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山下智久「やっと研修期間が終わった」30年を振り返って語る、ここから始まる新しい自分

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山下智久 (撮影/稲澤朝博)

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マイポリシーを尋ねると「自分にも人にも嘘のない、正直な生き方をしていきたい」と教えてくれた山下智久。映画『正直不動産』で嘘をつかず正直すぎる主人公を演じたことで、改めて“まっすぐ人と向き合うことで絆が生まれる」と再確認したと語る。2026年で芸能生活30周年という大きな節目を迎える山下は、さらなる高みを目指し、「これからが自分らしい表現を発揮していく生き方ができる」と希望に満ち溢れていた。

『正直不動産』は今の時代にマッチした作品

山下にとって独立後、初めての連続ドラマ主演となったのが「正直不動産」のシーズン1だ。ドラマ開始から4年。シーズン2、SPドラマやスピンオフともに大好評で、劇場版が5月15日(金)から公開。映画化に至るまで人気シリーズとなった今作の魅力を山下は、「言いたいことも言えない今の時代にマッチしたのでは」と分析する。

「やっぱり嘘がないっていうところが観て下さる方に響いたのかなと思いますね。今の時代、何が本当で何が嘘か分からない時代にどんどんなってきて。情報過多で世の中、混沌しているじゃないですか。僕もそうですが、誰もが疲れてしまっていると思います。そんな中でこの『正直不動産』の主人公・永瀬財地は、嘘をつかない正直営業で本音を全部さらけ出すので爽快ですよね。今はパワハラだの何ハラだのと言われて、思っていることを全然言えない時代。そういう時代だからこそ、正直に生きるというこの泥臭さが良かったんだと思います」

笑って、学べて、熱くて、清々しい。今までのお仕事ドラマとは一線を画す、不動産業界の裏側を痛快に皮肉った社会派コメディが話題に。そして、シリーズを重ねるうちに「いつか映画にしたい」と願っていたそうで、映画化に至ったことは感慨深いものがあるという。

「子供の時からドラマに出演してきましたが、振り返ってみてもシーズン化されるものって少なくて。ドラマがシリーズ化することって、めちゃくちゃすごいことだと思います。続けられることが貴重なので、俳優業をやってきて一番のご褒美ですね。しかも、劇場版にまで辿り着けたのは、本当にありがたいこと。キャストはもちろん、スタッフさんを含め、相乗効果のある最高のチームだったからだと思います」

長い期間にわたって、同じ作品に携わった今作。ドラマのシーズン1は2021年に撮影をしていて、コロナ禍真っただ中だった。

「コロナ禍だったので撮影は、苦労しましたし、すごく大変でしたね。でも、この作品は下町感というか、地域の人たちとの繋がりが描かれていて。東京に住んでいると忘れていたことを思い出しましたね。人の心に寄り添うって大事だなと思いましたし、コミュニティをしっかり大事にしたいなと思いました。お芝居を通して僕自身学んだことと言えば、その人がどういう思いなのか、心情にしっかりフォーカスして耳を傾けるっていうことを大事にしたいなっていう風に思いました」

永瀬という役をしっかり体現できたことが嬉しい

これまでクールな役柄の印象が強かった山下だが、スタイリッシュでスマートな二枚目が大真面目になるのが、このドラマの面白いところ。山下の耳にも直接、ドラマの反響が届いていた。

「これまであまり出演作の感想を聞かなかった新たな層に届いたなというのは感じました。『「正直不動産」、面白いね』ってサウナでおじさんにすごく気さくに話しかけられるようになったんですよね。永瀬という役がどっか抜けていて、憎めないこともあって、親しみを感じてくれたのかな。永瀬という役をしっかり体現できたんだなと嬉しかったです」

山下が演じる登坂不動産の永瀬は、かつて地鎮祭の準備中に祠を壊した祟りで、嘘をつこうとすると強烈な風が吹き、本音しか言えなくなってしまった男。かつて嘘もいとわず営業成績を勝ち取っていた“ライアー永瀬”だったが、正直営業を武器に信頼を得ようとする男に。

「永瀬のように自分の足で動いて、仲間やお客さんと本音で向き合っていくっていうスタイルは、ちょっと懐かしさもありますよね。こういう時代、良かったよなという人情関係がギュッと濃縮されていて、自分も正直でいたいと思いました」

クールなイメージが強い山下だが、今作ではコメディ芝居が炸裂。嘘が付けず、本音を漏らしてしまうシーンでは、コメディ力を存分に発揮している。

「『正直不動産』をやって、僕自身、ちょっとビックリしたんです。自分の中にコメディ要素が眠ってたんだなって。ありがたいことに僕の周りの友達は面白い人ばかりなので、彼らから少しずつそのエッセンスを拝借して。僕のフィルターを通して永瀬というキャラクターを作り上げました。あと、この現場は本当に笑いが絶えないんですよね。営業部長・大河役の長谷川忍さんを筆頭に和気藹々とした空気を作って下さる方ばかり。おなじみのメンバーが揃っての登坂不動産のオフィスでの撮影は、温かみがあって、学生時代の休み時間を思い出しました。思わず笑ってしまって使えなかったシーンもたくさんあって、NGになった場面もあるので、NG集をどこかでお見せできたらいいんですけどね(笑)」

山﨑努との30分間の濃密だった撮影

劇場版では登坂不動産のライバル会社・ミネルヴァ不動産が仕掛ける悪質な地上げという難題と向き合い、人々の笑顔と街の未来を守るために立ち向かっていく永瀬。泥臭さは健在だ。

「今回の脚本は、これまでのレギュラーキャラクターを深掘りしていくパートがあって。そこは結構ドラマに比べると、映画っぽいところ。ドラマだと50分ぐらいに時間が限られていて、その中で不動産業界の豆知識や問題、物語もしっかり見せなくてはならないので、時間的にはちょっと足りなかった部分もあったと思うんですよ。映画では身近な不動産問題を織り交ぜながら、永瀬と不動産ブローカー・桐山(市原隼人)の再会と友情も描かれますし、ドラマ版で描かれなかったストーリーが描かれるので注目です」

永瀬が地鎮祭の祠を壊して祟りにあっていることを唯一知る人物である石田努役の山﨑努との共演シーンも。山下が師と仰ぐ山﨑は「クロサギ」で共演以来の仲。「正直不動産」への出演も「智久のためなら」と快諾して実現したもの。今回は公園のベンチでのワンシーンが実現。現場入りすると山下とガッチリ握手を交わして撮影したそうだ。

「個人的に努さんとのシーンは、とくに思い入れが強いんです。20年前、自分が初めて主演させていただいた『クロサギ』で、努さんに出会えたからこそ、俳優というものに興味が湧いて。師匠のような存在の努さんとの出会いがなければ、もしかしたら今まだこの仕事を続けていたかも分からないですからね。時間が経って、こうして同じスクリーンを共有できたのは、すごく感慨深いこと。共演シーンに限っては永瀬というよりは、結構自分に近い感覚だったのかもしれないですね」

砂埃が舞うほどの強風にみまわれ、一時撮影が中断するハプニングもあったが、山﨑と山下はベンチで楽しそうに雑談。2回目の本番でオールOKととなり、短いながらも濃密な時間だったようだ。

「撮影当日は、すごく晴れていたんです。洗足池の水面が太陽に光に反射していて、キレイでしたね。撮影時間は30分くらいだったんですけど、一瞬だったので、本当にその公園のベンチに努さんがいたのかなっていう感覚でした」

大昇は歌が上手い子なので、これからが楽しみ

映画版のゲストとして『正直不動産』に初参戦した売れないミュージシャン・ヒロト役の岩﨑大昇とも共演。劇中、ヒロトが歌う楽曲「優しい世界」は「後輩の大昇にプレゼントしたい」と山下が海外の活動で多忙な中、作詞した楽曲となった。

「監督にリクエストをいただいて、作詞をしました。高校生がピュアな気持ちで書いたまっすぐな曲を、ということだったので、自分の学生時代を振り返りながらまっすぐな気持ちを届けられるように綴りました。大昇にはジュニアの楽曲を以前も提供したことがあるんですが、また縁があって共演できて良かったなって。歌うことが大好きなのが伝わってくるような歌が上手い子なので、これからが楽しみですよね」

嘘をつこうとすると風が吹くおなじみの場面も劇場版ではパワーアップし、最大級の風が吹く。一体どんなタイミングで風が吹くのか楽しみなところだ。

「結構、試行錯誤して風を生み出していて。1番よく使ってるのは、ブロワーの電動工具。風で草を飛ばしたりする時に使うものなんです。ブロワーで正面に風を当てるのは、結構難しくてスタッフさんが調節しながらやっていましたが、僕自身が風の軌道が分かるようになりましたね。あとは、レフ板を使って、そよ風的なものを吹かせたことも。巨大な扇風機を使う時もあったし、あの風はアナログな風なんです。劇場版ではほぼ100発100中でいいところに風を吹かせてもらって、そこからもチームワークが感じられた。これが続編の強さだなと思いましたね(笑)。いい風が吹くチームが出来上がっているからこそですよ」

人にも自分にも正直に生きていきたい

「正直不動産」では嘘をつこうとすると強風が吹き荒れるが、多忙な時ほど、風を感じながら、五感を大切に生きていく瞬間が大事になってくる。

「僕にとってホッと一息つけるのは、朝の時間。朝、窓の外の景色を見ながら、ひと息ついて。まずは冷水のシャワーで目を覚まします。それからジムに行って身体を整えたりします。そういう1日の朝の始まりを結構大事にしていますね。朝がいいと1日の流れが良くなりますし、しっかり目を覚まして、仕事に行くと集中力も違いますから。コロナ禍からなので、もう5年ぐらいは続けていますね」

2026年は山下にとって、芸能活動30周年という節目。振り返ってみて、「なかなかハードな30年間だった」と振り返る。

「いや、なかなかハードでしたね。がむしゃらに走ってきて、やっと30年経って、研修期間が終わったかなという感じですかね。かなり長めの研修期間ですけど、その中でいろんなものを見て、自分の好きなものが分かってきて。量から質へという感じになってきたというか。ここから、しっかり自分のキャラクターを表に出して、自分が目指すところ、やりたいことを積み上げていきたいと思っています。やっと自分の好きな形を作っていけるところに来たかな。これからは自分の思いを表現していくというフェーズ。活動を通して自分のアウトプットを皆さんに見ていただけたら嬉しいなと思います」

30年間続けるということは、簡単ではないこと。どんなことをモチベーションに走り続けることができたのだろうか。

「もう常にチャレンジの連続ですよね。知らない世界に飛び込むということを大事にしてきましたし、新しい世界を見たいということが1番大きかったのかな。海外での作品もやってみて思ったのは、作品に対する情熱はカルチャーが違っても本質は一緒。大事なのは心だと気づきました。自分自身の壁を超えながら、今後もチャレンジを続けていって、自分の気持ちにも人の気持ちにも寄り添える生き方をしていきたいなって。その姿で誰かに勇気を持ってもらえたらいいですよね。やっぱりこのお仕事は、喜んでいただけることが大事なので、見てくれた方の励みになったり、考えさせられるような何かのきっかけになったりしたら嬉しいです」

「役者としてアーティストとして30年間も走り続けてきて、今はまだ研修生でここからがスタートと思えるのがすごい」と率直な意見をぶつけてみると……。

「まだまだ上を見ているので。人としても成長するため、チャレンジをし続けたい。そのために何をすればいいのか、自分を知るというのはすごく大事なこと。自分の気持ちに正直に生きていくことが、応援してくれてる方にとっても誠実なのかなって思っています。心ってやっぱり変わっていくから。その瞬間、その瞬間をちゃんと感じられるような自分自身にしていきたいですよね。自分をより良くするためにもう常に暴れ回ってますよ(笑)」

どうやってその暴れ回る心をコントロールしているのか尋ねるとニッコリ笑って、「うん、多分、元気なんですよね(笑)」と山下さん。
「大切にしているのは、正直に生きること。人にも正直に生きていきたいなと思いますね。永瀬というキャラクターを演じて、『皆、まっすぐ向き合おうぜ』ということを学びました。結論はやっぱり人類みんな兄弟じゃないですけど、そういう精神をさらけ出すと周りの人たちと絆が深まっていくと思う。正直に素直に表現していくこと、素直に受け取ることが、より絆を強めてくれると思うので、正直でいて損はないんじゃないかな」

撮影/稲澤朝博、取材・文/福田恵子
ヘアメイク/北 一騎、スタイリスト/櫻井 賢之[casico]

<作品情報>
『正直不動産』

大ヒット公開中

【ストーリー】
登坂(とさか)不動産のエースである永瀬財地(山下智久)は、地鎮祭の準備中にある祠(ほこら)を壊した祟りによって「嘘がつけない」体になってしまった営業マン。正直すぎるがゆえに数々のトラブルを巻き起こしながらも、なんとか日々奮闘している。高級車に乗りタワマンに住むという野望を抱きつつ、課長昇進をかけて同僚たちと競争する一方、海外の不動産投資詐欺、嘘もいとわず営業成績を勝ち取っていた「ライアー永瀬」時代の過去の契約トラブル、元同僚である不動産ブローカーの謎の大規模開発計画、そして因縁のライバル会社・ミネルヴァ不動産が仕掛ける悪質で巧妙な地上げ戦略など、不動産業界に渦巻く難題に、正直に立ち向かっていく──。

【作品情報】
山下智久
福原遥
市原隼人 泉里香 長谷川忍 見上愛 松本若菜
西垣匠 伊藤あさひ 財津優太郎 馬場徹 松田悟志
山﨑努 吹石一恵 岩﨑大昇(KEY TO LIT) やべきょうすけ 福士誠治 吉澤健 市毛良枝
ディーン・フジオカ 大地真央 / 倉科カナ 高橋克典 草刈正雄

原作:大谷アキラ(漫画)夏原武(原案)水野光博(脚本)『正直不動産』(小学館「ビッグコミック」連載中)
監督:川村泰祐
脚本:根本ノンジ
音楽:佐橋俊彦
制作プロダクション:NHKエンタープライズ テレパック
製作幹事/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

(C)大谷アキラ・夏原武・水野光博/小学館
(C)2026 映画『正直不動産』製作委員会

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