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めぞん・吉野おいなり君の金銭感覚はドラマ「銭ゲバ」で培われた

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イラスト / トモマツユキ

そこまで昔というわけではないけれど、改めて観るとなぜかセンチメンタルな気持ちになる……。そんな“微妙に懐かしい”平成ドラマの魅力を再発見するべく、映画ナタリーでは「平成ドラマ委員会」を発足。4人の委員会メンバーと、それぞれの思い出深い作品を振り返り、現代に生かせる教訓を探っていく。

Vol. 6ではお笑いコンビ・めぞんの吉野おいなり君が、2009年放送のドラマ「銭ゲバ」を語る。お金にあまり興味がないという吉野。その金銭感覚はなんとこのドラマで培われたそうで、放送から17年経った今も彼に大きな影響を与えている。吉野は「銭ゲバ」に込められたメッセージ性を紐解きながら、最終的に“お金の価値とは?”という究極の問いにたどり着く。

文 / 吉野おいなり君(コラム)、尾崎南(作品紹介) イラスト / トモマツユキ

皆ちっちゃく風太郎であるべき

どうも吉野おいなり君です。

僕はかなりお金に興味がない。

お金を大切に使おうと思ったことがなく、面白いものには貯金全部使えます。

2年目ぐらいの頃、とにかくバイトしてお金を稼いで、毎月かつかつで暮らしていた頃でさえ、同期がやっていた生配信にふざけて1万円する東京タワーのスタンプを送りました。その同期の生配信で東京タワーを3本建てた記憶がある。

それぐらいお金がどうでもいいです。

生きていく上で必要なものではあるのですが、でも結局は支払った先に価値があるもので、お金自体に価値を感じられないからか、意味のない無駄な行為に使ってしまうことが多い。助けてください。

そんな僕が今回話させてもらうドラマは

「銭ゲバ」

今回は漫画を読んでおらず。ドラマでのみの参戦になりますのであしからず。

貧乏な家で育った主人公。蒲郡風太郎(がまごおりふうたろう)が大切な人を失って、金のなさによる絶望から、金を恨み、金だけを信じて、人を信じなくなり、お金持ちになろうとするお話です。ざっくり説明するとそんな感じです。
中学生ぐらいの時に観ていて、なぜだか一生忘れられない。ずっと思い出す作品。

「銭ゲバ」のせいでお金を大切に使えていない可能性もあります。今の僕がどれだけ働いても貯金がなく、未来に不安しか抱えていないのは「銭ゲバ」のせいです。

僕はとにかくこの手の、ダークヒーローが好きというのもあります。
夜神月とかルルーシュとか球磨川禊とか、確実に破綻してる正義を振り翳して暴れ回る奴が好きです。

でも、その中でも蒲郡風太郎は特別な力や才能がずば抜けているとかではなくて、本当に金への執着のみを原動力として動いている。凡人ながら目的を達成していく胆力に心を打たれます。

とにかく蒲郡風太郎は狂っていて、とにかく可哀想で、とにかくカッコいい。

風太郎は環境に恵まれなかったが故に壊れてしまった化け物なのですが、実は優しくて正しい人や心から愛してくれる人が周りに結構いるんですよね。なのに壊れていく。なぜならば、その全員が死んでしまうから。

お母さん。新聞屋のお兄ちゃん。同じく貧乏に苦しむ青年。三國茜。

お母さんはとにかく優しくて不憫で綺麗な人です。僕が母子家庭なのも相まって、お母さんが出てくる回想シーンでは100%泣きます。

大切なことを教えてくれる人が全員死んでしまった風太郎はジ・エンド。ブレーキのない車をアクセルベタ踏みで進んでいく。

極端だし、普通に犯罪者なのでキモいとも思うんだけど、でもやっぱり、目的のためにノーブレーキで走れる方が良いとも思う。

何かを成し遂げたかったり夢がある人間は、皆ちっちゃく風太郎であるべきだと思う。

合法モラルありのちっちゃい風太郎であるべきだと。

むしろ、夢叶えるとか言っておいて、何も動かず、努力もせず、何も捨てず「誰もわかってくれない」とか他責思考で管巻いている奴をみると虫唾が走る。

そう考えると風太郎の方がよっぽど立派だ。だから皆ちっちゃく風太郎であるべきだ。

才能ある人は別にいいけど。才能ある人は何も捨てずに達成する。本当に凄い。おめでとうございます。

少しズレたけど。

そんな狂人。蒲郡風太郎を軸に様々な人間模様が映し出されていく「銭ゲバ」。

金のせいで狂っていく人々、金のせいでわかること、狂った先で助けられる人。本当にお金について、不平等について考えさせられる。

ここまで聞いてわかったと思うのですが、このドラマを見たら普通お金を大切に使います。

僕はあたかもこのドラマを見たせいで自分がお金にだらしないかのように喋っている。ガチの他責思考です。僕が一番虫唾走り系人間でした。オンユアマーク。

でも実際「お金が一番ではない」「お金で買えないものがある」とかもう耳にタコが出来るぐらい聞いてきたこの言葉。今ふとちゃんと立ち止まって考えて、どう思う?

臭いセリフだし、何回も話したし、人それぞれだし、当たり前だし、綺麗事だし。

だから、考えても意味ない?

考えるのって意味ないの?

もう話した議論って、話し合うのって意味ないの?

心があって感動があって情熱があるんだから

「お金が一番大事ではない」が正解で良い?

そうは言っても、お金が無くて、夢を、縁を、生さえも諦めてしまう人がいるのもまた事実だよね?

こんなものただのシステムでしかないのに。

どうやったって付き纏ってくる。

昔の漫画とかアニメとかドラマ見るたびに思うけど、どの時代でも「不況の煽りかな」とか言ってるよね。いっつも不況じゃん。

蒲郡風太郎のように

僕も「金に負けたくない」とは思っている。

永遠のテーマだけど、永遠のテーマだからこそ、考えるのをやめたくはない。

僕はお金なんかどうでもいいと言いたい。

大事とか、大切とか、そうじゃないとかじゃなくて。

どうでもいいと言いたい。

だからお金を稼ぐ。

やりたいことをやってお金を稼ぐ。

そしてその稼いだお金で同期の生配信に東京タワーを建てる。

投げ銭ゲバ。

ズラ。

ありがとうございました。

「銭ゲバ」(2009年放送 / 日本テレビ系)

1970年に連載がスタートしたジョージ秋山による同名マンガをもとにしたサバイバル活劇。貧しく不幸な生い立ちゆえに“銭ゲバ”となった青年・蒲郡風太郎を主人公に「幸福とは何か?」を問う。ドラマの時代設定は放送当時に置き換えられ、リーマンショック後の世相が反映されている。風太郎の印象的な口癖「~ズラ」も話題となった。松山ケンイチが風太郎役で主演を務め、ミムラ、宮川大輔、木南晴夏、山本圭、光石研、奥貫薫、りょう、椎名桔平がキャストに名を連ねる。現在はDVD BOXが販売中のほか、Huluで全話配信中。

吉野おいなり君 プロフィール

1994年2月3日生まれ、福岡県出身。2016年6月にお笑いコンビ・めぞんを結成。「M-1グランプリ2025」では決勝に進出した。YouTubeチャンネル「板橋ハウス」のメンバーとしても活動している。