クリムト、シーレ等、世紀末ウィーンの至宝約400点が一挙来日!『ウィーン・モダン』展開幕
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第 4章展示風景。右からエゴン・シーレ《自画像》1911年、《ひまわり》1909-10年、《美術批評家アルトゥール・レスラーの肖像》1910年
19世紀末から20世紀初頭にかけて、ウィーンで花開いた独自の芸術文化を紹介する『ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道』展が国立新美術館にて開幕した。100万点におよぶ所蔵品を誇るウィーン・ミュージアムから約400点が来日。絵画のみならず、建築や工芸、デザイン、インテリア、ファッションなどを含めたウィーンの造形芸術の全容がひも解かれる。
日本でも高い人気を誇るグスタフ・クリムトやエゴン・シーレらが活躍した19世紀末のウィーン。絵画、建築、音楽など多様な文化が成熟し、のちに「ウィーン世紀末芸術」と呼ばれる芸術運動が隆盛した。
この「ウィーン世紀末芸術」は、18世紀後半に巻かれた種が19世紀に育まれ、1900年ごろに約100年の時を経て花開いたもの。同展では、「モダニズムの先駆け」という新たな視点で、「ウィーン世紀末芸術」の成り立ちから発展までのプロセスを辿っていく。
注目すべきは、約400点というボリュームと名品・傑作の多さだ。現在改装中のウィーン・ミュージアムから、クリムト作品は素描も合わせて47点、エゴン・シーレ作品22点、オスカー・ココシュカ作品17点が来日するほか、ハンス・マカルトの鮮やかな油彩画や、モダン建築の先駆者であるオットー・ヴァーグナーの素描など、日本ではなかなか見ることができない作品群が一堂に会す。
展示は「啓蒙主義時代のウィーン」「ビーターマイヤー時代のウィーン」「リンク通りとウィーン」「1900年—世紀末のウィーン」の4章で構成。美術作品と合わせ、その背景として急激な近代化により発展・変化を遂げるウィーンの都市と人々の様子が紹介される。
第1章「啓蒙主義時代のウィーン」では、近代化への種が巻かれた原点を紹介。女帝マリア・テレジアとヨーゼフ2世が、啓蒙主義に基づき大きな改革を行ない、ウィーンが自由な精神を持った知識人が集まる国際的な都市へと変貌を遂げていく様子が示される。
続く第2章の「ビーダーマイアー時代のウィーン」では、19世紀前半の政治、デザイン、絵画を紹介。都市の富裕層に支持された服飾、家具、日用品から都市生活の様子がうかがえる。
第3章「リンク通りとウィーン」では、近代都市へと変貌していく都市開発を紹介。皇帝により整備されたリンク通り沿道に建築された主要な建築物、リンク通りで行われた皇帝夫妻の銀婚式記念祝賀パレード、そして日本が国家として初参加したウィーン万博にまつわる美術品の数々が展示される
そして同展のメインとなるのが第4章「1900年—世紀末のウィーン」だ。ウィーン・ミュージアム所蔵品の中で最も高価、かつ最も有名な作品だというクリムトの《エミーリエ・フレーゲの肖像》や、エゴン・シーレの《自画像》が登場。

また、オットー・ヴァーグナーによる近代的な建築物や家具、総合芸術を目指したウィーン工房製作の優美な日用品と装飾品々、ウィーン分離派によるグラフィックなど、世紀末ウィーンの豪華絢爛な芸術から、洗練を極めたモダン・アート、新時代のスタイルである表現主義まで、多様に花開いた芸術品の数々が並ぶ。
オーストリア本国のウィーン・ミュージアムに行っても、これほど多くの作品を一度に目にする機会はないそう。時代背景も含めて「ウィーン世紀末芸術」の魅力を存分に堪能できるまたとないチャンス。クリムト、シーレだけじゃない、豊かな芸術文化にぜひ触れてほしい。
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『ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道』
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