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1本の木の“影”から始まる狂気 第90回アカデミー賞外国語映画賞アイスランド代表『隣の影』公開へ

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リアルサウンド

 第90回アカデミー賞外国語映画賞アイスランド代表に選ばれた『Under the Tree(原題)』が、『隣の影』の邦題で7月27日よりユーロスペースほかにて全国順次公開されることが決まった。

参考:『グリーンブック』はアカデミー賞作品賞にふさわしかったのか? 批判される理由などから考察

 本作は、閑静な住宅街で繰り広げられる些細な隣人トラブルの連鎖から、人々が暴走していくさまを描いたブラック・サスペンス。すべては閑静な住宅地で暮らす老夫婦が、隣家の中年夫婦からクレームをつけられたことから始まった。いわく庭にそびえ立つ大きな木が、いつも日光浴をするポーチに影を落としているというのだ。それをきっかけにいがみ合うようになった二組の夫婦は、何の証拠もないのに身近で相次ぐ不審な出来事をすべて相手の嫌がらせと思い込むようになる。その頃、元恋人とのセックス動画が原因で妻から三行半を突きつけられ、老夫婦のもとに転がり込んできた息子も、庭のテントで寝泊まりして隣人の監視を手伝うはめに。やがて老夫婦が家族同然に可愛がっていた飼い猫が失踪し、1本の木を挟んで激しく対立していた両家の人々は、決して越えてはならない危険な一線を踏み越えていくのだった。

 監督は、本作が長編3作目となるハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン。2012 年、バラエティ誌の“最も期待される10人のヨーロッパの監督“に選ばれた彼は、本作ではブラックユーモアを湛えたホームドラマの体裁を取りつつも、卓越した心理描写により異色のサスペンス映画に仕立て上げ、本国アイスランドでは同時期公開の『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』と渡り合い、興収チャート1位を獲得。同国のアカデミー賞にあたるエッダ賞では、作品賞、監督賞、脚本賞を含む7部門を受賞し、米アカデミー賞のアイスランド代表作品に選出された。さらに、米国最大のジャンル映画祭であるファンタスティック・フェスト2017では、最優秀監督賞を受賞している。

 ジャパンプレミアとなったSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018では『あの木が邪魔で』のタイトルで上映され、国際コンペティション部門の監督賞を受賞した。審査員を務めた深田晃司監督は、本作について「小さな出来事、小さな行き違いが転がるように大きな事件に発展していく脚本の巧みさと監督の手腕が素晴らしい。その技術の高さもさることながら、悲劇とユーモアが表裏一体で描かれる監督のシニカルな視点がとてもユニークだった。共感を求めない人物造形というのは、作り手の私自身にとても勇気をくれた」と絶賛した。(リアルサウンド編集部)