映画監督・山崎貴が語る『マンダロリアン・アンド・グローグー』の魅力。「いちげんさん“お断ってない”感じがある」
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インタビュー
『スター・ウォーズ』シリーズ最新作『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』が公開されている。本作は7年ぶりとなるシリーズ最新作で、本作が初めて映画館で観る「スター・ウォーズ」という観客も多いのではないだろうか。本シリーズを愛する映画監督の山崎貴は、本作が新たなファンを迎え入れる“ゲート”になると感じているようだ。
山崎監督が『スター・ウォーズ』を観て映画の道に進もうと思ったことは、これまでにも繰り返し、さまざまなインタビューで語られてきた。驚くのは、その作品が現在も映画館で上映され、シリーズが続いていることだ。
「だいたいのフランチャイズ(シリーズ)は2、3作目をつくるのに必死で、そこまで続いたら“がんばったね”って感じじゃないですか。そもそも最初の『スター・ウォーズ』はそんなに期待されていないところからスタートして、それが大ヒットになって『帝国の逆襲』があって、『ジェダイの帰還(復讐)』があって。まぁ、普通はジェダイで終わりですよね。でも、その頃からもう“11エピソードある”って言ってたんですよね。というのも昔、『スターログ』という雑誌があって、そこに11話だか12話分の全エピソードが載ってたんですよ! 読みながら『なんで、スターログはこんなことを発表できるんだ?』と疑問に思いながらも(笑)こんなことになるのか!と。それは嘘企画で、僕が完全にダマされたんですけど(笑)、当時から『スター・ウォーズ』は連続冒険活劇という形式をすごく意識して作られたものだったから、のちに『ファントム・メナス』が公開された時に、最初からちゃんとサーガとして考えていたんだ!って思ったんですよね。
すべてのエピソードを通してスカイウォーカー家の物語になっているし、『スター・ウォーズ』という世界観がしっかりとあるから、いろんなクリエイターがそれを使って自分の世界を広げていったところで、やっぱりちゃんと『スター・ウォーズ』になっている。中でも『マンダロリアン』のシリーズは、『スター・ウォーズ』を愛している人たちが脇役に光を当てることによって、この世界が本当に存在しているんだと思わせてくれる優れたシリーズだと思います。そんなことができるのも、ジョージ・ルーカスが最初の映画をつくった段階で、ものすごく強固な世界観をつくっていたからなんだって改めて思いますね」

本作では、賞金稼ぎの“マンダロリアン”ことディン・ジャリンと、その小さな相棒グローグーの物語が描かれる。彼らは仲間であり、擬似的な親子であり、同じ道を行く同志でもある。マンダロリアンは父のようにグローグーを守るが、どの親子もそうであるように、時に子は親を守るのだ。
「やっぱり、家族の物語って強いですよね。家族のいない人はいないというか、両親から生まれていない子どもはいないという意味では、幸せな家族、幸せじゃない家族、いろいろあると思うけど、話を構成する要素として、家族の話というのはやっぱりものすごい強い。ハリウッドの人たちは親子の話が好きですよね。義理家族の話もすごい好きだし。いろいろ話をしていくと、恋愛ものより親子の話のほうが好きですね。おそらく。
血がつなぐ家族の物語も強いですけど、義理の家族というか“自分で選びとった家族”の話の方が強いですよね。血のつながりはないけど、あえて家族になっているところに強度を感じるんです。考えてみると僕の『ALWAYS三丁目の夕日』も『ゴジラ-1.0』もそうですけど」

本作ではキャラクターたちを、デジタル技術だけでなく、パペットやミニチュアなど可能な限り“触れられる”もので描いている。自身のデビュー作『ジュブナイル』で魅力的な小型ロボットのテトラを“触れられる”ものとして描いた山崎監督は、CGのようには自由に表現できない“至らなさ”が重要だという。
「パペットは”できないこと”の方が多いんですけど、それをある意図のもとで何らかの感情を持たせて見せようとすると、すごく工夫しなきゃいけないんです。その工夫することがおそらく映画の力になっている。完璧じゃない物体がそこにいるということの良さをすごく感じるんですよ。今回の『マンダロリアン・アンド・グローグー』にも作り物のドロイドやクリーチャーがいっぱい出てきて、CGに頼っていないところがすごくたくさんあって、不自由な部分や至っていない部分がたくさんあるんですけど、そこがたまらなく愛おしい。俳優が演技する上で“実物”がそこにいることの強さはありますけど、それ以上に“至らない”ことの良さはあると思います。
僕もゴジラを描く上ではフィル・ティペット(伝説的なストップモーション・アニメーター、映画監督)のつくる動きを意識しています。ある時期までクリーチャーは人形アニメーションでしか表現できない時代があって、フィル・ティペットがつくってきたキャラクターたち、『ドラゴンスレイヤー』のドラゴンとか、『ロボコップ2』の敵とかすごい好きなんですけど、CGにはない独特の動きの“溜め”がある。そういう動きが刷り込まれているんだと思うんですけど、たぶん、『スター・ウォーズ』とか他のフィル・ティペットのつくった動きが自分の根幹にあるんだと思います」
本作を手がけたジョン・ファヴロー監督も幼少期に『スター・ウォーズ』に魅了された人物。彼の根幹にも“あの動き”が刷り込まれているのだろう。

「アンゼランの宇宙船のシーンって普通だったら、大きめのアンゼランをつくって、大きなセットで撮ると思うんですけど、ロスで実際に見たら宇宙船も小さいんですよ。それは『ダーク・クリスタル』を観た時の、何か不思議な世界を覗いているような感覚、センス・オブ・ワンダーな感覚がありました。それは『帝国の逆襲』でAT-ATを人形アニメーションで動かして、これまで見たことのない感覚があった、あの感じにつながるというか。こういうのが『スター・ウォーズ』なんだなって。
普通に考えたら、CGでできるところを、ラジコン操作でロボットを動かして、ミニチュアをつくってやっている。それは予算や期間的にCGが合わないからじゃないと思うんです。むしろ、今はミニチュアの方がお金かかりますから。でも、物体がある方に回帰している。それは『スター・ウォーズ』の魂を取り戻すためには必要だったと思いますし、エピソード6が終わったあとの時代を表現するのに向いていたと思います」

山崎監督は、シリーズの魂を宿した本作が、新たなファンを迎え入れる“新たなゲート”になると語る。
「今回の映画は間口を広げようとしている気がします。これまで『スター・ウォーズ』を観てこなかった人たちもいると思うんですけど、この映画を入り口にして、こんな映画もあるんだと思ってもらえる。いちげんさん“お断ってない”感じがあるんです(笑)。それはシリーズにとって本当にいいことだと思いますし、新たなファン、特に劇場で初めて観る人たちに新たなゲートが開いた感じがしています」
『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』
公開中
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取材・文:中谷祐介(ぴあ)
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