吉高由里子が語る、30代になってからの“働く喜び” 「人間としての醍醐味を感じられる」
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吉高由里子主演、火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)が本日4月16日よりスタートする。吉高が演じるのは、勤務中は誰よりも効率的に動き、定時きっかりに退社することをモットーとしているWeb制作会社のディレクター・東山結衣。行きつけの中華料理店で、18時10分までのハッピーアワー価格でビールをプハーッとやるのが彼女の日常。同じようにプライベートを大切にしている恋人・諏訪巧(中丸雄一)との仲も順調だ。
だが、彼女の職場には、風邪を引いても会社を休まない皆勤賞女・三谷佳菜子(シシド・カフカ)や、口を開けば「辞めようかな」とつぶやく新人男子・来栖泰斗(泉澤祐希)、会社に住み着く男・吾妻徹(柄本時生)ら、一癖も二癖もあるメンバーが集結。
そこに、ワーカホリックで結衣の元婚約者・種田晃太郎(向井理)、ナチュラルにブラック発言をしてしまう部長・福永清次(ユースケ・サンタマリア)が着任。さらに双子を育てるワーキングマザー・賤ヶ岳八重(内田有紀)も復帰してきて、さらに賑やかになっていく。
オフィスという狭い世界だからこそ異なる価値観がぶつかり合う、新時代のお仕事ドラマ。働き方改革が取り沙汰される今、多くの視聴者の共感を呼びそうな本作に、主演の吉高はどのように向き合っているのか。また、彼女自身にとって「働く喜び」とは何かに迫った。
【写真】タイムカードを押す吉高由里子
■「私も合格点ギリギリでいいんじゃないかって思うタイプ」
ーー台本を読んだ感想をお聞きした際、「今、必要なドラマだと思った」とおっしゃっていましたが、実際に演じられていかがですか?
吉高由里子(以下、吉高):私自身、会社に勤めたことがないので、“あ、こういうこともあるんだ”と、演じながら勉強というか発見が多いですね。もともと定時という概念がないので、この仕事は。いつも、スケジュールが押したり巻いたりする、不安定な時間の中で生きてきたから、“もし定時で帰ったら、予定をきっちり埋めるタイプなのかな?”とか考えてみたり……。そもそも、こんなにがっつりオフィスの話をやることもなかったので、すごく新鮮です。
――例えば、どのような場面が新鮮でしたか?
吉高:結衣が効率的に仕事を進める中で、いろいろと工夫をしているんですけど正直、最初はタスク表とか、to doリストってなんだろうって思いました。パソコンもあるのに手帳も持ち歩いたりして。“どっちでメモるの? どうやって使い分けてるの?”とか。でも首からぶら下げるピッてやるカードみたいなやつは、ちょっと憧れていたのでウキウキしました! けど、いざ毎日のようにつけてみると、座る時にガンッて当たって邪魔だなって(笑)。
――吉高さん自身は、お仕事されてる中でto do管理のようなことはされませんか?
吉高:to do管理はしないですね。前に、台本で自分の出てるシーンに付箋を貼ってたんですけど、もうすだれみたいになっちゃって! もう、全部パーンってやらなくなりました。セリフも最初はマーカーペンで引いてたんですけど、これじゃマーカーだらけじゃん、となって。逆にシンプルな台本の方が読みやすいことに気づきました。
ーーすだれ状の台本(笑)! たしかに、主演となればそうなりますね。では、効率を高める工夫は?
吉高:そうですね。セリフの長いシーンは、台本の裏に書いておいてます。“この話のこのシーンが長いから要注意だぞ”と覚えておくために。焦っちゃうと、テンパってしまうので。それと、台本を覚えるまでお酒はダメ、とルールを作ったら早く覚えられるようになりました(笑)。お風呂で台本を覚えることが多いんですけど、結構読み進められたときの達成感と、上がってからのハイボールが気持ちいいんですよね。でも、家に帰ったらすぐにお酒飲みながらゲームしたいっていう気持ちもあって……。今日は帰るまでに台本を読もうとか、お風呂沸くまでに読んじゃおうとか、日によってタイミングは変えています。
ーーゆとりをもたせながら、取り組んでいるんですね。
吉高:仕事って、ちょっと楽できる場所を探したほうが、追い込まずに好きでいられるし、長く続けられるのかなって思うんですよ。“もうやだー”ってなっても、自分から「休みたい」と言うのはイヤだし……私のせいじゃない理由で何か休めるようなこと起こらないかな……って、現実逃避したくなることって、あるじゃないですか。
――不謹慎とは思いながらも、ありますね(汗)。
吉高:ですよね? みんなあるんだよなって思うと気が楽になるし、自分も大変だけどみんな必死に頑張ってるから踏ん張れるんだと思うんです。特にドラマの現場だとスタッフさんが今にも寝そうなくらいヘロヘロになって頑張ってくれている方とか見かけるんですよ。そういう人たちに出会って、もう同じイカダに乗ってしまったので、最後まで面白いものを見つけていこうって、尽力したいなと思っているんです。
――同じイカダという言葉が出ましたが、今回演じられている東山結衣というキャラクターも、一見すると「定時帰り」を貫くマイペースに見えますが、クセの強い同僚に振り回されている印象もありますよね?
吉高:そうですね。私も結衣みたいに、“褒められたいわけじゃないけど、怒られたくない。1日のやるべきことはやってるから、文句ないでしょ?”っていう合格点ギリギリでいいんじゃないかって思うタイプで。でも、関わりたくないけど知ってしまったら最後まで放っておけない気持ちもわかります。基本的に私も家にいる時間が好きですし、小籠包も好きだし(笑)。
ーー役柄との共感ポイントは多そうですね。
吉高:ただ忙しいからこそ、好きなものにありつけた時の喜びが倍増するなとは思っていて。眠れないほど忙しいからこそ、たくさん寝たときのリフレッシュ感もあるし、休みに対する嬉しさも大きくなるというか。忙しいからこそ、元気でいれる自分もあります。暇な時ほどすぐ疲れちゃったりとか、心が封鎖する感じもあるんですよね。だから、もしかしたら今いちばん2019年で活きがいい時期かもしれません、私。
■「何のために仕事をしているかは、自分の考えでいいんじゃないかな」
ーー作品ごとにガッと忙しくなって、そのあとゆっくり……というリズムでお仕事をされていますか?
吉高:必ずそう、と決めたわけじゃないんですけど、年に1回は連ドラをやるサイクルになっていますね。でも連ドラ年に2回、3回は、もうないですね。20代前半はあったんですけど、後半はもうなくなりましたね。
ーー20代から30代へという切り替わりの時期でもありますが、働き方を自分の中で考えることはありますか?
吉高:そうですね。20代前半は、とにかく知名度を上げようって、いっぱい作品に出て、いっぱいの現場を見て、いっぱいの人を見て、吸収、吸収、吸収でした。インプットにストレスも覚えられないぐらい無我夢中だったと思うんですけど、20代後半でようやくふと我に帰る瞬間もありつつ、吐き出したい情報量の仕分けをしたい気持ちにもなりつつ。あれよあれよと仕分けして大事なものを紡いだら、あっという間に30歳になっていました。最近「30代前半は仕事を頑張りたい気分」と話したら、マネージャーさんたちがちょっとザワついていました(笑)。
ーー聞き逃さなかった(笑)。
吉高:聞き逃さなかったですねー(笑)。
――では、お仕事ドラマということで、吉高さんの「働く」についてもお聞きしたいと思うのですが。
吉高:まず、働ける環境があるってだけで、すごく幸せなことだとは思うんです。何のために仕事をしているかは、自分の考えでいいんじゃないかな。好きなものを買いたいから仕事してる、好きなものを食べたいから仕事をしてる、好きな仕事だから仕事してる……いろんな在り方があっていいと思いますね。「私の時代は!」とか言われる時代じゃないし、常に時代って動いているし、私自身こんなにWebが社会を動かす時代になると思わなかったですしね。不満なことも、「新鮮!」と思って取り組めたら、意外といい方向に向かうかもって思っています。
――なるほど! 吉高さん自身は「何のために仕事しているのか?」という問いには、なんて答えられますか?
吉高:なんだろう……。新しい人と出会えたり、会話することによって新しい自分に気づいたりとか、人間としての醍醐味を感じられる仕事をさせてもらっているなと思っていて。始めたばかりのころは、自分は相手のことを知らないのに、自分のことを知った人と出会う世界が不安だったし、正直イヤだなと思ったこともあったんですけど、今はそんな経験ができるのもなかなかないなって。好きも嫌いも見つけられて、そこから新しい好きにも気づけて、“こうなりたい”とか、“こうはなりたくない”とか、学んでいける世界にいると思うと、すごく充実しているんじゃないかなって考えるようになりました。もちろん感じなくてもいいものもあるかもしれないけど、私はたぶん欲張りなので、そうやっていろんなものに触れながら生きたい、そのためにこの仕事をしているのかもしれないですね。このドラマでもたくさんの方に、いろんな好きや嫌いに触れてもらって、「私はこのために仕事をしてる」と気づけるような作品になってくれたら嬉しいです。
(佐藤結衣)