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G-DRAGON、力強いパフォーマンスで示した音楽への愛 『M.O.T.T.E』東京ドーム公演レポート

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 G-DRAGONとは、クォン・ジヨンという表現者の中に潜む「永遠の少年性」の象徴だった。

 その少年は、BIGBANGやソロアルバムでは最新のダンスミュージックを模型のように組み合わせ、異形のポップアンセムを作りだした。そして、ファッション界では持ち前の肉体をあらゆる最新モードのために差し出し、自身の存在をポップアート化。シャイな少年が、目の前に真っ白なキャンパスを与えられた時にだけ心の中のすべてをぶちまけることができるように、G-DRAGONのこれまでの活動も、彼の中に溢れる感情を音楽にぶつけるような瞬間の積み重ねだったのだろう。

参考:BIGBANGの音楽性はどう受け継がれた? iKONが築く、K-HIPHOPの最新モード

 韓国ソウルを皮切りに北米8都市、アジア3都市、オセアニア4都市、日本3都市、全19都市23公演をまわるワールドツアー『G-DRAGON 2017 WORLD TOUR 』の東京ドーム公演が、9月19日と20日の2日間で開催された。本稿では、20日の公演をレポートする。

 今回の「M.O.T.T.E」(MOMENT OF THE TRUTH THE END)と名付けられたライブ空間は、G-DRAGONという少年の自室へ招待され、彼と僕らだけの秘密の時間を共有するような、従来のライブのコンセプトとは異なるものになっていた。ライブの冒頭、全盛期のNine Inch Nailsを思わせる緻密に構成されたノイズ映像が流れる。そのゆがんだ映像が、ステージ上のLEDを埋め尽くした瞬間、僕らが知っているG-DRAGONのライブは、完全に過去のものになっていた。

 1曲目に歌ったのは、血が吹き出すような失恋の悲しみを歌った「Heartbreaker」。喉から絞り出すような咆哮で同曲を断ち切ると、会場を埋め尽くしたペンライトが赤に染まる。赤は、同ツアーの核となる最新アルバム『KWON JI YONG』のキーカラーだ。

 それがまるで傷跡から流れ出る血液のように見えた時、僕らはこのライブが単なるエンターテイメントショーではないことに気づく。クォン・ジヨンという青年が、ステージという手術台の上で、G-DRAGONという少年の魂を解体する。そのライブ風景は、エンターテインメントを見ているというよりも、真摯なロックショーを見せられているような気持ちだった。

 G-DRAGONというキャラクターを、そのまま音にしたような傑作「CRAYON」。アッパーなパーティーアンセムだった原曲が、地鳴りのような低音が鳴り響くヘビーロック調にリアレンジされていた。『KWON JI YONG』のトラックリストと同じように、ダンテの「神曲」にインスパイアされた、「死と生と運命」についてのトラップバラード「OUTRO. 神曲(DIVINA COMMEDIA)」。同曲が本編最後の曲として配置され、インターミッションでは繰り返し映像が挿入される。MCを含め、LIVEを構成するすべての要素から伝わってくるのは、「孤独」と「わからない(I am numb)、でもここから進まなくてはならない」というメッセージだった。

 G-DRAGONとクォン・ジヨン、愛情と孤独、生と死……幾重にも分裂した自己を救うものは何なのか? 今回のライブがG-DRAGON史上で最も優れたものになったのは、その答えを彼が明確に掲げたからだ。それこそが「音楽」なのである。

 「THAT XX」と「BLACK[feat.BOM(from 2NE1)]」というスロージャムな2曲が、ライブ中盤で披露された。どちらの曲も、絶望の底に沈み込んでいく主人公の姿が描かれている。しかし、今回のライブでこの2曲が表現したのは、「痛みを救うのは、唯一音楽だけである」というメッセージ。それを証明するためにG-DRAGONは、あらゆる感情をボーカルパフォーマンスで静かに爆発させ、この2曲をソウルミュージックの域にまで高めていた。それと同時に、音楽によって救われることへの喜びが生まれ、それをみんなに共有してほしいというG-DRAGONの真っ直ぐな意思が歌に表れていた。

 アンコールでは、BIGBANGのV.Iが登場。G-DRAGONとV.Iによる爆笑トークやBIGBANGメドレーによって、それまでの張り詰めた緊張感から観客は解放された。この笑顔で溢れたひと時は、これまで背負い続けてきたエンタテイナーや表現者としての重圧から、G-DRAGONが解放されたことを表しているようにも思えた。

 このライブの2日後、G-DRAGONが2018年の春から2年間の兵役に就くことが発表された。少年から青年へ。今回のライブは、自身の人生の未来を音楽へと託した、生々しくも力強い、完璧なロックコンサートだった。(ターボ向後)