劇団EXILE・小澤雄太、『舞台 PSYCHO-PASS サイコパス』での挑戦を語る
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『舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice』に出演する小澤雄太
人気アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』が舞台化され4月30日まで東京公演として日本青年館ホール、5月3日~5月6日まで大阪公演として森ノ宮ピロティホールにて上演される。本作はアニメシリーズの脚本家・深見真氏が舞台用に書き下ろした完全オリジナルのスピンオフストーリーで、公安局刑事課三係を舞台に、キャストがストレートプレイを展開。主人公役の鈴木拡樹を筆頭に、和田琢磨、中村靖日など舞台界において欠かすことのできない、豪華メンバーが集結した。そのなかで劇団EXILEの小澤雄太は軽めなノリでメンバーを盛り上げる刑事・相田厚生を演じ、「人生で初めてやった舞台が刑事役で、今回はそのときの反省を活かしたリベンジみたいな気持ちもあって、とにかく熱を注いだ」と話す。
4月17日のゲネプロ終了後に行われた今回の取材。小澤の顔を見ると額にうっすらと汗が残る。興奮が冷めやらぬなか、舞台を終えたばかりの小澤に率直な感想を聞いた。
「舞台はこれまでに何度かやらせていただいていますが、本作は“新しいことに挑戦しているな”という感覚が強かったです。アニメ原作のストレートプレイだけど、豪華なセットや最新の技術を駆使したホログラムで、近未来的な世界観を忠実に再現しているし、そこで展開されるドラマは、観る側に“人間とはどうあるべきか?”という問いかけをしてくれる。ゲネプロを通して多くの人に“届けたい”という気持ちを強く感じました」とし、「手応えのほうは?」と尋ねると「ばっちりです!」と力強く答え、首を縦に振った。
冒頭でも触れたが、本作は人気アニメの舞台化で原作ファンも多い。今回の舞台の話が来た当初はプレッシャーを感じていた小澤だが、与えられた1カ月の稽古期間中にその重圧をあえて楽しむことで不安を乗り越えた。
「不安だと思うと気持ちもどんどん小さくなっちゃうし、それならもう開き直るくらいの勢いで、とことんプレッシャーを楽しもうと気持ちを切り替えました。でも、これって今回の舞台に限らず、役者という仕事すべてに通じることだと思っています。お客さんに辛いことがあっても、僕の作品を観ればその悩みも吹き飛んでしまう、役者ならそういう存在を目指さなくてはいけない。こっちが楽しい気持ちでやらないと、観ている側にもポジティブな気持ちを届けられないじゃないですか? そんな考えが常に根底にあったので今回のプレッシャーも乗り越えらました」。
本作の出演者は全員男性! 大変にぎやかだったという現場での様子について、笑顔でこう振り返る。
「稽古中の様子をたとえるなら部活。それぞれが自分のポジションの技を磨いて、仲間と和気あいあいと過ごしながらも、やるときはちゃんとやる!みたいな。しかも、メンバーがみんなノリのいい人ばかりなので、誰も意識せずとも勝手に現場が盛り上がる。やっぱり、女性がいるとはっちゃけたノリを出しきれない部分もあるので、そういう意味で今回はとんでもないところまで自分のキャラクターを出しきれたと思います(笑)。誰もがかしこまらずに限界まで素を見せられる空気感は、こういう男性だけの現場の特権じゃないですかね?」。
今回初めて一緒に仕事をした本広監督は映画『踊る大捜査線』シリーズや『幕が上がる』など手がけており、映像へのこだわりも強い。だからこそ、2次元と3次元の世界が融合した、本作の圧倒的な世界観を美しく紡ぎだすことができた。小澤は稽古中に「舞台では舞台役者にしかできないことがある」と本広監督から声をかけられたのが印象に残っていると話す。本広監督は役者の可能性を信用し、彼らの意見を作品に多く取り入れた。
「本広監督はどんな意見でも一度ちゃんと聞いてくれる方なので、僕からもたくさん提案させていただきましたし、出した案に対して“ここはもっとこうすると良いんじゃないか”と親身になって考えてくれるんです。自分の提案が活かされたシーンは、気合いもいっそう入りました」。
小澤はどんなアイディアを提案したのだろうか?
「井口(中村靖日)を手当てしなきゃいけないシーンで何かしらのドラマを作りたかった。そこでハンカチを使ってみようと考えたんです。それを本広監督に提案したら“いーねー!”と笑顔で言ってくれて。今回の舞台はそうやって作っていく過程が本当に楽しかったですね」と嬉々とした表情を浮かべながら回顧。小澤が提案したこのハンカチのシーンの詳細はぜひ劇場で。
『八王子ゾンビーズ』『暁の帝 ~壬申の乱編~』『里見八犬伝』など、これまでに多くの舞台に立ってきた小澤。2009年のデビューから今年で10年。「演出家に毎日怒られながらも、“頑張ります!”という熱意だけを買ってもらい、何とかやってこれました」と笑いを交えて話す。ちょうど10年前のデビュー作も舞台の刑事役で、小澤は今作には運命的なものを感じた。そんな劇団EXILEきっての“生の芝居”を得意とする小澤が、舞台の仕事でもっとも楽しさを感じる瞬間とは? そう問うと目を輝かせてこう答えた。
「“難しさ”と対面した瞬間です。人って経験を重ねていくほど、難易度が高いものに面白味を見出すじゃないですか? それは舞台も一緒で最初は簡単なことから始めるけど、ずっとそればかりだと成長していく過程で得られる達成感や自信を味わうことができない。ちゃんとお芝居の難しさを理解したうえで、自分なりの楽しさも混ぜて、その思いを直接お客さんに届けるのが舞台に立つ醍醐味。今回も難しかったです!」。
1カ月間、小澤が難しさと向き合いながら届けたかった思いを、目の前で感じ取ってほしい。
取材・文:近藤加奈子 撮影:稲澤朝博
『舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice』
東京:4月30日(火・祝)まで日本青年館ホールで上演中
大阪:5月3日(金・祝)~5月6日(月・祝)まで森ノ宮ピロティホール
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