大石恵美・蓮見翔が岸田賞授賞式で決意「ラベリングに囚われない」「演劇界を前進させるきっかけに」
ステージ
ニュース
第70回岸田國士戯曲賞の授賞式より、左から大石恵美、蓮見翔。
第70回岸田國士戯曲賞の授賞式が昨日5月11日に東京・日本出版クラブで行われ、受賞者であるダダルズの大石恵美とダウ90000の蓮見翔が出席した。
岸田國士戯曲賞は、白水社が主催、一ツ橋綜合財団が後援する賞。第70回岸田國士戯曲賞の最終候補作品には、大石の「よだれ観覧車」、蓮見の「ロマンス」に加え、石黒麻衣の「季節」、川村智基の「DOGHOUSE」、島川柊の「ウテルス」、筒井潤の「唯一者とその喪失」、額田大志の「彼方の島たちの話」、メグ忍者の「Eternal Labor」の計8作品が選出されていた。選考委員を務めたのは、市原佐都子、上田誠、岡田利規、タニノクロウ、野田秀樹、本谷有希子、矢内原美邦。なお授賞式には、選考委員より、市原、上田、タニノ、野田、本谷が列席した。
まず、白水社の岩堀雅己代表取締役社長が、大石と蓮見に正賞の時計、副賞の30万円を授与した。続いて、選考委員を代表してタニノが選考過程を説明し、2月16日の選考会で計3回の投票が行われたこと、2回目の投票の段階では、大石の「よだれ観覧車」、蓮見の「ロマンス」、石黒の「季節」、筒井の「唯一者とその喪失」、メグ忍者の「Eternal Labor」が候補に挙がっていたことが明かされた。
タニノは、昨年行われた第69回岸田國士戯曲賞の授賞式で、自身が「今後、クリエイティブな現場にどんどんAIが導入され、AIなしでは作品が執筆できない状況になることが予想されます。それにより、人間が積み重ねてきた能力や記憶、人間が集団で獲得してきた伝統や権力のようなものがゆっくりと失われていくかもしれません」と発言したことを振り返り、「人間が根源的な衝動に突き動かされ、作品作りに夢中になることに迫力がある。それこそが、テクノロジーの力がおよばない領域なのではないかと感じました。今回、選考会に参加させていただいたことで、昨年自分が発言したことについて反省しました。このたび受賞されたお二方、本当におめでとうございました」と述べた。
大石は、幼少期に近所の子供たちと“マリオごっこ”をして遊んだ他愛のないエピソードを語ったのち、「この手の話って、何の話に分類したら良いかわからない。友達に笑い話として話すことはできるけど、社会にまで“通す”ことはできないじゃないですか。でも、“表現”の中であれば、個人的な話も世間や社会に“通す”ことができるかもしれない。その欲望があったから、今まで創作をしてこられたんじゃないかと思っています。個人的な話を社会に“通す”ためには、『これは演劇です』というようなラベリングが必要になる。だから、これまで“演劇”とラベリングされた手段を使ってきました。自分の中で『これは演劇だ』という感覚で作品を作っていたら、『よだれ観覧車』は受賞に至らなかったと思います。何かを“通す”ためにラベリングは必要。ですが、“演劇”や“岸田國士戯曲賞”というラベリングに囚われるのではなく、これからも自分の欲望のためにこのラベリングを使っていきます。本当にありがとうございました」と熱弁した。
蓮見は「『旅館じゃないんだからさ』で初めて最終候補作品にノミネートしていただき、お褒めの言葉をいただいたんですが、選評の中に『テーマがない(戯曲だ)』という声もあって。その後は最終候補にすら残らなかったり、残っても落選したりして、その頃から『なんで楽しい気持ちで終えた演劇が落選しなきゃいけないんだ』と思うようになりましたし、選評を読み上げて悪口を言う配信をしたこともあったので、『もう受賞するのは難しいかな』と思っていました(笑)。僕らは演劇もコントもやっているんですが、やるんだったら両方ちゃんとやりたい。岸田國士戯曲賞を獲ることができれば、自分に自信が持てるのではと思って、『ロマンス』という戯曲を書きました。3度目のノミネートで受賞することができ、投げ出さなくて良かったと思ったのと同時に、岸田國士戯曲賞がなかったら『ロマンス』のような戯曲は書いていないので、悔しいけどお世話になってしまったなという気持ちもあります」と率直な思いを明かす。
また、蓮見は「すみません。僕は『お笑いは流行っていない』という話をいろいろなところでしているんですけど、『演劇が流行っていない』という話もさせてもらっています。でも、本気で思っているわけじゃないんです。でも、言わなきゃいけない。自分よりも才能がある人が『プロで通用するわけがない』と言って、この業界から去っていくのが悔しくて。演劇界にはそういう空気が蔓延していると強く感じます。僕の意見に賛同してもらっても、反対してもらっても、無視してもらっても構いませんが、賛同するにしろ反対するにしろ、そこには何かしらのエネルギーが生まれるはず。そのエネルギーが演劇界を前進させるきっかけになるのではないかということについて、みんながしっかりと考えなければならない時期が来ていると思います。これからもがんばりますので、皆さんも一緒に(この業界を)変えていってください。このたびは本当にありがとうございました」と真摯に述べた。
その後、選考委員の上田が乾杯の音頭を取り、祝賀会へと場が移る。上田は「受賞した2作品はそれぞれカラーが異なる戯曲ですが、いずれも“生き延びる力を持った、たくましいフォルム”をしていて、美しい動物のような印象を受けました。どちらもすごく面白くて、作家として悔しかったです。僕自身もがんばろうと思いました。このたびは本当におめでとうございます。乾杯!」とコメントした。
祝賀会ののち、各受賞者にゆかりのある来賓が祝辞を述べた。大石サイドの来賓として、サンプル主宰の松井周、「テアトロコント」のキュレーターを務める小西朝子、三条会に所属する俳優で、曹洞宗の僧侶でもある大谷ひかるが登壇。蓮見サイドの来賓として、テレビプロデューサーの佐久間宣行、俳優の松岡茉優が登壇したほか、爆笑問題がビデオメッセージの形式で祝いの言葉を述べた。
式の終盤では、蓮見が主宰するダウ90000、大石、それぞれの組によるパフォーマンスが行われた。ダウ90000のパフォーマンスでは、審査員に扮した蓮見と中島百依子と、オーディションを受けに来た園田祥太、飯原僚也、上原佑太によるユニット、同じくオーディションを受けに来た道上珠妃、忽那文香、吉原怜那によるユニットがユニークなやり取りを繰り広げる。大石のパフォーマンスでは、大石がかつて敬愛していた松本人志に対する、切実で率直な熱い思いを吐露した。
第70回岸田國士戯曲賞最終候補作品
- 石黒麻衣「季節」
- 大石恵美「よだれ観覧車」
- 川村智基「DOGHOUSE」
- 島川柊「ウテルス」
- 筒井潤「唯一者とその喪失」
- 額田大志「彼方の島たちの話」
- 蓮見翔「ロマンス」
- メグ忍者「Eternal Labor」

