MALIYA、テン年代のシンガーが提示する芯の強さとアイデンティティ 2nd EP『unswyd』を分析
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初めてライブで歌声を聴いた瞬間に、一気に耳を奪われた。フューチャーソウル、ジャズ、ポップスを昇華した歌声とサウンドでテン年代を代表するシンガーとしてシーンに頭角を現し始めているMALIYAの歌声は、ビヨンセやアリシア・キーズなどディーバと謳われるR&Bシンガーたちが持つパワフルさやフェイクなどの表現に長けていながら、アリーヤやジェネイ・アイコ、最近だとH.E.RやSZAのようなシンガーと通ずる浮遊感も持ち合わせている。そんなMALIYAが発表した2nd EP『unswyd』は、精鋭揃いのビートメイカーたちのサウンドによってMALIYAの歌声がさらにソフィスティケートされており、音楽好きを唸らせる1枚となること間違いなしだろう。
2016年8月に1stEP『Addicted』をリリース後、2018年2月には1stフルアルバム『ego』を発表したMALIYA。『unswyd』では、MONJOE(DATS)、Kai Takahashi(LUCKY TAPES) 、Opus Innなど同世代のプロデューサーを中心に起用している。これまでのコラボレーションでは、自身の作品だと『ego』の「Breakfast In Bed」でKANDYTOWNのRyohu、サウンドプロデュースにSTUTSを迎え、またRyohuのシングル「Nothing But A Blur」ではMALIYAが客演で参加し2度目の共演を果たしている。さらに、今年に入ってからは、KANDYTOWN・Neetzのメジャー1stアルバム『Figure Chord』にて「Fleeting」で参加、最近ではWONKとMALIYAによるLA出身のメロウソウルバンド、The Internetの「La Di Da」オフィシャルカバーも記憶に新しい。
この約1年ほどのコラボレーションを辿っても、やはり同世代でヒップホップやバンド界隈で日本の音楽シーンをリードしている旗手が揃っているが、そのコラボの多くはイベントの共演で相手のライブを見たり、互いの音を聴いて気に入ったところから入り、コンタクトを取り合いながら楽曲を作り上げていったという。こうしてアーティスト同士が気軽に楽曲を作ろうと言い合えるそのラフさが、テン年代の音楽シーンの特徴とも言えるのではないだろうか。
『unswyd』は、MALIYA自身のルーツでもあるブラックミュージックを基盤としつつ、エレクトロやコンテンポラリーR&Bといった現行の海外音楽シーンとも呼応する作品に仕上がっている。4月12日、MALIYAがOpus Innらとともに出演した『TEN’S LOUNGE』(表参道・WALL&WALL)にて直接話を聞ける機会があり、その時彼女はこう話してくれた。「新鮮なことをしたいなと思って作りました。打ち込みのアルバムだけど、シンガー的な作品にしたくて」。
確かにその通りだ。音楽も多様な現代においてジャンルのクロスオーバーは珍しいことではないし、参加しているビートメイカーたちも様々なジャンルを昇華して本作での見事なサウンドプロデュースを手掛けている。「I’m Ready」や「TICKET(feat.Opus Inn)」の乾いた感触が特徴のビートと、「Drop me a line」に出てくる携帯の着信音をリファレンスした耳馴染みのある音色が対比的だが、MALIYAの歌声はどんなサウンドやビートの上でも、R&Bやジャズの要素を内包したソウルミュージックの質感で歌い上げるその声で、作品に一本の芯を通し、温度感のコントラストをより上げているように感じる。
タイトルの『unswyd』=(unswayed)はブレない、左右されないという意味を持つ。〈No time for haters 媚び売らない性格 その時間にmake music〉という1フレーズが鮮烈に残る1曲目の「I’m Ready」から始まり、作品のラストを締めくくる「Cut my hair」では髪を切る=別れを決意して前に進む強い女性の意志が描かれている。本作はアルバムのタイトル通り揺るぎない信念を綴った歌詞が多く、同性の心をガツンと掴むガールクラッシュな作品でもあり、MALIYAのアイデンティティが表現された1枚になっている気がした。
またMALIYAは、NAOなど注目の女性シンガーを輩出するUKシーンのホットスポット、サウスロンドン出身のシンガーであるジャズ・カリスの初来日公演(5月25日)にオープニングアクトとして出演することが決定している。日本の音楽シーンに欠かせない存在となっていくであろうMALIYAと、海外の注目シンガーたちとの共演も見逃せない。
(文=神人未稀)
■リリース情報
『unswyd』
発売:4月24日(水)(※タワレコ限定)
価格:¥1,500(税抜)
<TRACK LIST>
1. I’m Ready / prod.by MONJOE(DATS)
2.Set me on fire
3.Drop me a line / prod.by Kai Takahashi (LUCKY TAPES)
4.TICKET feat.Opus Inn / prod.by Opus Inn
5.Cut my hair / prod.by Yoshi Kodate
Executive Producer : Kosuke Harada
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