NICO Touches the Wallsが見せつけた“4ピースバンド”の地力 『MACHIGAISAGASHI』レポ
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NICO Touches the Walls(以下、ニコ)の全国ツアー『NICO Touches the Walls TOUR “MACHIGAISAGASHI ’19”』が、3月25日、EX THEATER ROPPONGI公演より開幕した。
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ツアーは、追加公演を除き、各公演同一会場にて2日間開催。1日目はバンド編成、2日目はアコースティック編成となっている。ニコは、2017年の『OYSTER -EP-』、2018年の『TWISTER -EP-』、そして今年6月リリースの『QUIZMASTER』と3作連続で“バンドスタイルと同曲のアコースティックバージョンの2枚組”という形式で音源を発表している。また、昨年のツアーにもアコースティック編成の日が含まれていた。今回のツアーもそういった流れを踏襲したものだ。
この記事ではバンド編成初日公演の模様をレポートするが、アコースティック編成も必見の価値があることを伝えておきたい。このバンドの場合、一口にアコースティックといえども単に演奏楽器が違うだけでなく、アレンジを一から再構築しているため、アウトプットがバンド編成とは全く違うのだ。
なお、以下には具体的な曲名を記載していないが、演出の内容も一部話題に上げているため、まだ知りたくない人はツアー終了後に読んでいただけると嬉しい。
まず今回のライブでの変化は、2017年のツアー以降、サポートメンバーとしてニコのライブにしばしば参加していた浅野尚志の姿がステージになかったことだ。浅野は、ギター、バイオリン、キーボードなどを演奏できるマルチプレイヤーで、バンドの創造性を拡張させる役割を果たしていたが、今回はメンバー4人きりでの演奏で同期も使用していない。バンドの地力が改めて問われるライブだった。
さらに、この日はニコにとって2019年初ライブであり、これまではレコーディングとツアーの準備を行っていたそう。「地下生活の証はあちらこちらに散りばめるとして、今日は久々すぎてヤバいよって曲がいっぱいあります」という光村龍哉 (Vo/Gt)の言葉通り、セットリストは、インディーズ期の曲から『QUIZMASTER』収録予定の新曲までを網羅した内容だ。演奏が始まるたび、フロアから熱量の高いリアクションが局地的に上がっていたのが、そのコアさを物語っていた。
これまでは浅野のいる編成で演奏される機会の多かったとある曲では、その不在を補完するようなフレーズを他の楽器が弾いていた。また、いくつか演奏された新曲のなかには、以前のツアーでも披露されたがまだ音源化されていなかった曲もあり、当時から如何に変貌していったのかを知ることもできた。バンド編成とアコースティック編成の差異。ライブと音源の差異。そして、現在のニコと以前のニコの差異。それら変化・進化の発見(“間違い探し”と言い換えられるかもしれない)を楽しめることがこのツアーの醍醐味だ。
バンドの演奏は、レコーディング真っ只中の新曲群はやはり鳴りが良く、それらをきっかけにしながら、徐々に全体が温まっていくような感じがあった。新曲/既存曲の混ざり具合や、4ピースバンドとしてのグルーヴは、公演数を重ねるにつれてどんどん深まっていくことだろう。
終盤のMCで光村が「(リリースを重ねるほど)ハードルが上がる一方って話をさっきしましたけど、やればやるほど、自分が如何に不器用な人間かってことを日々思い知ってます」「でも自分の情けないところを許せるなら、こうやってライブをすること、作品を作ることにも意味があるのかなと。今日は楽しく歌わせていただきました」と話していたことが印象に残っている。なぜなら、そういう、ニコというバンドのどこか捻くれた感じがこの日のライブから読み取れたからだ。
例えば、飴と鞭の使い分けが絶妙なオープニングおよびその後の展開。そして演奏曲の中からもう一度観たい曲を募るスタイルのアンコール(アンコールとは本来こうなのだと、昨年のツアーMCで力説していた)。これらには、紋切り型のやり方に首を傾げ、自己流の一捻りを加えるこのバンドの性格が表れていた。新曲のうちの1つは、一風変わったコード進行で予測不能な展開をしていて、私たちは大いに翻弄されることとなる。また、先述のような光村の抱える孤独が滲み出た曲もあった。
現在制作中の『QUIZMASTER』について光村は「(4人の)趣味趣向が充満しそう」と話していた。同作が、創意工夫に富んだアプローチを通じ、一筋縄ではいかないバンド自身の在り方を落とし込んだ作品なのだとしたら、リリースが非常に楽しみである。ツアーは6月9日、Zepp Osaka Bayside公演まで続いていく。(蜂須賀ちなみ)