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長澤知之、アコースティックツアーで聴かせた切実な歌声 松江潤も迎えた最終公演レポ

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リアルサウンド

 3月20日にアコースティックミニアルバム『ソウルセラー』をリリースした長澤知之が、·山本健太(Key)を迎えたツアー『Nagasawa Tomoyuki Acoustic Tour 2019 ‘Soul Seller’』を開催。その最終公演が4月23日に渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて行なわれた。

 近年、ALでのバンド活動なども目立っていたが、もともと弾き語りを軸にソロで活動してきた長澤。そのためもあってか、ステージに登場した彼からはどこかリラックスした雰囲気を感じた。と思いきや、「はぐれ雲けもの道ひとり旅」を一人で歌い出すと会場の空気を一変させ、緊張感を漂わせる。しかし、曲を終えるとラフに客席の声に応える。このギャップも一つの魅力だろう。2曲目の「アーティスト」からは、山本を迎え入れ、サウンドに豊かさと彩りが加わる。向かい合って顔を見合わせながら、2人のセッションのような演奏が続く。

 ツアーを振り返り、山本は「毎回違うから楽しかった」と冗談めかして話していたが、まさにその言葉通り、長澤は曲ごとに異なる一面を見せていた。「嫌なことがあった時に書いた」という叫び声から始まる「あああ」、ステップを踏むような動きを見せて楽しげに歌う「笑う」、トーキングブルースのような「センチメンタルフリーク」。ギターとキーボードというシンプルな編成ながら、長澤の時に語りかけるような、時に叫ぶような歌声にいつしか惹きこまれていった。

 長澤のバンド編成でのライブメンバーとしてもお馴染みの松江潤(Gt)もスペシャルゲストとして登場。長澤曰く“インナーな友達”3人で「蜘蛛の糸」や「金木犀」を披露した。アルバムでは最後に位置していたメロディアスな「Close to me」では、松江の感情豊かなギターの音色と長澤の歌声が見事に絡み合っているようだった。

 再び長澤と山本の2人編成に。「歌の歌」では客席にシンガロングを求める場面もあり、会場に一体感を生んだ。その後も敬愛するショーン・スミスへの哀悼の意を表したカバー「Wrapped in my memory」、〈弱い人間の歌〉という歌詞が印象的な「コウモリウタ」、そして初期から歌い続ける長澤の原風景のような「僕らの輝き」と続く。インタビューで長澤は「弱ってた自分に寄り添ってくれたような歌を、自分も歌うことができれば」と語っていたが、胸に刺さる切実な歌声や歌詞、メロディは客席の1人ひとりの心にそっと寄り添っているように感じた。

 この日のアンコールでは新曲「戦士は夢の中」も披露。今作に続くバンドサウンドの新作でも、『ソウルセラー』とはまた違った歌声を聴かせてくれそうだ。

(文=村上夏菜/写真=福政良治)