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成河×藤田俊太郎、新しい演劇的可能性を追求した『ナルキッソスの怒り』が上演中

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『ナルキッソスの怒り』成河 ©『ナルキッソスの怒り』2026/撮影:岩田えり

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現在、東京芸術劇場 シアターウエストで上演中の舞台『ナルキッソスの怒り』。2015年にモンテビデオで原作者のセルヒオ・ブランコ自身の出演による初演以降、世界各国で称賛を浴び、このたび、日本での初上演が、出演・成河(一人芝居)、演出・藤田俊太郎で実現した。

©『ナルキッソスの怒り』2026/撮影:岩田えり

物語の舞台は、ブランコが出張のために訪れたスロベニアの首都・リュブリャナのホテル、228号室。大学での講演を控えるなか、美しい青年との出会いをきっかけに、奇妙な出来事に巻き込まれていく。オートフィクションという手法を用いた本作は、ブランコ本人の自伝的要素を基にしながら、事実と創作が曖昧に溶け合うスリリングな展開が魅力になっている。

冒頭、ステージにただ一人立ち、「モノローグでも一人芝居でもなく、これは物語」であると宣言するのは、主人公の作家で、原作の著者でもあるブランコを演じる成河だ。

©『ナルキッソスの怒り』2026/撮影:岩田えり

ミュージカルからストレートプレイまで、その確かな演技力で劇場空間を魅了する成河は、『ナルキッソスの怒り』の日本上演について「そのまま翻訳するだけでは困難だと思えた」と振り返り、自身も翻訳作業に関わり、稽古場でも試行錯誤が重ねられたという。

そこで編み出された「成河という俳優が、主人公の作家を演じる」という構造。ブランコ=成河との対話を通して、観客は「これが現実なのか、幻なのか」「そこにいるのはブランコなのか、成河なのか」と問われながら、緻密で怪奇な没入感へと誘われる。やがて、舞台と客席の境界線もあいまいとなり、観客は共演者、いや“共犯者”と変わっていく。

©『ナルキッソスの怒り』2026/撮影:岩田えり

舞台『VIOLET』『ラビット・ホール』に続くタッグとなる成河と藤田は、こう語る。

「一人芝居にもいろいろなスタイルがありますが、今回は2時間、1秒たりとも観客の皆さんと目を離さず、ずっと語りかけ続けるという初めての挑戦です。これまで自分がやってきた経験を全部注ぎ込むような大変さを感じています」(成河)

「成河さんが演じ姿を観てください、という言葉は少し違っていて。一人の表現者としてそこに存在し、伝える。その姿をぜひ目撃していただきたいです。お客さまと一緒に積み上げる物語なので、上演時間は日によって変わるかもしれませんし、その日の雰囲気でまったく違う公演になるはずです」(藤田)

©『ナルキッソスの怒り』2026/撮影:岩田えり

複雑で目まぐるしい展開と構成に、最初は戸惑いを思えるかもしれないし、オートフィクションという概念を、頭でっかちに捉えがちになりそうだが、ここはあえて流れに身を任せ、成河が披露する“多層的な演じ分け”に身を任せるのがおすすめ。主人公のブランコをはじめ、同業の大学教授やホテルの支配人、ブランコを魅了する青年イゴール、そして、成河本人。そのレイヤーを台詞、歌、演技といった身体表現を駆使し、知的かつ官能的に体現してみせる。役柄への深い理解、鋭い洞察を堪能してほしい。

客室のカーペットに染み込んだ“しみ”の意味とは?
その魅力が脳裏から離れないイゴールの正体とは? ジワジワと危険な領域へと足を踏み入れる感覚を味わいながら、観客もいつしか「後戻りできない」恐怖と背徳に飲み込まれる。例えば、鏡をのぞき込んだときに、ふと訪れる不穏さを思い出してほしい。あるいは、観客は水面に映る自分自身の美しさに恋をし、最後は衰弱してスイセンに化身した美少年ナルキッソスなのかもしれない。

©『ナルキッソスの怒り』2026/撮影:岩田えり

「一人芝居の枠組みを超えたメタフィクション」「現実と虚構を巧みに壊すスリラー」。本作を評する言葉が思い浮かんでは、消えていくが、今はシンプルに「新しい演劇的可能性を追求した、得難い観劇体験だった」というのが、ひとつの答えかもしれない。手ごわい相手だが、約2時間の迷宮を抜け出すと、きっと「報われた」と喜びを噛みしめることができるはずだ。

「クリエイター一人ひとりが熱中して作ってきた自慢の作品になりました。お客さまには想像力や痛み、そして痛みを乗り越えた大きな喜びを持ち帰っていただけたら嬉しいです」(藤田)

「見る、見られるという関係をダイレクトに扱う作品で、お客さまはそのときどきの共演者になります。少しだけ怖い展開もありますが、最後まできちんと手をつないで、安全なところにお連れします。どうか体験したことのない劇場体験を一緒にしていただければと思います」(成河)

(左から)藤田俊太郎、成河 ©『ナルキッソスの怒り』2026/撮影:岩田えり

取材・文/内田 涼

<公演情報>

『ナルキッソスの怒り』

日程:2026年4月18日(土)~30日(木)
会場:東京芸術劇場 シアターウエスト

[作]セルヒオ・ブランコ
[翻訳]仮屋浩子(『ナルキッソスの怒り』北隆館刊)
[上演台本]仮屋浩子/成河/藤田俊太郎
[演出]藤田俊太郎
[出演]成河

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/narcissus-stage/

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