぶりの朝ドラ出演への思い 「私の人生を変えた作品」

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リアルサウンド

 毎週月曜日から土曜日まで放送されているNHK連続テレビ小説『なつぞら』。朝ドラ第100作目となる本作は、戦後、北海道の大自然、そして日本アニメの草創期を舞台に、まっすぐに生きたヒロイン・なつの夢と冒険、愛と感動のドラマが紡がれていく。

参考:『なつぞら』広瀬すずが語る、朝ドラヒロインへのアプローチ 「皆さんのエネルギーになれたら」

 本作で、広瀬すず演じるなつの母親代わりとなる柴田富士子を演じたのが松嶋菜々子だ。松嶋は、1996年に放送された朝ドラ54作目『ひまわり』でヒロインを演じており、約20年ぶりに朝ドラへと帰ってきた。その心境や自身と富士子との共通点、作品の魅力をじっくりと語ってもらった。

ーー『ひまわり』以来の”朝ドラ凱旋”ですね。

松嶋菜々子(以下、松嶋):あの時の自分の必死さがすごく懐かしいなと思いながら参加しています。まだ放送が始まっていないので(編集部注:取材は3月に実施)、それほど周りの方からのお声はいただいていないのですが、朝ドラは、とにかくリハーサルのスケジュールがすごくハードなんですね。これを今はヒロインのすずちゃんがこなしていて、スケジュールの過密さにも懐かしさを感じています。でも当時の私はとにかくがむしゃらで、他のことを考える余裕もありませんでした。

ーー約20年ぶりの出演という点に関してはどうですか。

松嶋:私をヒロインにしていただいてから四半世紀近く経っていますが、みなさんの生活の一部として、毎朝15分間ドラマを見ることが今でもずっと続いていることにすごく歴史を感じます。『ひまわり』をやっていた当時、「もしも次に出るとしたら母親役だね」「だいぶ先だね」なんて話をスタッフの方々としていたのですが、現実となった今も信じられないです。朝ドラから女優人生が始まったので、自分が歩んできた25年近い時間が思い返されます。

ーーヒロインを演じて、その後母親役を演じるというのは感慨深いものがあるんですね。

松嶋:そうですね。第3週の中で富士子が自身の母親に対する思いを長く話すシーンがあるのですが、夏木マリさんのことを思い出していました。『ひまわり』でも、母親が娘に想いを伝え、家族と話し合うシーンがあったので。今は自分がその役目を担っているとして、どこまで表現できているんだろうと思ってしまいます。

ーー富士子という役柄はどのように捉えていますか?

松嶋:『なつぞら』は、なつがこの先どのように自分の人生を切り開いていくかというのがメインのストーリーなので母の富士子としては、なつに新たな試練を与える必要はないと思っています。本当の親ではないけれども母親として、どれだけ子どもに愛情を注げるかを一番に考えていますね。互いに遠慮し合ったり葛藤もあると思いますが、素直に表現していきたいです。

ーー北海道弁を喋る松嶋さんが新鮮でした。

松嶋:自信はないです……。みなさんが聞き取りやすいようにと方言指導の先生も考えてくださるので、極端な表現にならないように抑えている部分もありますね。でも、激しい想いも標準語ではなく北海道弁で伝えるからこそ、柔らかく聞こえたりすると感じました。私は両親が東北出身なので、ちょっと似ているところなど東北っぽく引っ張られてしまうところがあるんですが、地元の人たちの独特な雰囲気が方言の中に生まれていて奥が深いなと実感しています。

ーー撮影現場の雰囲気はいかがですか?

松嶋:共演者の多くが朝ドラ経験者なので、この現場がどれだけ大変なのかみなさんわかっていらっしゃるんです。なので最初から「仲良くやりましょう」「家族になろうね」というご挨拶で始まりました。そういう想いでこの作品に向かっているので、とても和気あいあいとした雰囲気ですね。先日まですずちゃんは東京編の話を撮っていたので、しばらく北海道組との撮影が空いていたんですが、久しぶりに会った時に「なんだかホッとする、久しぶりに会えて嬉しい」と言ってくれました。私も、「ちゃんとご飯食べてる?」「インフルエンザとかに気をつけてね」と親みたいに接してしまうので、本当に家族のように過ごせているなと思っています。

ーー幼少期のなつを演じる粟野咲莉さんの印象はいかがですか?

松嶋:本当にぴったりですね。咲莉ちゃんもとても大人びていて、気を配れる子というか、中身は何歳なんだろうと思うようなところがありました(笑)。でも上手くできた時にお母さんに抱きつくような可愛らしいところもあって、本当にとても一所懸命です。納得いかないシーンはもう一回やらせてほしいと言ったり、食事のシーンひとつにしても、すごく考えていますね。

ーー大森寿美男さんが脚本を手がける作品には初めての参加です。

松嶋:会話のやり取りが絶妙でテンポがいいというか、朝ドラとしての明るさを加えてくださっているように思います。登場人物の心の動きやストーリーがとても計算されていますし、わかりやすくもあり、明るくもあり、本当にオトナな台本だなと。私と藤木(直人)さんとのシーンで、夕見子(福地桃子/子ども時代:荒川梨杏)に「お母さんはつまんない」と言われた時に、剛男さんが「それはお前のためを思ってつまんないことを言ってるんだ」となり、それに対し私が「あなた、私の話がつまんないと思っていたの?」と返して「マズイ」となるんですが、そのやりとりが別のシーンで引用されたりするんです。どんと笑わせようというわけではなく、芯を捉えた話をしている最中に、軽いやり取りが挟まることで家族の会話らしくなっているんですね。

ーー朝ドラ3回目があるとすればどうでしょう?

松嶋:3回目があるのならば、おばあちゃん役だと思います(笑)。 また20年後なのかわからないですが、もしもお声がけいただけたなら是非出演したいですね。

ーー松嶋さんにとっても朝ドラとは?

松嶋:『ひまわり』のヒロインが決まった時は、願って願って得たのではなく、どちらかというと与えられたものでした。朝ドラを経験したことで女優業をもうちょっとやっていきたい、こんなに下手では問題だからどうにかしないといけないと思いながら今日まで続けてこれたので私の人生を変えた作品です。自分の人生の軸と朝ドラの波が似ているといいますか、独身時代とは違う思いで、母の富士子役を演じられています。子育てを経験をしている中で、この作品に呼んでいただけたことにも運命的なものを感じます。もしも3回目があるとしたら本当に運命だなと思いますし、とても光栄なことですね。

(取材・文=安田周平)