『キングダム』2位の好スタート 『コナン』『アベンジャーズ』の一騎打ちに「待った」をかける
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先週末の映画動員ランキングは『名探偵コナン 紺青の拳』が土日2日間で、動員67万8000人、興収8億8600万円をあげて2週連続の1位。初日から10日間の累計では動員275万人、興収35億円を突破。これは、同期間において動員247万5900人、興収32億3312万円を記録した前作『ゼロの執行人』を依然上回るペース。もっとも、日本映画ではライバル不在だった昨年と違って、今年は10~20代のメインとなる観客層が重なる作品が現れた。先週末の動員ランキングで2位に初登場した『キングダム』だ。
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『キングダム』は先週末の土日2日間で動員38万2000人、興収5億2600万円、初日からの3日間では動員50万7000人、興収6億9000万円を記録。これは、コミックの実写化日本映画としては、昨年8月に公開された『銀魂2 掟は破るためにこそある』(公開週土日2日間で動員38万5000人、興収5億2800万円)以来となる好成績。近年、この水準の初動成績を記録したコミック実写化作品となると、2017年7月に公開された同じく『銀魂』(公開週土日2日間で動員39万3000人、興収5億4100万円)まで遡らなくてはいけない。つまり、続編以外では約2年ぶりとなる、久々のコミック実写化日本映画の大ヒット作が生まれたことになる。
まだ『キングダム』の続編が正式に発表されていない段階にもかかわらず、ここで「続編」の話を持ち出すのは他でもない。主演の山崎賢人にとって、今作『キングダム』は、続編製作が想定されていながら、最終興収が10億円にも届かなかったことで、その後の展開が頓挫してしまった2年前の主演作『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』の汚名返上作となったからだ。
もちろん、映画の興収を決定づける要素は主演俳優だけではない。しかし、今回『キングダム』プロモーション中におこなわれた日本外国特派員協会会見において佐藤信介監督が山崎賢人を起用した理由を訊かれて、「山崎賢人が出演することは僕のチョイスではなく、プロデューサーが決定していたこと。『山崎賢人をこれでやる』というプロジェクトだった」と明かしたように、映画の興収の責任は主演俳優にあるわけではないが、ある程度の規模を超えた映画の企画はまず主演の俳優を押さえるところから始まるというのが、日本の映画界、芸能界における慣習となっている。
その是非はともかく、ここ数年間は死屍累々の惨状が続いていた(特にアクション系)コミック実写化作品にあって、『キングダム』は際立った成果を残したことになる。昨年公開の『BLEACH』は失敗に終わったものの、過去に『GANTZ』2作、『図書館戦争』2作で前後編作品やシリーズ作品で実績のある佐藤信介監督の起用。要所に大沢たかお、長澤まさみ、坂口拓といった作品全体を「締める」ことができる役者を起用した的確なキャスティング。原作者の原泰久も映画化に深く関わり、「主要なスタッフたちには(『ゲーム・オブ・スローンズ』)シーズン6の第9話を見るように言っていました」とプロデューサーの松橋真三氏が語っていることにも表れている綿密な製作プラン。『キングダム』の成功は、それらの丁寧で真摯な仕事の積み重ねによって成し遂げられた。
当初は『名探偵コナン 紺青の拳』と今週末公開の『アベンジャーズ/エンドゲーム』の一騎打ちになることも予想されていた今年のゴールデンウィーク興行だが、そこに割って入った『キングダム』、そして最後発の5月3日公開となる『名探偵ピカチュウ』と、四つ巴の史上稀に見る大激戦になる気配が濃厚だ。『アベンジャーズ/エンドゲーム』も『名探偵ピカチュウ』も既に鑑賞済みだが、両作品とも想定される観客の期待を裏切ることのない作品であることだけは保証します。(宇野維正)
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記。