琴音の歌声とオーガニックなバンドアンサンブルで魅せた、初ワンマンツアー最終公演
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シンガーソングライターの琴音が4月3日、東京・渋谷Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて、自身初となるワンマンツアー『1st note TOUR 2019 -明日へ-』の最終公演を行なった。
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この日の公演はチケットが即日完売。『音楽チャンプ』をはじめ、様々なオーディションでグランプリを獲得し、お茶の間に「琴音現象」ともいえるほどのインパクトを与えただけあって、会場には親子連れからカップルまで、老若男女の実に幅広いファンが300名以上集まっていた。
客電が落ち、ブルックリンのドリームポップバンド、Barrieの「Clovers」が流れる中、まずはバンドメンバーがステージに現れる。バンドマスターは、元・森は生きているのリーダーで、現在はソロで活躍している岡田拓郎(Gt)。彼を筆頭に、同じく元・森は生きているの鍵盤奏者で現在はトクマルシューゴやスカート、ラッキーオールドサンなど様々なサポートを行っている谷口雄(Key)、ポップデュオDadaDのShigekuni(Ba)、そして赤い靴のメンバーで、Predawnや関取花などのサポートでも知られる神谷洵平(Dr)という、今を時めくメンツが並んでいる。
ストライプのセットアップに身を包んだ、マニッシュな雰囲気の琴音が遅れて登場すると、会場からは割れんばかりの拍手が巻き起こり、まずは昨年7月にリリースした初の全国流通盤ミニアルバム『願い』の表題曲で本公演はスタートした。しっとりとしたエレピのバッキングの上で、スモーキーかつ説得力溢れる琴音のボーカルがメロディを奏で、サビでドラムとベースが加わると、世界が一気に広がっていくのを感じる。タメの効いた柔らかな音色のドラム、軽やかに刻まれる乾いたサウンドのギター、シンプルだがツボを押さえたベース。そんな、オーガニックなバンドアンサンブルが、琴音の持つ声のニュアンスを存分に引き出している。
続いてデビューEP『明日へ』から「戯言~ひとりごと~」を披露すると、リズミカルに刻まれるエレピに合わせてフロアからは、自然発生的にハンドクラップが。ハネるようなドラムはリンゴ・スターを彷彿とさせ、この曲の持つビートリーな雰囲気を一層くっきりと際立たせている。未発表の新曲「幻想」は、アーシーなコード進行とブレイクビーツのようなドラミングが、ダニエル・シーザーとH.E.Rのコラボ曲「Best Part」を思わせる新境地。抑揚を抑えつつも、じわじわと熱を帯びていくような「夢物語」、まるでディアンジェロやエリカ・バドゥのような、音数を削ぎ落としたアンサンブルが印象的な「Aries」と、J-POPを基調とした楽曲の随所に洋楽的なイディオムをちりばめていくセンスは、このメンバーならではといえよう。そんな、百戦錬磨の強者たちに囲まれながらも、臆することなく歌い上げる琴音の“肝の据わり振り”には、ただただ圧倒されるばかりだ。
星野源のカバー「Week End」では、音域の広さを見せつけ、大好きな映画『SING/シング』がきっかけで知ったというスティーヴィー・ワンダーのカバー「Don’t You Worry ‘bout a Thing」では、中盤でパワフルなフェイクを披露。以降の畳み掛けるような展開に、会場からは大きな歓声が上がった。
デビューEP『明日へ』収録曲の中で、唯一の提供曲「しののめ」(作詞:小松令奈、作曲:河野圭)も、中盤のクラシカルな展開などビートリー色の強い曲で、琴音の透き通るようなファルセットが会場いっぱいに広がった。続く「大切なあなたへ」は、琴音が初めて作詞作曲に挑戦したフォーキーかつキュートなナンバー。自らアコギを抱え、軽快なシャッフルを刻むと再びハンドクラップが鳴り響いた。
軽快なフィリーソウル調の未発表曲「Glorious」を挟み、いよいよラストスパート。言葉を詰め込んで畳み掛けるように歌うフォークロック調の「音色」では、〈大丈夫 君は一人じゃない〉というラインでシンガロングが巻き起こる。そして最後は、ミニアルバム『願い』のリード曲「ここにいること」。アレサ・フランクリンもカバーしたキャロル・キングの名曲「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」を思わせる、ソウルフルかつ高揚感溢れるメロディを伸びやかに歌い上げた。
アンコールでは、1人登場した琴音。彼女にギターを教えた父親が、まだ幼い頃の琴音に向けて書いたという「僕にだけ教えてよ」を弾き語りで披露。音楽が脈々と受け継がれていく瞬間を目撃したような、そんな感動的な一幕だった。
本公演の最後には、2ndツアー『2nd note TOUR(仮)』を発表した琴音。序章を終え、どのように飛躍していくのか今から楽しみだ。(黒田隆憲)