【インタビュー】山本耕史が再びミュージカルの舞台へ! 日米合作ブロードウェイミュージカル『フル・モンティ』8月開幕!
ステージ
インタビュー
山本耕史 (撮影:清水隆行)
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すべて見るトニー賞9部門ノミネートの傑作ミュージカルで、失業した男たちがストリップに挑戦する『フル・モンティ』が日米合作として全編英語で上演される。主演を務めるのは、同じく日米合作で2024年に上演された『RENT』でも高い評価を得た山本耕史。自他ともに認める“マッチョ”の山本が、ステージ上でどんな肉体を見せてくれるのか? 本作に臨む意気込みを語ってくれた。
『RENT』への尽きない想いものせて
――2024年の『RENT』を経て、同じトレイ・エレットの演出により、今度は『フル・モンティ』になりますが、お話が届いた時の率直なお気持ちは?
山本 正直、こんなふうにつながるとは思ってなかったです。『RENT』という作品が山本耕史という俳優の大半をつくったと言えますが1998年、21歳の時に日本初演があり、再演があり、その後、紆余曲折があって2024年に再びやることになって、僕の中では「舞台人生にひと区切りがついた」という感覚だったんです。そうしたら、まさかトレイ・エレットが「次は何やる?」って聞いてきて(笑)。社交辞令と受け取っていたけど「耕史にぴったりの作品がある」、「2025年の春はどうだ?」と…。それはスケジュール的に無理だったんですけど、具体的な時期まで口にするということは本気なのかな? と。
それでキョードー東京(主催)にもお話をしたら「進めてもいいですか?」ということになって、それが1年半ほど前のことです。そのまま、あれよあれよという感じです(笑)。
正直、母国語ではない言語でやるって想像を絶する大変さがあるんですけど、ただ「またやろう」と言ってもらえるのは、そんなに悪くなかったってことなんだなと。それが一番嬉しかったですし、すごい冒険ですけど、ある意味で軽はずみな感じで(笑)、やってみてもいいかと。ただ『RENT』に関しては歌もセリフも理解していましたが、これに関してはゼロからなので『RENT』以上のトライですよね。

――2024年の『RENT』で「舞台人生にひと区切り」という言葉がありましたが、今回の出演のきっかけにもなった『RENT』という作品は、山本さんにとってどのような作品なのでしょうか?
山本 僕自身、生まれた時(0歳)からこの仕事に関わってきたので、仕事ではあるけど半分、遊びみたいな感覚だったんです。初めて『RENT』をやった時、いまでこそミュージシャンや舞台未経験の方がミュージカルに挑戦するのはよくありますが、当時、舞台は舞台の人たちがやるもので、そんな中で『RENT』の日本初演は、僕以外の人はほとんどミュージシャン(宇都宮隆、KONTA、森川美穂らが出演)だったんです。そうすると、俳優だけでやる舞台とは全然違う世界観で、良い意味で「戦い合っている」という感じでした。“足並みをそろえる“とか“うるさいこと言わない“とか「そんなの関係ねぇ!」という人たちばかりで(笑)。これまでと全く違って、優等生がいない。それが僕にとっての『RENT』で、その後、いろんな舞台をやっても、どこか物足りなさを感じる部分がありました。
『RENT』は同性愛やエイズといったテーマを描いていますが、ジョナサン・ラーソンという人が「いまのブロードウェイは50年遅れている」という思いを心に秘めて、あの時代の非主流としてつくり上げた作品だったんです。日本で初演された際も、やはり『RENT』は主流から見て異質なものであり「これが時代と逆行するエネルギーなんだ!」というのを感じました。それ以降、いろんなミュージカルをやらせていただきましたが、近いものはあっても僕の中では「物足りない…」という思いがあって…。それから紆余曲折を経て、(2024年に26年ぶりに)『RENT』に戻って、改めて「あぁ、俺は『RENT』以外はやりたくないんだな…」って気づいたんです。いまも、その気持ちは変わらなくて、ある意味で今回の『フル・モンティ』は自分にとってボーナスみたいなものだなと思います。

『フル・モンティ』の魅力はミュージカルで輝く
――原作の映画『フル・モンティ』や過去のミュージカルの上演の映像などはご覧になりましたか?
山本 映画はちょっとだけ見始めたんですけど、ミュージカルではないし、設定も違うんですよね(※映画版ではイギリスが舞台)。ミュージカルだと思って見始めたので正直、そこまで惹かれなくて、無理に見なくていいかなと思ったんですが、ミュージカル版のほうの過去の映像を見たら「あぁ、やっぱりこれはミュージカルにぴったりの作品なんだ!」と思いましたね。
2000年に初演された時は、他にも『プロデューサーズ』とかあまりに強い作品が他にもあって埋もれてしまったけど、演出のトレイも「すごい傑作だし、絶対に面白い」と。実際、見てみると良い作品だなと思いました。主人公たちが、どん底から常識を飛び越えて、1日だけ、その瞬間だけヒーローになるというすごく爽快な作品で、つくりとしては以前、やらせていただいた『メンフィス』とも似ているなと思いました。
サエない男たちが抱えるジレンマや生活の中の葛藤、歳を重ねてスキンシップがなくなった夫婦、いまだに母親と暮らしている独身の男とか、そういう弱い自分とこの瞬間だけオサラバする――それが全裸でというところが、すごく人間らしいなと。自分を守るために着飾るんじゃなく、全て脱ぎ捨てるというのがね。裸というのがこんなにも強いというのがわかる、すごく良い作品だなと感じます。
ただ『RENT』は8割が歌で2割が会話だったのに対し、『フル・モンティ』は逆で8割は会話なんです。しかも『RENT』はモノローグ中心でしたけど、今回は会話なんですよね…(苦笑)。

――「耕史にぴったりの役」とエレットさんはおっしゃったそうですが、山本さん自身がジェリーという役に近しさを感じる部分はありますか?
山本 子どもがいるという設定なので、そこはすごく共感できますね。息子のために奔走するというのがジェリーという役の核なので、そこは迷いがなく「子どものためだったら何でもするよな」と思えますし、ぴったりだなと思いますね。そこはトレイも思っていたのかもしれません。(『RENT』の場に)家族を連れて行ったりもしていたのでね。
あと、ジェリーはあまり特化した個性はないんですよね。デイヴはちょっとぽっちゃりしたタイプで、ハロルドは紳士だけどダサいところがあって、マルコムは弱虫で…とか特色があるけど、ジェリーに関しては特に何もなくて、本当にうだつの上がらないダサい男なんです。
これは深読みかもしれないけど、『RENT』のマークという役もコケ―ジャン(白色人種)の設定なので、本当は僕ができる役じゃないんですけど、ネイティブの中にひとりだけ異質な存在が混ざっていて、そこにトレイが朴訥とした存在感を感じ取って「ジェリー役もいけるんじゃないか?」と思ってくれたのかもしれません。そういう意味でヒーロー気質の主人公ではないんですよね。トレイの中で、ジェリーの自分がワーッと前に出る感じではないけど、でも子どものために何かしたいというところが僕とつながったのかなと思います。
――ジェリーという役を鑑みて、肉体に関しては、あまり作り込まずに臨まれるんでしょうか?

山本 いや、それでもアメリカの映像を見ると、身体はみんな、しっかりしているんですよね。たしかに“マッチョ”という設定の人物はいないんですけど、イーサン(スティーヴン・ロシェット・ロペス)はかなり身体が大きいので、僕に対して「うわ、大きいな」と思わないはずです。やはり、だらしない身体では出ちゃいけないなと思っています。ボディビルダーみたいな肉体にするつもりはなく、いまは筋肉量が多いので、少し小さくしてシェイプするという感じですね。理想は細く見えるくらいかな? と思うんですけど、これは(アメリカ人キャストが)入ってきて、バランスを見てですね。
――先ほど本作が「ミュージカルにぴったり」という言葉がありましたが、どういった部分でそう感じたのか? ミュージカルとしての本作の魅力を教えてください。
山本 コメディタッチの部分がすごく良いんですよね。ちょっとセクシーな本を男同士で読むシーンで、僕が一番好きなめちゃくちゃカッコいい曲が流れたり、マルコムが「生きていてもしょうがないから自殺したい」と言い出して「やめろよ、俺たちがやってやる」という時の曲がものすごくラブリーで歌詞も「俺らがお前の頭をカチ割ってやるよ」みたいな(笑)。そういう(曲調と内容が)相反している部分がぴったりだなと思います。
ダンスに関しても、決してモダンなダンスを踊るでもなく、ダサいスローなダンスをおじさんたちが一生懸命踊っていて、それもグッとくるんです。音楽とストーリーとキャラクターがすごくフィットしている部分が、ミュージカルである『フル・モンティ』の魅力だと思います。

取材・文:黒豆直樹 撮影:清水隆行
<公演情報>
日米合作ブロードウェイミュージカル『フル・モンティ』
脚本:テレンス・マクナリー
作詞・作曲:デイヴィッド・ヤズベック
原作:映画『フル・モンティ』
演出:トレイ・エレット
振付:ポール・マギル
出演:山本耕史、Adam Chanler-Berat、Greg Hildreth、ゆりやんレトリィバァ、John Hemphill ほか
【東京公演】
2026年8月19日(水)〜9月7日(月)
会場:東京国際フォーラム ホールC
【大阪公演】
2026年9月10日(木)〜14日(月)
会場:新歌舞伎座
※生演奏、全編英語上演、日本語字幕あり
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